Interview|ブラディ・スミス 創立者に聞くOld Blood Noise Endeavorsの真髄 Interview|ブラディ・スミス 創立者に聞くOld Blood Noise Endeavorsの真髄

Interview|ブラディ・スミス
創立者に聞くOld Blood Noise Endeavorsの真髄

アメリカのオクラホマ州を拠点とするブティック・ペダル・ブランド、Old Blood Noise Endeavors(以下OBNE)創立者の1人であるブラディ・スミス氏のインタビューをお届けする。OBNEがどのような思想の下でペダルを開発しているのか、そしてスミス氏お薦めのペダルやセットアップについても聞いた。

取材:川原真理子 文:編集部
*本記事はギター・マガジン2022年8月号の特集『OLD BLOOD NOISE ENDEAVORS 深遠な音世界へと誘うペダル・ブランド』を再編集したものです。

OBNE創立者のセス・マッキャロル(写真左)とブラディ・スミス(同右)。
OBNE創立者のセス・マッキャロル(写真左)とブラディ・スミス(同右)。

僕たちは新しいサウンドや
新しいテリトリーを生み出そうとしている

OBNEの設立経緯について教えて下さい。

 OBNEは、僕と友達のセス・マッキャロルによる共同経営の会社なんだ。2人とも映像制作のバックグラウンドがあったけど、大学を卒業したあとにセスは映像制作やグラフィック・デザインの道を歩み、僕は様々なメーカーでペダル作りを学ぶ道を歩んだ。僕はKeeley Electronicsに2〜3年間勤めていて、それが僕にとって初めてのペダル作りだったよ。

 そのあと、オクラホマを拠点とするWalrus Audioの設立に手を貸して、そこで開発マネージャーの役割を果たしていたけど、自分でもブランドをやってみたいと思い立ち、2014年にOBNEをセスと共に設立したんだ。

 セスはクリエイティブ面のマネージャーで、グラフィック・デザインやマーケティングのアーティスティックな流れから、ビデオ制作まですべて彼が手がけている。

多くのエフェクター・ブランドがある中、OBNEが優れていると言えるのはどのような点でしょうか?

 僕たちは新しいサウンドや新しいテリトリーを生み出そうとしているんだと思う。今時は新しいものなど何もないし、新たに発見できるものなんてないと思われがちだけど、僕たちはもうちょっと推し進めようと思っている。同時に、今あるエフェクターの気に入っている組み合わせやサウンドも取り入れようとしているね。変わっていてクリエイティブで音楽性豊かなものを常に求めているんだ。

アンビエントな音楽や実験的なサウンドに向いたペダルが多いと感じますが、あなたの好みや音楽経験の影響があるのでしょうか?

 そうなんだ。僕はあらゆるタイプの音楽が好きだけど、ギターをプラグに差し込むとビッグなリフとかよりも、どうしてもサウンドスケープ的なもの、ドローンっぽくて音がいくつも重なったサウンドを弾きたくなる。そういった個人的な好みが製品に凄く反映されているんだ。

ペダルに描かれたアートワークも特徴的です。こちらはセスさんの担当ですか?

 いや、彼はこれまでにペダルのアートワークの一部を手がけてきたけど、今ではいわゆるアーティストの世話人なんだ。OBNEのペダルの大半に関しては、僕たちが高く評価しているデザイナーに彼がコンタクトを取っている。そういったデザイナーは大抵ギター・ペダルの仕事をしていない人たちだけど、僕たちと一緒にプロジェクトをやることに興味があるかと彼らに聞いてみることから始まるよ。それからデザイナーにペダル名とそのヴァイブを伝える。

 例えば、Procession(リバーブ)にできることを説明し、さらにそれがSF的で空間的でドゥームっぽい感じであることを伝えるんだ。説明することはそれくらいで、それをもとにデザイナーがどう提案してくれるのかを見たいんだよ。外部からの影響があると、僕たちがいつもやっていることをくり返さずに済むからね。僕たちだけだと、たとえ何か思いついたとしても、同じアイディアやスタイルの焼き直しになることが多いから。

OBNEの製品を使ったことがない人に、最初にお薦めしたいペダルは?

