夫婦YouTuber“ヨメトオレ”にインタビュー! ギタリストとしてのMarco&ヨメちゃんの正体を紐解く 夫婦YouTuber“ヨメトオレ”にインタビュー! ギタリストとしてのMarco&ヨメちゃんの正体を紐解く

夫婦YouTuber“ヨメトオレ”にインタビュー! ギタリストとしてのMarco&ヨメちゃんの正体を紐解く

ギター系YouTuberとして夫婦で活動する“ヨメトオレ”をご存知だろうか? ハードロックに軸足を置くMarcoのリード・プレイと、スラム奏法を用いたヨメちゃんのアコースティック・ギターによるバッキングで組み上げられるカバー曲の数々は、シンプルでわかりやすく、多くのギタリストたちの注目を集めている。

楽器店大賞2023のギター部門で大賞に輝き、ますますその活動が見逃せない今、ギタリストとしての来歴や動画でのギター・プレイについてのこだわりなどを2人に聞いてみた。

インタビュー=福崎敬太 写真=本人提供

YouTubeをやるまで人前で演奏することが一切なかったんです──ヨメちゃん

ヨメトオレ。Marco(左)とヨメちゃん(右)。
ヨメトオレ。Marco(左)とヨメちゃん(右)。

ギターを始めたのはいつ頃でしたか?

Marco 高校1年生の頃、15歳ですね。きっかけも“ギターがやりたい”というわけではなくて。周りがみんなやり始めて、話に入っていけないから自分も始めた感じでした。

高校生の時にバンドは組んでいたんですか?

Marco 身内のバンド仲間みたいので集まって、遊びで音を出すっていうくらいしかできなくて。バンドには凄く憧れていましたね。田舎なのでライブハウスもなくて、ずっとバンドをやりたい気持ちを我慢していたんです。

 だから軽音楽部に入りたくて、1年半だけ大学に行ったんです。でも、そこでバンドをやって、“ヘタクソばっかでつまんねぇな”って辞めちゃったんです(笑)。凄く天狗だったんですよね(笑)。

若い頃には必要な姿勢ですよ(笑)。

Marco それで20歳くらいで大阪に引っ越したんです。そこで40歳過ぎのオッちゃんバンドに入れてもらって、ラウドネスのコピー・バンドとかをやっていました。

 ラウドネスはずっと好きで、高校時代もずっと弾いていたんです。日本のバンドだと筋肉少女帯とラウドネスばっかりコピーしていた気がしますね。

ヨメちゃんがギターを始めた経緯は?

ヨメちゃん 私は中学3年生の頃にYouTubeで押尾コータローさんの「Brand New Wings」を観て、“これが弾きたい!”ってなったのがきっかけです。お父さんがギターを弾いていて、家にギターがあったんです。

ギターを始めてからバンドなどの活動はしていましたか?

ヨメちゃん いえ、発表する場も一切ありませんでした。1人でお家に引きこもって弾いていたので、YouTubeをやるまで人前で演奏することは一切なかったんです。

ヨメトオレでは歌ってもいますが、YouTubeをやる以前はソロ・ギター・スタイルしかやっていなかったんですか?

ヨメちゃん そうですね。ただソロ・ギターと言っても、「Brand New Wings」と「Landscape」の2曲をただひたすら練習していたんです。

Marco レパートリーとしてもトータルで5曲くらいしか聴いたことがないんですよ(笑)。ヨメちゃんは誰に聴かせるわけでもなく、プラモ感覚というか、“CDと同じものを再現したい”っていう感覚でギターを弾いていて。だから、知り合った頃も“誰にも聴かせたことがない”って言っていたので、もったいないなって思って。

ヨメちゃん もったいないね、本当に。

Marco “これは色んな人に聴いてもらえよ!”と思って、5年くらい前に勝手に動画を投稿したんですよ。

そこが始まりなんですね。

Marco ヨメちゃんのギターをTwitterにアップしたら、一晩で20万回くらい再生されたんですよ。“おい、ふざけんなよ! 自分ばっかり目立ちやがって!”って思って(笑)。

 それで、その弾き方でコードを弾いてもらって、俺がメロディを弾くっていうスタイルを初めてやってみたんです。それが思いのほか再生されて、じゃあこれでやってみようって言ったのが最初でした。

音は手が生み出すものだと思っている──Marco

Marco

ヨメトオレ以前のギタリストとしての活動は?

Marco ヨメちゃんはまったくゼロなんですよ。ヨメトオレをやるまでは、人の目に触れないところでしか弾いていなかった。

 で、俺は20代の頃は大阪でバンド活動をやっていたんですけど、仕事をやりながらバンド活動もやっています、くらいの感覚でしたね。当時は楽器店に勤めていたので、楽器欲も満たされていて。月に2回くらいライブをやって、楽器店でギターを磨いて楽しい毎日、みたいな感じでした。

 そのあと30歳くらいで地元(岐阜県)に帰ってきたんですけど、その時にやっていたお店で、めちゃくちゃ歌が上手い子と出会ったんです。で、2009年頃にその男の子と一緒に動画の投稿を始めたんです。

YouTubeアカウントの一番最初のほうにあるやつですか?

Marco そうです。でも当時はYouTubeが今ほど盛り上がっていなくて、ニコニコ動画のほうが勢いがあったんです。なのでニコニコ動画のほうにガンガンアップしていって、公式のイベントに出演させてもらったり。その関連のライブ・イベントに呼んでもらったり。

改めて、影響を受けたギタリストについてそれぞれ聞かせて下さい。

ヨメちゃん 研究したのが本当に押尾さんだけなんですね。ほかにも音が好きなギタリスト、素敵な曲を書くギタリストだなって思う人はたくさんいるんですけど、影響を受けたギタリストとなると、私は押尾コータローさんしかいないと思います。

Marco 俺は筋肉少女帯の橘高文彦さんとドリーム・シアターのジョン・ペトルーシさん、ジェフ・コールマンさんっていうお三方。知ってからその後が変わる、っていうくらい影響を受けました。

 それは音作りがほとんどで、フレーズを盗むとかはあまりやっていなくて。“なんでこの人はこんな音が出るんだろう”っていうところで影響を受けたのがその3人ですね。

それは使用機材を真似るという感じですか? それとも弾き方を研究する?

Marco 弾き方のほうですね。音は手が生み出すものだと思っているので、機材は誰が何を使っているかは正直あまり知らないんです。どういう力加減で押しているのか、左右の手はどういうバランスなのかっていうのを音から聴き取りたいっていう感じでした。

 あ! あともう1人、最近多大なる影響を受けているのはAssHさんですね。

AssHさんのスタジオにも行っていましたね。

Marco 目の前で一緒に遊んでもらって、良い経験だったよね。

ヨメちゃん 本当に、良い経験でした(泣)。

Marco 目の前で聴いても、“あのままの音がするな”って。AssHさんのせいで、最近ギブソンのレス・ポールが欲しくてしょうがないですね(笑)。

ギターが上手いお兄さんやなぁって(笑)──ヨメちゃん

ヨメちゃん

2人の出会いを語る動画では男女としてのそれぞれの第一印象は語っていましたが、ギタリストとしての第一印象はどのようなものでしたか?

Marco これ聞きたい!

ヨメちゃん なんか“ギターがめっちゃ上手い人”。ギターで何でも弾くお兄ちゃんやな〜っていう感じでした(笑)。

どこかで観る機会があったのですか?

ヨメちゃん 当時……よくギター弾いてたよね(笑)?

Marco 雑(笑)。当時スナックをやっていたんですよ。カラオケがあるのでお客さんが歌うじゃないですか。そうすると“これに合わせてギターを弾け”って言われるんです。知らない曲でもアドリブでオブリを入れたり、それっぽいコードを被せたりっていうのをずっとやっていたんですよね。それを観ていたのが最初かな?

