横山健が語る、ド派手な最新シグネチャー・モデル“Kenny Falcon II”の魅力 横山健が語る、ド派手な最新シグネチャー・モデル“Kenny Falcon II”の魅力

横山健が語る、ド派手な最新シグネチャー・モデル“Kenny Falcon II”の魅力

横山健のトレードマークでもあるグレッチから、新たなシグネチャー・モデル“Kenny Falcon II”が発表された。ド派手なカラーリングに加え、新型のピックアップも搭載するなど、ルックス/サウンドの両面でさらなる高みを目指した1本と言えるだろう。本器の魅力やこだわりポイントにについて、本人に話を聞いてみた。

取材=ギター・マガジン 撮影=星野俊

Kenny Falcon II with String-Thru Bigsby

Kenny Falcon II with String-Thru Bigsby(フロント)
Kenny Falcon II with String-Thru Bigsby(バック)

ド派手なボディ・カラーが目を惹く最新のシグネチャー・グレッチ

 約7年ぶりとなる横山健の最新シグネチャー・モデル、Kenny Falcon II with String-Thru Bigsby。アーリー・サマー・グリーン・スパークルと名付けられたド派手なボディ・カラーや、TV Jonesと共同開発したオリジナルのピックアップなど、こだわりがふんだんに詰め込まれた1本だ。

新たなシグネチャー・モデルのKenny Falcon IIですが、当初はどんなギターにするイメージだったんですか?

 グレッチの契約ギタリストになったこともあって、やっぱり“もう1本、Kenny Falconでバシっとしたものを作りたい”って思ったのかな。ここで僕がボ・ディドリー・モデルみたいなのを作るのも違うし(笑)、やっぱりファルコンだろと。

 それで、まずはカラーリングから考えていったんですけど、僕が最初にグレッチに投げたアイディアが突飛だったらしく実現ができなくて…(笑)。で、ある時、Kenny Falcon Jr.で採用していたアーリー・サマー・グリーンにラメを吹いたらどうかな?と思いついたんです。

 それで実際にやってもらったら、“これは良いぞ”となりまして。そこから本体の仕様を考え始めました。ありきたりだとシグネチャー・モデルの意味がないし、何か特別なアイディアがないかなと考えていましたね。

やっぱり最大の特徴は3ピックアップですよね。グレッチでは珍しい仕様ですが、これはなぜ?

 完全に見た目の問題です(笑)。3ピックアップって単純にカッコいいじゃないですか? グレッチではあまり見ないし。

リア・ピックアップはTV Jones製のKenny’Tronという健さんオリジナルのモデルが搭載されていますが、このために開発したんですか?

 実はそうではないんですよ。僕はTV Jonesのトムさん(Thomas V. Jones)とたまに連絡を取りあっているんですが、“Kenのサウンドを聴いてインスピレーションが沸いた”と、プロト・タイプのピックアップを送ってきてくれたことが3〜4回ありまして。その時に作ってくれたものが、Kenny’Tronのもとになっているんです。

初代のKenny Falconに搭載されていたTV Jonesとはどう違うんでしょう?

 単純に出力がデカくなって、より“ホット”になりましたね。音のイメージを英語で伝えるのは難しかったんですが、色々と考えた末にもう少し歪むものがいいなと思って。普通のTV Jonesのピックアップと比べると、さらにハッキリと歪んでくれる印象です。

 フィルタートロンも歪ませようと思えば歪みますけど、あんまり強いディストーションをかけると音が潰れてしまうんですよね。でも、Kenny’Tronはハイゲインなアンプで歪ませても、コシのあるサウンドが出てくれるんですよ。特に巻き弦のあたりとか良いですね。

センター&フロント・ピックアップはTV Classicが搭載されていますが、Kenny’Tronではないんですね。

 Kenny’Tronはポールピースが黒いんですけど、さすがに3基ともKenny’Tronだと見た目がビザールすぎちゃうので。そこはちょっと抵抗があったんですよ。グレッチはルックスも大事なので。

また、今までのKenny Falconシリーズでは、ピックアップの位置をギリギリまで高く上げているのが共通の仕様でした。

 特別にそういう話をしたわけじゃないんですけど、グレッチのクラフトマンは僕の好みをわかってくれてるので、こうしてくれたんじゃないかな。リアは特に上げていますね。最近はほかのギターも、ギリギリまで上げてますよ。

センターPUもかなり上がっていますけど、弾きにくさはないですか?

