Interview|あやぺた(Dizzy Sunfist)多様な経験から生まれた表情豊かな最新作 Interview|あやぺた(Dizzy Sunfist)多様な経験から生まれた表情豊かな最新作

Interview|あやぺた(Dizzy Sunfist)
多様な経験から生まれた表情豊かな最新作

問答無用に拳を突き上げてしまうパンク・サウンドと、聴き手の耳をつかんで離さないキャッチーなメロディ・ラインで、全国のライブハウスに熱狂を巻き起こしているDizzy Sunfist。3年9ヵ月ぶりの新作『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』は、コロナ禍による活動制限や苦楽を共にしてきたメンバーの卒業などを乗り越えて誕生した1枚で、表情豊かなメロディック・パンク・ナンバーで彩られた快作に仕上がっている。エモーショナルなギターをラウドに響かせるあやぺた(vo、g)に、アルバム制作を振り返ってもらった。

インタビュー/文=尾藤雅哉(SOW SWEET PUBLISHING) 機材解説=福崎敬太

“子どもが産まれてもバンドやれてるやん!”って思いました

10月のライブではギターのストラップがはずれてステージから派手に落下していましたが……大丈夫でしたか?

 いや、ネックが折れちゃいましたね……(苦笑)。ライブでいつもやっている“ギターを頭の上に掲げてからパッと手を離す”というアクションをやった時に、その日に限って突然ストラップがちぎれてしまって。次のライブも控えていたので、翌日に速攻でギターを買いに行きました(笑)。

グリーンのカラーリングが印象的なESP製のエクスプローラー・タイプですね。

 ホンマはギターを修理しにいくだけの予定だったんですけど、ESPのショップに行ったらこのギターが壁に掛けられていて。もう一目惚れして、すぐ手に入れました(笑)。

このニュー・ギターは、ベースのいやまさんがバンドから卒業する最後のライブでお披露目されたんですよね。

 そうなんです。いやまの最後のライブなのに、10年近くずっと使い続けてきたメイン・ギターが使えないという。ウチ的には“ギターも新しくなったことだし明るい未来に向かって進もう!”って前向きにとらえてますけどね(笑)。

ニュー・ギターの印象は?

 音の反応がめっちゃ速いギターで、右手のタッチも変わってきました。ハイ・ポジションもめっちゃ弾きやすいし、ピッチも良くなったので、弾いていてすごく楽しいですね。

では今後の活動では、このギターをメインで使用していくのですか?

 自分の人生のラッキー・カラーが緑と金らしいんですけど、この新しいギターには両方の色が入っているので、これからも使い続けていきたいですね(笑)。最初は見た目が派手過ぎて“これ、どうなんやろう?”と思っていたんですけど、マネージャーが“めっちゃ似合う”って言ってくれて。あと(横山)健さんも緑のギターを使ってるから、“ウチも使おう”ってなりました(笑)。

バンドのプロフィールには“大阪生まれ、ハイスタ育ち”と書いてありますしね(笑)。さて、最新作『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』は3年9ヵ月ぶりとなるアルバムですが、この期間にあやぺたさんは結婚と出産、活動をともにしてきたメンバーの卒業、メジャー・レーベルからのリリース、コロナ禍での活動制限など、様々な出来事が起こりましたね。

 もう起こり過ぎですよね(苦笑)。この4年で何もかもガラッと変わってしました。日々の生活から、メンバーから、バンドを取り巻く状況もそうだし……おまけにメイン・ギターまで変わっちゃいましたからね。

怒涛の日々を振り返ってみると、どのような4年間でしたか?

 やっぱり2020年に子どもが生まれてからは、今までなら余裕を持って取り組めていたことも急に限られてきて。どうしても“自分の時間”が限られてくるじゃないですか。自由になれるのは子供を寝かしつけをしたあとの1~2時間だけなので、その間にものすごい集中して曲を作ったり、ギターの練習をしたりしていました。結果的にダラダラすることがなくなって、作業効率が良くなったんですよね。

