夕莉(トゲナシトゲアリ)が振り返る、TVアニメ『ガールズバンドクライ』と2ndアルバム『棘ナシ』収録楽曲のギター・プレイ 夕莉(トゲナシトゲアリ)が振り返る、TVアニメ『ガールズバンドクライ』と2ndアルバム『棘ナシ』収録楽曲のギター・プレイ

夕莉(トゲナシトゲアリ)が振り返る、TVアニメ『ガールズバンドクライ』と2ndアルバム『棘ナシ』収録楽曲のギター・プレイ

2024年4月期に放送されたTVアニメ『ガールズバンドクライ』にて、河原木桃香役を演じたギタリスト/声優の夕莉(ゆり)に、作品でのアフレコや2ndアルバム『棘ナシ』の制作についてインタビュー。物語やキャラクターに込めた想いや、楽曲の“ギター的”な聴きどころなどをたっぷりと語ってもらった。

取材・文=鈴木健也 イラスト提供=東映アニメーション

ファンの人たちと同じように
“ガルクラ・ロス”になっている感じです(笑)。

夕莉(トゲナシトゲアリ)
夕莉(トゲナシトゲアリ)

TVアニメ『ガールズバンドクライ』の放送が終わりました。まずは率直な思いを教えてください。

 声優初挑戦ということで放送前からかなり長い間準備をしてきたので、「それがもう終わってしまったんだ」っていう、ファンの人たちと同じように“ガルクラ・ロス”になっている感じです(笑)。始まる前は、どういう反応をいただけるのか、めちゃくちゃドキドキしていたんですが、最終回へ向かうにつれてSNSでのコメントもリアルタイムで追えないぐらい増えて、すごく嬉しかったです。

アフレコで特に思い出深かったことは?

 演技が初めてだったので、画面の中のキャラクターを自分の声で動かすことが本当に難しかったです。『ガールズバンドクライ』のキャラクターはみんな喜怒哀楽が激しいんですけど、私が演じた河原木桃香は特に怒ることが多くて。

夕莉が声を演じる河原木桃香。/©東映アニメーション
夕莉が声を演じる河原木桃香。/©東映アニメーション

 でも、私は笑いの演技に苦労しました。1話の登場シーンが笑いながらしゃべるものだったので、いきなり壁にぶつかってしまって。「面白いことを思い出して話してみて」とアドバイスをいただいたんですが、画面のキャラに合わせながらとか、台本を見ながらとなると面白いことを思い出す余裕がなかったです(笑)。

「キャラクターの喜怒哀楽が激しい」というお話が出ましたが、『ガールズバンドクライ』では登場人物たちの感情のぶつかり合いがとても印象的でした。感情をぶつけ合うシーンでは、どのようなことを意識しましたか?

 メンバーみんな、普段の性格と演じているキャラがけっこう違っていて、ぶつかり合ったりケンカをしないタイプなので、最初は難しかったです。言い合いのシーンでは、「相手の熱量を超えていく気持ちで話さないと迫力のある感じにならない」と教えていただいたので、それを意識しながら「相手を超えるぞ」という気持ちで演じました。

物語全体を通して名セリフも多かったですよね。桃香のセリフの中で印象深かったものを教えていただけますか?

 1話で桃香の家に(井芹)仁菜が初めて来るシーンで、桃香が仁菜に「(桃香が飼っている)猫、大丈夫?」って聞くセリフがあったんですけど、そのたった一言が自然に言えなくて、次回への宿題になってしまったんです。いいセリフがほかにもいっぱいあるんですが、そのセリフはめちゃくちゃ練習したのでいちばん印象深いです(笑)。

1話では、声優としていろいろな壁に当たってしまったんですね。夕莉さん個人として印象的だったシーンはどこですか?

