Interview|ジュリアン・レイジ名門ブルーノートでの制作について(後編) Interview|ジュリアン・レイジ名門ブルーノートでの制作について(後編)

Interview|ジュリアン・レイジ
名門ブルーノートでの制作について(後編)

大きな部屋で録音したから
出力のあるギターが必要だった。

使用した機材についてですが、ギターは前作『Love Hurts』ではグレッチ製デュオ・ジェットをメインに、曲によっては54年製ブラックガード・テレキャスターを使っていましたが、今回は?

 メインはコリングス470JL。僕のシグネチャー・モデルなんだ。グレッチに似ているけど、大きな違いはダイナソニックのピックアップを搭載しているところだね。あと穴は空いていないけれど、ホロウ構造なのもお気に入りだ。

 数曲で55年製のレス・ポールも使った。全曲をテレキャスターでプレイすることもできたけれど、僕にとってテレは小さな場所でプレイする時にぴったりでね。狭い空間ならサウンドが生き生きして、僕はたまらなく好きだけど、今回はコロナが感染拡大している状況だったから、かなり大きな部屋で録音することになった。だから出力のあるギターが必要だったんだ。スピーカーをカタカタと揺らしてしまうくらいのね。

 レス・ポールは出力が大きいし、コリングスなんて僕のテレキャスターの2倍くらいの出力だよ。でも音響的に似ているのも否定しないし、クリーンなサウンドではテレとよく似ていると思う。ただ、ほんの少しドライブさせたいと思った時に、上手い具合に歪みを作れるところがポイントかな。

アンプは、前作ではギブソンの1950年代製のBR-6でしたが。

 今回はカリフォルニアのマイク・ムーディーというビルダーが運営しているMagic Amplificationのヴァイブロ・デラックスが多かった。これは基本的にブラック・パネル期のデラックスを模したアンプなんだ。あと「Squint」などでは59年製のツイード・チャンプも組み合わせて使った。ほかにもヴァイブロ・デラックスで録音しておいて、あとでリアンプしてブレンドし直した音もあったと思う。

エフェクターはどんなものを?

 StrymonのFLINTによるリバーブと、あとShin-eiのAPIのプリアンプみたいなクリーン・ブースター、B1Gを使ったね。これはEQ的に高域のレンジを持ち上げてくれるもので、ラウドかつクリアなサウンドを作れるんだ。アンプをラウドに鳴らすと倍音が豊かで美しい音になるけど、B1Gを使うとそれがかなり良い具合にブーストされるんだ。

 それだけじゃなく、実機のAPIプリアンプそのものみたいで、音が鈍くなくなる。ギターってそもそも鈍くて、マイク・プリアンプのNeveみたいな暖かみがあって、スローなレスポンスの楽器だよね。でもB1Gはそれをちょっと早くしてくれるっていうのかな? とにかくこの2つを使ったね。

「Saint Rose」でのギター・サウンドはほかよりも歪んでいますが、あれはB1Gによるものですか?

 うーん、もしかするとアンプそのものだけでラウドにしていたかな。あと「Saint Rose」ではレス・ポールをプレイしたことが隠し味になっているかもしれない。ペダルを使わなくても、あのギターならヴァイブロ・デラックスのスピーカーを揺らしてディストーションを生み出してくれるんだ。プリアンプによるディストーションとはまた別の類のものだからね。あのサウンドはお気に入りだよ。

ところで、ステイホームの時はどんな生活を送っているのでしょうか。

 僕は教えることがとても好きで、その機会をたくさん持つようになったね。これってミュージシャンの責任でもあると思うんだ。もちろん、誰もがしなければならないとは言わないけど、僕自身グレイトな人たちから学んできて今の自分があるからね。でも何年か前に、ツアーやレコーディングに重きを置きたいのと、家にいる時くらいは家族との時間を大切にしたかったのもあって、教えるの止めてしまったんだ。でも、ロックダウン期間にはそれを再開できたよ。

 そしてもちろんギターも練習し続けたし、曲も書くようになった。こんなにもロードから離れたのは子供の頃以来だけど、無事に過ごしてこられたことを幸運に思うよ。それでいてとても生産的に過ごせたから、もはやボーナスをもらったくらいにさえ思えるね(笑)。

今日はありがとうございました。あなたがまた来日できる日を心から楽しみにしてます。

 僕だって日本でプレイするのが本当に待ちきれないんだ。日本に行く時はぜひ会いに来てくれよ。そしてそれまで安全に過ごすんだよ。バイバイ!

『ギター・マガジン2021年8月号』
特集:ジョン・メイヤー

本記事はギター・マガジン2021年8月号に掲載されたインタビューを再編集したものです。

作品データ

『Squint』
ジュリアン・レイジ

ユニバーサル/RCCQ-1142/2021年6月11日リリース

―Track List―

01. Etude
02. Boo’s Blues
03. Squint
04. Saint Rose
05. Emily
06. Familiar Flower
07. Day & Age
08. Quiet Like A Fuse
09. Short Form
10. Twilight Surfer
11. Call Of The Canyon
12. Granada(日本盤ボーナス・トラック)

―Guitarists―

Julian Lage