結成15周年を迎えた9mm Parabellum Bulletのトリビュート作『CHAOSMOLOGY』がリリースされた。菅原卓郎&滝 善充による“キツネツキ”も含めて、9mmと絆の深い全18組が参加。本作に参加したギタリストたちに、カバーした楽曲のポイントや制作を経て改めて感じた“9mmのギターが持つ魅力”についてアンケート形式で答えてもらった。1組目は「Punishment」をカバーしたmudy on the 昨晩のギタリスト3人にご登場願おう。
企画/制作=ギター・マガジン編集部
mudy on the 昨晩
「Punishment」
制作で苦労したポイントはどこですか?
山川洋平 9mmの曲にmudyらしさを出すアレンジの方向性に時間をかけたと思います。その方向性が森氏発案の“重い”と“遅い”で、自分の引き出しにあまりないジャンルでしたので、制作にあたり色んな音楽を聴き直しました。今回コロナ禍で、リモートで曲構成を行ったところも苦労したポイントです。
フルサワヒロカズ 「Punishment」は曲中のギター・アレンジがわりとシンプルなので、その状態から僕らの様なギター3本バンドでどうやってアレンジしていこうかなという部分がまずはありました(更にオーバーダビングも加わるのでもう少し本数増えます)。且つ、とてもBPMが速い曲なので そのあたりもどうやって解釈して再構築していこうかという部分はわりと時間を割いたと思います。
森ワティフォ トリビュート・アルバムとかは色々聞いたことはあるのですが、普通にコピーになっても勝ち目があるわけないので、これ何の曲だ?くらいの全く別物のアレンジにするしかないと思っていました。そうなると可能性があり過ぎてもう第一歩目から苦労しましたね。
原曲を聴いて、9mm Parabellum Bulletのギターの役割はどのようなものだと感じましたか?
山川 曲の顔。
フルサワ 発火装置。(特にこの曲はイントロ1秒で「Punishment」と分かるからすごい)
森 昔から知ってはいましたが、滝さんはもちろんギター・ソロとかもバカうまい。でも結局、卓郎さんもバッキングとかバカうまいので、メタリカみたいなものだと感じました。
ギター・パートのコピー/アレンジで気をつけたことは?
山川 ストレートな印象を与えないようなアンニュイなコード感を使用しました。
フルサワ mudyらしく“ギターが鳴りまくっている”事を前提でアレンジを考えてたので、常にギターが鳴りまくっている状態でもクドくならない様に気をつけました。あとは“歌メロ以外の原曲のフレーズを極力入れない”とかの制限を自分たちで設けながら編曲しました。
森 あまり聴き込み過ぎると同じことを弾いてしまうので、耳に入る滝さんの音だけ全部バラして、そこからもう一回自分で全部作り直そうと考えていました。
ギター・パートのコピー/アレンジで難しかった部分は?
山川 そもそもコピーするのが難しい(笑)。曲の途中で三拍子に変更した所。無責任に三拍子の発案をしたが、曲の最終構成はフルサワ氏にお任せしました。
フルサワ 原曲がほぼ2コードの様な展開ですので、よりmudyらしく色を付けるため展開を増やしたり、コード進行を多くさせていったりなど。
森 先述した全部分解して作り直す作業は難しかったです。けど個人的にはほとんど原曲に近い音域で弾いている結果にはなりました。
カバーVer.に残した「9mmらしさ」と、新たに加えた「自分らしさ」はどういったところに出ていますか?
山川 構成の奇抜さ、音のでかさ。
フルサワ 9mmらしさ→鋼鉄の男気。自分らしさ→メロひとつから伝える情報量の多さ。
森 原曲が9mmらしいメタルバンドのような楽曲なので、自分の中でのポストメタル的解釈で9mmらしさを残しつつ自分らしさをそっと置いておきました。
サウンド・メイクはどのような点に気をつけて行ないましたか?
