ブレント・メイソン本人が語る新たなシグネチャー・モデルの魅力 ブレント・メイソン本人が語る新たなシグネチャー・モデルの魅力

ブレント・メイソン本人が語る
新たなシグネチャー・モデルの魅力

カントリーの聖地=ナッシュビルのスタジオで、数えきれないほど多くのレコーディングに参加してきたレジェンド・ギタリスト、ブレント・メイソン。彼が長年愛用するテレキャスターが、フェンダーの“STORIES COLLECTION”として“あのカスタマイズ”まで再現されて登場! こだわりのシグネチャー・モデルについて本人から話を聞こう。

質問作成=福崎敬太 翻訳=トミー・モリー 協力=フェンダーミュージック Photo by Terry Wyatt/Getty Images for Country Music Hall Of Fame & Museum


僕のギターは
1967年製だったんだよ。

現在はCOVID-19の感染拡大で世界中が大変な状況になっていますが、あなたのインスタグラムを見る限り、感染対策を十分に立てたうえでレコーディングなどは行なっているようですね。ナッシュビルの音楽制作現場は現在どのような状況にあるのでしょうか?

 3月半ばには、ナッシュビルのレコーディング・スタジオは完璧にシャットダウンされた状態だったよ。それでも幸運なことに、多くのクライアントたちが音源を送ってくれて、リモートで仕事をすることができた。その結果、最初の数ヵ月の自宅待機期間では大きな影響を受けることはなかったね。そして5月になるとすべてのスタジオが、ソーシャル・ディスタンスやマスク着用といった厳格なルールのもとで再開し始めた。最初はやりづらく感じたけど、やらなくてはならないことだというのはみんなわかっているから、今は規則にのっとって仕事をするベストな方法を模索しているところなんだ。そしてくり返しになるけど、僕は本当に恵まれていてね。5月半ばからはほぼ毎日スタジオでの仕事に戻れている。今日までずっと忙しくさせてもらっているよ。

自宅待機の期間、リモート制作以外では何をやっていましたか?

 基本的には自宅でもレコーディングで忙しかったけど、自粛期間が始まった最初の数週間は毎日家にいて、みんなと同じように世界で何が起きているのか理解しようとしていた。あとは、自宅のオフィスからスカイプでのギター・レッスンも行なったし、妻と一緒にテレビを見ながらベッドでマティーニを飲んだりしていたね。その日が何曜日であるのかを忘れてしまうことも時折あったくらいだ。ただ、普段なら仕事が時間通りに終わるなんてことは稀だったから、こういう状況になって妻が作った夕飯を毎晩家で食べられることは最高だったよ。

さて、話は変わりますが、フェンダーの“Stories Collection”として、あなたのトレードマークでもある1968年製テレキャスターが再現されましたね。まずは出来上がりについて率直にいかがでしょうか。

 実は制作過程の中で、僕のテレキャスターが1968年製ではないということがわかったんだ! 解体して測定した時に、1967年の11月に作られたものだということを突き止めてしまったんだ。僕のギターは1967年製だったんだよ!

それは衝撃の事実!!

 それまでずっとこのギターを“68年製テレキャスター”と呼んでいたから、今度から“僕の67年製テレキャスター”と言わなければならなくて……少し慣れが必要だね(笑)。そして、完成した製品に関しては、サウンドとBベンダーの搭載にとても満足している。フェンダーの人たちが僕のギターを作るうえで本当に細かなところまでこだわってくれて、完璧な物を目指してくれたことを、とても誇らしく思っているよ。

その大満足のサウンド面について、もう少し聞かせて下さい。3つのピックアップは、それぞれどのような役割で使っているんですか?

 リアのVintage Stackはファットでクリアでグレイトなビンテージ・サウンドが得られる一方、まったくノイズがないのが気に入っているポイントだね。そして、センターのHot Stack Strat STK-S2を搭載させたことで、リアもしくはフロント・ピックアップと組み合わせてストラトキャスター特有の“フェイズアウトさせたサウンド”を作り出せるようになったんだ。で、フロントにはミニ・ハムバッカーのVintage Mini HBを搭載することで、ES-335やレス・ポールのようなファットでホットなトーンが作れるようになった。おかげで3本のギターが1本の中に収まっているような感じだね。

通常のテレキャスターにはないセンター・ピックアップですが、あなたはどのように使っていますか?

