Interview|Yu-taro(NOCTURNAL BLOODLUST)重低音を操る匠の技 Interview|Yu-taro(NOCTURNAL BLOODLUST)重低音を操る匠の技

Interview|Yu-taro(NOCTURNAL BLOODLUST)
重低音を操る匠の技

NOCTURNAL BLOODLUST(ノクターナル・ブラッドラスト)=通称ノクブラが、約8年ぶりとなるフル・アルバム『ARGOS』をリリース。今回はギタリストのYu-taro、作中のギター・アレンジや作曲のこだわり、迫力のある超低音をクリアに聴かせるコツなどをたっぷりと語ってもらった。

取材/文=村上孝之 写真=Mickey Tanaka

自分たちはオールド・スクールより、ニュー・スクールなアプローチで攻めてますね。

まずは作曲についてお聞きしたいのですが、曲を作る時は“ギターを持つ派”ですか?

Yu-taro そうですね。ギターを打ち込むことは基本的にないです。ギターはリフを作るところから始めて、リフができたらザックリ全体の展開を想像して、それを形にしていくというやり方が多いですね。ただ、リフやフレーズが主体というよりは、“次はこういうノリが欲しい、その次はこういう雰囲気にいきたい、ここは同期だけにしたい”というような構成をイメージして決めていくんです。そういった大枠を組み上げてから、さらに深い部分に肉付けしていく感じですね。

デモの段階で1人で作り込むんですね。今回Yu-taroさんは「Straight to the sky (feat. Luiza)」と「Eris」、「Reviver」の3曲を書かれています。その中でも自身の中で特に印象の強い曲をあげるとしたら?

Yu-taro 「Straight to the sky (feat. Luiza)」ですね。この曲、最初はサクッとできたんですけど、ボーカルのメロディが送られてきてから一度作り直したんです。

 楽曲の構成自体や基盤になるフレーズは変えずに、同期の内容を見直したり、女性ボーカルのシャウトを入れるのはどうだろう? みたいな新しいアレンジを色々思いついて。そこでもともと知り合いだったLuiza(ex.The Winking Owl/vo)さんに声をかけてフィーチャリングしてもらいました。

 NOCTURNAL BLOODLUSTでは今までそういうアプローチをした曲はなかったので、紆余曲折を経て完成したこの曲は自分的にもかなり満足しています。

1回形になったものに手を入れることをいとわなかったことが、いい結果につながりましたね。

Yu-taro 本当にそう思います。逆に「Eris」は、わりとツルッと作った曲なんですよ。

 自分の気持ちが上がることを優先して構成を考えました。ギター・リフも凝っているというよりは、自分の好きなフレーズを集めたという感じになっているので。曲を作っている段階で、“ここはジャンプしよう”とか、“ここはこういう動きをしよう”とか、ライブのことを考えて作っていたというのもありますし。だから、ライブで演奏していて凄く楽しいです。

とはいえ「Eris」も決してシンプルな構成ではないですよね。こういう曲をツルッと作ったというのは驚きです。

Yu-taro 展開が多いという要素も、逆にすんなり作れた理由の1つだと思いますね。僕は楽曲の構成をテンプレートにはめるようとすると悩んでしまうというか。“Aメロがきて、Bメロがきて、サビがきて、またAメロに戻らないと……”みたいな感じだと、同じフレーズを何回かくり返すことになるじゃないですか。そういう縛りがあるほうが悩んだりするんです。「Eris」は自分が好きなような展開で作っていったので、楽に書けました。

Yu-taroさんの個性が活きてますね。また、『ARGOS』はモダンなスピード感を兼ね備えつつ、ラウド&クリーンなサウンドなども魅力になっています。

Yu-taro たしかに、自分たちはオールド・スクールなことよりもニュー・スクールなアプローチで攻めることが多いとは思います。最近のメタルコアやハードコアのトレンドをたくさん盛り込んでいるので、特に“モダンさ”みたいな部分は感じてもらえるんじゃないかな。

なるほど。では、続いてギター・サウンドに関する話を聞かせて下さい。今作を録るにあたって大事にしたことは?