ヨメちゃん そうだね。そこでギターが上手いお兄さんやなぁって(笑)。

Marcoさんはお義母さんから“ギターを弾く娘”としてヨメちゃんを紹介されたんですよね?

Marco そうです。なので会ってすぐに“ちょっと弾いてみ?”って言って。“どんなギターを弾くのかな”っていう感じで聴かせてもらったら、最初から押尾コータローさんの曲を弾いてくれて。これは相当ガチやなって思ったんですよ。

 で、俺は褒められたいタイプなので、“この子に褒めてもらうには、アコギを弾くしかないな”って思って、それからアコギを練習し始めたんです。

アコギのスタートはそこなんですね。

Marco そう、エレキしかやっていなかったので。当時持っていたサーやトム・アンダーソン、ミュージックマンとか、エレキを全部売ってアコギを買ったんです。エレキを持っていたら絶対にアコギを練習しないなって思って。

それはストイックですね(笑)。

Marco スラム奏法をちゃんとやるのに、エレキがあったら“無理! アコギしんどい! エレキ弾こ〜”ってなっちゃう。その逃げ道をなくそうと思って。

ヨメちゃん それは当時聞いてなかったんですよ。あとで聞いた時に“なんで売っちゃうの!?”ってなったもん。

Marco だって言ったら嫌がるじゃん。でも売ってなかったら、俺はあんなにアコギを弾けないよ?

そういうスタイルがあるのか、という衝撃だったんですか?

Marco いや、純粋に悔しかったんです。17歳下の可愛い女の子が、こんなギターを弾くっていうのが衝撃で。それを真似したい、真似したうえで褒めてもらいたいと思ったんです。

ヨメちゃん (笑)。

“楽器を叩いて響かせる”っていうことが難しいんですよ──ヨメちゃん

ヨメトオレ

動画で演奏する楽曲はどのように決めているんですか?

Marco 俺たちのスタイルとして、ギター2本で演奏する、叩くアコギとボーカル、打ち込みでオケを作ってエレキと歌、っていう3つがあるんです。

 なので、“これはギター2本で弾いたらカッコ良いかも”って思う曲があったり、自分たちのスタイルに置き換えたら違う良さが出てくるかもっていう曲を選んでいます。

 あとは視聴者さんが喜んでくれそうな曲ですね。やっぱり俺ら2人がめちゃくちゃ好きでも“それ誰の曲?”って浸透しないものより、“みんながよく聴く名曲の良さを再発見してほしい”っていうことを考えていますね。

“一発撮り”とタイトルにある動画もありますが、2本のアレンジはどのように作っているんですか?

Marco まず俺がヨメちゃんパートのバッキングをさらうんですよ。その段階で“こういうふうに叩いたら、弾いたら面白そう”っていうアレンジができるので、それをヨメちゃんに伝授する感じです。

 アレンジを練っていくというよりは、“ドラムとベースとギタリストをやります”っていう気持ちでアコギ1本を持つと、だいたいあの感じになります。

「情熱大陸」や「サウダージ」などでも、バッキングのコードはシンプルですよね。テンション・コードや押さえ方の難しいコードを避けて、視聴者もコピーにチャレンジしやすいアレンジにしていると感じたのですが、いかがでしょうか?

Marco たしかに、こだわりかもしれないですね。特にオープン・コードを多く使うんですけど、結局一番オーソドックスなコードが一番“強い”んですよ。凝ったコードを弾くと抜かなきゃいけない音が増えちゃうじゃないですか。

 しかもバックが1パートしかなくて、バンドに負けないベース音とコードを出さなくちゃいけない。そうするとシンプルで誰でも知っているコードのほうが響き的にわかりやすいし、伝わりやすい。

録り方でこだわっていることはありますか?

Marco アコギだったらバランス、より打音かな? 打音をどれだけカッコ良く録るか、というところですね。

ボディ・ヒットの打音をカッコよく出すためのポイントは?

