ギター・マガジンのアーカイブから、90年代に活躍したオルタナティブ/グランジ・ロック・バンドのギタリストの記事をピックアップして組み上げたムック、『Guitar magazine Special Issue 1990’s Alternative Rock』が発売中。
今回はその中から特別に、スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガン(vo,g)とジェームス・イハ(g)のインタビューを一部抜粋してお届けしよう。
1991年に1stアルバム『Gish』をリリースし、翌年に初来日した際に行なったインタビューで、当時の音楽シーンを辛辣に評する言葉も聞けた歴史的な記事だ。この続きもぜひ本書でチェックしてほしい。
Interpretation : Hatsue Fujibayashi Photo by Paul Natkin/WireImage/Getty Images
『Guitar magazine Special Issue 1990’s Alternative Rock』
スマッシュ・パンプキンズ以外にも、カート・コバーンやサーストン・ムーア、ケヴィン・シールズなどのインタビューも! さらに、オルタナ・レジェンドたちの来日時に撮影した機材も多数掲載!
アンプのゲインを目一杯上げるから、そういう効果が得られるんだ。
──ジェームス・イハ
初来日公演の感想は?
ビリー・コーガン(以下ビリー) グレイト!
ジェームス・イハ(以下イハ) なかなかだったよ。
かなり激しいステージでしたが、いつもああいった感じなんですか?
ビリー そう。いつもね。
イハ ライブは毎度あんな感じだよ。
ビリー 特に自分たちのことをあまり知らない客の前だと、普段よりもインパクトのあることをやったりするんだけどね。でも日本の観客のノリはまったく違和感なかったから、いつもどおりのことができたんだ。
2人共フィードバックを利用したりして、ノイズっぽいサウンドを出すのが好きみたいですね。
ビリー 好みの問題っていうよりは、そういうことをするのが自然に感じられるんだ。前からそういうプレイをしてたしね。なめらかにプレイすることには興味がないんだよ。もしそうだったら、もっと高い位置でギターを弾くね。
イハ ロバート・フリップみたいに椅子に座りっぱなしとかね。
ビリー それじゃ全然動けないじゃないか。僕は嫌だな。
エフェクターを多用してるようですが?
ビリー いや、そう思われがちなんだけど、実際は大して使ってないよ。2人共セッティングは似ていて、ADAのプリアンプ(MP-2)がメインなんだ。
床にもラックにもエフェクターが大仰に並べられてるけど、全部使ってるわけじゃない。大半はアンプ直でプレイしてるよ。2人のギターから変な音がいっぱい出るもんだから、みんなエフェクターを使いまくっていると思い込むらしいね。
イハ アンプのゲインをもう目一杯上げるから、そういう効果が得られるんだ。
ビリー ギリギリまでね。ギターそのものが出す音を最大限に生かそうと思ってるから。あとは手の力さ。
ビリーはストラト、イハはレス・ポールがメイン?
ビリー うん。バンドを始めた頃は70年代に作られたフェンダー・ムスタングを弾いてたんだ。ジェームスは日本製のTLタイプで、とにかく音がひどかったのを覚えてる。アンプはオンボロのRolandを使っててね。
そのうち僕はストラトを使い始めたんだけど、もっとギタリストが2人いることを前面に押し出したくて、ジェームスがレス・ポールを弾くことになったんだ。そのほうが、どっちがプレイしているのかはっきりわかるからね。それでそのスタイルが気に入ったわけ。で、アンプは今、マーシャルを使ってる。
サーストンとフルシアンテ。彼らの哲学には僕も共感できる。
──ビリー・コーガン
ソロはその場でインプロヴァイズすることが多い?
ビリー そうだね。自由な空間をできるだけ作るようにしてるよ。必ず同じように弾かなきゃならないソロは1つもないんだ。それに、アルバムとギグはまったく別の次元のものだしね。
ギター・パートの分担はどうやって決めてる?
イハ 僕は速弾きがまるでダメだから(笑)、おのずとパートは決まってくるよ。
ビリー っていうより、その人にふさわしいものをね。だけど、僕がボーカルをとっててギターがプレイできない時は、ジェームスに僕のアイディアを弾いてもらったりすることはある。その逆のパターンもあるしね。
影響を受けたギタリストは?
イハ ジミー・ペイジ、ロバート・スミス、ピーター・バックとか。影響されたっていうよりも彼らのプレイが好きでよく聴いてたんだ。
ビリー 僕の場合は、ジミ・ヘンドリックスから始まってヴァン・ヘイレンまでだな。これはあくまで過去形なんだけど。特にギターならジミヘン、音楽そのものならビートルズって感じだよ。彼らはそれまでの常識を覆したと思う。
その後のアーティストは、まだ誰もその次元まで到達してないよ。もし今、彼らが同じことをやっていてもインパクトがあるだろうね。
エディ・ヴァン・ヘイレンが好きってことは、ビリーはテクニカルなプレイヤーもフェイバリットなんですね。
ビリー もともとはテクニカルなプレイにのめり込んでた。でも今は“アンチ・ギター”だね。そういう姿勢でやってるんだ。何もかも忘れて、また最初からギターに取り組んでみようと思ってね。もうギター歴10年だから、好きなギタリストなんて死ぬほどいるんだよ。でも、結局は自分の個性が大切だ。
最近登場したギタリストで、気に入ってる人はいますか?
ビリー ほとんどがゴミみたいなもんさ。客観的に考えても本当にそう思うんだよ。イングヴェイ・マルムスティーンの登場で、ギターの可能性は行き詰まってしまったと感じる。彼よりも速く弾けるギタリストなんて存在しないんだから。ロック・ギター・ソロの終焉さ。その反面、ソニック・ユースのサーストン・ムーア、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテ。この2人はまさに“アンチ・ギター”の王道を突き進んでると思う。僕も、彼らの哲学には共感できるよ。
『Guitar magazine Special Issue 1990’s Alternative Rock』
品種 | ムック |
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仕様 | A4変形判/160ページ |
発売日 | 2023.06.07 |
ISBN | 9784845638970 |