Interview | 丸山康太&大久保仁(踊ってばかりの国) 『moana』で到達した究極のサイケデリア Interview | 丸山康太&大久保仁(踊ってばかりの国) 『moana』で到達した究極のサイケデリア

Interview | 丸山康太&大久保仁(踊ってばかりの国)
『moana』で到達した究極のサイケデリア

踊ってばかりの国が、約1年半ぶりとなる新作『moane』をリリースした。2017年に丸山康太(ex.ドレスコーズ)と大久保仁が加入し、トリプル・ギター体制になったバンドは独自の進化を遂げ、ギター・ロック・ミュージックのレベルを引き上げ続けている。特に前々作『光の中に』、そして前作『私は月には行かないだろう』は、個人的には日本の音楽史に輝く名盤だと断言してもいいくらい、その完成度の高さに驚かされた。もちろん今作『moana』も素晴らしい出来。1年という長い制作期間で丸山と大久保のギター・アンサンブルに変化が起こり、ジャズ、ボサノヴァ、レゲエ、ブルース、サイケデリック……あらゆるジャンルを飲み込んだ唯一無二のサウンドに進化した。今回その変化を深堀りすべく、ギター・マガジンでは初となる2人のインタビューをお送りする。さらに2021年6月9日(水)に下北沢440で行なわれた、丸山康太&大久保仁ツーマン「Nature & Future」での使用機材もご紹介しよう。

取材・文・機材撮影=小林弘昂


ロックがやりたいけど、
誰かが過去にやったやり方じゃ面白くない。
──丸山康太

丸山康太

丸山さんはなんとドレスコーズ以来約9年ぶり、仁さんはギター・マガジン初登場となりますので、まずはギターを始めた頃の話から聞かせて下さい。最初にギターを弾いたのはいつ?

大久保 オレは12歳の時ですね。バンドをやっていた父親の影響で。当時は好きな曲をただ弾いて楽しんでたので、練習らしいことはしなかったです。コードを覚えたくらいかな。

丸山 僕は14歳くらいです。仁と同じで、父親の影響で。最初は映像を観て、音楽を聴いて、それに合わせて弾いて。で、コードとかを覚えて……という感じで(笑)。

2人の一番好きなギタリストって?

大久保 難しいな……。

丸山 うーん……。

なかなか難しそうですね(笑)。

大久保 毎日コロコロ変わるので(笑)。

じゃあ今日の気分では?

大久保 うーん……(笑)。

(笑)。昨年、ギター・マガジン2020年7月号の企画で日本の名盤を選んでいただいた時に、裸のラリーズをあげていましたよね?

丸山 はい。それはもう絶対ですね。

裸のラリーズの好きなところは?

丸山 うーん……。

(笑)。丸山さんは高柳昌行さんなど、ジャズも好きですよね?

丸山 大好きですね。憧れています。

以前はジャズ・ギターを習っていたとのことで。

丸山 そうなんです。沖縄の友寄隆哉さんという先生に何年か。ギターを始めた頃はギター・マガジンとかを買って、それを見ながら独学でやっていたんですけど、“ジャズやりたいな”と思って、その方に習ってましたね。ほかにも習っていた先生はいっぱいいるんですけど。

丸山さんのプレイって、楽曲ごとに必ずドキッとする部分があるんですよ。例えばいきなり不協和音を突っ込んできたり。そういう部分は意識して弾いているんですか?

丸山 そうですね。ジャズが好きだからというのもありますし、ロックがやりたいけど誰かが過去にやったやり方じゃ面白くないというか。だから、そこはこだわりがあるほうですね。聴いたらすぐに誰が弾いてるかわかるギタリストが好きなので、そういう風になりたいなと思って色々と試したりしています。……最近はブルースが好きなんですよ。

大久保 今日はブルースの人だ(笑)。好きなギタリストは?

丸山 ハウリン・ウルフの右腕だったヒューバート・サムリンがすごく好きです。仁の今日の好きなギタリストは(笑)?

大久保 ピーター・グリーンですね。

最高ですね(笑)。仁さんはボーカルのうしろでずっと歌うようなアルペジオを弾くという独特なスタイルですが、どうやって身につけたんですか?

