このアルバムはある意味
ファミリーで作った感じさ。
前作と同じトリオ・メンバーではありますが、パンデミックいうことでレコーディングの雰囲気は違いましたか？
最初のレコーディングはニューヨークのブルックリンで行なったんだけど、そのあと僕と妻は家を借りて静かな場所で過ごそうということになって、去年の6月、一時的にテネシー州のナッシュヴィルに引っ越したんだ。そのあと秋に実際に作業をすることになって、ナッシュヴィルのスタジオにデイヴ、ホルヘ、そしてプロデュースをしたアルマン・ヒルシュらを呼んで、本格的な制作が始まった。
僕らはマスクをして互いに距離を取り、ヘッドフォンもせずに、ライブのようにプレイした。だからエネルギーの強さは変わらなかったと思う。とはいえ環境の変化は大きかったよ。
ちなみに前作のレコーディングは約1日半で、ほとんどが1テイクだったそうですね。今回は？
4日間だったね。ただ、1日目は録音することなく終えたんだ。2日目から“アルバムが何を必要としているか”ということを焦点にしてレコーディングしていった。今回もほとんどが1テイクみたいなもので、収録曲のほとんどは3日目までに録り終えて、4日目は日本盤ボーナス・トラックを録音するだけだったよ。
今作はブルーノートからの第1弾です。あなたが参加した、ネルス・クライン（g）によるThe Nels Cline 4’s名義の『Currents, Constellations』（2018年）、それにチャールス・ロイド（ts）の80歳のバースデイ・コンサートを収録した『8 : Kindred Spirits』（2020年）はブルーノートからでした。それが縁でつながったのでしょうか？
その通りだよ。その2作品がブルーノートと組むための道筋を作ってくれていたのだと思う。それに、レーベル・オーナーのドン・ウォズを長年リスペクトしてきたんだ。彼と友人になれたことをとても幸運だと思っていて、その時、偶然にも次のアルバムを作ることを考えていたんだ。そういった事情がうまい具合に組み合わさったということだね。
プロデュースですが、Mac Avenue3部作の第1弾『Arclight』（2016年）と第2弾『Modern Lore』（2018年）はジェシー・ハリスで、前作の第3弾『Love Hurts』はセルフ・プロデュースでした。今回はあなたの妻であり、シンガーソングライターのマーガレット・グラスピー、それにあなたのソロ・ギター作『World’s Fair』（2015年）のエンジニアを務めていたアルマン・ヒルシュの2人となっています。その理由は？
『Love Hurts』はほとんどがカバー曲だったから、僕は曲を揃えたり、メンバーと一緒にアレンジすることが主な役割だった。でも自作曲となると、全体像をしっかりと見据えた人に“今のはグッドだったけど、こういったところに気を付けてもう一回やってみたほうがいいんじゃない？”とか、“もうそれ以上プレイしなくてもいいんじゃないかな？”と言ってもらえれば、僕はギターを弾くだけで済むだろう（笑）？
マーガレットはスピリチュアルなガイド役って感じで、“今のは違う、あなたはそれが欲しいなんて言ってなかったでしょ？”とアドバイスをくれたりして、僕は“わかったよ、敵わないなぁ……”って感じさ（笑）。それに、彼女は僕を単なるジャズ・ギタリストとしてではなく作曲家として見てくれている。それは重要だったよ。
一方のアルマンはテクニカル・プロデューサーという感じで、彼に“ちょっと異なる質感のリバーブが欲しいんだ。50年代っぽいサウンドのね”と言うと、“じゃあツイード・アンプを使って、リバーブはこうしよう”みたいに、機材に関することならなんでも相談できる。ギタリストの視点から、僕が求めていることを理解して的確に指示してくれたんだ。
あと、エンジニアを務めてくれたマーク・カデルの存在も大きかった。このアルバムはある意味ファミリーで作ったような感覚なんだ。僕ら3人でプレイし、残りの3人でアルバムを作ってもらったような感じでさ。素晴らしい経験になったよ。
『ギター・マガジン2021年8月号』
特集：ジョン・メイヤー
本記事はギター・マガジン2021年8月号に掲載されたインタビューを再編集したものです。
作品データ
『Squint』
ジュリアン・レイジ
ユニバーサル／RCCQ-1142／2021年6月11日リリース
―Track List―
01. Etude
02. Boo’s Blues
03. Squint
04. Saint Rose
05. Emily
06. Familiar Flower
07. Day & Age
08. Quiet Like A Fuse
09. Short Form
10. Twilight Surfer
11. Call Of The Canyon
12. Granada（日本盤ボーナス・トラック）
―Guitarists―
Julian Lage