 8話の桃香と(井芹)仁菜がぶつかり合う場面や、10話の仁菜が熊本に帰るシーンは、親子愛が感じられて、めちゃめちゃいいなって思って泣きました(笑)。

バンド・メンバー同士に限らず、様々なキャラクターの想いが交差することで、心に刺さる名シーンの多い作品になりましたよね。

 毎回何かしらのぶつかり合いがあって、それを越えて次の話に展開していたんですが、それが今時のバンド・アニメとは少し違って、観ている方に刺さったのかなと思います。私は個人的にカッティングが好きなので、今作は聴いていて楽しい曲が多いです。

私は個人的にカッティングが好きなので、
今作は聴いていて楽しい曲が多いです。

2ndアルバム『棘ナシ』が、8月28日にリリースされました。まずは率直な感想を伺えますか。

 1stアルバム『棘アリ』とは違って、アニメの中に登場する曲がたくさん入っているので、アニメを観た方は「あのシーンの曲だな」と思い出しながら楽しめるアルバムだと思います。新曲の「蝶に結いた赤い糸」は、メンバーみんなで聴いたときに、今までの自分たちの曲調とは違いすぎて「え!?これって私たちの曲?」って驚きました(笑)。そういう、ちょっと新しい一面も見せることができた作品だと思います。

「蝶に結いた赤い糸」ではアコギが使われていたり、細かく構築されたバッキングが印象的な曲ですよね。

 今まではロック色の強い、エレキ・ギターで攻めるフレーズが多かったんですけど、この曲はアコギを使っているというのもありますし、ボーカルを支えるようなプレイスタイルがすごく魅力的だと思います。

ギタリスト的な視点で、今回のアルバムで注目してもらいたいポイントは?

 『棘アリ』と同じくいろいろな音色が使われているところもありますが、ライブでの技術面で聴いてほしいところがたくさんあります。「運命の華」や「視界の隅 朽ちる音」は、私も弾いていて気持ちいいギター・ソロがあるので、ギターを弾いている人はそのフレーズを弾いてくれたら、とても楽しいんじゃないかなって思います。

「運命の華」は、最後のサビのバッキングも音数の多いフレーズですよね。

 ソロ以上にたくさんありますよね(笑)。歌に集中して聴いているとあまり気づけないと思うのですが、ギターを弾いている人は「歌の後ろですごいことを弾いているな」って気づけると思うので、そこにも注目してほしいです。

夕莉(トゲナシトゲアリ)
夕莉(トゲナシトゲアリ)

個人的には、「空白とカタルシス」のソロあとに登場する高速キメ・フレーズが耳に残りました。

 ライブではタッピングを使っているんですが、今までタッピングはちょっと避けてて、あまり弾いてこなかったので、初めて聴いたときは「ちょっとこれはやばいな」って思いました(笑)。でも、あの曲の顔というか、すごく耳が持っていかれるフレーズですよね。

テクニカルなフレーズはもちろんですが、切れ味鋭いカッティングも注目ポイントですね。

 「空の箱」には、いろいろなカッティングが使われています。私は個人的にカッティングが好きなので、今作は聴いていて楽しい曲が多いです。

『棘ナシ』には、劇中ではライバルとなるダイヤモンドダスト(以下、ダイダス)の楽曲も収録されています。夕莉さん個人としては、彼女たちの楽曲についてどのように考えていますか?

 アニメの最初の頃は、ダイダスのメンバーがどんな子なのかわからないし、桃香や仁菜のライバル的に描かれていたので、それに影響されすぎて「なんかちょっと……」みたいな印象だったんです(笑)。でも、曲がめちゃくちゃカッコいいのはわかっていたし、アニメが後半に進むにつれて、メンバーのいいところも見えたり、お互いに高め合っていける関係だということがわかったので、今は本当にいい曲だと思って聴いています。

作品データ

『棘ナシ』 トゲナシトゲアリ

『棘ナシ』
トゲナシトゲアリ

ユニバーサル
UMCK-1771
2024年8月28日リリース

―Track List―

  1. 雑踏、僕らの街
  2. 誰にもなれない私だから
  3. 空の箱(井芹仁菜、河原木桃香)
  4. 声なき魚(新川崎(仮))
  5. 視界の隅 朽ちる音(新川崎(仮))
  6. 心象的フラクタル(beni-shouga)
  7. 空白とカタルシス
  8. 運命の華
  9. Cycle Of Sorrow
  10. ETERNAL FLAME 空の箱
  11. 闇に溶けてく
  12. 蝶に結いた赤い糸

―Guitarist―

夕莉