日本の“金継ぎ”を大胆にフィーチャーした、斬新さと伝統が同居するデヴィッド・ブラウン製作のストラトキャスター｜フェンダーカスタムショップ Vol.18

Fender Flagship Tokyoで取り扱うフェンダーカスタムショップの最新モデルを紹介する連載、“Fender Custom Shop Masterpiece〜Guitar magazine Pick of the week〜”。第18回目は、マスタービルダーのデヴィッド・ブラウンが製作したDavid Brown Masterbuilt Kintsugi Spalted Maple Top Stratocaster NOSをご紹介。

文＝鈴木誠　ギター撮影=星野俊

Fender Custom Shop
David Brown Masterbuilt
Kintsugi Spalted Maple Top Stratocaster NOS

日本の伝統技法“金継ぎ”の装飾を施した
ゴージャスなストラトキャスター

日本の伝統技法である“金継ぎ”にインスピレーションを得た本器は、今年10月に開催された“Fender Experience 2025”のためにマスタービルダーのデヴィッド・ブラウンが製作した特別なストラトキャスター。

金継ぎとは、欠けや割れが生じた器の修復部分に装飾を施すことで、新たな美しさを見出す技法。日本らしい美意識として海外からも注目されている。本モデルはその美しさをギターという形に解釈・表現し、言わばアメリカから“逆輸入”された斬新なアート・ピースとなっている。

ボディはアッシュ材にスポルテッド・メイプル・トップを貼り合わせている。金継ぎの装飾に合わせ、ハードウェア類やヘッド・デカールもゴールド・カラーに統一。背面はアッシュ材ならではの伝統的なホワイト・ブロンドに仕上げられている。表側では鮮やかなブルーとのコントラストが、背面ではシースルー塗装による木目の透け感がそれぞれ楽しめる1本だ。

電装系の仕様も本器の顔となるボディ・トップが広く見えるように工夫されている。ピックアップはピックガードを介さないダイレクト・マウント、アウトプット・ジャックもボディ・サイドに移設した。

ネックは4Aグレードのフレイム・メイプルを採用したモダン“C”シェイプ。指板は現代的プレイアビリティを意識した9.5インチRで、22本のミディアム・ジャンボ・フレットを打ち込んでいる。ポジション・マークにマザー・オブ・パールを使用しているのも、抜かりなくゴージャスな部分となっている。

グロス・ウレタン仕上げのヘッド・ストック。ロゴ・デカールの色もゴールド・ハードウェアに揃えられている。ペグはノン・ロッキング仕様。 — ヘッドストックはグロス・ウレタン仕上げで、ロゴ・デカールのカラーもゴールド・ハードウェアに合わせて統一されている。ペグはノン・ロッキング仕様。

4Aグレードのフレイムが主張するメイプル・ネック。ポジション・マークのマザー・オブ・パールが華を添える。 — 4Aグレードのフレイムが際立つ1ピース・メイプル・ネック。マザー・オブ・パールのポジション・マークがその表情に華を添える。

マスターワインダーのホセフィーナ・カンポスが手巻きした“Ancho Poblano Stratocaster Pickup”を搭載。太くて高出力なトーンが持ち味だ。

日本の伝統技法である“金継ぎ”を大胆にフィーチャー。クローズアップすると、その手仕事ぶりがよくわかる。のぞく木目はトップ材のスポルテッド・メイプル。

アウトプット・ジャックはサイドに移設。マスタービルダーの製作するギターには、その美しいボディ・デザインを引き立てるための工夫も盛り込まれる。

ボディ背面は、シースルー塗装からアッシュ材がのぞく。斬新な金継ぎデザインとオーセンティックな“ホワイト・ブロンド”仕上げが同居する1本。

David Brown’s Comment

完成までに多くの時間を要しましたが、
その価値は十分にあると感じています。

このギターのカラー・パレットを考えるにあたって、日本の伝統的な“金継ぎ”陶器のスタイルを表現したいと思い、リサーチを進める中で印象的な2色を使った小さな茶碗の写真を見つけました。それがこのストラトキャスターに採用したカラーです。乳白色は小ぶりな茶碗の内側によく見られる色であり、ロイヤル・ブルーは外側を彩る色として用いられていました。

完成までに通常よりはるかに多くの時間を要しましたが、その価値は十分にあると感じています。私は、芸術的な美しさを持ちながらも実際に演奏されることを前提とした、“使うためのアート・ピース”としてのギターを作りたいのです。

この塗装の技法は、木目の濃淡がはっきりと分かれる、あらゆる種類の木材に応用できますが、中でもスポルテッド・メイプルは最適な素材でした。今後は様々な木材でこの手法を試していくつもりですが、まずはこの発想のきっかけを与えてくれた日本へ最初のギターを届けたいと思い、今回それが実現してとても嬉しく思います。

Fender Custom Shop
David Brown Masterbuilt
Kintsugi Spalted Maple Top Stratocaster NOS

【Specifications】
●ボディ：スポルテッド・メイプル（トップ）／アッシュ（バック）
●ネック／指板：4Aフレイム1Pメイプル
●指板：AAAローズウッド
●ネック・シェイプ：Modern “C”
●スケール：25.5インチ（64.77cm）
●ラジアス：9.5インチ（241mm）
●フレット：ミディアム・ジャンボ（6150）
●フレット数：22
●ナット：ボーン
●ナット幅：1.650インチ（42mm）
●ピックアップ：Josefina Handwound Poblano Strat（フロント／リア）、Josefina Handwound Poblano Strat RWRP（センター）
●ペグ：Vintage-Style Tuning Machines with Fender Logo Gold
●ブリッジ：・Custom Shop Vintage Strat Gold
●コントロール：マスター・ボリューム、トーン（フロント／センター）、トーン（リア）、5wayピックアップ・セレクター
●付属品：Sarat/Tele Tweedハードケース、カスタムショップ特別認定証

【販売価格】
2,090,000円（税込）

【問い合わせ】
フェンダーミュージック　TEL：0120-1946-60

Fender Flagship Tokyoのここが見どころ！

Fender Flagship Tokyoは、原宿にあるフェンダー唯一の旗艦店だ。最上階・3階は、フェンダーカスタムショップ専用の特別なフロアになっており、世界最高峰のクラフトマン・シップが息づくギターやベースの世界に、じっくりと没入することができる。店内には、100本近くのカスタムショップ製品が展示されておりすべて購入可能。あなたの人生を変える1本と、ここで出会えるかもしれない。

この写真は、3階のフェンダーカスタムショップのフロアのうちの1室。撮影時には壁の一面がすべてアーティストのシグネチャー・モデルでレイアウトされていた。

エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、イングウェイ・マルムスティーンといった往年のシグネチャー・モデルに加え、国内外の新旧様々なアーティスト・モデルが取り揃えられている。これら特別なギターを実際に選べるのは、Fender Flagship Tokyoならではの体験だ。

同じフロアにはカスタム・オーダー専用の特別ルームも設けられており、コレクターやギター愛好家にはたまらない空間となっている。

※カスタムオーダーを希望する場合は、予約（こちら）が必要。