人間椅子が2024年にデビュー35周年を迎え、10月から全国8箇所でワンマン・ツアー、“バンド生活三十五年 怪奇と幻想”を開催した。ツアー・ファイナルのZepp DiverCity公演で使用された和嶋慎治(vo,g)の機材を、本人の解説付きで紹介しよう。まずは4本のSGスタンダードと、新たに導入されたエクスプローラーから。
取材・文=小林弘昂 機材撮影=星野俊 人物撮影=西槇太一
Wajima’s Guitars
1993 Gibson USA
SG Standard
30年をともにする不動のメイン・ギター
1995年頃に鈴木研一(b)の友人から安価で譲ってもらい、それ以来30年近くメインとして弾き続けている93年製SGスタンダード。
和嶋はおもにリア・ピックアップを選択しているが、クリーン・サウンドを出す際はミックス・ポジションを使用。さらにアンプを歪ませているため、クリーンが必要な際はギター側のボリュームを絞っている。そのためマスター・ボリューム、マスター・トーン仕様に改造。しかし、そうするとスイッチング奏法ができなくなったため、キル・スイッチを増設している。
ボリュームとトーンのポットはCTSのものに交換されており、ボリュームはBカーブ、トーンはAカーブと、それぞれに強いこだわりを持つ。和嶋曰く“ボリュームはリニアに変わるのが好きなのでBカーブにしている”とのこと。
コンデンサは東一電機のVitamin Q(オイル・コンデンサ)に、内部の配線材はBeldenのものに交換されている。
高音弦でビブラートをしやすくするため、弦はErnie Ballの.009〜.046(Hybrid Slinky)をチョイス。
使用楽曲(11月18日@Zepp DiverCity)
- 「鉄格子黙示録」
- 「暁の断頭台」
- 「愛の言葉を数えよう」
- 「埋葬蟲の唄」
- 「芋虫」
- 「赤と黒」
- 「天国に結ぶ恋」
- 「針の山」
- 「どっとはらい」
2012 Gibson USA
SG Standard
1音半下げチューニングにセッティングした改造SG
2015年頃に入手した2012年製のSGスタンダード。この日は全弦1音半下げチューニング(C♯F♯BEG♯C♯)にセッティングされ、「恐怖の大王」、「神々の決戦」、「水没都市」、「瀆神」、「無情のスキャット」で使用された。
ダウン・チューニング用のため、ピックアップ・エスカッションを増設し、弦とピックアップが平行になるように改造。そうすることで出力が上がったという。購入した当初は内部に基板が入っていたそうだが、和嶋はそれをはずして配線し直したとのこと。その結果、音抜けが良くなったと語る。
使用楽曲(11月18日@Zepp DiverCity)
- 「恐怖の大王」
- 「神々の決戦」
- 「水没都市」
- 「瀆神」
- 「無情のスキャット」
1996 Gibson USA
SG Standard
オープンAマイナーのスライド用SG
「夢女」で使用されたSGスタンダード。オープンAマイナー・チューニング(EAEACE)にセッティングされており、本器のみマーシャルSV20C直のサウンドで鳴らしていた。
一見するとコントロールは無改造のように見えるが、実は本器もマスター・ボリューム、マスター・トーン仕様に改造されている。そのためノブの半分はダミー。シリアル・ナンバーは“91286335”。
使用楽曲(11月18日@Zepp DiverCity)
- 「夢女」
2021 Gibson USA
SG Standard
レフティ・モデルを改造したカスタムSG
シリアル・ナンバー“235710186”で、2021年製と思われるSGスタンダード。ダウン・チューニング用の2012年製SGと近い仕様のレフティをギブソンに探してもらい、『色即是空』(2023年)のリリース・タイミングで右利き用にカスタマイズしてもらったという1本。この日は使用されなかった。
2024 Gibson USA
Explorer
新導入のエクスプローラー
ギブソンを通じて10月に入手したというUSAラインのエクスプローラー。シリアル・ナンバーは“215840291”で2024年製と思われる。
YouTubeでジョニー・“ギター”・ワトソンの映像を観ていたところ、ゴールド・パーツが搭載されたエクスプローラーを弾いており、それに触発されて導入したとのこと。そのため、もともと搭載されていたクローム・パーツはすべてゴールド・パーツに交換されている。
この日はアンコールの「神経症 I LOVE YOU」と「地獄風景」で使用された。まだ新品で音が硬いそうで、これから徐々に慣らしていき、使用機会を増やしていくという。
使用楽曲(11月18日@Zepp DiverCity)
- 「神経症 I LOVE YOU」
- 「地獄風景」
Others
ピックはフェンダーの346 Shape HEAVY。様々なメーカーのものを試したが、これが一番手に馴染むという。
スライド・バーはガラス製のものを愛用している。「埋葬蟲の唄」、「夢女」、「水没都市」などで使用された。
Interview
ジョニー・“ギター”・ワトソンと同じ仕様になるように
ギブソンでパーツを交換してもらいました。
メイン・ギターは変わらず93年製のSGですね。最近手を加えた箇所はありますか?
