Interview|三宅伸治 「ジグソーパズル」と振り返る忌野清志郎との思い出。 Interview|三宅伸治 「ジグソーパズル」と振り返る忌野清志郎との思い出。

Interview|三宅伸治 
「ジグソーパズル」と振り返る忌野清志郎との思い出。

RCサクセション/忌野清志郎のデビュー50周年プロジェクトの第5弾として、2003年にリリースした『KING』が、18年の時を超えてデラックス・エディションとして再発された。「ジグソーパズル」を始めとする未発表曲とライブ音源、DVDが付属した豪華な内容となっている。今回、共同プロデューサーとして作品制作に携わった三宅伸治に、忌野清志郎と過ごした日々を振り返ってもらった。

取材:尾藤雅哉(SOW SWEET PUBLISHING

“今作っておかないと、「今の曲」はできないぞ”
そう言われたことがずっと心の中に残っています

忌野清志郎さんの『KING』(2003年)が18年の時を経て再発されました。その中に未発表曲「ジグソーパズル」が収録されていますが、楽曲はどのように作られたのですか?

 2人で一緒に曲を作っていた時に“録音してみよう”みたいな感じで演奏したんですけど、改めて聴き返してみると、作った時のリアルさ、生々しさがありますよね。もしも当時、この曲をちゃんと完成させようとなっていたら、ホーン・セクションを入れたり鍵盤を加えていた可能性もありますね。

別のインタビュー記事で見たのですが、スタジオ(ロックン・ロール研究所)にレコーディング機材を入れるのを清志郎さんが嫌がっていたそうですね。

 うん。バッチリ防音されていたスタジオだったし、録音機材を入れるスペースもあったんですけど、最初は“ドラム叩けりゃいいんだよ”っていう感じでした。

三宅さんは、清志郎さんの歌の呼吸に合わせてギターを弾く時に、何か意識していたことはありますか?

 そうですね……特に後期の清志郎さんは、呼吸を“たっぷり”と使って歌う感じだったんですよ。“その空気感や歌の邪魔になることは絶対にしたくないな”って思っていました。そういう感じのリズムになってたのは『KING』以降ですかね。

そういう歌い方に関しては、三宅さんの表現にも影響を与えていたりするのでしょうか?

 影響はありますけど……あのたっぷり感は、誰にも真似できないように思います。

清志郎さんと一緒に音楽を奏でた経験は、今の三宅さんの中でどのように息づいていますか?

 そうですね……印象的なメッセージというか、言葉があって。一緒にご飯を食べていた時に“やっぱ結局アレだな、良い曲を書いて、良いライブをするのが一番だな”って話をしていて。それを聞いて、“本当にそうだな”と思ったんです。もちろん良いライブができるように頑張るし、良い曲を書くというのも難しいけども、とにかく常に曲を書き続けようと。

 よく取材で言ってる話ですけど、昔、スタッフとして働いていた時、仕事が終わった真夜中に“フラッと散歩しよう”と外に出たら、清志郎さんの部屋に明かりがついているんですよ。うっすらとギターの音も聴こえて……常に曲を作っていたんですよね。“お前、仕事から帰ったら寝るだろう? 俺は寝ないで曲を作るんだよ”って。“今作っておかないと、「今の曲」はできないぞ”みたいな。そう言われたことがずっと心の中に残っていますね。

清志郎さんは、自身の生活の中の出来事も音楽にされていたとか。

 そうですね。俺が若い時に“曲はどうやって作るんですか?”みたいな質問をしたら“そこら中に転がってる”っていうフレーズを聞いたことがあります。“今、もう目の前に歌があるだろう?”って(笑)。だから何でも歌にできるって思いました。

 ザ・タイマーズを一緒にやっていた時に、一番強烈だったのが“昨日作ったんだけど”って清志郎さんがガンガン新曲を作ってくるんですよ。あとになって聞いた話では、当時、自分の子供が産まれたら曲を作る時間がなくなると思っていたみたいで、曲を溜めようと作っていたらしいんですけど、そのスピードが尋常じゃなかった。たぶん……もうほとんど寝ないで作っていたんだと思います。

 タイマーズの「3部作(人類の深刻な問題~ブーム ブーム~ビンジョー)」は、全然違うタイプの3曲をメドレーにしているんですけど、1日で書いてるんですよ。それを次の日、すぐにデモとして録音するという。そんな感じで、色んな曲を山ほど録りましたね。その凄さを間近にいて知っているだけに……自分も“もっと曲作りを頑張んないとな”って思っています。

「ジグソーパズル」は
清志郎さんがまだこの世にいて
“新曲を出しました”って風に聴こえる

2人の制作作業はどのように進めていったんですか?

 “こんなコードでどうですか?”、“こんなリフはどうですか?”みたいな感じでアイディアを出して、清志郎さんがドラムを叩いて。そうやってコードとリズムを最初に作ることが多かったですね。そうやって録った最初のトラックに、僕がベースを入れたり、清志郎さんがキーボードを弾いたりして。このあとに一度歌を入れる感じかな。歌詞はあったり、なかったりしましたけど、“じゃあ、とりあえずサビだけ入れとこうか”みたいな感じでやることもありましたね。歌ったデモを聴いて、“そのメロディは、あの曲にありました”とか(笑)。

ちなみに清志郎さんの“お気に入りのコード進行”はありましたか?

 Eから始まって、どうやって展開していくか?みたいなことは多かったですね。そこでお互いのアイディアを出し合うというか。面白かったのが、清志郎さんがDmを弾く時に、F6みたいな押さえ方をするんですよ。

Dmの時に忌野清志郎押さえるコード・フォーム
Dmの時に忌野清志郎押さえるコード・フォーム

 しかもそれを普通にDmとして弾くから、ちょっと響きが違うという。コピーしていて“あれ?”ってなるポイントですよね(笑)。そういう作り手の癖のような変わったコード・フォームというのが、曲の個性にもなっているんだなって。

『KING』の再発は、今まで清志郎さんのことを知らなかった人にも清志郎さんの音楽が届く貴重な機会だと思います。

 歌詞の内容が今の時代を歌ってる感じもありますし……もっとたくさんの人に聴いてもらいたいな、と思います。あと何と言っても清志郎さんの声が、みんなの心や耳に残ってるんだなっていうことを感じましたね。だから今回の『KING』や「ジグソーパズル」が、清志郎さんがまだこの世にいて“2021年に新曲を出しました”って風に聴こえる。それくらい色褪せない音楽なんだなってことを改めて感じました。

作品データ

『KING』
忌野清志郎

ユニバーサル/UPCY-7741/2021年11月24日リリース


『Red Thanks』
三宅伸治 & The Red Rocks

P-VINE/PCD-18888/2021年10月27日リリース