山川 歪みは普段よりハイゲインより。アルペジオ部分はデラリバをアンプ直で使用。
フルサワ 我々も結構歪んでいるとは言え、元々9mmとは違った方向性の全体のサウンドですので、 音像はmudyらしく、でも9mmの荒涼とした感じを出せる様にバランスを取っていきました。
森 あまり歪ませ過ぎず、シンプルな音で重苦しい感じにできればいいなと思っていました。
今回のレコーディングで使った機材を教えて下さい。
山川 ギターは1960年製Gibson Les Paul Special、アンプはVox AC30BM、1965年製Fender Deluxe Reverb、エフェクターはstrymon Iridium、Empress Effects HEAVY、Eventide H9。
フルサワ Fender Custom Shop Master Grade Stratocaster ‘98、I.M.I LIGHTS NOZZY Handmade amp、HOT CAKE、BOSS BD-2。
森 ギターがYAMAHA SG-RR Custom、アンプはMesa/Boogie Dual Rectifier、エフェクターはBig Muffの緑(編注:ロシア製アーミー・グリーン)。
実際にプレイしてみて感じた、菅原さん&滝さんのギター・プレイの特徴や魅力、すごさというのはどういった部分ですか?
山川 お二方とも激しくテクニカルでなおかつ丁寧、唯一無二です。
フルサワ カッティングが鬼の様に速い。そして全体的にも速い。鬼。
森 やっぱり滝さんは派手なサウンド、卓郎さんはしっかり綺麗なバッキングが魅力だと思います。
菅原さん&滝さんにメッセージをお願いします。
山川 トリビュートにお誘い頂きとても光栄です。「Punishment」を自分たちの曲にするくらいの意気込みでカバーさせてもらいました! 今後ともご贔屓に宜しくお願いします(笑)。
フルサワ お二人はお会いするといつも優しく気さくに話しかけてくださって、何でもないような会話の中からハッとするような事を教えてくれます。9mmの音楽やその姿勢から本当に沢山の影響(それだけではとても表しきれないほど)を受けました。これからも僕らがびっくりする様な曲を待っています。滝さん、また一緒に音源作りましょう!
森 滝さん卓郎さん、久しく会っていませんね。こちらはみんな元気にしております。またライブしたり飲みましょうー。
本記事読者のギタリストたちへ、今回の楽曲の聴きどころを教えて下さい。
山川 原曲からすると奇抜なアレンジかもしれませんが、曲が進むにつれ加速し、最後に散りゆく様を聴いて頂けたらと思います。
フルサワ 【歌メロは残し、極力原型を留めずに】をテーマに製作した今回の曲です。なんだかもの すごく「インストバンド」な感じになってしまってムズムズする様な感じもしますが、同時にすごくmudyっぽくなったような気もします。あなたの編曲のヒントにしてもらえたら幸いです。
森 「Punishment」なのに、、、と思うかも知れませんが、あの印象的なギターのイントロとかも一応僕なりに分解した結果が序盤のタッピングのようなフレーズなので、改めて両方聴き比べて欲しいです。あと原曲かっこいいです。
作品データ
『CHAOSMOLOGY』 V.A.
コロムビア/COCP-41241〜2/2020年9月9日リリース
―Track List―
【Disc1】
01. UNISON SQUARE GARDEN 「Vampiregirl」
02. BLUE ENCOUNT 「Supernova」
03. BiSH 「Discommunication」
04. THE BACK HORN 「キャンドルの灯を」
05. FLOWER FLOWER 「名もなきヒーロー」
06. a flood of circle 「Black Market Blues」
07. cinema staff 「Talking Machine」
08. チャラン・ポ・ランタン 「ハートに火をつけて」
09. ストレイテナー 「カモメ」
【Disc2(instrumental)】
01. SPECIAL OTHERS 「Wanderland」
02. fox capture plan 「ガラスの街のアリス」
03. mudy on the 昨晩 「Punishment」
04. LITE 「次の駅まで」
05. DEPAPEPE 「スタンドバイミー」
06. Ryu Matsuyama 「The World」
07. アルカラ 「Living Dying Message」
08. キツネツキfeat.タブゾンビ(SOIL&“PIMP”SESSIONS)&栗原健 「黒い森の旅人」
09. →Pia-no-jaC← 「ハートに火をつけて」