ずいぶん前に1回ヘッドが折れて楽器店で修理してもらったんですけど、1年くらい前にギブソンでやり直してもらいました。たぶんヘッドの裏に木を入れたと思うんだよね。
改めて修理をしたことで、音の変化はありましたか?
それがないんです! 全然変化なしで良い音。あとは先日ボリューム・ポットのシャフトが折れちゃったので、自分で交換しました。いや〜、新しいポットは良いですね。ノイズが減りました(笑)。
2012年製のSGはダウン・チューニング用なんですよね?
全弦1音半下げています(C♯F♯BEG♯C♯)。これは2015年に手に入れました。最初は音が硬かったんですけど、今は鳴るようになっています。
改造した箇所は?
メインと同じようにマスター・ボリューム、マスター・トーンにしています。あとキル・スイッチ。ピックアップはオリジナルですけど……色々手を加えてるな(笑)。
ほかにはどんなところを(笑)?
ラージ・ピックガードのSGってピックアップがピックガード・マウントじゃないですか? それだと弦とピックアップが平行にならないんですよ。なので自分でエスカッション・マウントに改造しました。
けっこうテイルピースを上げているんですね。
はい。テンションゆるめです。そもそもこのギターのテンションが強かったのでダウン・チューニング用にしたんですよ。SGって個体差が激しいんですよね。ネックの仕込み角がほんの少しズレるだけでテンションが変わるみたいで。
今日のライブでほかに使うギターはありますか?
1曲、オープンAマイナー・チューニングでスライドを弾くんですよ。その時にメイン・ギターと同じくらいの年代のSGを使います。90年代だったかな? これも10年くらい前に手に入れました。2015年以降SGを買い集めていて、その中の1本です。
スライド用のSGもテイルピースが上がっていますね。
あ、癖で上げちゃってるね(笑)。これはスライド用だから下げてもよかったかも。
このギターのコントロール部分はオリジナルのままの見た目ですけど、マスター・ボリューム、マスター・トーンに改造していないんですか?
いや……しています(笑)。なのでノブの半分はダミーです。
そして見慣れないエクスプローラーが置いてありますが……。
新導入です。1ヵ月くらい前に手に入れて、このツアーから使い始めました。SGやレス・ポールじゃないものが弾きたくてですね。でも、例えばフライングVだと、“V=あの人”みたいなギタリストがいますから、エクスプローラーがいいかなと。それとジョニー・“ギター”・ワトソンの動画をYouTubeで観て、凄くかっこいいなと思って、彼と同じ仕様になるようにギブソンでパーツを交換してもらいました。本来はクローム・パーツなんですけど、ペグやピックアップが全部ゴールド・パーツになっています。
今日のライブではどの曲で使いますか?
アンコールの2曲で使います。新品だからまだ鳴っていないので、とりあえずアンコールから使い始めようかと。
ちなみに、和嶋さん仕様のカスタムSGの出番は?
今日は使わないです。ダウン・チューニング用のSGと近い仕様のレフティをギブソンに探してもらって、去年のアルバム(『色即是空』)の発売に合わせてカスタマイズしてもらいました。音は普通のSGですね。それが良いんですよ。何も足りない部分やイマイチなところがない。凄くちゃんとしています。
ギブソンでカスタマイズしてもらうにあたり、和嶋さんから何かリクエストはあったんですか?
レフティはコントロールが左側に付いているじゃないですか? さすがにそれだと弾きにくいので、逆にしてほしいとお願いしました。だから穴を埋めてもらって(笑)。ただね、キレイすぎて、“レフティですよ”って言わないとあんまり気づかれないんです。ピックガードの位置も、ホーンの大きさも左右で違うんですけどね。