Interview|斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)ギター・アレンジはどう考えるか Interview|斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)ギター・アレンジはどう考えるか

Interview|斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)
ギター・アレンジはどう考えるか

ギターを持たない時に
頭に流れてきたメロディが
良かったりするんです。

個人的にユニゾンの楽曲は、「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」のようにパートごとにガラッとギターの印象が切り替わって、それによって各パートのギターがより目立っている感じがあります。ギター・パートの起承転結はどういう風に考えていくんですか?

 “アルバムのトータル・バランス”っていう考え方をもう少しちっちゃくした、“曲としてのトータル・バランス”というか、ストーリー展開のようなものは感じながらやっています。やっぱり、ギターが一気に情景を変える係を担うことが多いから、必然的に音色も1曲の中でコロコロ変わっていったりもするっていう感じかな。あと、“ギタリストとして楽曲のポテンシャルをどれだけ出せるか”、“自分のプレイヤーとしての在り方も落とし込めたらいいな”っていうのは常に思っているので、“同じ曲の中でもいろんなアプローチができたらいいな”って考えています。

アレンジは1曲まとめて考えるというよりは、パートごとに分けて考えている?

 分けるタイプですね。3人で曲作りをする時はベーシック・ギターを完成させるところまでで、上モノはプリプロの段階でやっているんですけど、その時はAメロ、Bメロ、サビって分けて作っています。

「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」もソロが入りますが、これはエモーショナル爆発という感じで。

 そうですよね(笑)。

こういうソロはアドリブ的な要素が強いと思うんですが、事前にどういうイメージまで膨らませてレコーディングに臨むんですか?

 何も考えてないです(笑)。ほかの曲だとプリプロで作り込んだものをほぼそのまま弾く感じなんですけど、この曲に関しては、フレーズっていうより“ちょっとはみ出す係”みたいなところがあったので“その時の音を聴きながらやろう”っていう風に決めてやりました。

逆にプリプロでソロを作る時はどのような流れなんですか?

 曲作りの一番最後にギター・ソロを作ることが多いんですけど、その曲に感じた印象をそのまま弾くんです。それを何回もやって、おいしいフレーズがあったらそこを軸にまたもう1回弾いて、みたいなことをくり返す中でできることが一番多いですね。

そうやって弾く時、スケールやコード進行はどの程度意識している?

 あまり考えないで、感覚重視で弾いているかもしれないですね。本当に何個もスケールが完全に体に入ってるような達人だったら話は別ですけど、僕の場合はスケールで考えて弾いちゃうと全曲似通っちゃうと思うんですよ。発想が全部同じところからのスタートになっちゃうので。だから、ギターを持たない時に頭に流れてきたメロディとかのほうが良かったりするんです。

そういうソロのメロディやギターのアレンジが降りてくるのはどういうタイミングが多いんですか?

 油断してる時が多いですね(笑)。一生懸命考えてる時は出てこなくて、“やめた!”って時に出てきたりします(笑)。

できるだけリズムを大きく取ったほうがいい

「Phantom Joke」もそうですが、ユニゾンの曲には速いBPMの16分カッティングがけっこう多いじゃないですか。あの速さで斎藤さんのように切れ味のある音、しかも歌いながらって超難しいと思うんですが、コツみたいのはあるんですか?

 ちょっとだけ極意があるとするならば、“できるだけリズムを大きく取ったほうがいいな”と思っていますね。

自分の中のリズムの感じ方ですか?

 そうですね。例えば、“この曲だったら、1拍目と3拍目に意識を置く”、“逆に2拍目と4拍目のスネアの位置を意識する”とか、“1小節の中でも1拍目だけ合わせて、あとはどうでもいいや”みたいな感覚の時のほうがグルーヴが生まれることが多くて。僕の場合はですけど、クリックに近付けていくよりは“はずしちゃいけないところだけ”を意識して、フレーズがちゃんとグルーヴにしているかどうかを大事にしたほうが、バンドとして良くなる。

斎藤さんが弾く際にリズムのガイドとして聴いている音は?

 スネアが1位で、僅差で2位がハイハットっていう感じですね。あとはわりと全体的に聴いてるかな。

さて、今作の使用機材についても聞かせて下さい。ギターは?

 けっこういろいろ使っていますね。「摂食ビジランテ」のミュート・カッティングなどでアトリエZを使って、あとはマイケル・ランドウ・モデル、フェンダーカスタムショップのジャズマスター、guitars-R-USのSTタイプとかも弾いてます。

Atelier Z/Lower East Side
10年以上メインとして愛用し続けるアトリエZのロウアー・イースト・サイド。今年にサウンド・システムを見直し、それに合わせて本器のピックアップをフェンダー製のものに載せ替えたそう。変更のあった斎藤のペダルボードは近日ギタマガ WEBで公開予定。

ロウアー・イースト・サイドの背面。以前は3本のトレモロ・スプリングがセンター=ストレート、左右=八の字というかけ方だったが、現在は6弦側にテンションがかかるように変更されている。

アンプやエフェクターは何が登場しましたか?

 基本的にはアンプの歪みを一番大事にしたので“どうしても、こういう味を出したい”みたいな時にエフェクターを使った感じです。アンプはフリードマン、マグナトーン、ボグナーを“アルバムを通して幅を出せたらいいな”というところで使い分けました。

いつもアンプのセッティングはどういう風に調整していくんですか?

 もちろんいつものセッティングっていうのがあるんですけど、初めてのアンプだったら全部とりあえず12時にしてみてそこから微調整する感じですね。アンプの特性をまず知ることが大事で、ツマミを回していくといきなり歪み始めるポイントや急に持ち上がるポイントがある。それを知ったうえで弾いて、もう1回いじって弾いて、っていうのをくり返しますね。

現在“LIVE (on the) SEAT”が開催中ですが、最後にライブへの意気込みをひと言お願いします。

 僕らはライブがやりたくて始めたバンドで、ライブをするっていうのはごく当たり前のことだったんですよね。だから今は、それができる喜びっていうのが、まず一番大きくて。“ロックバンドはモッシュ、ダイブありき”みたいにとらえている方もいるのかもしれないですけど、“座ってマスクして、声も出しちゃいけません”っていう形でも楽しめるものを作っていけると思うんです。音のひとつひとつはもちろん、ステージ上の3人が“ライブをすることの喜び”を感じながら演奏していると思うので、そういうところも楽しみに来ていただけたらいいなと思っています。

最新作

Patrick Vegee』 UNISON SQUARE GARDEN

トイズファクトリー/TFCC-86724/2020年9月30日リリース

―Track List―

01.Hatch I need
02.マーメイドスキャンダラス
03.スロウカーヴは打てない (that made me crazy)
04.Catch up, latency
05.摂食ビジランテ
06.夏影テールライト
07.Phantom Joke
08.世界はファンシー
09.弥生町ロンリープラネット
10.春が来てぼくら
11.Simple Simple Anecdote
12.101回目のプロローグ

―Guitarists―

斎藤宏介