Interview|オカモトコウキ(OKAMOTO’S)これからのギター・プレイの行方とは? Interview|オカモトコウキ(OKAMOTO’S)これからのギター・プレイの行方とは?

Interview|オカモトコウキ(OKAMOTO’S)
これからのギター・プレイの行方とは?

メンバーそれぞれが持つ豊かな音楽的バックボーンを現代的に解釈し、それを常にロックやポップスに落とし込んできたOKAMOTO’Sが、新作EP『Welcome My Friend』をリリースした。コウキ曰く“ギターでしかありえない”フレーズだとぶち込んだ作品というが、事実「THE BEAR」や「Riot」では強烈なリフが炸裂している。そんな今作のギター・プレイについて、詳しく話を聞いた。

取材・文=辻昌志

ギターじゃないとありえないフレーズがある

今作『Welcome My Friend』は、フル・アルバム『BOY』から数えると約1年半ぶりのリリースですね。どんな手応えを感じていますか?

 自信作、かつ楽しく作れましたね。それは“EPだから”という面も大きいと思います。EPってまず、尺の長さがちょうど良いんですよ。配信でも聴き通せる、ちょうど良い長さというか。あとは気負わずに作れることですね。4年前にもEP(『BL-EP』)を出したのですが、その時も力を抜いて作れたんです。しかも、『BL-EP』にの曲は今でも人気が高くて。今回も、そうやって力を抜いて作れたので、すごく良い作品になったって実感が持てる作品です。

今作のギターは、フレーズがすごくシンプルですよね。コウキさんは前作『BOY』のインタビュー(ギター・マガジン2019年3月号)では”意味のないフレーズは弾かない”と言っていましたが、その方向性を押し進めたのかと。

 年々、シンプルにはなってますね。例えば4~5年前のアルバムだと、サビにギターを3本入れて高音域をダビングして……と、ギターが曲全体を支配する感じだったと思うんです。でも、今は違っています。それは“現代の音楽シーンの時流”と”今の僕の気分”が関係していて。

今の音楽シーンというのはつまり、王道のギター・ロックの時代ではないということですか?

 そうですね。自分自身もギタリストとしてソロを入れまくる……っていう気分でもなくなってしまって。それよりも、“曲のいち要素として適切なギター・フレーズを入れる”という意識になっているのが今ですね。

意識が変化した最大の理由は?

 楽曲にピアノが入ったことは大きいです。そもそも僕も、ピアノやキーボードで作曲することが多くなってきていて。今作では、「Dance To Moonlight」(ベスト盤『10’S BEST』収録。初出は配信限定リリース)でもピアノを弾いてもらった、BRIAN SHINSEKAIに参加してもらっています。

ピアノが入ることで、ギターのコード・バッキングの必要性が減ると。

 そうですね。ピアノとギターで、上の音域を分け合うようになるというか。そうすると、よりサウンドに奥行きが出るんです。曲の中で楽器を置く位置も、これまでとは変わったんですよ。ギターを入れたところも前作よりすごく減っていますね。

例えば「Welcome My Friend」ではギターをバリバリに弾いているわけではないですが、オブリなど随所に工夫がほどこされていますよね。

 その曲はほとんどダビングをしていないですね。でも3つのサビでそれぞれコード進行を変えたり、フレーズも微妙に変えたり、そういう細部に力を注いでいるんです。

ただ、一方で、ギターだからこそのフレーズもありますね。「THE BEAR」のイントロのリフとか。

 グランジ全開のリフですよね。確かにその時代のシグネチャーを意識するって意味でも、ギターでないとありえない。

あのリフは強烈に耳に残ります。コウキさんの中で、リフ作りの鉄則っていうのはあるんですか?

 何ですかね……やっぱりツェッペリンが好きということはありますね。ジミー・ペイジの感じは「BROTHER」(『BROTHER』収録)から意識しています。シンプルだけど、すごく細部に凝っていますよね。

リフで言えば、「History」も印象に残っています。というか、このフレーズにはOKAMOTO’Sのリフ特有の不安定感や焦燥感を感じるというか。

 確かにカッチリとはしていないですよね。微妙なベンド具合というか……あまりにもカッチリとしすぎると、ハードロック的に聴こえるんじゃないかと思うんです。それかアークティック・モンキーズ過ぎるか(笑)。

その狭間を狙うのは相当難しそうです(笑)。でもコウキさんが作るリフって、誰の楽曲か知らずに聴いてもOKAMOTO’Sだとわかります。

 それはうれしいです。リフに自分のシグネチャーを込めたいですよね。世の中にリフが死ぬほど溢れているし、さらにこのシーンの時流でリフを作るとなるとハードルが高いけど(笑)。だから、ブラック・キーズの「ロンリー・ボーイ」とかは発明だと思うんですよ。下の音域でオクターバーを使ったリフですね。まだこんな発明ができるんだと思いました。

「Motel」では、湿り気がある歌謡曲的な曲調が印象に残りました。こういう曲に合わせるギターはかなり難そうだなと。

 これは難しかったです。もともと、テクノっぽい打ち込みの曲だったんですよ。シンセがバリバリ入る曲で。そのデモを持っていってみんなで合わせたら、アレンジ的にグッとはこなかったようで。で、それこそ歌謡曲的なアレンジでやったら良いのではと、ハマ(・オカモト/b)君から提案があったんです。

最初と大きく方向性が変わったんですね。

 で、ユーミンの「ベルベット・イースター」とか、60~70年代の歌謡曲っぽい曲のアレンジにしようという話になっていきました。けど、そうするとギターの入れどころが難しくて。ピアノがメインだし。しかも「Motel」っていうタイトルだったから、「ホテル・カリフォルニア」感は入れたい、とか(笑)。結果的に、あまりやったことなかったギターのオーケストレーションやダビングを入れましたね。ブライアン・メイのようなシグネチャー・サウンドを意識しました。