Interview|リカルド・グリーリN.Y.次世代ジャズ・ギタリストの現在 Interview|リカルド・グリーリN.Y.次世代ジャズ・ギタリストの現在

Interview|リカルド・グリーリ
N.Y.次世代ジャズ・ギタリストの現在

レディオヘッドはいまだに僕のお気に入りだよ。

ギター・ソロでのアウト的なフレーズは、ローゼンウィンケルのアプローチを踏襲していますか?

 それはどうかな。カートから習ったことはないし、僕にはウェイン・クランツという師匠がいる。ウェインと僕のスタイルはまったく違うので不思議に思うかもだけど、彼はとても重要だった。シンプルなハーモニー……例えばEmであっても、そこからアウトしていったりもするのは彼の影響だね。逆にさっき言ったコード進行がすごく入り組んでいる時は、そのハーモニーの音を弾くことがとても大事だと思っている。なぜなら進行が入り組んでいるのには理由があるはずで、インサイド寄りで弾いたほうがいいんだ。そして、むしろテンション・リゾルブで考えることのほうが多いかな。要するに、テンションをあえて作っておいてから、元に戻る、つまり解決する。例えば、ディミニッシュ・コードからいかにして自分が目指しているコードまでたどり着けるかを考えるんだ。

レディオヘッドやシガー・ロスからも影響を受けているそうですね?

 そうなんだ。シガー・ロスは好きだった時期があって今はそれほどでもないんだけど、レディオヘッドはいまだに僕のお気に入りだよ。いろんなハーモニーやフレーズの長さで曲を書いている。楽しくて興味深いバンドだよ。そして美しい。

例えば「Mars」や「Virgo (Oliver’s Song)」のギターのイントロなどからは、レディオヘッドの世界観が感じられるように思うのですが?

 特に「Mars」がそうだね。レディオヘッドというよりは、トム・ヨークなんだ。リズムは違うけど、アルバム『The Eraser』収録の「Black Swan」という曲を思い起こすかもしれない。「Virgo」もたしかにレディオヘッドのアンセムっぽいバイブがあるけれど、それよりも僕にとって重要なのはブライアン・ブレイド(d)のフェロウシップ・バンドのニュアンスだね。

僕はアーティキュレーションがとても大切だと思うんだ。

普段はどういった練習をしているのですか?

 テクニックがちゃんと出せる状態にしておきたいから、時間がある時は指板全部を使ってスケールを弾いて、左右の手をシンクロさせるようにしている。一往復したらキーを変えるというのをメジャー、メロディック・マイナー、ハーモニック・マイナー、ハーモニック・メジャーでやっているよ。“今日はメジャー”、“明日はマイナー”と日替わりでやることもあるね。それからアルペジオを練習することもあるし、インターバルを5度、4度、長7度などのサイクルで、それにさまざまなトライアド(=3和音)でとかね。そうそう、最近はいろんなペンタトニック・スケールもやってるよ。普通のメジャー・ペンタもやれば、その6度を半音下にしたスケールや、6度と3度も半音下げたやつとかいろいろね。そうしてテクニックを常にキープしている。それから僕はアーティキュレーションがとても大切だと思うんだ。音をはっきりうまく出すことが大事だから、それにも時間をかけてもいる。

ハーモニー面での練習もしますよね?

 もちろんさ。さまざまなコード進行でやるよ。自分の曲か、もしくは、あまり得意でないものをピックアップして練習する。知識不足のせいでやりたいことができないのが嫌だから、どこでもどんなコードでも瞬時にスムーズに弾けるようにする。加えてどんなキーにも転調できるようにもね。

まだ日本に来たことはありませんよね?

 そうなんだよ。これは決して社交辞令じゃなくて、僕は日本の歴史と文化が大好きなんだ。だから日本行きは僕の夢だよ。近い将来ぜひとも実現したいね。

Ricardo’s Gear

Guitar & Amps

2017年に入手して以来、メインで使用している日本のWestville製Vanguard Plus。『1962』もほぼこれで、1曲目「1954-1962」のコード・プレイのみ借り物のFender製Telecasterとのこと。また『1962』で使用したアンプは、本人がFender Princetonの改良版的だと言うTyler JT-14と、『1954』と『1962』でコ・プロデュースも務めたエンジニアのマイケル・ペレス・シスネロスがモディファイしたFender Tweed Deluxeの2台。なお、ギターのうしろに写っているのはTyler JT-14とTyler 20-20。

Effects

 最新のエフェクター。接続順はギターから①~⑥を経由してアンプへ。ちなみに『1962』Rec時はひとつ多い全7個で、③~⑤の位置に、PettyjohnのCrush(コンプレッサー)、同Pettydrive MKII V2(オーバードライブ)、DiamondのMemory Lane 2(アナログディレイ)、StrymonのBluesky(リバーブ)の4つが接続されていた。

Pedal List

①TC Electronic/Polytune 2(チューナー)
②Pettyjohn/Filter(イコライザー)
③Pettyjohn/Gold MKII(オーバードライブ)
④Origin Effects/Cali76(コンプレッサー)
⑤EarthQuaker Devices/Avalanche Run(ステレオ・ディレイ&リバーブ)
⑥MXR/Carbon Copy(アナログ・ディレイ)

 昨年12月のライヴで試験的に使用して非常に気に入ったというマルチ・エフェクト&アンプ・シミュレーターLine6 Helix。それ以来、多用しているとのこと。

作品データ

『1962』
Ricardo Grilli

Deko Music / Tone Rogue Records/Deko-TRR009/2020年7月17日リリース

―Track List―

01.1954-1962
02.Mars
03.Signs (Blues for Peter Bernstein)
04.Coyote
05.ERP
06.The Sea and the Night
07.Lunatico
08.183 W 10th St
09.Virgo (Oliver’s Song)
10.Voyager

―Guitarists―

リカルド・グリーリ