Interview | 須藤寿&斉藤祐樹(髭)新作『ZOZQ』で聴かせる浮遊感のあるギター・ワーク Interview | 須藤寿&斉藤祐樹(髭)新作『ZOZQ』で聴かせる浮遊感のあるギター・ワーク

Interview | 須藤寿&斉藤祐樹(髭)
新作『ZOZQ』で聴かせる浮遊感のあるギター・ワーク

ハルさんに“6度って何ですか?”って聞いたら
“じゃあ勉強したほうがいいよ”って
──須藤寿

須藤さんが夏に始めたnoteの記事で、和音について“いつもウットリするのは4度、6度、7度、9度”と触れていましたが、それが今作の楽曲の浮遊感につながってるのかなと思ったんですよ。

須藤 つながってると思いますね。斉藤君と一緒にデモを作る時、今まではお互いインスピレーションでアレンジしてたんですけど、今回はコードやメロディについてかなり話しました。例えばオレは手癖で“フレーズの終わり際にフッと半音ズレたメロディが出てきちゃう”んですけど、斉藤君に“細かいところなんだけど、そこで半音ズラしてボーカルをバックアップしてくれないかな?”と相談したり。だから今作は△7thのところが、より△7th感が満載になってたりするかもしれないですね。

斉藤 “そこ6度!”とか“ここ4度!”っていうワードが飛び交っていましたね。そういう会話ができるようになったのは、音楽を作り続ける中ではすごく良いことだなと思っています。

一聴すると簡単に聴こえるけど、実はかなり凝ったコードを使っているのが髭の独特の雰囲気につながっていますが、同じようにものすごくこだわったコード進行を使っているなと思うロック・バンドがTheピーズなんです。

斉藤 そう! Theピーズはスゴいですよ!

須藤 もうまったく同意! Theピーズが武道館でライブをやる時に、the pillowsの山中さわおさんがそれをバックアップするっていう動画の企画をやっていて、“須藤君と斉藤君も出てよ”って言われたんです。で、“オレと一緒にTheピーズのカバーやってくれない? 曲は何がいい?”って言われて、“オレは大好きな「生きのばし」がいいんですけど、ほかに参加する人も歌いたいですよね?”って聞いてみたんですよ。

争奪戦になりますよね(笑)。

須藤 そしたら、“じゃあ「生きのばし」でいいよ!”ってなったんです。で、歌ってみたんですけど、マジで難しくて。Theピーズって“歌、ギター、ベースの3つのメロディでひとつの音”みたいな、アナログ・ライクな曲の作りをするじゃないですか? だからギターもベースも単体で聴くと、コードがどっちにいってるのかがわからなくて。“こっちだろうな”と、ざっくりフィーリングでカバーしました(笑)。Theピーズの音源ってビートルズ感があるんですよ。“どこいってるんだろう?”って、何度聴いてもわからない。

斉藤 そうなんです。Theピーズは聴く人によって、コードの解釈が全然違ったりするんですよ。ギターはさわおさんとふたりで弾いたんですけど、“あれっ、さわおさんはそっちに聴こえました?”みたいな会話をいくつかしたのを覚えていて(笑)。ベースもポール・マッカートニーよろしくじゃないけど、すごく絶妙なところにいってるから、トータルで聴いた時に単純にはわからないっていう。

須藤 オレね、ハルさん(大木温之/vo,b)と初めて話した時のことをすごく覚えていて。2003年、ライブハウスの打ち上げだったのかな。オレが“あの、髭の須藤っていいます”ってあいさつすると、ハルさんが“へぇ〜、髭君っていうんだ〜”って。

斉藤 (笑)。

須藤 “いや、髭っていうバンドの須藤です!”って(笑)。で、ハルさんに“髭君はどんなバンドが好きなの?”って聞かれて、“ビートルズとか好きです”って答えたんです。そしたら“じゃあ6度だよな”って言われて……。オレ、当時は全然意味がわからなくて。“ビートルズは7度じゃなくて6度だよな〜”みたいなことを言ってて、それが今でも忘れられないんですよね。今は“おいしいところで来てるよね、6度”っていうことなんだと思ってますけど。で、率直に“6度って何ですか?”って聞いたんですよ。そしたら“じゃあ勉強したほうがいいよ”って。……それは愛を持ってですけどね。数年後にハルさんに再会した時にこの話をしたら全然覚えてなかった(笑)。オレが夢見てただけかもしれない!