 僕も3ピックアップは初めてだったから邪魔にならないか心配していたんですが、まるで気にならないですね。

じゃあ普段は2ピックアップのギターを弾いている人でも心配ないですかね。

 そうですね。でも、“このパーツがあるから弾けない”とか“このスケールだと弾きづらい”とか、全部弾かないための言い訳じゃないかなと僕は思うんです。

 今は何でも代替品がある時代だけど、昔だったらそれを乗りこなせるように自分のプレイ・スタイルをアジャストしていたわけですしね。まぁ若い人にこれを“弾きづらい”って言われちゃえばそれまでなんですけど(笑)。

 僕はこれまで40年ほどギターを弾いてきましたけど、そういう風にギターに振り回されてプレイ・スタイルが変わっていくことが、いまだに楽しかったりするんですよ。

ハウリング対策などはされていますか?

 全然していないですね。練習スタジオとか狭いライブハウスだと多少はハウるかもしれないけど、案外と大丈夫なんですよ。まあ僕がもともとハウリングが好きだから気にならないっていうのもありますが(笑)。

 まあ、ハウってもマスター・ボリュームをちょっと絞ればおさまるので、みんな気にすんなと(笑)。レコーディングじゃなくてライブなんだから、そんなこと気にしなくて良いじゃないかと思います。

 確かに箱モノでハウリングが強すぎて使えないギターもありますよ。でも、Kenny Falcon IIはそれほどでもないですね。セッティングによるんでしょうけど、僕はハウっていてもある程度良い感じで使えているので、皆さんもそのポイントを見つけられると思います。

ちなみに本器はすでにライブでも使っていますか?

 レコーディングではまだ登場していませんが、ライブでは毎ステージで使っていますよ。セットリストの半分くらいはこいつで弾いているんじゃないかな。

 最近は今までのシグネチャーとフェンダーのテレキャスター、ナビゲーターのLPタイプを持ち替えることが多いんですが、2015年にリリースした「I Won’t Turn Off My Radio」とかは絶対にグレッチで弾きたくて。そういう曲はほかにもあるので、無理矢理にでも持ち替えてますね。

では最後に、このギターをどんな人に弾いてほしいですか?

 本当のことを言うと、僕のことをまるで知らない人が手に取ってくれるのがゴールですね。横山健のことは知らないけど、このギターはカッコ良いなって。でも、シグネチャー・モデルはその人のファンが買うものっていう認識があるかもしれないけど、その垣根をぶち壊していきたいですね。

こんな仕様のギターはないですもんね。

 僕のことを好きなファンすらドン引きするくらい、エキセントリックなものを作ろうと思ってこのプロジェクトに取り掛かかりましたからね(笑)。だから、色んなプレイヤーに弾いてほしいです。このくらいぶっ飛んだものを、1本くらい持っておいても良いと思いますよ!