 センター・ピックアップを単独で使うのは、特定のイコライジングを求める時が多いかな。イメージとしてはリア・ピックアップからハイ〜トレブルを取り除いた雰囲気の、スウィート・スポットを突いたようなサウンドだね。

細部まで再現された、Stories CollectionのBrent Mason Telecaster。

ヘッドのストリング・ガイドの位置も忠実に再現されていますが、そもそもなぜこの位置なんですか?

 ハハハ! どうしてその位置に取り付けることとなったのか、何か理由があるのではないかと考える人たちからよく同じ質問を受けてきたよ。実はもともとの穴があまりにも広がってしまいストリング・ガイドが簡単に取れるようになってしまったから、別の場所に移しただけなんだ(笑)。

また、Bベンダーを搭載していますが、3弦のブリッジ・サドルも変わっていますよね? これはGベンダーもついているのでしょうか?

 もともとの僕のギターにはGベンダーは搭載していないけど、このシグネチャー・モデルに搭載された新しいGlaser Bベンダーは、ごくシンプルな操作でGベンダーにコンバートさせることも可能なんだ。まだ僕も試していないけれど、これってかなりクールな機能だと思ったよ。

ナッシュビルはどんな時も
ギターの街であり続けてきた。

あなたの参加作品は数えきれないほどありますが、このテレキャスターで演奏したもので、特にお気に入りの楽曲を挙げるとしたら何でしょう?

 アラン・ジャクソンの「I Don’t Even Know Your Name」、またの名を「In Love with a Waitress」というタイトルで呼ぶ人もいるけれど、あえて言うならこの曲かな。ヒット・シングル曲にも関わらずほぼ誰も知らないから、“これはボーカル曲じゃなくて、インストゥルメンタル曲なんだよ!”ってジョークをよく言っているよ(笑)。

新しいシグネチャー・モデルをどのようなギタリストに弾いてもらいたいですか?

 ロックやジャズのギタリストがプレイしているのを見たら、とてもクールなことだと思う。彼らがこのギターを手にすることで、新たなテリトリーを開拓するように、ギターからインスパイアされるかもしれない。多彩なスタイルでプレイするギタリストにとても向いていると思うよ。

ほかにこだわったポイントがあれば、ぜひ教えて下さい!

 実はこれと同時に、フェンダーカスタムショップでLimited Edition Brent Mason Fender Telecasterを作っていて、これもとても気に入っているんだ。僕が持っているオリジナルを完璧に再現しているんだ。僕が持っている本物と瓜ふたつで、サウンドもアメイジングだし、ある意味僕のものより少し良いかもしれないくらいだね(笑)。

本人が“完璧な再現”と語る、フェンダーカスタムショップ製Limited Edition Brent Mason Fender Telecaster。

あなたのソロ作『Hot Wired』(1997年)は、エレクトリック・ギターでのカントリー・リックの宝庫です。私は全く弾けませんが、このアルバムがすごく好きなんですよ。例えばタイトル・チューンの「Hot Wired」だと、どのようにフレーズ・メイクをしたのですか?

 それはありがとう! 僕が曲を書いてこのアルバムを録音したのは90年代後半のことだけど、何十年の時を経た今でも色あせていないと思う。「Hot Wired」は開放弦を使ったクレイジーなリックに、プリング・オフやダブル・ストップを、はちきれんばかりのスピードで織り交ぜながらプレイしているよね。あと、この曲はジャズっぽいリフをカントリーのラインに載せるような感覚で作ったんだ。ソロはBメロのセクションをバックに、ほとんどのパートをアドリブでプレイしているけど、事前に練ったパートもある。ほんの数小節だけど、耳に驚きを与えるためにオルタード・スケールを入れたりね。

カントリー・ギターのアドリブを弾く時のコツは?

 カントリー・ギターのインプロヴィゼーションは、いくつかの要素によって構成されている。何よりもまず、頭の中で鳴っているメロディを指板上で再現できるようになることが重要なのは、ほかのどのスタイルでも一緒だよね。そしてその次に大切なのは、リズムに関することだ。平坦なラインを崩すことで、ソロはとてもおもしろいものになるんだよ。それに加えて、カントリー・ギターで特に重要なのが、トリッキーなリックのレパートリーをたくさん持っておくこと。それを流れるように、“これでもか!”というぐらい放り込んでみるんだ。もちろん、適度な“トゥワンギーさ”も忘れてはいけないよ!

