Interview|Seiji & Yuki(D_Drive)ギター・インストの秘めたる可能性 Interview|Seiji & Yuki(D_Drive)ギター・インストの秘めたる可能性

Interview|Seiji & Yuki(D_Drive)
ギター・インストの秘めたる可能性

日本だけでなく、欧米やアジア各国でも精力的な活動を行なうなど、世界を舞台に活躍するインストゥルメンタル・ハードロック・バンド=D_Drive。彼らがイギリスのMarshall RECORDSから2作目となるフル・アルバム『DYNAMOTIVE』をリリース。卓越した演奏テクニックでギターを高らかに歌わせた会心のニュー・アルバムについて、バンドのコンポーザーでギタリストのSeijiとYukiに話を聞いた。

取材=尾藤雅哉(ソウ・スウィート・パブリッシング)

Seiji
Seiji

幕の内弁当のように
“どれも個性があって美味しい”アルバム(Seiji)

イギリスのMarshall RECORDSからリリースされる2枚目のアルバムですが、制作にあたりイメージしていたものは?

Seiji アルバムとしてのコンセプトは特になく、“D_Driveらしさを全面的に出していこう”とだけ考えていました。レーベルがイギリスになるのですが、その代表から“とにかく短い曲にしてくれ”って言われましたけど、気づけば4分以上の曲が多くなり「I Remember The Town」だけ3分台を守れました(笑)。

Yuki いつも私とSeijiさんが作った曲を持ち寄り、バンドでまとめていくんですけど、自分たちが普段の生活している中で影響を受けたことは自然と曲に反映されていったと思います。

では、曲が出揃って“1つの作品”になった時の手応えは?

Seiji 僕的には、飽きないアルバムになったと感じました。幕の内弁当のように“どれも個性があって美味しい”という印象ですね。

Yuki 私も、色んな雰囲気の曲が集まった作品なので、聴いていて飽きないアルバムになったと思います。

先ほどYukiさんから“普段の生活で影響を受けたことが曲に反映された”という話が出ましたが、具体的にどのようなところですか?

Yuki 例えば「Wings」は、実家で飼っているセキセイインコの鳴き声にインスパイアされてメロディを作った曲なんです。あと、制作中はコロナ禍だったので、“ちょっとでも皆さんの気持ちを明るくしたい”とか、“心に寄り添いたい”といった思いで作った曲も多いです。

「Wings」は、クリーンのカッティングを軸にしたファンキーなロック・ナンバーですが、“セキセイインコの鳴き声”というイメージはSeijiさんも共有されている?

Seiji もちろんです。僕らの中では、基本的に曲を作った人が主旋律を弾くという決まりがあるんですけど、インコの鳴き声から生まれたメロディのハモりパートを弾くのは初めての経験だったので、めちゃくちゃ難しかったですね(笑)。

(笑)。曲はどのように作り込んでいくのでしょうか?

Seiji 毎回、ガイド的となるデモをメンバーに送って、そこから各プレイヤーの個性を生かしつつ完成させていく感じです。スタジオでアレンジを進めていくと、僕が思いつかなかったフレーズも出てくるので、実際にバンドで合わせると“こんなマジックが起きるのか!”って嬉しい発見をすることも多いですね。

Yuki 私もギター、ベース、ドラムを全部打ち込んだデモを作って、それを聴いてもらってからスタジオでアレンジしていく流れが多いですね。

作曲者として、お互いにどのような印象が持っていますか?

Seiji 今回のアルバムでは特に感じたことなんですけど、Yukiちゃんは僕よりも“いかつい”曲を書くことが多くて(笑)。でも、その中に必ず可愛らしいキメやリズムが入っているんです。そこがYukiちゃんらしいと感じますね。

Yuki Seijiさんの作る曲には、“ライブ感”がありますね。お客さんをノらして、ライブを楽しんでもらおうって気持ちを感じます。私は、どちらかというと“聴かせる”タイプの曲を書くタイプなのかなって思ったりしますね。

Seijiさんは、どんなことをイメージして曲を作るのですか?

Seiji 僕の場合、色んなアーティストの音源を意図的に聴かないようにしているんですよ。というのも、色んな人の楽曲を聴いていると自分の気づかないところで影響を受けてしまって、いざオリジナルを作ろうとなった時に意識が引っ張られて、同じような曲しか書けないってことに気づいたんですよ。

 なので、音楽はあえて聴かずに、映画を観たあとの気持ちや、初めて目にする自然の風景から感じたことを音楽で表現するようにしています。そういう想像をする時には、いつも目の前にお客さんがいるんですよね。自分の中の妄想なんですけど(笑)。なのでライブでお客さんをノらことは、常にイメージしていますね。

Yukiさんは、思い描いたイメージを自分のギター・プレイに落とし込むことはありますか?

Yuki 私の場合、ストーリーを思い描くことが多いですね。その物語に沿って展開を考えていくことはあります。あと頭の中の映像に音をつけていったりもしますね。

Yukiさんに関して、先ほど“いかつい曲を作る”という話も出ていましたが、そういう時の絵はどういうものですか?

Yuki 例えば“戦闘シーン”だったりすると、けっこう激しい曲になったりしますね(笑)。

Seiji 僕も戦闘シーンを想像することはありますけど、Yukiちゃんのほうがやっつけ方が恐ろしい(笑)。僕はまだまだ優しいのかなって思います。

Yuki
Yuki

D_Driveのヘヴィなサウンドに
疾走感を足せるポジションにいれたらいいな(Yuki)

D_Driveの顔となるのが2本のギターだと思いますが、それぞれの役割についてどのようにとらえていますか?

Seiji 歌のないインスト・バンドだと、主旋律とバッキング&ハモリみたいに棲み分けがハッキリしていることも多いと思うんですけど、D_Driveの場合は、2人で掛け合いになったり、主旋律とハモリを入れ替えたりすることもあって、どちらも主役になれるんです。もっと大きく言えば、ベースもドラムもメインっていう考え方なので、みんなが主役になれるようなコンセプトでやってますね。

Yuki 私の場合、歌うようにギターでメロディを弾こうという意識は強く持っていますね。まだまだ難しいところではあるんですけど、本当に“歌を乗せる”ような気持ちでギターを弾いているので、それがみなさんに伝わっていたらいいなって思っています。

 あと、ツイン・ギターに関しては、ガチガチに合わせたほうがカッコいいところもありますけど……私自身、Seijiさんとリズムの取り方が違っている部分をあえて音源に残していたりして。そこにプレイヤーとしての個性が出るのかなって感じるんです。やっぱり“人”が弾いてるので、同じ過ぎず、離れ過ぎず、みたいなところを狙っていこうと思ってます。

「Begin Again」は、ビートに緩急をつけながら展開していくプレイが印象的でした。ギターを弾く際、リズムに関してはどのように考えていますか?

Yuki 私がギターを弾く時は、基本的にドラムを一番よく聴いているんですけど……バンドの中で私が一番速くて、ドラムのChiikoさんが一番遅いんです。私とChiikoさんのタイム感が一番遠いので、ここ数年でかなり“うしろノリ”で弾くように矯正しました。ただ、全員がうしろノリになってしまうと、“重いけど、疾走感がないよね”みたいなになっちゃうので、常に“どこで弾くか?”っていうのを試行錯誤しながら考えています。

 私的には、D_Driveのヘヴィなサウンドに疾走感を足せるポジションにいれたらいいなって思っていますね。そういう個性を残していくことが“D_Driveらしさ”につながるのかなって。

Seiji そういうリズムのノリに関しては、メンバー同士、暗黙の了解でわかり合えてるように感じます。重要なのはライブ。ここ数年はコロナ禍で少なくなっているんですけど、大体、年間80本以上はやっているので、メンバー同士がお互いに“気持ちいい間(マ)”を感じながら演奏できるようになってきたと思います。

「Runaway Boy」では、明確なメロディを奏でない効果音的なワウ・プレイも耳に残りました。

Seiji この曲はD_Driveの中でもかなり古い曲で……実は9.11の同時多発テロ(2001年)がきっかけで生まれた曲なんです。ワールド・トレード・センターの中にいた人の気持ちになって書いたんですけど、あのワウ・パートはパニック状態になった人の気持ちをギターで表現したものなんです。

なるほど。ちなみにフレーズを作る際、スケールの使い方についてどのように考えていますか?

Seiji 僕としては理論的に音楽を作るのは大嫌いなんです。「Thumbs Up」を例に出すと、イントロはホールトーンでその後にミクソリディアンとか出てくるんですけど、あとから分析した時に結果として“色んなスケールを使っていたな”ってだけですね。さっきも話したように、大事なのはイメージを音にするということなので。

Yukiさんはどのようにフレーズを作っていくのですか?

Yuki 私の場合、バックトラックを聴きながら鼻歌でフレーズを作り、それをスマホに録音しておいて、あとから形にしていくことが多いですね。

Seiji

ギター・インストは
ずっと生き残れるジャンルの1つ(Seiji)

「U_Me」は、ミディアムのバラード寄りの楽曲ですが、どのように作り込んでいったのですか?

Seiji 2013年にBOWWOWの山本恭司さんが、日本の叙情歌をギター・インストにした『六弦心Vol.2』というアルバムを出してるんですけど、僕とYukiちゃんも参加させていただいたんです。「どこかで春が」を演奏したんですけど、D_Driveのライブでもよく演奏してたんですね。お客さんからの評判も良かったので、オリジナルでも作りたいなってところからできた曲です。「どこかで春が」は桜の曲だったので、じゃあ僕らは梅の曲にしようと思い、梅の木の一生を描くようなイメージで曲にしていきました。これまでのD_Driveにはなかったタイプの曲ですね。

アルバムの流れで言えば「U_Me」でも終われたように感じましたが、最後にヘヴィな「Breakout」を持ってきた理由は?

Seiji 曲順に関して、色々と並べ替えてシミュレーションした時に、「Breakout」の一番ハマる場所がアルバムの最後だったんです。この曲はコロナ禍に対する怒りがテーマで、僕の中で地を這うような“低音”をイメージしていました。この世の終わりじゃないですけど、地球の怒りみたいなものを表現したかったので、どうしてもローBの音が欲しかったんです。それを再現するために7弦ギターを導入したんですけど、バッチリ合いましたね。

Yukiさんも7弦で弾いているのですか?

Yuki そうですね。「Breakout」と「Be Yourself」は、2人とも7弦で弾いてます。基本的にD_Driveの曲はレギュラー・チューニングが多いんですけど、この7弦ギターによって表現できる幅がかなり広がりましたね。

アルバム制作で使用した機材について教えて下さい。

Seiji ギターはESPで自分用にカスタムしてもらったSNAPPERがメインで、7弦はE-II製を使いました。アンプはMarshallのJVM410。中身は現行品と同じなんですけど、見た目をビンテージ仕様にカスタムしてもらったオリジナル・モデルです。空間系やワウは足下で作っていて、BOSSのGT-1000を使いました。

Yuki 私はESPのHORIZON-IIIを自分仕様にカスタムしてもらったモデルがメインで、EDWARDSのVタイプはバッキングで使いました。7弦は、E-IIのM-II SEVENですね。アンプはSeijiさんと一緒で、自分用にカスタムしてもらったMarshallのJVM410と、1960Bキャビネットの組み合わせですね。足下はBOSSのGT-1000やTDC-YOU製008 MILD BLUESなどを使いました。

ケーブルや弦の種類は?

Yuki ケーブル類は、EX-PROのFL seriesですね。弦は、HORIZON-IIIにはSIT STRINGSの.009~.042、フライングVにはSIT STRINGSの.010~.046で、7弦はSIT STRINGSの.009~.054です。

Seiji 僕もほぼ一緒です(笑)。6弦には.010~.046のセット、7弦には.010~.058を張っています。

制作を振り返って、特に活躍した機材は?

Yuki やっぱりマーシャルのアンプかな。

Seiji 僕もアンプですね。

音の出口となるアンプを軸に音作りをしているという感覚でしょうか?

Seiji そうです。僕の中では、“ギター・サウンドは9割アンプで決まる”と思ってるくらい、出口の音が重要だと考えているんですよ。憧れのギタリストと同じような音を出したいという理由で、同じギターを手に入れたとしても、鳴らすアンプが異なるとかけ離れた音しか出ないと思うんです。でも、アンプを同じにすれば、ギターが違っても、そこそこ近い音が出る。それくらいアンプは音を作るうえで重要な存在ですね。

Yuki 確かに私も、音色を作るうえでアンプが大きな役割を果たしてると思っていて。なので、最近はプラグインで音作りをする人も多い中、アンプのスピーカーから出た爆音をマイクで拾ってレコーディングするというやり方なんです(笑)。

アルバムを作り終えた今、ギター・インストという表現が持っている可能性についてはどのように感じていますか?

Seiji 正直、ギター・インストゥルメンタルというジャンルはマイナーだと思うんです。でも、僕らは歌詞がないだけで“歌はある”と思っていて。例えばインストの作品っていうのは、テレビのスポーツ番組やニュース速報のBGMで使ってもらったり、忘れた頃に急に人気が出て売れたり、ものすごいロングセラーだったり……様々な場面で需要があって、ずっと“生きている”感じがする。そういう意味で、“ずっと生き残れるジャンルの1つでもある”とも感じています。とはいえ、まだまだ知られていない部分も大きいので、もっともっと聴いてほしいですね。

Yuki さっきSeijiさんが言っていたように、インストの音楽ってテレビや映画、ゲームなど普段の生活の中で耳にしていると思うんです。何気なく聴いている音楽なんだけど、それをもっと多くの人に興味を持ってもらえるようにこれからも音楽活動をしていきたいですね。

Yuki

作品データ

『DYNAMOTIVE』
D_Drive

Marshall Records/MAR005CD/2022年8月26日リリース

―Track List―

01. Red Light, Green Light(邦題:だるまさんは転ばない)
02. Begin Again
03. I Remember The Town(邦題:古き良き街)
04. Get Away
05. Be Yourself
06. Runaway Boy
07. Thumbs Up
08. Wings
09. U_Me
10. Breakout

―Guitarists―

Seiji、Yuki

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