Kenny Falcon IIのトグル・スイッチ。
3つのトグル・スイッチ。左から、センター・ピックアップのオン/オフ、三段階のトーン・プリセット、3wayのピックアップ・セレクター(フロント/フロント+リア/リア)。本人曰く、トーン・プリセットがサウンドのキモだそうで、横山は上側(ポジション1)を使用。“コンプレッサーをかけたような印象になって、歪みが乗りやすくなる”とのこと。
Kenny Falcon IIのピックアップ。
ピックアップは、TV Jones製のKenny’Tron(リア)、同社製のFilter’Tron Classic(センター/フロント)を搭載。3ウェイのPUセレクターではフロント/リア&フロント/リアの切り替えができ、センターPUは独立したオン/オフ・スイッチで制御する。横山は歪みでリア、クリーンでリア&フロントを使用。
Kenny Falcon IIのリアに搭載されたKenny’Tron。
リアに搭載されたKenny’Tronは、TV Jonesのトーマス・V・ジョーンズが横山のサウンドをイメージして製作したピックアップ。ハイパワーなアンプで歪ませても、コシのあるサウンドが出ると本人談。
Kenny Falcon IIのマスター・ボリューム。
Kenny Falcon IIのマスター・ボリューム。横山は、ディストーションとクリーン・サウンドではマックス、クランチでアルペジオを弾く際には若干絞った状態にセッティングしている。
Kenny Falcon IIのボリューム・ノブ。
ピックアップごとのボリューム・ノブ。横山は上述のマスター・ボリュームでゲインをコントロールしているため、こちらのボリューム・ノブを使うことはほとんどないそう。
Kenny Falcon IIのハンプ・ブロック・フェザー・インレイ。
 横山が好みのデザインだと語る、ハンプ・ブロック・フェザー・インレイ。プロト・タイプが届いた時には、すでにこのインレイが採用されていたという。グレッチには、馬の蹄やカントリー調のデザインなど、ほかにもさまざまな絵柄のポジション・インレイがある。
Kenny Falcon IIのヘッド・デザイン。
Kenny Falcon IIのヘッド・デザイン。初代のKenny Falconと同様に横書きのロゴを採用している。プロト・タイプでは縦書きのロゴだったが、初代との整合性を取るためにこのデザインに変更したそうだ。中央にある長方形のプレートには“THE KENNY FALCON II”と書かれている。
Kenny Falcon IIのアーリー・サマー・グリーン・スパークル。
Kenny Falcon Jr.のカラーリングにラメを吹いた、アーリー・サマー・グリーン・スパークル。本モデルは、この塗装の仕様を決めるところから始まったという。

Gretsch
G6136T Kenny Falcon II with String-Thru Bigsby

【スペック】
●Body Material: Laminated Maple
●Body Finish: Gloss Urethane
●Neck: Maple
●Neck Finish: Gloss Urethane
●Fingerboard: Ebony, 12” (305mm)
●Frets: 22, Medium Jumbo
●Position Inlays: Mother of Pearl Humpblock with Feather Engraving
●Nut (Material/Width): Bone, 1.6875” (42.86mm)
●Tuning Machines: Grover® Imperial™ Locking
●Scale Length: 25.5” (64.77cm)
●Bridge: Adjusto-Matic™ with Ebony Base
●Pickguard: Silver Plexi with Silver Gretsch Logo & Falcon Graphic
●Pickups: TV Jones Kenny’Tron (Bridge), TV Jones TV Classic Plus (Middle), TV Jones TV Classic (Neck)
●Pickup Switching 1: 3-Position Toggle: Position 1. Bridge Pickup, Position 2. Bridge and Neck Pickups, Position 3. Neck Pickup
●Pickup Switching 2: 3-Position Master Tone Switch: Position 1. Medium Level, High Frequency Roll Off, Position 2. Switch Out of Circuit, Pickup Wide Open, Position 3. Slight Level, High Frequency Roll Off
●Pickup Switching 3: 3-Position Middle Pickup Switch: Position 1. Off, Position 2. On, Position 3. Off
●Controls: Volume 1. (Neck Pickup), Volume 2. (Middle Pickup), Volume 3. (Bridge Pickup), Master Volume
●Control Knobs: Jeweled Arrow
●Hardware Finish: Chrome
●Strings: Nickel Plated Steel (.010-.046 Gauges)
●Strap Buttons: Grover® Strap Locks
●Case/Gig Bag: Deluxe Hardshell Case

【市場想定売価】
528,000円(税込)

【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 https://www.gretschguitars.jp