2024年9月25日(水)に6曲入りの新EP『溢れ出す』をリリースした京都出身の5人組バンド、浪漫革命。大池奏太(g)がライブで使用するギター、ペダルボード、アンプを本人に解説してもらった。
取材・文=小林弘昂 機材撮影=星野俊
Oike’s Guitar
Fender Custom Shop
Vintage Custom 1959 Stratocaster
ストラト・マスターに憧れた念願の1本
大池がフェイバリット・ギタリストに挙げる鈴木茂やジョン・メイヤーといったストラト・マスターからの影響や、ハーフ・トーンを使いたいという気持ちが溢れ、2年ほど探して2021年に購入したカスタムショップ製Vinatge Customシリーズの59年リイシュー・ストラトキャスター。シリアル・ナンバーは“R93763”。特に改造点はないが、ステージでの視認性を上げるため、ネック横に蛍光テープが貼られていた。
音が頭打ちにならないよう、ライブでは本器のVOLUMEノブとTONEノブを7か8まで絞っており、ガツンと弾くソロではMAXまで戻すこともあるという。ピックアップ・ポジションはフロント+センターのハーフ・トーンがメインで、ファズを踏む際はリアを使うことが多いとのこと。
スプリングは3本張り。アームを多用するのでこれがちょうど良いとのことだが、購入時からスプリングはいじっていないそうだ。また、本器はアームの効きがとても良く、そこが気に入っているポイントだという。
弦はElixir OPTIWEBの.010〜.046を愛用。
Oike’s Pedalboard
The Protein Dual Overdrive Pedalで作るクリーンとクランチ
【Pedal List】
①BOSS / TU-2(チューナー)
②Wampler Pedals / Mini Ego Compressor(コンプレッサー)
③SIMPO EFFECTS / FUZZ EXPLOSION(オクターブ・ファズ)
④Handmade Wah
⑤Browne Amplification / The Protein Dual Overdrive Pedal V3(オーバードライブ)
⑥Organic Sounds / Organic Drive “Zeus”(オーバードライブ)
⑦D.A-project / D.A-Booster(ブースター)
⑧strymon / Mobius(マルチ・モジュレーション)
⑨strymon / FLINT V1(リバーブ/トレモロ)
⑩MXR / Carbon Copy(ディレイ)
⑪strymon / MINI switch(拡張スイッチ)
⑫strymon / Ojai R30(パワー・サプライ)
⑬strymon / Ojai(パワー・サプライ)
ギターからの接続順は①〜⑩の番号どおり。⑪MINI switchは⑨FLINT V1につながれている。
⑤The Protein Dual Overdrive Pedalが常時オンになっており、LEDが緑色の右側のチャンネルがクランチ用、LEDが青色の左側のチャンネルがクリーン用で、基本的にどちらかを踏んでいるという。
②Mini Ego Compressorはクリーン・サウンドでリードやリフを弾く時に⑤The Protein Dual Overdrive Pedalのクリーン・チャンネルと合わせて使うことが多いとのこと。
③FUZZ EXPLOSIONは、京都のレコーディング・スタジオ“SIMPO”の小泉大輔(ママスタジヲ)が製作したハンドメイドのオクターブ・ファズ。ビンテージの国産ファズがベースになっているとのこと。ライブでは「ひとり」で使用。④ワウは大池の大学の後輩が製作したもので、筐体はCry Babyのものだが、中身はVOXの回路が入っている。
⑥Zeusは歪ませるフレーズを弾く際に⑤The Protein Dual Overdrive Pedalに重ねて使用。⑦D.A-Boosterはギター・ソロで音量を上げる用だ。
⑧Mobiusには様々なエフェクトをプリセットしているが、おもにDESTROYERとAUTOSEWLLの2種類を使うことが多いという。DESTROYERは「世界に君一人だけ」と「サマタイム」のイントロでオンに。たまに薄いCHORUSやVIBEモードも使用する。
⑨FLINT V1のリバーブは、アンプのリバーブにプラスして’60sスプリング・リバーブをかけることがあるとのこと。⑪MINI switchには深めの’70sプレート・リバーブをプリセット。’61 harmトレモロは「ふたりでいること」の白玉のコードでオンにする。⑩Carbon Copyはギター・ソロや、アンビエントな雰囲気を作る際に使用。
Oike’s Amplifier
Magnatone
Twilighter
音作りの土台を担うアンプ
大池のメイン・アンプは、2022年10月頃に東京の楽器店で購入したMagnatoneのTwilighter。22W出力で、Magnatoneカスタムの12インチ・スピーカーが1発搭載されている。韻シストのTAKUが使用していたことで興味を持ったそうだ。
一度、心斎橋の楽器店で試奏したことがあったが、その時は値段が高く買うことができなかったという。それから数年後、東京の楽器店で中古の本機が売りに出されており、ローンを組んで購入したとのこと。
インプットは1を使用。各ノブは、VOLUMEが10時、TREBLEとBASSが1時、REVERBが9時過ぎに設定されていた。トレモロは未使用。アンプはクリーンの状態で、ペダルで歪みを作っている。
Interview
アンプのサウンドを生かしつつ、
色付けするような機材を使うようになってきました。
メイン・ギターはストラトですが、このギターを選んだ理由は?
