Interview|J・マスキス(ダイナソーJr.)リイシューもされた相棒=58年製テレキャスターを語る! Interview|J・マスキス(ダイナソーJr.)リイシューもされた相棒=58年製テレキャスターを語る!

Interview|J・マスキス(ダイナソーJr.)
リイシューもされた相棒=58年製テレキャスターを語る!

オルタナティブ・ロック・シーンを代表するバンド、ダイナソーJr.。そのフロントマンであるJ・マスキスが90年代からレコーディングで愛用している58年製のテレキャスターが、このたびフェンダーからシグネチャー・モデル“J Mascis Telecasterとして発売されることに。今回特別に、J本人からシグネチャー・テレキャスターのこだわりを聞くことができた。

質問作成・文=小林弘昂 翻訳=トミー・モリー 協力=フェンダーミュージック

Fender / J Mascis Telecaster

リード・ギターのほとんどが
58年製テレキャスターによるものだ。

これまでのインタビューで“レコーディングの時はリードで1958年製のテレキャスターを使った”と何度も話していましたが、まさかブルー・スパークル・カラーだとは思いませんでした。

 これはオレが初めて手に入れたテレキャスターで、常にプレイしてきたものでね。オレが手に入れた時点ですでにリフィニッシュされていたから、何のためらいもなく90年代に現在の色にリフィニッシュしたんだ。

購入した時点でリフィニッシュされていたとのことですが、その時はどんなカラーだったのですか?

 最初は黄色っぽいブロンドにリフィニッシュされた状態だったね。今のブルー・スパークルはバイクなんかのペイントをしている人に頼んでやってもらったんだ。こういった作業って、クリアを吹いてからしばらく時間を挟んでバフがけするものだろう? スパークルをカバーするのに十分な量のクリアコートを得るため、その作業を何度もくり返してくれたから、6ヵ月ぐらいかかったんだ。

以前発売されたあなたのシグネチャー・ジャズマスターもパープル・スパークル・フィニッシュでしたよね。スパークル・フィニッシュの魅力とは? 

 それはドラムからきていると思うんだ。ドラムを始めた頃のオレは、ブルー・スパークルが好きだったんだよね。このテレキャスターは最初、ボディの前面だけをグレッチのドラムみたいなブルー・スパークルに塗ったんだ。あのドラムの色がずっと好きでね。そして何年か後に全体を塗ったというわけさ。

鏡面のクローム・ピックガードもあなたが交換したのですか? 

 そう。これはオレが購入してから取り付けたんだ。プラスチックだけどミラーっぽいものだね。ボディのスパークルと組み合わせるなら、グッドなルックスだと思ったんだ。これ以外のグレイトなルックスのピックガードは考えられなかったんだよ。

58年製は『Where You Been』(1993年)のレコーディングでも使用したそうですね。最初に使ったのはいつ頃?

 最初に使ったのは、オレにとって2回目のプロデュースとなったバッファロー・トムと仕事をした時だったと思う(『Birdbrain』/1990年)。スタジオにこのギターが置いてあって、手に取って弾いてみたらとても気に入って、好きになってしまった。それで所有者に“売ってくれないか?”と頼んだんだが、“それはちょっと無理な相談だ”と断られちゃってさ。でも、その数ヵ月後に電話をもらって、譲ってもらえることになったんだ。

ちなみにおいくらで……?

 たしか1,400ドルだったね。

それは破格ですね(笑)。今回あなたの代名詞であるジャズマスターではなく、テレキャスターを製作することにしたのはなぜでしょう?

 オレがこのテレキャスターについて、ことあるごとに方々で口にしてきたからっていうのがあるね。“レコーディングで常に弾いている、あのテレキャスターを作ってみないか?”と言われたんだ。そしてオレは“イエス!”と答えたってわけさ。

あなたはこれまでにSquire製のシンラインをライブで使用していましたし、最近ではカスタムショップ製のパープル・スパークルのシンラインも手に取っていますよね。テレキャスター・タイプの好きなところは? 

 ジャズマスターとは異なるプレイをさせてくれるギターだ。サウンドもちょっと異なっているし、テレキャスターのほうが上手くいく曲っていうのもあるんだよ。トレモロ・アームが付いていないっていうのも大きくて、それによってジャズマスターとは別のフレーズを弾くようになるんだ。

4曲目の「I Ran Away」でカスタムショップ製のシンラインを使用している。

トレモロ・ユニットが付いていないことで、無意識に右手がアームを探してしまうことはありますか?