ヨメちゃん いや〜……私も練習中で、全部難しいです(笑)。打音って“楽器を叩いて響かせる”っていうことが難しいんですよ。

叩く位置で音も変わりますが、何か意識していることはありますか?

ヨメちゃん まさにそれを今模索中というか。本当に今まではただ叩くだけ、ただ楽器を鳴らすだけっていう感覚だったんです。“この打音をどういう意図で鳴らしているのか”っていうことを考えたことがなかったんですよね。今それを模索中で、スパルタ・レッスンを受けています(笑)。

最強の“楽器がうまい近所のお兄さん”が最終目的地──Marco

江頭2:50さんの“エガフェス0”で披露した曲はオリジナルですよね?

Marco そうですね。江頭さんがYouTubeのオープニング曲を視聴者から募集するっていう動画を出していたんです。そのために作ったやつですね。

 江頭さんが画面脇からダーッと出てくる勢いをイメージして、そのまま楽曲にした感じです。

2人のオリジナル楽曲の制作について、今後はどのように考えていますか?

Marco 今それをちょうど考えているところで。本当は2023年にオリジナル曲を出したかったんですけど、手首を痛めてしまいまして……(笑)。去年1年はまともにギターを触れなかったんですよ。だからアイディアばっかり溜まっているんです。

では手の完治を待ってスタートという感じでしょうか?

Marco 手と、あとは家庭的な時間ですかね。“ヨメちゃんねる【トノヒメ】”っていう日常を動画にしているチャンネルもやっているんですけど、その投稿もしながら楽曲も作っていく作業もしながら、子供も2人いる状況。ちょっと整頓しきれていないというのがあって。効率よくギターを録音できれば良いんですけど、弾いていられて1時間くらい。回復を待ちつつ制作のペースを掴んでいって、今年は色々やりたいね。

ヨメちゃん やりたいね〜。

さて、2023年には楽器店大賞2023の“ギタリスト部門”で大賞に輝きました。有賀教平さんなどもノミネートされている中での受賞ですが、感想を聞かせて下さい。

Marco 恐縮しかないですね。だって俺は有賀さんに投票しましたから(笑)! ただ、本職でギタリストというお仕事をされている方ではなく、YouTuberの我々を選んでいただけたというのは、時代なのかなとは思いました。

 プレイヤーとしてはめちゃくちゃ恐縮、申し訳ない気持ちでいっぱいですけど、プロじゃなくてもギタリストとして活動できる世の中になってきたのは、多くの人にとっての希望になるのかなって感じましたね。

最後に、それぞれギタリストとしての目標を聞かせて下さい。

ヨメちゃん 私はとにかく“カッコ良い”を追求していきたいと思っています。“わ、カッコ良い!”、“こういうの良いな!”って感動することの中には、楽しみだったり色んな感情があると思うんです。1人でも多くの人にそういう感情を持っていただけるような、そんなギターを弾けるギタリストになりたいですね。

Marco 俺は最強の“楽器がうまい近所のお兄さん”ポジションを狙っています。YouTuberってプロのミュージシャンやタレントさんよりも、身近な感覚ににとらえて下さる方が多いんですよ。なので、最強の“楽器がうまい近所のお兄さん”が最終目的地。

ヨメトオレとしての目標は?

ヨメちゃん Marcoさんの手首もだんだん良くなってきているので、一旦休止していたヨメトオレをもうちょっと動かしていきたいなって思っています。

Marco 当面の目標はそうだね。ヨメトオレは本格的な活動を休止していて、今はギターを始めたての高校生のような気持ちでギターからも音楽からも色々なことを学んでいる最中なんです。そういう変化の過程も皆様に楽しんでいただけるよう精進していきたいと思っています。

 あと大きい目標としては、武道館の真ん中にコタツを置いてライブをやりたいんですよ。視聴者さんのことを“ご親戚さま”って呼んでいるんですけど、親戚一同でコタツを囲んだライブをやる、というのが目標です。

ヨメトオレ

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