Yu-taro 今作に限らずですが、ダウン・チューニングの状態でもしっかり“コシがありつつクリア”な音が鳴るように気をつけています。音作りや弾き方など様々な要素が関係するので、一筋縄ではいかないんですが、今回はエンジニアさんの協力もあり自他共に満足いくサウンドを作れたかなと思います。

たしかに、重低音域がクリアに聴こえるサウンドになっています。音作りの面で何か特別な技を使われたのでしょうか?

Yu-taro 自分は弦のゲージが極太なので、音がしっかりと立つような弾き方を心がけました。ギターや機材もそれに合わせて色々変えないといけないので大変でしたが、そのあたりはもう引き返せないので上手く付き合っていくしかないという(笑)。チューニングに関しても、ノクブラはローAからローFといった低いキーを多用するので、しっかりダウン・チューニング用の対策をしないといけなくて。たまにローBとかのギターを弾くとめちゃくちゃ弾きやすく感じます(笑)。

なるほど(笑)。ちなみに、1番低い時のチューニングは?

Yu-taro C#です。ローBのほぼ1オクターブ下(笑)。

C#ですか! 完全にベースの音域ですね……。

Yu-taro そうなんです(笑)。国内ではそこまでチューニングを下げているバンドはあまりいないんですけど、実は海外ではすでにポピュラーな手法になっていて。しかも、バンドとして完成されてきているんですよ。C#というと、“ええっ!”となる人が多いと思うんですけど、世界的に見るとけっこういるという。

 なので、自分たちの中では特段トリッキーなアプローチとは感じていないんです。それに、そこまでチューニングを下げていると、オールド・スクールなことをやってもニュー・スクールな感じが出てくる。そこは自分たちのスタイルとしてこれからも貫いていきたいと思ってます。

頼もしいです。もう1つ、そこまでのダウン・チューニングとなると歪みの度合いも大事になってくると思います。

Yu-taro そうですね。歪ませたほうが迫力が出る気がするんですけど、歪ませ過ぎるとバンドに混ざったときに埋もれてしまう。でも、ある程度歪ませないといい感じにならなので、ちょうどいい塩梅を見つける必要があるんです。そこは慎重に見極めました。

僕が弾く上モノは、メロディをなぞったメロディアスなフレーズが多いんです。

では、フレーズ作りの話について聞かせて下さい。上モノや色づけのギターは、いつもどんなふうに作っていますか?

Yu-taro メロを歌うような感覚で音を探していきますね。また、デモの段階では全編にわたって上モノのギターが入っていることが多いんですが、次の歌メロやシンセを入れる段階でギター・フレーズの取捨選択をするようにしています。ギタリストらしからぬ感じですが、あくまで歌メロが1番映えるような楽曲にしたいというのがあるので、ギターが要らないなと思った時は迷わず消してしまいますね。

楽曲を俯瞰で見ていることがわかります。時間をかけて考えたフレーズなどは中々捨てられないギタリストも多いようです。

Yu-taro その気持ちはよくわかります(笑)。でも、手順的には歌のメロディがあとから乗ってくるので、歌とギターがぶつかったり、ギターが歌よりも“おいしい”ところに来てしまうことがあるんですよ。そうなった時に僕は“ギターを削る派”なんです。もしくは、歌が乗った段階で上モノのギターを作り直す。なので僕が弾く上モノはメロディをなぞったメロディアスなフレーズが多いんだと思います。

それも楽曲のエモさが引き立っている1つの要因と言えますね。続いて、今作のレコーディングで使用したおもな機材も教えていただけますか。

Yu-taro ギターは、メイワンズの6弦と7弦です。凄く気に入っていていつも使ってます。見た目に惹かれて買ったんですが、音も最高でした。6弦メイワンズのほうはローG#くらいまで、7弦メイワンズはローFといった使い分けをしています。6弦メイワンズには、7弦ギター用の7〜2弦を張っているんですけど、さすがにローG#くらいが下げられる限界なんですよ。7弦メイワンズのほうはローFになっていますが、もっと低くしたい時はデジテックのワーミーを使ってピッチを下げていますね。

7弦でも限界なんですね。ちなみに、使用ゲージは?

Yu-taro 6弦が.065〜で、7弦は.080〜です。ナットもそのゲージに合うように完全に削り直してもらいました。あと、シンプルに7弦のギターだけでも事足りているんですが、僕的に6弦の音のほうが音が好きなので、限界までは6弦のほうを使っていたいんですよね。

それぞれの音の特徴は?