 それはないかな。テレキャスターを持つ時は、この灰皿みたいなブリッジ・プレートに手を固定している。掴みながら弾く感じが基本のスタイルなんだ。

テレキャスターにブライトでトゥワンギーなトーンを求める人もいますが、あなたはどのようなサウンドを求めているのでしょう?

 オレはトゥワンギーとまではいかないかな。テレキャスターを選ぶ時は、ロックンロールやヘヴィなトーンを求めることが多いんだ。「Start Choppin’」のイントロみたいなファンキーなトーンが欲しい時も多いかな。

レコーディングで、ベーシックではレス・ポール・ジュニアやSGジュニアを使い、リードではテレキャスターという組み合わせが多いですよね。 

 最近の楽曲だと、「I Walk For Miles」のようなストーナー・ロックっぽいサウンドが欲しい時にテレキャスターがバッチリだと思うんだ。自分でもなぜだかわからないけど、そういうトーンを出したい時はギブソンではなくテレキャスターで挑むことになるんだよね。

新作『Sweep It Into Space』でも使用していますよね。58年製でレコーディングした楽曲の中で、最も思い入れのあるものは? 

 さっきも話した「Start Choppin’」のイントロとリード・ギター。「Get Me」のリズム・ギター。そして「Feel The Pain」のリズムとリード。これらはまさしくテレキャスターっていう感じのサウンドだ。「Almost Ready」なんかもそうだね。リード・ギターのほとんどが58年製によるものだ。

このギターを手に入れてから
メイプル・ネックが好きになったよ。

ボディ裏にストリング・ホールがなく、弦をブリッジ・プレートのエンドから通すトップローダー仕様。58年製の特徴である。

このギターの最も特徴的なところはトップローダー・ブリッジだと思います。これにより弦の張力が下がり、独特のアタック感につながっていますが、どういう印象ですか?

 こっちのほうが好きかな。ボディを貫通する従来のタイプのテレキャスターも何本か持っているけど、トップローダーのほうがベンドしやすく感じるよ。“サステインが短い”と言う人たちがいるけど、オレはこのブリッジと裏通しタイプを比べたわけでもないし、そこのところはわからない。それにオレのサウンドは、たいていBig Muffなんかのペダルを踏んでサステインが常にある状態だから、ギター本体のサステインが減ってもそこまで問題にはならないんだ。そもそも初めて手に入れたテレキャスターがこれだったから、そういうものだと思ってやってきたところがある。持っているほかのテレキャスターも可能な限りトップローダーのブリッジに交換しているよ。

あなたはジャズマスターの弦高をとても高く設定していますが、テレキャスターの弦高はどのように? 

 こっちはそんなに高くはないんだ。でも、1弦だけちょっと高めになっているね。自分でもどうしてかわからないが、弦高が高いのはジャズマスターだけの話なんだ。なぜだかそれがシックリくる。ほかのギターの弦高は低いものが多いね。

テレキャスターは指板面のラウンド具合に沿う形で弦高を設定していますか? それともジャズマスターと同じように、平面的に近い形で弦の高さを調整していますか?

 感覚的に調整しているから、まったくわからないな。誰かに指摘されたことがあるんだが、どう調整しても最終的に1弦が高くなってしまうんだ。一般的なプレイヤーだと基本的に1弦が最も低くなるはずなのにね。1弦以外だと、オレはあまり高さについてこだわったことがないかな。

シグネチャー・テレキャスターのピックアップは58年製のサウンドを再現したとのことです。50年代後半のテレキャスターはとてもパワフルな印象がありますが、このギターはどのようなサウンドになりましたか? 

 58年製を購入する時、前の所有者は“56年製のピックアップを取り付けた”と言っていた。オリジナルのものが壊れてしまったからなのか、56年製のものを気に入ったからなのかはわからないけどね。オレはこのサウンドを気に入っているけど、それ以外のことについてあまり考えたことがないんだ。

そうだったんですね。

 オレのテレキャスターはなぜかそこまでトレブリーじゃなくて、それはこのパワフルなピックアップに起因しているのかもしれない。P-90にかなり近い印象だ。ライブで使っているテレキャスターにはSeymour Duncan Custom ShopのBG1400を搭載させていて、これはフィルタートロンとP-90の間のようなサウンドらしいんだよね。ハムキャンセリング効果もあって、オレがライブで使うテレキャスターには必ず搭載させている。ダークでヘヴィなサウンドなんだ。

テレキャスターのピックアップは基本的にブリッジ・ポジションを使っているようですが、レコーディングでネック側やミックス・ポジションを使うことはありますか?

