スティーヴ・レイシーが語る、ファズ回路内蔵のシグネチャー・ストラトキャスター スティーヴ・レイシーが語る、ファズ回路内蔵のシグネチャー・ストラトキャスター

スティーヴ・レイシーが語る、ファズ回路内蔵のシグネチャー・ストラトキャスター

時代の最先端をひた走るミュージシャン、スティーヴ・レイシー。ジ・インターネットやソロ活動で世界的評価を高めているこの次世代のギタリストが、フェンダーから自身のシグネチャー・モデルとしてSteve Lacy “People Pleaser” Stratocasterをリリースした。クラシカルな雰囲気の中に遊び心のあるデザインを織り混ぜたルックス以外にも、ファズ回路=“Steve Lacy Chaos Fuzz”の内蔵というユニークなポイントが見どころだ。今回はこの新たな相棒について、スティーヴ・レイシー本人にインタビュー! ストラトキャスターそのものの魅力や、本モデルの使い方などをたっぷりと語ってもらった。

インタビュー/翻訳=トミー・モリー 質問作成=伊藤雅景

Fender
Steve Lacy “People Pleaser” Stratocaster

スティーヴ・レイシーのシグネチャー・ストラトキャスターは、ファズ回路=“Steve Lacy Chaos Fuzz”サーキットの内蔵が最注目ポイント。9V電池駆動で、バッテリー・ポートはボディ裏のパネル内に設置されている。コントロールは、マスター・ボリューム&マスター・トーン仕様で、ボディ・エンド側のトーン・ノブはファズのアウトプット・ボリュームとなっている。

ピックアップにはPlayer Plus Noiseless Stratを3基搭載。ボディ・トップは3トーン・サンバーストで、ボディ・バックはピンク掛かったサンバースト。12フレットのダブル・ダイス・インレイ、チェッカー柄のバック・パネルやスティーヴによるイラストが描かれたジョイント・プレート、ヘッド裏のサインなどが特徴だ。

スティーヴ・レイシー
スティーヴ・レイシー

ポイントはファズの回路をギター本体に内蔵したことだね

フェンダーからあなたのシグネチャー・モデル、Steve Lacy People Stratocasterが発売されました。まずは製作の経緯から教えて下さい。

 この話は2021年頃にもらったんだ。自分としてはかなり前のことのように感じているんだけど、アルバム『Gemini Rights』(2022年)にともなう一連の制作やクレイジーなツアーと並行して発表することになったのは、面白いことだと思っている。かなり美しいことだと思うし、うまく形になって嬉しいよ。

ギターとして最もこだわった部分はどこですか?

 ファズの回路をギター本体に内蔵したことだね。

“Steve Lacy Chaos Fuzz”サーキットのオン/オフ・スイッチ。
トーン・ノブのS-1スイッチがファズ回路=“Steve Lacy Chaos Fuzz”サーキットのオン/オフになっている。

その“Steve Lacy Chaos Fuzz”サーキットですが、どんなタイプのファズなんですか?

 けっこうクラシックなタイプのファズで、クレイジーな部類のものとはまったく違うね。ファズを効かせてもコードの音がしっかりと聴きとれるものにさせたかったし、ディストーションやコンプレッサーといったほかのペダルと組み合わせても使えるようにしたかったんだ。

このファズはどういう時に使いますか?

 ソロをプレイする時に使うことが多いかな。ディストーションの効いたロック・ミュージックをプレイするなら、常にオンにしておくのも悪くないよね。でも僕の曲でそこまで歪んでいるものは少なくて、あっても1〜2曲くらいなんだよ。だからロードに出ていても、使うのはやっぱりソロでの場面になるんだ。

数台の歪みペダルの上にさらにスタックさせるという使い方が多いのですか?

 そのとおりだね。

ちなみにあなたの場合、ステージでは足下にペダルボードを置いていますか? それともテクニシャンにコントロールしてもらっていますか?

 自分でコントロールできるように足下に置いているよ。友達に組んでもらったペダルボードがあるんだ。

では、ソロの場面でペダルボードが置いてある位置に戻らなくて良いのも利点の1つですよね。

 そうなんだよ! かなり使い勝手が良いものだし、これが1つの見せ場を作ることにつながったりもしてくれている。これは僕の中での秘密兵器っていう感じなんだ。

スティーヴ・レイシー本人によるSteve Lacy “People Pleaser” Stratocasterのプロモーション動画

当初はギターの背面を完全なピンクにするつもりだった

あなたはAmerican Professional II Stratocasterなども使ってきましたが、そういったほかのストラトキャスターとはどんな違いがありますか?

