感情をむき出しにしたギター・プレイで観る者を虜にするジョン・フルシアンテ。彼のギター・プレイからは並々ならぬ迫力や激情を感じるが、一方である種の“儚さ”も秘めているように聴こえる。今回は、そんな彼が自身のギター・プレイに込めてきた想いを克明に語ってもらった。
This article is translated or reproduced from Guitar Player #728 and is copyright of or licensed by Future Publishing Limited, a Future plc group company, UK 2022. All rights reserved.
翻訳=トミー・モリー Photo by Ethan Miller/Getty Images
“俺がギターで伝えなくちゃいけないのは何なんだ?”という疑問があったんだ。
あなたのギター・プレイの核は“エモーショナル”な部分にあると思います。そういったプレイ・スタイルになっていったきっかけはありますか?
オー、ゴッド! それはかなりグッドな質問だけど、答えるのが難しいね。挙げるとするなら、自分が14〜18歳の頃に体験した色々な“葛藤”から学びを得た気がするよ。そして、幸運なことにその時期は俺の頭脳ができあがっていった時でもある。その頃は学びたいと思うものなら何でも学んで、すぐに実践していたね。そこからだんだんと、俺のギター・プレイはエキサイティングなフェイズに達していった。
しかし、頭の中には常に“俺がギターで伝えなくちゃいけないのは何なんだ?”という疑問があったんだ。俺は自分にはないエッセンスを持っている人たちに対して、並ならぬ憧れを持っていて、特異な個性を持ったギター・プレイヤーに惹きつけられていた。しかもその人たちは、誰もが自分自身の伝えたいことの“核”のような部分がはっきりしていたんだ。
だから俺がティーンエイジャーだった頃は“ほかの誰とも異なる、俺が伝えなくちゃならないことって何だ?”といったことをよく考えていたよ。
なるほど。そこから音楽理論を学んでいったと聞きましたが、プレイにはどういった影響がありましたか?
音楽理論は、自分が好きなギター・プレイや音楽を分析する手助けになったんだ。例えば、俺がビートルズの「Something」に合わせてギター・ソロを弾くとしよう。
ジョージ・ハリスンが鳴らしているいくつかの音には、“彼は一体何を考えているんだ?”と感じさせるノート(音)がある。それに“どうして彼が弾くとこんなにグッドなフィーリングになるんだ?”とハッとさせられるタイミングがいっぱいあるんだ。
そういった疑問も、理論を知ることでより深く分析できるようになる。それらの音がコードの中でどんな役割を担っているかを考えたり、独特な音使いのインターバルについても考察していったりね。
だから俺が理論を知ろうとするのは“自分が抱くエモーションの理由”をより深く理解するためなんだ。
結局、伝えてきたもののほとんどは“儚さや傷つきやすさ”だった気がするんだ。
エモーションを理解するために理論を学ぶのは興味深いですね。理論に頼ると機械的なアプローチになりがちだと多くのプレイヤーが考えていますが、あなたは正反対です。
そういった心は大切だからね。なんていうかさ、誰しも自分が鳴らすサウンドに対して自信を持ちたいんだ。また、俺は音楽で最も人の心を惹きつけるものは“儚さ”だと思っているんだ。俺にとってその“儚さ”っていうのは、楽器を弾いている時に心が脆く、儚いほど、リアルに表現できる。クリーン・トーンを使って、音色を控えめに表現したりすることもその一環だね。
ただ、その儚さを手に入れることは、自分に自信を持つことと同じくらいに難しいことだと今でも感じてるよ。でも、友人やパートナー、また自分とギターとの関係にある“儚さ”や“傷つきやすさ”にもっと気がつくことができたら、たとえそれが些細なことであっても、きっと自分の心やギター・サウンドの強さに還元できるようになるだろう。
それはあなたが若い頃に影響を受けてきたギタリストたちの多くに共通していることでもありますね。
自分のギター・プレイを通じて“人々に何を伝えなければならないのか”をガキの頃から考えてきたけど、結局、伝えてきたもののほとんどは“儚さや傷つきやすさ”だった気がするんだ。だから“他者を支えるためのプレイ”をしてみたり、俺のメンタルを脅かすような環境に自分自信を追い込む必要もあった。
時には自分のハートを世間に曝け出し、多くの人たちに踏み付けられるようなことになるかもしれないけど、それでもOKとしなければならないんだ。わかるだろう?
ギター・マガジン2020年3月号
『ジョン・フルシアンテ、帰還!!!』
ジョン・フルシアンテのRHCP帰還を記念して、全アルバム・インタビュー&使用機材を一挙掲載! ソロでの活動や奏法も深掘りし、音楽家としての全貌に迫る!
ギター・マガジン2022年6月号
『ジョン・フルシアンテ完全復活!!!!』
ジョン・フルシアンテ復帰後のRHCPがリリースした最新アルバム『Unlimited Love』を徹底深堀り!! 作品についてジョンが語った最新インタビューも、国内独占掲載!!
作品データ
『Return of the Dream Canteen』
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
ワーナー/WPCR-18552/2022年10月14日リリース
―Track List―
- Tippa My Tongue
- Peace And Love
- Reach Out
- Eddie
- Fake As Fu@k
- Bella
- Roulette
- My Cigarette
- Afterlife
- Shoot Me A Smile
- Handful
- The Drummer
- Bag Of Grins
- La La La La La La La La
- Copperbelly
- Carry Me Home
- In The Snow
- The Shape I’m Takin(※国内盤ボーナス・トラック)
『UNLIMITED LOVE』
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
ワーナー/WPCR-18552/2022年10月14日リリース
―Track List―
- Black Summer
- Here Ever After
- Aquatic Mouth Dance
- Not the One
- Poster Child
- The Great Apes
- It’s Only Natural
- She’s a Lover
- These Are the Ways
- Whatchu Thinkin’
- Bastards of Light
- White Braids & Pillow Chair
- One Way Traffic
- Veronica
- Let ‘Em Cry
- The Heavy Wing
- Tangelo
―Guitarist―
ジョン・フルシアンテ