 Dark Starだろうな。一番よく知られていて最もユニークなデバイスだと思う。リバーブ・ペダルだけど、単なるリバーブには聴こえない。まるで別の楽器を生み出しているような使い方ができるんだ。

 アンビエント・リバーブとしてパッド・サウンドも作れるし、ホールド・スイッチを使って持続音を鳴らしながら音を重ねて演奏することもできる。でもフレーズがリピートするルーパーとは違っていて、音のサステインを伸ばす感じだ。ピアノのサステイン・ペダルのような効果だね。

 あと、Dark Starにはモードが3つあって、ピッチ・モードではリバーブ音を2種類のピッチ・ノブでコントロールできる。オリジナルの信号を損なわずに、1つのコントロールで1オクターブ下、もう1つのコントロールで1オクターブ上の音を重ねて、より広大なサウンドスケープを作ることが可能なんだ。

ペダル3台でライブのセットアップを組むとしたらどれを選びますか?

 最初にオーバー・ドライブ&ディストーション・ペダルのFault V2、それからSFリバーブ・ペダルのProcession、最後はBlack Fountain V3だ。

 僕はマーシャルみたいなダークなアンプで、プリアンプ・ゲインを少し上げたサウンドが好きでね。超クリーンな状態よりも歪みの緩急が付けられるから、より幅広い音色を出すことができるんだ。そこにFault V2を加えて2つあるゲイン・ステージをカスケードし、最初のゲイン・ステージで中域をドライブする。3バンドEQはLOWとHIGHを上げて、MIDは低いか中くらい。BOOSTスイッチはゲインを上げるために補助的に使う。そうするとほとんどファズのようになるんだけど、アンプの設定とペダルの組み合わせによって歪みのバリエーションが多彩になるんだ。

ほかのペダルはどんな設定に?

 Processionは、SPEEDをもの凄く遅くしてフランジャー・サウンドにする。ノブは9時くらいかな。DEPTHとMIXは2時くらい、REVERBは12時くらいだ。そうすると、サステインを伸ばしたパッドを作ることができて、かなりディープかつゆっくりとフランジしていくリバーブをかけられる。ドラマティックで威圧的な効果ではないけど、サウンドにちょっとした動きを出せるんだ。

 Black Fountain V3はオルガン・モードにして、スラップバック・ディレイ・サウンドのような感じにする。僕はドライなサウンドは好きじゃなくて、ちょっとしたうねりが欲しいんだ。

最後に日本のギタリストへのメッセージをお願いします。

 OBNEのペダルがインスピレーションのきっかけになればと思っている。僕たちの意図は、人々をインスパイアさせて彼らに独自の音楽を作ってもらうことだからね。使い方にルールなんてないし、僕らのペダルでできるだけ独特な音を作り出してほしいと思っているよ。

OBNEのスタッフたち
▲︎OBNEのスタッフたち。現在は17名が在籍しているそうだ。多くのスタッフは工学的な教育を受けてきたわけでなく、DIY的に作ってきたこれまでの経験をもとにペダルを製作しているとのこと。ペダルのアートワークは外部のデザイナーとのコラボで生まれている。
Expression Ramperを作っている様子
▲こちらはユーティリティ・ペダルのExpression Ramperを作っている様子。エフェクト・ペダルのパラメーターを操作できる外部コントローラーが豊富なのもOBNEの特徴だ。
ペダルの製作風景
▲ペダルの製作風景。筐体のカラーを見るに、Excess V2またはSunlightだと思われる。どうやらNINTENDOのゲームボーイの動画を見ながら作業しているようで、そのギークさがOBNEの音の個性につながっているのかもしれない。

Old Blood Noise Endeavorsブランド情報(umbrella-company.jp)

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2022年7月13日(水)発売