 基本的な作りは一緒だと思うよ。今手元にスペックシートがないから詳細はわからないけど、一般的な1965年製のリイシューをベースに少しずつ変えた感じだよね。

フロントとバックで違う色のサンバーストだったり、12フレットにあるダブル・ダイス・インレイなど、ルックスも特徴的です。

 12を表現したサイコロの目を12フレットに配置させるとクールだと思ったんだ。特に深く考えたものではないんだけど、ほかのギターとは違うものにしたくてね。あと、当初はギターの背面を完全なピンクにするつもりだったんだよ。そこからフェンダーとやり取りをする中で、最終的に“ピンクっぽいサンバースト”に落ち着いたんだ。

周囲の人たちからの評価はどうですか?

 このギターについてまだ誰にも教えてないんだ(笑)。しばらく秘密にしてきたようなところがあるからさ。

本器でレコーディングした音源、ライブ映像など、読者がこのモデルのサウンドを聴けるものはありますか?

 まだこのギターを使ってレコーディングしたパフォーマンスはないけど、ここ最近のライブではずっとプレイしているよ。だから『Gemini Rights』のツアー映像を見てくれれば、僕がこのギターを弾いている姿が確認できるはずだよ。

どんな人たちにこのギターを弾いてもらいたいですか?

 みんなに手に取ってもらいたいと思っているよ!

Steve Lacy “People Pleaser” Stratocasterのデモ演奏動画

好きなストラトキャスター使いはジミ・ヘンドリックスなんだよね

あなたがストラトキャスターに求めることとは?

 僕はストラトキャスターが持つユニークさや弾きやすさが大好きでね。持った感じが快適なところも気に入っているんだ。

好きなストラトキャスター使いは誰ですか?

 実はジミ・ヘンドリックスなんだよね。

では、ジミの曲の中でストラトキャスターの魅力が詰まった曲といえば?

 うーん……全部の曲じゃないかな(笑)? ジミ・ヘンドリックスがストラト以外をプレイしているイメージがほとんどないからね。

ジミの曲をライブでカバーしたことなどはあるんですか?

 それはないよ! 僕は彼のことをあまりにもリスペクトしてしまっていて、アンタッチャブルな存在くらいに感じているんだ。あまりにも完璧でデリケートなものだから、僕がそこに踏み込んでしまうと何かを壊したり台なしにしてしまうような気がするんだ。

スティーヴ・レイシー
スティーヴ・レイシー

ストラトキャスターをプレイする時はどういったアンプを使っていますか?

 アルバム『Apollo XXI』にともなう日本ツアーではオレンジのアンプ(Rockerverb 100)を使っていたけど、最近はフェンダーのデラックスやツインといったクラシックなアンプを好んで使っているよ。

それは何かサウンドの変化があってアンプの嗜好が変わったのでしょうか?

 いや、“フェンダーのアンプも”好んで使っている、っていうところかな。

アンプの設定は?

 基本的にクリーンにしていて、歪ませる時はペダルを使っている感じだね。

本日はありがとうございました! あなたはコロナ禍の直前(2020年2月)に来日した最後のアーティストの1人だと思います。

 本当にそうだったね。日本にいたのはすべてがシャットダウンする直前だった。

ぜひまた来日して、このギターの音を聴かせて下さい!

 近いうちにそっちに行くことになると思うんだ。その時だね!

Fender
Steve Lacy “People Pleaser” Stratocaster

【スペック】
Body Material:Alder
Body Finish:Gloss Polyester
Neck:Maple, Deep “C”
Neck Finish:Gloss Urethane
Fingerboard:Maple, 9.5” (241 mm)
Frets:21, Narrow Tall
Position Inlays:White Pearl Dots with Custom Dice Inlay at 12th Fret (Maple)
Nut (Material/Width):Synthetic Bone, 1.685” (42.8 mm)
Tuning Machines:Fender® Vintage-Style
Scale Length:25.5” (64.77 cm)
Bridge:6-Saddle Vintage-Style Synchronized Tremolo with Bent Steel Saddles
Pickguard:3-Ply Parchment
Pickups:Player Plus Noiseless Strat® (Bridge), Player Plus Noiseless Strat® (Middle), Player Plus Noiseless Strat® (Neck)
Pickup Switching:5-Position Blade:Position 1. Bridge Pickup, Position 2. Bridge and Middle Pickup, Position 3. Middle Pickup, Position 4. Middle and Neck Pickup, Position 5. Neck Pickup
Special Electronics:Fuzz output volume with S-1 Switch to activate Steve Lacy Chaos Fuzz
Controls:Master Volume, Master Tone, Fuzz Output Volume
Control Knobs:Aged White
Hardware Finish:Nickel/Chrome
Strings:Fender® USA 250R Nickel Plated Steel (.010-.046 Gauges), PN 0730250406
Case/Gig Bag:Vintage-Style Black (Green Interior)

【価格】
市場想定定価:203,500円(税込)

【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp