人間椅子が2024年にデビュー35周年を迎え、10月から全国8箇所でワンマン・ツアー、“バンド生活三十五年 怪奇と幻想”を開催した。ツアー・ファイナルのZepp DiverCity公演で使用された和嶋慎治(vo,g)の機材を、本人の解説付きで紹介しよう。最後はペダルボードについて深堀りインタビュー!
取材・文=小林弘昂 機材撮影=星野俊
Wajima’s Pedalboard
アンプ直とエフェクト・オンを一発で切り替えるシステム
【Pedal List】
①BOSS / PSM-5(パワー・サプライ/マスター・スイッチ)
②Wajimachine / Fuzz
③Wajimachine / Octave Fuzz
④Wajimachine / 弥勒 Miroku(オーバードライブ)
⑤Jen / Cry Baby(ワウ)
⑥Danelectro / Cool Cat Vibe(ヴァイブ)
⑦Wajimachine / Phase Shifter
⑧BOSS / DM-2W(ディレイ)
⑨Wajimachine / Preset Volume
⑩Wajimachine / Mute Switch
⑪TC Electronic / Polytune 2(チューナー)
⑫Wajimachine / Power Supply
ギターからは、まず①PSM-5に入る。そして本機のアウトからマーシャル1987へ、という流れだ。①PSM-5にはセンド/リターン端子が搭載されており、そこに②〜⑩のペダルがすべてループされてる(⑪Polytune 2のみ⑩ミュート・スイッチに接続)。
つまり、①PSM-5のみを通った音と、②〜⑩のペダルを通った音を一瞬で切り替えられるというシステムになっている。和嶋は①PSM-5のバッファも気に入っており、本機を挟むことでアンプ直よりもノイズが少ないとのこと。
②はBig Muff系の自作ファズで、ロング・トーンやハウリングを混ぜたソロを弾く時にオンにする。③はFoxx / Tone Machine系のアッパー・オクターブ・ファズ。④弥勒は“原音とフィックスド・ワウをミックスした音にオーバードライブをかける”をコンセプトに開発されたオリジナルの歪み。監修/設計を和嶋が、設計補助/製造をChocolate Electronicsが手がけ、2022年にThe EFFECTOR BOOKから一般発売された。「無情のスキャット」の中盤のソロ、「杜子春」の最後のソロは本機でレコーディングされたという。ライブでは「無情のスキャット」など、メロディアスなソロで踏むとのこと。
⑤Cry BabyはJen時代の個体。和嶋の手によって青いLEDが増設されたのだが、付ける位置を間違ったそうで、そのままではオン/オフがわからなかったという。そのため筐体にデンタル・ミラーをくっつけ、反射でLEDが見えるようにしている。⑥Cool Cat Vibeは最近のお気に入りで、中古価格が高騰しつつも、やむなく購入したという。⑦も自作のフェイザーで、Electro-HarmonixのSmall Stoneをもとに製作。この日は「暁の断頭台」と「赤と黒」でオンにしていた。
⑧DM-2Wはロング・ディレイに設定し、「水没都市」のソロなどで使用。
⑨も自作のプリセット・ボリューム・ペダル。本機をオンにすることで任意の音量までダウンさせ、アンプの歪みをクリーンまで落とせるという便利なアイテムだ。
アンプのボリュームをMAXにしてメインの歪みを作っているため、ノイズにはかなりシビアな和嶋は、エフェクター駆動にACアダプターを使用せず単三電池をチョイス。自作のパワー・サプライ(⑫)を通して各エフェクターに電源が供給されている。
Interview
昔っぽい感じが出せる9V駆動のヴァイブ系って
これしかないんですよね。
和嶋さんは1987を歪ませているじゃないですか? その状態でファズをかけると凄くハウリングしますよね。
します。だからBig Muffのクローン(②)を使うのはロバート・フリップみたいなソロを弾く時とか、あえてジミヘンみたいなハウリングのソロを弾く時。今日は「愛の言葉を数えよう」と「埋葬蟲の唄」で踏みます。
Tone Machineのクローン(③)はどういう使い方を?
今日は使わないです(笑)。アッパー・オクターブ・ファズなので癖があって、完全に曲を選ぶんですよ。写真を撮ってもらった時はツマミが適当になっていましたけど、本当はLEVELが9時過ぎ、TONEが10時、DRIVEが12時みたいな感じです。ミニ・スイッチはアッパーのオン/オフで、僕はいつもオン。オンにすると耳にキンキンくるのでLEVELは下げ目。
和嶋さんのシグネチャー・ペダル、弥勒(④)はどんな時に使いますか?
少しロング・トーンにしたメロディアス系のソロで使うようにしていて、今日は「無情のスキャット」だけかな。
ワウは長年愛用しているJenのCry Baby(⑤)ですね。
現行のVOXのワウを試したり、ハイエンド系のワウも試しましたけど、最近のやつはかかりが良すぎる。全部の帯域にかかるんですね。でもJenはカラッとしていて、そんなにかからないんですよ。それが良いんです。より声に近いというか、いなたいというか。今日ワウを使う曲は「鉄格子黙示録」と「針の山」だけかな。
ワウに付いているデンタル・ミラーは……?
これはですね……オンの時に光るLEDの位置を間違って付けちゃって、全然見えないんですよ。その確認用です(笑)。
Cool Cat Vibe(⑥)とSmall Stoneのクローン(⑦)、2台のモジュレーションはどの曲で使いますか?
Cool Cat Vibeも曲を選ぶので今日は使わないです。これは製造中止になっているんですけど凄く良くて、2台目なんですよ。昔っぽい感じが出せる9V駆動のヴァイブ系ってこれしかないんですよね。フェイザーとは違って、ヴァイブ系ってちょっと抜けが悪くなるじゃないですか? なので雰囲気っぽい時、コーラスみたいな効果が欲しいアルペジオで使うかな。どちらかというとフェイザーのほうを多用していて、今日は「暁の断頭台」と「赤と黒」で踏みます。フェイザーはエレハモのSmall Stoneのクローンですね。
DM-2W(⑧)のモードはSTANDARDとCUSTOMどちらに設定していますか?
CUSTOMモードにしてロング・ディレイとして使っています。これは発売されてすぐに買ったんですけど、発振もしやすいし、良いですね。それまではMaxonのAD-900を使っていました。
そして自作のPreset Volume(⑨)を踏むと、歪んだアンプがクリーンになるんですよね。
そうです。「芋虫」でけっこう使っていますね。あとはアルペジオを弾く時も。