 基本的にブリッジ側を使っているけど、「Start Choppin’」のイントロではネック・ピックアップを使ったよ。クリーンで丸みを帯びたサウンドが欲しい時はネック側にすることもあるんだ。でも、基本的にはブリッジばかり使っているね。ジャズマスターみたいにミックス・ポジションで弾くことはほぼないな。

今回のシグネチャー・テレキャスターとフェンダー・アンプのセットアップで行なわれたダイナソーJr.のライブ。「Start Choppin’」、「Feel The Pain」、「I Ran Away」を披露。

テレキャスターでレコーディングを行なう際は、どのような機材を組み合わせるのでしょう?

 アンプはVOXのAC15、もしくはAC30だね。テレキャスターではTone Benderをよく使うし、最近だとRangemasterも使うようになったけど、やっぱりレコーディングでBig Muffの出番はないな。

1ピースのメイプル・ネックはトレブリーでアタックが強いという印象がありますが、あなたのシグネチャー・テレキャスターにもネックに由来するアタック感の強さを感じますか?

 それはあるね。このギターを手に入れてからメイプル・ネックが好きになったよ。ローズウッド指板よりもベターなサウンドだと思うんだ。最近作ってもらったジャズマスターの何本かにはメイプル指板のネックを付けていて、かなりクールなサウンドになっている。ジャズマスターのメイプル指板ってオリジナルには存在していないけど、オレは気に入っているよ。

シグネチャー・モデルを作るとなると、オリジナルの仕様にはないものを付け加えるミュージシャンもいますよね。

 それはなくて、とにかくコピーしてもらうことだけを頼んだかな。むしろ何も変えたいと思わなかったんだ。

完成したシグネチャー・テレキャスターを実際に弾いてみて、どのような感想を抱きましたか? 

 最初に受け取ったヤツはかなり重くて好きになれなかったんだ。でも、そのあとに作ってもらった2本目のプロト・タイプはオリジナルにかなり近くて満足したよ。

もしツアーに出るとなったらこのシグネチャー・テレキャスターを持っていくのでしょうか?

 うん。多分持って行くことになるだろうね。

このシグネチャー・モデルはどのような人に手にとってほしいですか?

 すべてのギター・プレイヤーに手にして欲しいさ(笑)。少なくともテレキャスターが欲しい人なら、一度はトライしてもらいたいかな。そして気に入ってもらえたら嬉しいな。

Fender
J Mascis Telecaster

【スペック】
BODY
Body Material: Alder
Body Finish: Gloss Polyester
Body Shape: Telecaster®

NECK
Neck Material: Maple
Neck Finish: Road Worn® Nitrocellulose Lacquer
Neck Shape: “C” Shape
Scale Length: 25.5″ (648 mm)
Fingerboard Material: Maple
Fingerboard Radius: 9.5″ (241 mm)
Number of Frets: 21
Fret Size: Jumbo
Nut Material: Synthetic Bone
Nut Width: 1.685″ (42.8 mm)
Position Inlays: Black Dot

ELECTRONICS
Bridge Pickup: J Mascis Custom ’58 Tele® Single-Coil
Neck Pickup: J Mascis Custom ’58 Tele® Single-Coil
Controls: Master Volume, Master Tone
Switching: 3-Position Blade: Position 1. Bridge Pickup, Position 2. Bridge and Neck Pickups (Out of Phase), Position 3. Neck Pickup
Configuration: SS

HARDWARE
Bridge: 3-Saddle Vintage-Style Topload Tele® with Barrel Brass Saddles
Hardware Finish: Nickel/Chrome
Tuning Machines: Vintage-Style
Pickguard: 1-Ply Mirrored Chrome
Control Knobs: Knurled Flat-Top
Switch Tip: Black
Neck Plate: 4-Bolt

MISCELLANEOUS
Strings: Fender® USA 250R Nickel Plated Steel (.010-.046 Gauges), PN 0730250406

ACCESSORIES
Case/Gig Bag: Included: Deluxe Gig Bag

【価格】
165,000円(税込)

【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp