2025年10月11日(土)、エクスプレッション・ペダルを搭載した“XS-100 POLY SHIFTER”、コンパクト・ペダルの“XS-1 Poly Shifter”という2機種の最新ピッチ・シフターがBOSSから発売される。本記事では、普段からピッチ・シフターを愛用するギタリストの細井徳太郎を試奏者に招き、XS-100の実力をチェックしてもらった。
取材=小林弘昂 製品解説=鈴木誠 人物撮影=星野俊
BOSS XS-100
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細井徳太郎
BOSS XS-100
脅威の±4オクターブをコントロールする
最新のペダル一体型ピッチ・シフター
XS-100は、新開発のピッチ・シフト・アルゴリズムにより、弾き心地を変化させない自然なピッチ・シフトと、最大±4オクターブのダイナミックな音程変化を両立。ソロ演奏にインパクトを与えるだけでなく、自然なレスポンスを生かしてドロップ・チューニングやカポタストの代わりにも使えるピッチ・シフターだ。
従来のピッチ・シフターといえば、出力されるサウンドの音程や音色の不安定さも含めて“味”として受け入れられてきた部分もあった。しかしBOSSはXSシリーズの開発にあたり、楽器の音色やニュアンスをそのままにピッチを変化させられる新たな手法を開発。演奏スタイルや組み合わせる機材にも左右されない高度なアルゴリズムを搭載したことで、複雑なコードやサスティンの豊かなリード・パートでも鮮明に響かせられる。
ピッチ・シフトの操作は内蔵のエクスプレッション・ペダルだけでなく、フット・スイッチで瞬時にピッチを切り換えたり、踏んでいる間だけ一時的に切り換えるトグル/モーメンタリ動作も選択可能。ピッチ・シフトの幅やペダルのカーブ、ダブリング効果を生むデチューン効果など、思いどおりにカスタマイズした設定は30個までメモリーできる。
外部ペダルの接続やMIDI送受信にも対応し、あらゆる場面で活躍するギター/ベース用ピッチ・シフターの決定版だ。
BOSS
XS-100 POLY SHIFTER
【Specifications】
●コントロール:EFFECTスイッチ、TUNE DOWNスイッチ、SELECTつまみ、EFFECTボタン、MEMORYボタン、EXP1ペダル
●接続端子:INPUT端子=標準タイプ、THRU端子=標準タイプ、OUTPUT端子=標準タイプ、CTL1,2/EXP2端子=TRS標準タイプ、USB端子=USB Type-C(R)、MIDI(IN、OUT)端子=ステレオ・ミニ・タイプ、DC IN端子
●メモリー数:30
●バイパス:バッファード
●電源:DC9Vアダプター
●消費電流:160mA
●外形寸法:147(幅)×230(奥行)×72(高さ)mm *ペダル傾き最大時:147(幅)×230(奥行)×96(高さ)mm
●重量:1.7kg
【市場想定売価】
49,500円(税込)
【問い合わせ】
ローランド製品のご相談窓口 https://roland.cm/contact
BOSS XS-1
シンプルな操作で幅広い音域を重ねる
万能モデル
XS-1は、±7半音および3オクターブのピッチ・シフトに対応するコンパクト・ペダル。
レスポンスの変化やグリッチに悩まされることのない自然なピッチ・シフトにより、楽器の音色や弾き心地を保ったままヘヴィなドロップ・チューニングに切り替えたり、ボーカリストの音域に合わせてキーを変えるといった使い方も可能だ。
本体に備わるフット・スイッチは1つだが、別売のエクスプレッション・ペダルや最大2つのフット・スイッチを外部接続することにより、リアルタイムでのパラメーター変更やペダル・ベンドも行なえる。
操作部が複雑になりがちなピッチ・シフターでありながら、2つのノブと2つのトグル・スイッチですべてを操れる取っつきやすさも魅力だ。
BOSS
XS-1 Poly Shifter
【Specifications】
●コントロール:BALANCEつまみ、SHIFTつまみ、ペダルモード・スイッチ、シフトディレクション・スイッチ、ペダル・スイッチ
●接続端子:INPUT端子=標準タイプ、OUTPUT端子=標準タイプ、CTL/EXP端子=TRS標準タイプ、DC IN端子
●バイパス:バッファード
●電源:DC9Vアダプター、アルカリ電池(9V型6LR61、6LF22)×1
●消費電流:120mA
●外形寸法:73(幅)×129(奥行)×59(高さ)mm
●重量(乾電池含む):410g
【価格】
29,700円(税込)
【問い合わせ】
ローランド製品のご相談窓口 https://roland.cm/contact
Hosoi’s Impression

音の解像度が高いのでキレイに前に飛んでくれる。
そういった安心感もありましたね。
XS-100を弾いてみた第一印象は?
音がとにかくキレイですね。ピッチ・シフター系のエフェクトをかけると、“ジャーン”って弾いた時の感覚が濁るようなイメージがあるんですけど、このXS-100は“パーン!”って弾いたら、音がそのまま飛んでくれるような感じがありました。
原音に対してエフェクト音が素直だなと思ったのですが、そこはいかがでしたか?
素直な部分は感じましたね。例えばロー・コードの音をピッチ・シフトさせた時に、音がギュッと加工されて高くなるというよりかは、手元で弾いた感じが残っていて不思議でした。
オクターブとオクターブの間で半音ずつピッチを動かせたりと、細かい設定もできるのがXS-100の強みだと思うんです。
オクターブの間の音を設定できるのは便利だなと思いました。1オクターブ上下させるだけじゃなくて、例えば演奏の途中でコードを減4度上にするとか、そういったアプローチもできますよね。もちろん飛び道具としても使えるし、ギターだけじゃなくキーボードやベースでも、このXS-100を作曲やレコーディングのアレンジに組み込むことができるんじゃないのかな。
動画内ではスイッチを踏んでいる間だけエフェクト音がオンになるアンラッチ・モードを使用していましたが、TUNE DOWNスイッチの使い勝手はいかがでしたか?
ピッチ・シフト系のエフェクトって、基本的に1個の設定で音を上げる、もしくは下げるみたいな単一の機能であることが多いんですけど、もう1つスイッチがあることによって幅がグッと広がりますね。エフェクトのオン/オフ・スイッチではペダルを使ったアプローチができますし、それとは違う音域をTUNE DOWNスイッチで加えることができるので、凄く使いやすかったです。
ペダルを踏み込んだり戻したりする時のエフェクトのスピードを変えられるなど、従来のペダル型ピッチ・シフターにはない機能も盛りだくさんです。
たぶん、ペダルの踏み込みや戻す動作にピッチ・シフトが追従することって今までなかったですよね? 例えばソロをやるときは物凄く速く設定したり、コード・ワークする時は少しゆっくりめに設定してメロウにしたり、デジタル的にグラデーションを付けられるんですよ。その精度が凄く高いから、人間の演奏にそれが追従していくというか、プレイのアイディアを豊かにしてくれるような機能だなと思いました。
細井さんがXS-100を導入するとしたら、どのように使ってみたいですか?
絶対に使いたいのは、4オクターブ上の“バギャバギャ!”みたいなノイズにも近い派手な音。凄く好きでした。今回、ファズと一緒に踏んでみたりもしたんですけど、その時のノリがもう本当に良くて。
通常、ピッチ・シフターのエフェクターを使うと、例えば2オクターブ下で“ウィーン”って踏み込んだ時の一番下のところで少し音が細くなったり、客席に飛ばなくなるイメージがあったんですけど、XS-100は音の解像度が高いのでキレイに前に飛んでくれる。そういった安心感もありましたね。だからソロやリフを弾く時とか、歪んだ音がキレイに出てほしい時にも使ってみたいなと思いました。
最後に、XS-100はどんなプレイヤーにオススメですか?
ギタリストって大きく分けて2種類いると思うんです。1つはアドリブや即興とか、その時の感情で“ガーッ!”と弾きたいタイプ。もう1つは楽曲やアンサンブルを大事にしたいタイプ。例えば感情的にいきたい人だったら、XS-100のペダル部分を存分に使ってオクターブのアップもダウンもガンガン弾いて、感情の起伏を表現することにも向いていますよね。
あとはMIDIのイン/アウトが付いていたり、ドライ音をそのまま出力することもできるので、細かい設定がしたいとか、楽曲の中でここだけピンポイントでこういう音が欲しいとか、そういうことを研究するのにも向いています。なので、どっちのプレイヤーにもオススメしたいですね(笑)。
細井徳太郎 Profile
ほそい・とくたろう◎群馬県伊勢崎市出身のギタリスト。高校時代から本格的にギターを始め、大学ではジャズ研究会でバンド活動を行なう。ジャズや即興を演奏するソロでの活動を始め、タコ足イヤホンズ、SMTK、GoSpursGoなど様々なプロジェクトへの参加、アーティストのサポートなど、幅広く活躍中。