カントリー・ミュージックにおけるギターの役割はどう考えていますか?

 ナッシュビルはどんな時もギターの街であり続けてきたし、ギターというのはカントリー・ミュージックのサウンドを語るうえでとても重要なパートだよ。最も脚光が当たってフィーチャーされるのはソロをプレイする時だけど、その曲の顔となるようなイントロを弾く時もあるし、楽曲のフックとなるリックが求められる時もあるからね。

最後に、日本のファンに向けてメッセージを。

 僕が日本に行った時はいつも、ファンと一緒にグレイトな経験をさせてもらってきた。日本の人たちはミュージシャンをリスペクトし、感謝の気持ちを常に持ち、僕たちが作り出すものに対して細かなところまで意識を向けてくれている。僕ですら忘れてしまったような、かなりマイナーなレコーディングについても質問された時はとても驚いたよ(笑)。すごく光栄に思ったし、逆に日本人のそういった姿勢からインスパイアされることもあった。いつの日かまた日本でパフォーマンスができる日を楽しみにしているよ!

【Profile】 ブレント・メイソン◎50年以上に渡るレコーディング実績を持つ、史上最も多作なセッション・ギタリストのひとり。彼のギターは、ジョージ・ジョーンズ、ウィリー・ネルソン、ドリー・パートン、ブレイク・シェルトン、キャリー・アンダーウッドなどのヒット曲を含む1,000枚以上のアルバムにフィーチャーされている。彼はまた、カントリー・ミュージックの殿堂入りを果たし、グラミー賞を受賞し、カントリー・ミュージック・アカデミーのギタリスト・オブ・ザ・イヤーを12回受賞。GuitarWorld誌のセッション・ギタリストのトップ10にも選ばれている。

BRENT MASON TELECASTER

【スペック】
Series: Artist
Body Material: Ash
Body Finish: Satin Urethane
Neck: Maple,
Neck Finish: Satin Urethane
Fingerboard: Maple, 7.25” (184.1 mm)
Frets: 21, Vintage Tall
Position Inlays: Black Pearloid Dot (Maple)
Nut (Material/Width): Bone, 1.625” (41.3 mm)
Tuning Machines: Sperzel® Locking
Scale Length: 25.5” (648 mm)
Bridge: 6-Saddle Telecaster® Bridge with Glaser™ Bender System
Pickguard: 3-Ply Black/White/Black
Pickups: Seymour Duncan® Vintage Stack® Tele® STK-T3B (Bridge), Seymour Duncan® Hot Stack®
Strat® STK-S2 (Middle), Seymour Duncan® Vintage Mini HB (Neck)
Pickup Switching: 3-Position Blade: Position 1. Bridge, Position 2. Bridge and Neck, Position 3. Neck
Controls: 1 x master volume, 1 x middle pickup volume, 1 x master tone (push/pull tone control), 3-way blade pickup switch
Control Knobs: Knurled Dome Gold
Hardware Finish: Nickel/Gold-Plated
Strings: Fender® USA 250R Nickel Plated Steel (.010-.046 Gauges), PN 0730250406
Case/Gig Bag: Deluxe Black Hardshell

【予定価格】
330,000円(税抜)

【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp

LIMITED EDITION BRENT MASON TELECASTER

【スペック】
Body: 2-Piece Offset Seam Ash
Finish: Nitrocellulose Lacquer
Neck: Quartersawn Maple with a ’67 “C” Back-Shape and 7.25” (184.1 mm) Radius
Frets: 21, Vintage Tall
Hardware: Gold
Bridge: Custom 6-Saddle Strings Through Body with Modified Plate and Saddles for Joe Glaser B-Bender System
Pickups: Seymour Duncan® Vintage Stack® Tele® (Bridge), Seymour Duncan® Hot Stack® Strat® (Middle), Seymour Duncan® Vintage Mini Humbucker (Neck)
Wiring: Custom Brent Mason
Controls: Volume 1. (Neck/Bridge); Volume 2. (Middle); Master Tone (Push/Pull Turns Off Middle Pickup)
Included: Deluxe hardshell case, strap and Certificate of Authenticity.

【予定価格】
1,450,000円(税抜)

【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp