最新作『Daddy’s Home』についてたっぷり語ってくれたインタビューをお届けしましょう! アコースティック・ギターとエレクトリック・シタールを効果的に使った意図や、ポール・マッカートニーとの貴重なエピソードまで語ってくれた。そして何より、その言葉の端々から、生粋のギター好きということがおわかりいただけるはずだ。キュートでカッコ良い現代最高峰のギター・ヒロインが紡ぐ言葉を、ぜひ最後まで読んでみてほしい。
インタビュー/翻訳=トミー・モリー 質問作成/文=福崎敬太
私はギターが大好きだし、1日中喋っていられるわ!
私たちは日本のギター専門メディアですので、今日はたっぷりとギターについてお話を聞かせて下さい。
もちろんよ! 私はギターが大好きだし、1日中喋っていられるわ!
最新作『Daddy’s Home』はお父さんが所有しているレコードから着想を得たそうですが、インスピレーションの元となった作品にはどういったものがあったのですか?
ニューヨークのダウンタウンで71~76年頃に作られたアルバム、例えばスティーリー・ダンの『The Royal Scam』(1976年)や『Pretzel Logic』(1974年)、あのアルバムはなんだっけ……『Can’t Buy a Thrill』(1972年)だわ! ほかにもスティーヴィー・ワンダーの『Innervisions』(1973年)と『Talking Book』(1972年)、『Fulfillingness’ First Finale』(1974年)、あとはスライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバムにも影響を受けたわね。
アルバム全体をとおして、アコースティック・ギターとエレキ・シタールの使い方が印象的です。まずアコギは、本作でどのような役割を担っていますか?
このアルバムでのアコースティック・ギターは、おもに“テクスチャーを出すための楽器”と言えるでしょうね。リズム楽器のようにも機能しているし、かなり静かに使っているところもあれば、フレットに弦が触れる時のノイズを入れてみたり、木材が空気を直接揺らすような感じを表現していたりもする。そしてギターと一緒に“部屋の音”をマイクで録音しているようなところもあって、アコースティック・ギター然としたサウンドをストレートに伝えているわけではないかもしれないわね。
今話が出ましたが、左手がポジション・チェンジする時のノイズまで芸術に落とし込んでいると感じました。「Live In The Dream」でギター・ソロのあとの歌裏で聴ける、アコギが左右でスクラッチするような音は、全体のアンサンブルの立体感や臨場感を際立たせています。こういった、プレイやサウンドメイク以外のアイディアはどのように思いつくのですか? それとも偶然に生まれるのでしょうか?
実験的にやってみて、直感的に“これはイケる!”と思ったものを信じて残しておいたのよ。このアルバムのサウンドはリアルタイムにプレイしたものだけで、コピー&ペーストしたものなど一切ないわ。弦を擦るそういった音は、部屋の空気感がしっかりと伝わるものになるし、まるで隣で誰かがギターを弾いているかのような雰囲気にしてくれている。生々し過ぎてそういった部分を取り除いてしまうような人もいるかもしれないけど、リアルに感じられるからこそ残しておいたの。
ポール・マッカートニーがあのソロを気に入ったと言ってくれたの!
エレキ・シタールはどのようなエッセンスになっていますか?
エレクトリック・シタールはディストーションの効いたビッグなサウンドの代わりを果たしてくれているわ。ハイエンドの質感やビビるようなサウンドが特徴で、同じフレーズをプレイするにしても軽やかに聴こえてくるの。「Down」のリフなんかは、昔の私だったらビッグでヘヴィなギターでプレイしていたと思うわ。でも、今回はそういったものをすべてエレキ・シタールでプレイすることによって、軽快で躍動感があるものに仕上がっている。遊び心がある一方で皮肉っぽさもあり、それでいてサイケデリックな感じももたらしてくれたわ。
シタールのサイケな雰囲気もあり、「Live In The Dream」のソロのハーモニーなど、ビートルズのサイケデリックさを現代的にアップデートしたかのような雰囲気を感じました。「Melting Sun」のソロでの浮遊感のあるチョーキングも、ジョージ・ハリスンのスライドに近い匂いがあるというか。あなたのギターの中でビートルズのサウンドに影響を受けた部分はあるのでしょうか?
ジョージ・ハリソンのプレイは大好きよ。メロディックなプレイヤーで、彼のギター・プレイってすべて歌えるものばかりでしょう? 私がギターのパートを練る時ってボーカル・パートをアイディアの出発点としてギターでインプロヴァイズすることもあるから、そういう点では近いものがあるのかもしれない。ジョージのギターが作るメロディ・ラインは記憶に残るし、そのすべてが歌えて、強烈な存在感を持っている。私がリフをプレイする時も、彼のギターくらいに記憶に深々と残るものにさせたいと思っているわ。
ビートルズといえば、各メディアから頻繁に聞かれていると思いますが、ポール・マッカートニーとの「Women and Wives」でのコラボレーションも素晴らしかったです。
そうなのよ! ありがとう!
ギター・ソロはすごく生々しいロックなサウンドです。ポールからの反応はどうでしたか?
ポールはあのソロを気に入ったと言ってくれたの! 直接電話をくれたのよ。“バック・グラウンド・ボーカルも気に入ったのだけど、ギター・ソロもかなり気に入ったよ。あれも君がプレイしたの?”と言われて、私は興奮して“そうよ、ポール! 全部私1人でやったのよ!”って感じだった(笑)。あの瞬間に勝るものなんてないし、この喜びはうまく言葉にできないわ。自分がビートルズのメンバーと直接話したことも、ポールが今回の曲だけじゃなくて私が作ってきたほかの楽曲を聴いてくれたなんて信じられなかった。そして彼の作品に自分が参加できたこと、これらのすべてをどう表現したら良いのか、いまだにわからないわ。