大久保 グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシアとか、サイケなバンドにすごくハマって。そういう自分の好きなものを集めて、それを自分の中で解釈して、なるべく他人と同じにならないように意識しています。

今作『moana』を聴いて、2人のギターがかなり似てきたなと思ったんですよ。前作までは丸山さんがドライなサウンドでベーシックを担当し、仁さんがウェットな上モノ担当のような印象もありましたが、今回は丸山さんがエフェクトを多用して、よりサイケな仁さん方向に歩み寄ったような気がします。

丸山 あぁ〜。歩み寄ったという感じよりも……どうなんだろう? でも、ディレイとかのエフェクターはいっぱい使いましたね。ボーカルとギターがぐわっと絡み合って進んでいくのが理想なんです。

綿密に計算された部分がありつつ、セッション感も増したようにも感じました。

大久保 まず最初にベーシックで勢いよく全員分録って、そこで良かった部分は残すんです。で、そのあとさらに音を重ねたりもしたんですが、一発録りの勢いは残ってる気がしますね。「ひまわりの種」は2、3回重ねたのかな。

丸山 レコーディングは伊豆スタジオでやったんですけど、そこのエンジニアの濱野(泰政)さんがずっと付き合ってくれて。“こうしてみよう”とかアイディアを全部提案してくれたので、到達するまでがすごく早かったですね。

大久保 録ってみれば早かったよね。

丸山 うん。録る前が難航してたっていうか……。

ちなみに、丸山さんはレコーディングで同じフレーズを弾かないという噂を聞いたのですが……。

丸山 いや、そんなことはないです(笑)。自分なりに組み立ててますよ。今回のアルバムを作ってる時に仁と話したんですけど、イントネーションとか、そういうところに気を遣うようになってきました。仁のギターに感化されて、特に意識して。そういうのがすごく楽しかったですね。

大久保 今回はコロナでライブがなくなって制作の時間があったので、それが大きいかもしれないですね。時間をかけて作り上げることで、お互いのやりたいことがハッキリ見えてきました。

アルバムの制作はいつから始まったんですか?

丸山 ちょうど1年前にGOK SOUNDというスタジオでレコーディングし始めて、まずシングル(「Orion」と「ひまわりの種」)を出したんです。

大久保 そこから曲が溜まっていって、年明けにアルバムをレコーディングしました。今年の2月くらいかな。

曲作りについてもお話しを聞かせて下さい。まず下津(光史/vo,g)さんが弾き語りで原型を持ってきて、そこからスタジオで全員でアイディアを出していくというやり方ですよね。楽曲によってバラバラだとは思いますが、1曲どのくらいの時間で形になるものなんですか?

大久保 2回くらいスタジオに入れば形にはなるんですけど、それを1回壊して違うグルーヴにしたり、そういう作業にけっこう時間がかかりますね。オレ的にはレコーディングが終わってやっと最終形になるみたいな感覚です。

下津さんが作る楽曲って、弾き語りの段階で下津さんの歌とギター1本で成り立つくらい完成されてると思うんです。そこに新たにギターを付け足す時に、自分なりのルールみたいなものってありますか?

大久保 オレはボーカルに寄り添ってギターを歌わせる、みたいなイメージでフレーズを付けていってますね。

フレーズはギターを弾きながら考えるんですか? それとも頭の中でイメージして?

大久保 頭ですね。頭で鳴っている音に体がついてくるのが一番良い感覚だなと思っているので。

丸山さんは?

丸山 仁とほとんど同じで、“歌とどう関わっていくか”を考えていますね。今までは下津君の弾き語りのコードに対して、ギターのメロディをどこに向かわせようかと考えてたんですけど、今回はメロディの動きにもっと焦点を当てていて。コードが流れていったら、その逆の動きをするというか。そういうのにこだわりましたね。歌と同じ動きをして、そのちょっとあとにメロディを動かす、みたいなことがやりたくて。

なるほど、メロディの動きを意識すると。丸山さんのフレーズって、リズムに敏感に反応しているようなイメージがあるんです。

丸山 あっ、そうかもしれないです……! リズム隊が最高なので、もうドラムばっかり聴いていて。

大久保 リズム隊はすごく安心感がありますね。だから心置きなくメロディ・ラインが考えられるんです。

今作はギター・フレーズがすごく厳選されていますよね。なるべく多くを弾かず、1音ごとの余韻を大事にしているというか。

丸山 そうですね。影で良い仕事をしたいなと思って(笑)。やっぱり楽器が多いから、そうしたほうが面白くなるかなと。それがやりたいがために、1回形になったものを崩したりしてるのかなと思いますね。

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