 今回のアルバム制作を振り返ってみても、“短時間で集中して取り組むのもいいな”って感じたし、“子どもが産まれてもバンドやれてるやん!”って思いました(笑)。

みんなが拳を突き上げて歌える曲を作ろうと思っていた

それでは改めて新作についても聞かせて下さい。アルバムに収録されている5月に発売された3rdシングル「Andy」は、2018年頃からモチーフがあったそうですね。これからのDizzy Sunfistを象徴する代表曲になりそうな印象を受けました。

 長いこと“メロディを練り直したいな”って思っていた曲だったんですけど、今回、短時間で集中することで完成させることができました。ライブでも演奏しているんですけど、手応えを感じていますね。フロアのお客さんの拳もだんだん上がってくるようになってきたんですよ。

オープニングを飾る「The Proof」は、切ないメロディ・ラインが耳に残るパンク・ナンバーです。

 この曲のイントロやコード進行は、moAi(d)が作ってくれたんですよ。歌のメロディがより引き立つようなコードを当てはめてくれたんですけど、曲の雰囲気がガラッと変わって、感動しましたね。

編曲やアレンジの面で、moAiさんがかなり活躍したんですね。

 moAiはアレンジ面においてめちゃくちゃ重要な存在ですね。ドラムやギターだけでなくベース・ラインまで作れる才能を持っているので、いろんな視点からおもしろいアプローチを考えてくれるんです。めちゃくちゃ心強いですね。パッと口ずさんだメロディにその場でコードをつけてくれたり……なので、ウチが感覚派で、moAiが理論派といった感じなのかな。そのふたつの感性がうまいことハマって、化学反応を起こしながら曲ができているんだと思います。

 2曲目の「Our House」も、moAiが持ってきたリフをもとに、みんなで続きを作っていったんですよ。ラストに世界が開けていくようなパートは、もう完全にハイスタっぽくしてみました(笑)。“こういう展開が来たら、もう最後シンガロングやろ”みたいなイメージが頭の中にあったので、必然とそうなりましたね。

なるほど。ではライブのことをイメージして曲を作ることはありますか?

 めちゃくちゃイメージしてますね。今回の制作はコロナ禍の真っ只中でもあったので、ライブをやっている光景を思い描くのは大変でしたけど、“いつかライブハウスでみんなが拳を突き上げて全員で歌えるといいな”ってことをずっと考えながら曲を作っていましたね。きっとまた元どおりの世界へ戻れるということを信じて、今回の作品を完成させました。

今のDizzy Sunfistをいろんな人に観てもらいたい!

「No Biggie」はスピーディーに展開していくスカ・パンク・ナンバーです。どのように作り込んでいったんですか?

 ゴールドフィンガーみたいな“男らしいスカ・パンク”をやってみたいなってところからヒントを得て、バンドでやってみたら、こんな風になりました。歌のメロディも裏打ちのカッティングもめちゃくちゃ速くて……弾きながら歌うのが難し過ぎる(笑)。ホンマに“なんでこんなアレンジにしたんやろう?”って、今もまだ思ってます。

曲のBPMはどのように決めているんですか?

 実際に演奏してみて、グッと来なかったらその都度で速くしてみたり遅くしてみたりして、微調節しながら決めています。moAiは、なぜか奇数が嫌らしくて……Dizzy Sunfistの曲ってBPMがほぼ偶数なんですよね。なぜだかわからないけど、奇数の曲がない(笑)。

それは謎ですね(笑)。「Everyting’s Gonna Be Alright」はDizzy Sunfist流のレゲエ・ナンバーです。ブルージィなギター・ソロも耳に残りました。

 この曲のソロはめっちゃ難しかったです……! プロデューサーとして入ってもらったmasasucks先輩にいろんなことを相談しながらフレーズを作り込んでいったんですけど、これまで自分が弾いたことのない指使いなんかも教えてもらったりして、すごく勉強になりました。自分としては今まで歌、歌、歌ばっかりきてたんで、こういうギター・ソロをもっと顔で弾けるようになりたいですね(笑)。歌もギターも、もっともっと感情豊かに表現できるミュージシャンになりたいと思っています。

今のあやぺたさんにとって、ギターという楽器はどのような存在ですか?