以前はTLタイプを使っていたんですけど、僕の好きなギタリストは鈴木茂さんやジョン・メイヤーで2人共ストラト使いですし、とにかくハーフ・トーンが使いたくて2年くらい探しました。これを見つけて試奏した時、見た目とサウンドの両方が“最高!”となって買いましたね。でも、指板のポジション・マークがクレイドットのせいでステージでの視認性が悪すぎて、ネックの横に蛍光テープを貼っています(笑)。
ストラトはボリュームを7か8まで絞っているんですよね。
そうなんです。余裕を残している感じで、ソロでガツンといきたい時以外はボリュームを7か8くらいまで絞っていて、トーンも7か8にすることが多いです。例えばクリーンでカッティングする時とかに下げていますね。
大池さんのメインの歪みペダルは何ですか?
メインの歪みというか、常にオンになっているのはThe Protein Dual Overdrive Pedal(⑤)のLEDが青い左側のチャンネル。これが僕のクリーンなんですよ。クランチというか、温かめの音にする時はLEDが緑の右側のチャンネルに切り替えます。基本的に青か緑のどちらかはオンにしていますね。Mini Ego Compressor(②)は、クリーンでリードやリフを弾く時にThe Protein Dual Overdrive Pedalの青チャンネルと合わせて使うことが多いです。
FUZZ EXPLOSION(③)というファズは……?
これは京都のレコーディング・スタジオ、SIMPOの小泉大輔さん(ママスタジヲ)が作っているもので、そのサンプル機をもらいました。ほとんど使わないんですけど、ガーッといきたいソロの時や、「ひとり」っていう曲のファジィなトーンを作る時に踏みますね。たまに前段のコンプでブーストしたりします。
そしてワウ(④)も見慣れないものですが、この詳細も教えて下さい。
これは大学の後輩が作ったもので、筐体はCry Babyなんですけど、中身がVOXなんです。色をグレーに塗っていて、筐体側面にLEDが付いているんですよ。ワウってオンなのかオフなのかがわからない時があるじゃないですか? そういう時にしっかり視認できます(笑)。
大池さんがオーダーして作ってもらったんですか?
いや、音のオーダーとかは全然なくて。というのも、これはもともとタケウチ君という(後藤)潤にSuhrのギターを譲った人が例の後輩に作ってもらったもので、僕がそれをもらったんです。“もう使わないのであげますよ”って感じで(笑)。軽めにかかってくれるので、バッキングに合いますね。
モジュレーションはstrymonのMobius(⑧)でまかなっているんですね。
DESTROYERっていうローファイ系のエフェクトと、AUTOSWELLっていうボリューム・スウェル系のエフェクト、この2つを使うことが多いです。ほかはたまに薄いコーラスやビブラートを使うくらい。DESTROYERは、ライブでは「世界に君一人だけ」や「サマタイム」のイントロとか、雰囲気作り系の間奏でオンにします。AUTOSWELLもほぼ同じような感じで、雰囲気作りが多いかもしれない。
空間系はFLINT(⑨)とCarbon Copy(⑩)ですが、この2台はどのような使い方を?
アンプでもリバーブをかけているんですけど、それにプラスしてサーフっぽいスプリングが欲しい時にFLINTの’60sリバーブをオンにします。⑪MINI switchにはけっこう深めの’70sプレート・リバーブをプリセットしていますね。トレモロは「ふたりでいること」での白玉のコードで薄っすらかけています。Carbon Copyはリードを弾く時と、雰囲気作りの時に長めのリバーブと一緒に使いますね。
大池さんのアンプはMagnatoneのTwilighterで、日本でこれを使っている人は珍しいですよね。
あんまりいないですよね。潤がロー・ミッド寄りの音作りなので、僕はどちらかというとハイ・ミッド寄りの音作りを意識しています。TwilighterはTREBLEを上げても全然耳に痛くないので、最近は12時よりも上げていますね。BASSも上げたほうが気持ち良いです。REVERBは9時過ぎくらいなんですけど、これでも凄く薄っすらで、聴いていてもかかってるかわからないくらいだと思います。しかもこのアンプ、タッチの強弱でリバーブのかかりが変わるんですよね。VOLUMEも10時で、若干歪んでいます。僕はバッキングでギターのボリュームを7か8まで絞るので、それでクリーンになるくらいかな。
Twilighterの気に入っているところは?
スコーンと飛んでいくような、抜けの良い音。良い感じのミッドがあって、ずっと聴いていられるというか。弾いたまま素直に出力してくれるところも気に入っています。
最後に、大池さんの機材選びのコツを教えて下さい。
MagnatoneのTwilighterを買ってからは、アンプのサウンドを生かしつつ、それを色付けするような機材を使うようになってきました。それと“コントロールのしやすさ”みたいなところを重視しているかもしれないですね。
作品データ
『溢れ出す』
浪漫革命
新島出版
RORE-0008
2024年9月25日リリース
―Track List―
01.世界に君一人だけ
02.君という天使
03.ゆ
04.うわついた気持ち(feat.鎮座DOPENESS)
05.シルビー
06.聴いて!
―Guitarists―
藤澤信次郎、大池奏太、後藤潤一