(笑)。Theピーズの楽曲って感情がハッキリとわからないじゃないですか? それが『ZOZQ』の楽曲と似ているなと感じたんです。

須藤 一緒ですよね。アンサンブルをすごく気にしてるというか。3度や5度を取っていればすごく陽気なロックンロールになるけど、7thとか、6thとか、sus4とかのコードを入れればちょっとアンニュイな感じになる。そういう話をたくさんしたので、今作の曲はよりそれが色濃くなってるんだと思いますね。

では、レコーディングで使用した機材の話も聞かせて下さい。

斉藤 「サブタレニアン・ヘルツェゴビナ」の話になるんですけど、“この曲モズライトっぽくない?”って言われて、調べてみたんですよ。そしたら“1本持っててもいいな”と思って、翌日に買いに行ったという(笑)。Avengerっていう70年代のモデルですね。

須藤 アイゴンさん(會田茂一/2013年に勇退)以来のモズライトだね。今回の音源ができたタイミングでアイゴンさんにも聴いてもらって、後日一緒に食事をした時に“あの曲モズライトでしょ”って言われたんですよ。ピタッと当てて、“さすがっす!!”って思ったな(笑)。

斉藤 モズライトを買った話をアイゴンさんにもしていて、そのあとにアルバムを聴いてもらったんですけどね。“さすがモズ先輩!”と思った(笑)。

すごい(笑)。モズライトのほかには?

斉藤 いつものフェンダーUSAのテレキャスターが多かったですね。「ないものねだり」は日本製のジャズマスターかな。モズライトは終盤のほうに手に入れたので、「サブタレニアン・ヘルツェゴビナ」と「病ム!病ム!」のバッキングで使ったくらい。

アンプはいつものMesa/Boogieですか?

斉藤 そうですね。いつものMesa/Boogie Mark Ⅰで、たまにマーシャル1959SLPをヘッドとしてつないで、Mark Ⅰをキャビとして使いました。今回は普通のダイナミック・マイクとコンデンサー・マイクと、少し離れたところにリボン・マイクも立てていて。それが効いているのか、録った音がカッコ良いんですよ。目の前で鳴ってる音に一番近いような気がしますね。

須藤 実は今回レコーディングしたスタジオに、オレが個別で録れるブースがなかったんですよ。だから斉藤君、宮川(トモユキ)君、勇さんが優先的に録って、“えーっと……須藤君のオーバー・ダビングは斉藤君の家でいいよね?”みたいな(笑)。なので斉藤君の家にテレキャスター・カスタムを持ってレコーディングしに行ったんですけど、結局使ったのは斉藤君のシンラインとかジャズマスターという。それをラインで録ったんですけど、技術の進化がスゴいなと思いましたね。実機のアンプを鳴らすよりもアンプ・ライクな時があったというか。

斉藤 実はレコーディングが始まる直前にPCが壊れて、そのタイミングでMacやProTools、インターフェースなどの宅録のシステムを新しくしたんですけど、ライン録りの音が良くなったんですよ。今回はMesa/BoogieのV-Twin Preampっていうペダルを通して、尖ったところを落として実機のアンプっぽくしようとしたくらいで、須藤のギターは基本ラインの音です。

須藤 プリ管を変えて、自分好みの音がするV-Twinを持って行きました。斉藤君のアンプを使った王道のカッコ良い音と、オレのラインとV-Twinで作ったアンプ・ライクな音と混ぜることで、お互いのキャラクターを際立たせているっていうのはあるかもしれないですね。

最後に、『ZOZQ』リリース後の髭の活動予定を教えて下さい。

須藤 実はもうすでに新曲が2曲できています! 来年のアルバム・リリースを目指したいな。本当は『ZOZQ』の全国ツアーを組んでたんですけど、今回はツアー開催を見合わせることにしたから、願わくば『ZOZQ』と合併したツアーもできたら良いなと思っています。

斉藤 来年アルバムを作るって、けっこう素敵だなと思ってるんですよ。実際に“こんな感じの曲をやったら良いんじゃない?”っていうアイディアがあるので、楽しいんですよね。まだふたりでデモを作り始めるっていうスタート地点に立った状態なので“確実に出します”とは言えないんですけど、出す気満々でいます。

Suto’s Pedalboard

①Pete Cornish/LD-3(ライン・ドライバー)
②KlonCentaur Gold Long Tail Ver.(オーバードライブ)
Plutoneium/Chi-Wah-Wah(ワウ)
④XoticRC Booster(ブースター)
⑤XoticEP Booster(ブースター)