 “等身大以上に私をカッコよくさせてくれる”存在かな。昔から“サイズの大きいギターを持ちたい”って気持ちがずっとあって。あまり身長が高くない女子がデカいギターを持ってステージに立つのがカッコいい!って思っているんですよね。私自身、ギターを持っているおかげでカッコよくステージに立ててるんやろなってことはいつも感じています。

レコーディングで使用した機材について教えて下さい。

 ギターは、レコーディング用として使っている白色のESP製エクスプローラー・タイプとmasasucksさんから借りたギブソン・ヒストリック・コレクションのレス・ポール。アンプは、自分の持っているディーゼルのHerbertとmasasucksさんから借りたメサ・ブギーのデュアル・レクチファイアを使いました。

ちなみに“歪んだギター・サウンド”に対するこだわりは?

 やっぱり“ジャーン!!”とEのコードをかき鳴らしただけで“カッコいい!”と思えるサウンドが好きですね。ライブのサウンド・チェックでも、ロー・コードのEを弾いて、そのあとにリフを刻んでみて、“あ、もうこれで行きます”という感じなんです。

10月末からはサポート・メンバーに山口メイ子(b)さんを迎えた編成でライブ・ツアーがスタートしますね。

 ウチとしては……メンバー・チェンジは、今回でもう最後にしたくて。今はサポートという形ですけど、とりあえず来年の4月まで一緒にツアーをやってみて、お互いにそこで最終判断をしようと思ってます。ただ、今はスタジオに入るのが本当に楽しくて。この3人では初めて合わせる曲ばかりなので、ずっと演奏してきた曲をやってもすごく新鮮なんですよね。新しい感性がスパイスとして加わったバンド・サウンドになっているので、こんなにもワクワクしながらスタジオに行くのは、ホンマ高校生ぶりやなって思います。このツアーを終えてた時には、“もうこのメンバーとしかバンドできない!”ってくらい強い絆を作っていきたいですね。新曲も早く一緒に作ってみたいです。

最後に作品制作を振り返って一言お願いします。

 新曲は、みんなの前でライブをやることでできあがっていくものだと思っているので、コロナ禍の中、ツアー回って“このアルバムがどういう風に育っていくんだろう?”っていうのがすごく楽しみです! 早く今のDizzy Sunfistをいろんな人に観てもらいたいですね。

Ayapeta’s Sound System

Diezel/Herbert

『DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-』のレコーディングでも使用したメイン・アンプがディーゼルのHerbert。アンプ・ヘッド&キャビネットのロゴを、ディーゼルをモチーフにした“Dizzy”&“Sunfist”のロゴにカスタマイズしている。上段にはセンド/リターンにつながれたペダルボードを設置。

Pedalboard

アンプ上部に設置されたペダルボード。アンプのセンド端子から、①One Control/Minimal Series Pedal Board Junction Box(ジャンクション・ボックス)に入り、写真下のプログラマブル・スイッチャー=②One Control/Crocodile Tail Loop OC10を経由して①からアンプのリターンへ。②の各ループに③Free The Tone/PA-1QG(EQ)、④BOSS/DD-7(ディレイ)、⑤Eventide/H9(マルチ・エフェクター)がつながれており、③&⑤はMIDI制御。

Foot Control 1

こちらのスイッチャー(Free The Tone/ARC-3)は、アンプ上部のペダル類をコントロールするOne Control/Crocodile Tail Loop OC10のスレイブとしてMIDIでつなぎ、ギター・テックの足下に設置。

Foot Control 2

こちらはライブ時のあやぺたの足下。ギターから⑥KORG/VP-10(ボリューム・ペダル)へ入り、アンプへと信号を送る。⑦TC Electronic/polytune2(チューナー)は⑥のチューナー・アウトから。⑧Free The Tone/ARC-53M(スイッチャー)は、アンプ=Herbertのチャンネル切り替えなどをMIDIで制御するために使用。

作品データ

DIZZYLAND -To Infinity & Beyond-
Dizzy Sunfist

コロムビア/COCP-41563/2021年10月27日リリース

―Track List―

01. The Proof
02. Our House
03. Dinosaur
04. Never Again (Album Ver.)
05. Andy (Album Ver.)
06. Little More
07. No Biggie
08. N.i.n.j.a feat PETA&LARRY (GARLICBOYS)
09. Drama Queen (Album Ver.)
10. STRONGER (Album Ver.)
11. So Beautiful
12. Everyting’s Gonna Be Alright

―Guitarist―

あやぺた