Yu-taro 6弦のほうが音にコシがありますね。あと、6弦と7弦はピックアップが違うんです。7弦はダンカン(パッシブPU)で、6弦はEMG(アクティブPU)。それも音の違いの大きな理由ですね。最初は7弦にもEMGを載せる気満々だったんですけど、前作の『THE ONE』(2021年)の「Corruption」を7弦で録った時に、そのままのサウンドが気に入っちゃって。なので両方主戦力のギターですね。おもにチューニングによって使い分けるようにしています。

それぞれの持ち味を活かしているんですね。では、使用アンプは?

Yu-taro ヘッドがピーヴィーの5150Ⅱで、キャビネットはメサ・ブギーのオーバーサイズというモデル(セレッション製ビンテージ30ユニット4発搭載)。前回は自分の所有しているバッソンのキャビネットだったんですけど、エンジニアさんがメサ・ブギーを薦めてくれたんです。

ライン録りではなくて、キャビネットで鳴らしたんですね。それであのクリアさというのはちょっと意外です。

Yu-taro そうなんです。最終的にマイクを3~4本立ててそれぞれのサウンドをブレンドするという手法にいき着きました。チューニングが低いとライン録りのほうがクリアに聴こえるんですが、エンジニアさんと色々試行錯誤をして、キャビネットの生感とクリア感を両立したサウンドを作れました。

なるほど。では、エフェクターも教えて下さい。

Yu-taro ギター・ソロや上モノのフレーズでは、マクソンのOD808を使いました。ほとんどゲインを上げずに使っているんですが、音がけっこう明るくなるんですよ。それに歪み感もちょうど良くて、音に腰が残る程度のゲインを稼ぎつつ、キャラクターも明るくしてくれるという。あとは、さっき話したようにピッチを下げるためにデジテックのワーミー5などを使用しましたが、ほぼ前作と変わりないです。

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Yu-taroのおもな使用機材は本記事で写真と合わせて掲載しています。

シンプルなセットアップで極上の音を鳴らされたことがわかります。さて、現在は『ARGOS』を携えたツアーの最中です。ここまでの印象はいかがですか?

Yu-taro 凄くいい感じです。皆さんしっかりアルバムを聴いてくれているみたいで、リアクションが熱いんですよ。なのでファイナルはさらに盛り上がると思います。“ノリかた”とかを提示しながらライブを重ねているので、よりお客さんと一体感のあるライブにできるんじゃないかなという気がしています。そこでしか見れないような面白みのあるライブにしようと考えているので、ぜひ楽しみにしていていただきたいです。

楽しみです。今作の楽曲をライブで演奏した印象はいかがですか?

Yu-taro 自分の曲に関しては、得意なものを詰め込んでいるので自然にプレイできていますが、Valtz君(g)やMasa君(b)の曲は本当に大変です(笑)。長いことメタルやハードコア界隈のサウンドに触れていますが、『ARGOS』の曲は屈指の難易度だと思います。今作収録の「Dagger」とか、BPMが280だったりして(笑)。ストレートなド根性系だったらまだいいんですけど、細かい裏(拍)入りとかがあるんですよ。サラッと聴いた時は“弾けるな”と思ってたんですけど、いざ弾くとなると“えっ? 超ムズいんだけど……”みたいな。もうね、修行です(笑)。

 でも、そういう曲を演奏することは自分のスキルアップにつながるので、毎回前向きな気持ちでライブに臨んでいます。今回のツアーで勢いをつけて、今後の動きにつなげていけるといいなと思ってますね。

LIVE INFORMATION

THE AWAKEN TOUR 2022

【SCHEDULE】
2022年6月11日(土)/渋谷 CLUB QUATTRO

※チケット購入の詳細は公式HPまで

作品データ

『ARGOS』
NOCTURNAL BLOODLUST

MAVERICK/DCCA-97/2022年5月4日リリース

―Track List―

01.The Devastated World
02.Red Soil
03.Straight to the sky (feat. Luiza)
04.Life is Once
05.Dagger
06.THE ARGOS
07.Cremation (feat. PK of Prompts)
08.Bow Down
09.ONLY HUMAN
10.Eris
11.THE ONE
12.Reviver

―Guitarists―

Valtz、Yu-taro

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