⑥XoticSL Drive(ディストーション)
⑦DemeterTremulator(トレモロ)
⑧PearlAD-33(アナログ・ディレイ)
⑨TC ElectronicPolytune(チューナー)
⑩VooDoo LabPedal Power 2 Plus(パワーサプライ)


須藤のペダルボード。ギターからの接続順は①〜⑧のとおりで、⑨チューナーは①LD-3のチューナー・アウトに接続。①には高品位なプリアンプが搭載されており、先頭につなぐことでギターのピックアップと後続機材との間で起こる電子回路間のインピーダンスのミスマッチを防いでいる。
基本的に②CentaurはGAINツマミをほぼゼロにして、プリアンプ的にかけっぱなし。ベーシックの歪みは④RC Booster。さらに歪ませる際は⑤EP Boosterも踏む。⑥SL Driveは勢いをつけたい時のハウリング専用とのことで、オンにすると音が引っ込むくらいまで歪むという。
③ワウと⑦トレモロは最近導入したもので、③は曲の最後のカオティックな場面で使うそうだ。本機はペダル部分に足を置いただけでオンになるため、“歌いながらでも使いやすかった”のが選んだ理由だという。⑦は「青空」など音源でアコースティック・ギターを使用したフレーズをライブで演奏する際に、トレモロをかけてちょうど良い雰囲気を作るために導入。⑧ディレイは2種類のセッティングが使用でき、ロングとショートをフレーズによって使い分けている。

Saito’s Pedalboard

①Crews Maniac Soundbuffout(バッファー)
②Z.VexFat Fuzz Factory(ファズ)
③Jim DunlopJP95 John Petrucci Signature Cry Baby Wah(ワウ)
④ProCoRAT Ⅱ(ディストーション)
⑤ProCoTurbo RAT(ディストーション)

⑥BOSSFV-300H(ボリューム・ペダル)
⑦Electro-HarmonixMemory Boy(アナログ・ディレイ)
⑧Walrus AudioMONUMENT V2(トレモロ)
⑨MXRScript Phase 90 LED(フェイザー)
⑩strymonblueSky(リバーブ)

⑪XoticEP Booster(ブースター)
⑫EventideTimeFactor(マルチ・ディレイ)
⑬BOSSTU-2(チューナー)
⑭VooDoo LabPedal Power 2 Plus(パワーサプライ)
⑮FREE THE TONEPT-1D(パワーサプライ)


試行錯誤中だという斉藤のボード。ギターからの接続順は①〜⑫の番号順だ。クランチは④RAT Ⅱ、ハイゲインは⑤Turbo RATと、楽曲やフレーズによって踏み分けるという。例えば「GIZMO」ではAメロが④で、ソロで⑤に切り替える。“RATはオルタナでローファイな感じが良い。今まで使っていたオーバードライブだとキレイすぎた”とのこと。
あまり歪んでいない時のソロでは⑪EP Boosterか、ショート・ディレイとして使用している⑦Memory Boyをオン。⑤Turbo RATでガッツリ歪ませてカオティックな状況の時は⑦と⑪の同時踏みで音量を稼ぐこともあるそうだ。②Fat Fuzz Factoryは「MINT」の間奏や、ザラザラしたノイジーな質感が欲しい時に使用。
③ワウは“ジョン・ペトルーシが好きというわけではないんですけど、中低域に引っかかりがあるのがすごく良い”そうだ。⑧トレモロはタップ・テンポが付いていることが決め手となり購入。⑨フェイザーはBOSS BF-2(フランジャー)に変わって導入したが、“もしかしたらコレも変えるかも。でも好きな音ですね”とのこと。
⑩blueSkyはプリセットしているショートのRoomリバーブを単音フレーズにかけることが多く、フワッとさせたい時は深めのセッティングに切り替えるそうだ。⑫TimeFactorは“多機能なものを一回使ってみたかった”という理由で実験的に導入したため、プリセットも組んでいないとのこと。以前はBOSS DD-7がセットしてあり、デジタル・ディレイはパキッとしたディレイ音や効果音的なサウンドを出したい時に使用。

作品データ

『ZOZQ』

Bauxite Music wy./BXWY-025/2020年11月25日リリース

―Track List―

01.GIZMO
02.病ム!病ム!
03.MINT
04.なかよくファビュラス
05.Morning Faces
06.パンケーキの気持ち
07.サブタレニアン・ヘルツェゴビナ
08.ないものねだり
09.ash summer
10.Surfin’ JPN

―Guitarists―

須藤寿、斉藤祐樹