ミヤが語る、MUCCの25周年を締めくくる最新作『Timeless』【前編】 ミヤが語る、MUCCの25周年を締めくくる最新作『Timeless』【前編】

ミヤが語る、MUCCの25周年を締めくくる最新作『Timeless』【前編】

2022年からスタートしたMUCCのツアー“Timless”が、いよいよ2023年12月28日にグランド・フィナーレを迎える。それに合わせて作られた新作『Timeless』は、ツアーで再現した各アルバムをテーマにした新曲と、それぞれの作品からチョイスされた楽曲の再録で構成。結成25周年の締めくくりに相応しい、バンドの過去と現在をつなぐ1枚に仕上がった。それぞれの楽曲のアレンジやサウンドメイクについてミヤが語ったインタビューを、前編と後編に分けてお届けしよう。

取材/文=村上孝之 写真=冨田味我

“鍵盤が入っているからリテイク”ということではなく、もっと深いところで生まれ変わった

ミヤ

2022〜2023年にかけて行なった全国ツアー“Timeless”は、各アルバムの当時の空気を感じながら作られた新曲も、大きな話題を呼びました。このアイディアは、どう思いついたのですか?

 今も昔も、日記を書くように曲を作っていて。曲を作るスタンスは基本的に変わっていないんですよ。でも、今の自分が考えていることを昔の自分が考えたらどう思うだろうとか、逆にそれに対してどういうアドバイスをするだろう……みたいな感覚で曲を作ったら面白いんじゃないかなと思ったんです。

ニュー・アルバム『Timeless』は、ツアー中に発売された新曲と過去曲の再録バージョンが収録されています。まずはツアー“「Timeless」~是空・朽木の灯~”時に発表した「空 -ku- 」から話を聞かせて下さい。

  『是空』(2003年9月)と『朽木の灯』(2004年9月)に関しては、裏テーマとして“ラウドなものとヒップホップっぽいものを融合しよう”としていた部分があったんです。その感じを、今ならもうちょっと器用にできるんじゃないかと思って作ったのが「空 -ku-」で。

 それを『新世界 別巻』(2022年12月)というミニ・アルバムに入れて、今回の『Timeless』にはリミックス・トラックである「空 -ku- (JaQwa Remix)」を収録しています。

『是空』と『朽木の灯』からの再録曲には「路地裏 僕と君へ」をチョイスしていますね。

 「路地裏 僕と君へ」は“Timeless”ツアーで演奏していく中で、ビート感やグルーヴが広がった感覚があったんです。ビート感や16分の感じが今の体制じゃないと出せないものになったので、録り直すことにしました。今は鍵盤も入っていますが“鍵盤が入っているからリテイク”ということではなくて、もっと深いところで生まれ変わったと感じています。

その時に歌いたいメロディと感情、歌詞を入れているという感覚なんです

“「Timeless」~鵬翼・極彩~”ツアーにまつわる楽曲はいかがですか?

 『鵬翼』(2005年11月)と『極彩』(2006年12月)をモチーフにした新曲は、「想 -so-」と「耀 -yo-」という2曲ですね。逹瑯(vo)が書いた「想 -so-」ができたことで、対になる感情として「耀 -yo-」を作りたくなったんです。「耀 -yo-」はたまにある“降りてきた”パターンの曲ですね。

 ただ、こういう雰囲気の曲は俺の癖みたいなもので、その時に歌いたいメロディと感情、歌詞を入れているという感覚なんですよ。だから、何も考えずに作っていくと、こういうオリエンタルなものになるということが多いんですよね。

とはいえ「耀 -yo-」は決して、ストレートな曲ではありません。

 それは、リズムの面ですよね?

リズムもそうですし、場面の変化も活かされています。

 そういうのは“MUCC節”で、俺の中では特別なことではないんです。昔からMUCCは普通の曲に変拍子をあてることが多いんですよね。やっぱり、何か引っかかりが欲しいというか。茨城のバンドはそういうことをやりがちなんですよ(笑)。

 「耀 -yo-」は途中でリズムが変わりますけど、そこで心が動いているんですよね。一筋縄ではいかない突き動かされる何かがあって、ストレートにはいきたくない道を進んでいるから、そういうことになるというか。そういう感覚です。

なるほど。そして、『鵬翼』、『極彩』からの再録曲は「ガーベラ」(2006年2月)でした。

 昔はバンドだけで頑張って演奏していたんですけど、あとからピアノが入ったことによって、楽曲の性質がよりわかりやすくなったというのがあって。

 あと、オリジナルを録った当時はサビの16分のドラムが1発で録れなくて、100回くらいパンチインして作ったんです。要は自分たちのものではない、切り貼りで作ったグルーヴなんですよね。なのでアコギとかでそこを補っているんです。

 当時はライヴでも心地いい16ビートがなかなか出せなかったのが、今やっとできるようになった。だから、今この曲は演奏していて凄く楽しいんですよ。

そういうリフをEmだけで弾くというのは、俺ら世代には酷なんです(笑)

ミヤ

「ガーベラ」のイントロのギター・メロディが鳴る瞬間は本当にシビれます。ミヤさんはヘヴィなリフやブレイクダウンなどに乗せる抒情的な表現も独自の魅力になっていますよね。

 「ガーベラ」はメタルを作ろうと思って作ったものではなく、当時は「最終列車」(2005年10月)の進化版を作ろうと思っていたんです。「最終列車」はヘヴィさを取り除き過ぎたなというのがあって。やっぱりMUCCらしいヘヴィさは残したほうがいいと思って「ガーベラ」を作ってみた、というような感じだったんです。

「最終列車」をリリースした時に、賛否両論が巻き起こったことを思い出します。

 MUCCの新曲は全部、賛否両論なんですよ。で、2年後くらいに人気曲になるという(笑)。

新しいものが評価されなくても封印することなく、“だったら、もっといいものを作ってやるぜ”というスタンスですね。

 こう言うと語弊があるかもしれないんですけど、別に評価されるために作っていないので。MUCCのファンはヴィジュアル系のリスナーの中ではだいぶ柔軟なほうだと思いますけど、新しいことをやると最初は拒否反応を示す人が多いんです。

続いて、“「Timeless」~『志恩・球体』~”時にリリースした「99」は、メタリック&ドラマチックなナンバーです。

 この曲は当時やっていたメタルの感じを今やったら面白そうだなという、凄くシンプルな考えで作りました。往年のメタルっぽい感じは「アゲハ」(2008年8月)とかでイメージしていた部分があったけど、その時はやり切れていなかったので、「99」でさらに突き詰めたんです。

 だから、メタルというよりは商業ロックというか……ジャーニーみたいな。オケはメタルっぽいけど、シンセの音色やアレンジ、コード感はそういうイメージです。

たしかにそういう部分はありますが、Aメロのリフなどはジェントな雰囲気もあってモダンさが香っています。

 Aメロとかは今っぽいアプローチをしたんです。でも、イントロやサビはレトロな感じで、例えば、7弦で弾いているけど、6弦ギターでもいける音域というか。

 ただ、そういうリフをEmだけで弾くというのは、俺ら世代には酷なんです(笑)。全然ヘヴィじゃなくて……。せめてDくらいまでは下がりたい。で、ローのCまで下がって、ちょっと落ち着く……みたいな(笑)。

なるほど(笑)。『志恩』、『球体』からの再録曲として、「リブラ」(2007年3月)を選んだ理由も聞かせて下さい。

 「リブラ」は、当時オーケストラのトラックが打ち込みだったんです。まず、そこを生でしっかり録りたかったんです。

 あとは、歌が大きく変わってきているというのがあって。どっちが良いとかではなくて、オリジナルもメチャクチャ良いんですよ。特にサビの歌がクールというか、温度を感じないというか。

 でも、それが何十年も演奏してきた今は真逆になっているんです、その対比を見せたいなと思って再録しました。

作品データ

『Timeless』
MUCC

朱/MSHN-181/2023年12月28日

―Track List―

01.サイレン
02.G.G. -Timeless Ver.-
03.under the moonlight
04.99
05.リブラ -Timeless Ver.-
06.想 -so-
07.ガーベラ -Timeless Ver.-
08.死の産声
09.耀 -yo-
10.路地裏 僕と君へ -Timeless Ver.-
11.Timeless
12.空 -ku- (JaQwa Remix)

―Guitarist―

ミヤ