トム・ミッシュが語る、ギタリストとしての再出発(後編)| 人生初のギター・シンセで奏でた 「Cinnamon Curls」と、70年代のソウル・グルーヴ トム・ミッシュが語る、ギタリストとしての再出発(後編)| 人生初のギター・シンセで奏でた 「Cinnamon Curls」と、70年代のソウル・グルーヴ

トム・ミッシュが語る、ギタリストとしての再出発(後編)|
人生初のギター・シンセで奏でた 「Cinnamon Curls」と、70年代のソウル・グルーヴ

ギタリストとしてのトム・ミッシュが復活! それを祝福して、ギタマガWEBでは全3回にわたるインタビュー特集を展開中だ。後編となる今回は、6月に配信された最新シングル「Cinnamon Curls」についてのエピソードをお届けしよう。

インタビュー・翻訳=トミー・モリー Photo by Kieran Frost/Getty Images

初めてLogic内蔵のアンプを使わないで録音した曲の1つだと思う。

最新シングル「Cinnamon Curls」は、70年代のスウィート・ソウルを感じさせる雰囲気が最高にクールです。あなたにとっては初めての方向性ですよね。

ブーツィー・コリンズやアンダーソン・パークっぽいところが少しずつあって、ああいったソウルのヴァイブがたっぷり感じられるよね。これはロサンゼルスでジミー・ネイプスと一緒にセッションをした時に作ったんだけど、「Insecure」と同様、もう5年も前の曲なんだ。だから、今の僕にはもう作ることができないと思うな。

深いリバーブとフィルターがかかったギター・サウンドは、あなたがいつも使っているLogic内蔵のアンプ・シュミレーターを軸にしたものですか?

いや、この曲は基本的にRolandのGR-300(ギター・シンセサイザー)をプレイしているよ。パット・メセニーが70年代に使っていたことで有名だよね。僕は付属のシンセ・ペダルに接続してギターを弾いたんだけど、コードをかき鳴らすとアメイジングなシンセ・サウンドが生まれてきて、それを様々なパラメーターでいじることができるのさ。コードとメロディは、ほぼこのギター・シンセで弾いているね。

ギター・ソロはジョン・メイヤー・モデルのストラトキャスターをアンプにつないで弾いた。アンプは何を使ったか思い出せないけど、クラシックでリアルなトーンを出そうと思ったんだ。

たぶん、この曲は僕が初めてLogic内蔵のアンプを使わないで録音した曲の1つだと思う。もちろんGR-300もこの曲で初めて使ったけどね。“リアルなギター・サウンドを使う”という、新たな時期に入ったから、かなり立体的でクラシックなサウンドになっているんじゃないかな。今でもLogicは好きだけど、個人的にはどうしても『Geography』のサウンドを思い起こしてしまうんだ。

あなたのギター・ソロは、どの楽曲でも少ない音数でエモーショナルにアプローチすることが共通しています。毎回インプロ的な発想で弾いているんですか? それとも作曲中に具体的なメロディができていて、それを弾いているんですか?

僕はほとんどの場合、とにかく“自分を放り投げるような感じ”で一通りプレイしてみるんだ。プレイ・ボタンをクリックして、それに合わせてジャムってみる感覚かな。その曲が必要とするものや、僕が伝えたいことや、前後関係を大事にしたうえでね。

その中で、時には歌ったり、高く飛び立つような感覚のものが必要になったりする。こういう時、シュレッドするようなフレーズを弾くのは意味がなくて、ギター・ソロでストーリーを伝えるような意識が大切だ。ジョン・メイヤーが昔インタビューで、“10秒で一気に爆発するようなプレイは必要じゃない。落ち着いた入り方をして、徐々にピークに向かっていくようなエネルギーを作っていくべきだ。”と語っていたのを思い出すよ。彼の考え方とアプローチを今でも大切にしているね。

ギター・ソロの中盤はサウンドを若干ブーミーにしている印象です。何か歪みのペダルを使いましたか?

当時は今とは違う方法でやっていたと思うな……たしか、BOSSのBD-2か何かだったと思う。確かに歪みペダルを使ったし、グッと力を込めてプレイすることで、よりクランチーなサウンドになったはずだね。

Photo by Charlotte Patmore

ひょっとしてこれから、久しぶりのアルバムを制作していくのでしょうか?

そうだね、以前だったら思いつかなかったような新しい影響を取り入れているし、今までよりもフォーキーなアルバムになると思う。70年代のようなフィーリングを目指していて、ソング・ライティングにもかなり力を入れているよ。

アレンジや楽器のセレクションに関しても、クラシックな感じになっている。テープ・マシンを使っていて、色んな意味で70年代っぽいサウンドになる気がするな。最近は特にクラシックなアルバムをたくさん聴いているから、あの時代の空気を拝借することになるだろうね!

例えばどんなアルバムを聴いているんですか?

フリートウッド・マックとニール・ヤングだね。次のアルバムはけっこうアメリカっぽいサウンドになるかもしれないな。スティービー・ワンダーも聴いているし、ほかだと何だろう……Spotifyを見てみないとわからないや(笑)。

ひょっとしたらデヴィッド・T・ウォーカーも聴いているのでは?

えっと、僕はデヴィッド・T・ウォーカーを知らないんだ。その名前を聞いたことがないよ。

彼のギター・サウンドは聴いたことはあるはずですよ! ジャクソン5やアレサ・フランクリンの代表的な作品の多くでギターを弾いています。

そうなの!? じゃあ聴かなきゃね。メモっておこう! ほかに聴いている曲といえば、例えばバッファロー・スプリングフィールドの「For What It’s Worth」だ。あとはローリング・ストーンズも少し聴いているよ。とにかくクラシックと言われているものなら、本当に何でも聴いている感じだね。

では今後の新たな展開を楽しみに待つ、日本のファンへメッセージをお願いたします。

何よりもまず、僕の音楽をサポートしてくれていること、そしてこうやって活動を模索している間もじっくり待ってくれてありがとう。新曲、気に入ってくれていると嬉しいな。これからもっと曲を出していくからさ!

でも僕にとって今回の2曲は、古い曲をやっとリリースしているのに、多くの人にとっては新曲として受け止められるから少し変な感じもしているよ(笑)。まあ、それでも楽しんでもらえたらと思うし、来年には再びライブをするようになるから、日本でも演奏したいな!

初となる日本での単独公演を実現させてほしいです。

うん。それもやらなくちゃね!

(最終回へ続く)