小川幸慈(クリープハイプ)が語る、新作『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』と15周年記念公演 小川幸慈(クリープハイプ)が語る、新作『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』と15周年記念公演

小川幸慈(クリープハイプ)が語る、新作『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』と15周年記念公演

クリープハイプが3年ぶりの7thアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』をリリースした。コロナ期間に制作された前作『夜にしがみついて、朝で溶かして
』の流れを汲むような、打ち込みの楽曲も収録される中、これぞクリープハイプとい
ったバンド・サウンドに原点回帰した作品とも言えるだろう。本誌『ギター・マガジ
ン 2025年2月号』のインタビュー掲載に先立って、リード・ギタリストの小川幸慈の
コメントを紹介しよう。

取材・文=奥田悠哉 写真=関信行
*この記事は『ギター・マガジン2025年2月号』から一部先行で転載しています。

初期を感じさせる部分を
あえて盛り込みました。

3年ぶりの7thアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』は、クリープハイプの活動15周年目にあたる2024年にリリースされた記念すべき作品ですね。率直にどのようなアルバムになったと感じますか?

今までバンドをやってきた中で、できることもちょっとずつ増えてきました。少し前から打ち込みのアプローチを取り入れたりもしていて、そうした経験が作品に広がりを与えてくれたと思っています。今回は初期クリープハイプのようなバウンド・サウンドの曲もあったりして、そのバランスもすごく良いものができたし、15周年にふさわしく、今までの活動が見えるようなアルバムになりました。

前作『夜にしがみついて、朝で溶かして』(2021年)は打ち込みのサウンドも印象的でしたが、今回で言うと「青梅」や「dmrks」もその流れを汲むような作風ですね。

コロナ期間あたりから、データをキャッチボールして、曲をアレンジしていくことも増えたんです。基本的には尾崎(世界観/vo,g)が作曲したものを、スタジオに入ってみんなで合わせていくのですが、弾き語りのデータをベースの(長谷川)カオナシに投げて、そこに僕がギターを打ち込んで、といった感じでやり取りをしていく曲もありました。スタジオで合わせるほうが良い場合もあるのですが、やっぱりDTMで打ち込んでいくと客観的に見れたりする部分もあって。そうしたやり方もできるようになってきたことにも、面白さを感じますね。

一方で今作はクリープハイプらしいバンド・サウンドにも原点回帰した作品になっていると感じます。何か目指していたイメージはありましたか?

特にコンセプトを掲げていた訳ではなくて、いつもどおりというか、アレンジしていく中で曲ごとに方向性を探って行きました。でも、例えば1曲目の「ままごと」は、あえて初期の「イノチミジカシコイセヨオトメ」を感じさせる部分を盛り込んでみたんです。サビのあとのギター・ソロで歌メロを復唱して弾いていたり、サビで単音のカッティングを弾いたりしていて、聴いてくれる人が “ちょっとあの曲っぽいよね”って思ってもらっても良いくらいの気持ちで、こちらも遊んでみたり。そういうことも意識しつつ作曲していきましたね。

“みんな良い顔してるな”と思いながら
演奏していました。

過去曲を思い出させるような仕掛けがあったりと、ファンにとって嬉しいアルバムです。話題は変わりますが、2024年11月16日にKアリーナ横浜で開催されたライブ “現メンバー15周年記念公演”でも、「HE IS MINE」から始まりアンコールの「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」で終わるなど、クリープハイプの歴史をたどるようなセットリストでしたね。

そうですね、15周年を祝に観に来てくれたお客さんを喜ばせたいという思いで、セットリストを組んでいきました。なので、例えば「憂、燦々」だったり、最近はやっていなかったような昔の曲もしっかりと盛り込んでいて。会場の皆さんもすごく喜んでくれたみたいで、“みんないい顔してるな”と思いながらギターを弾いていました。すごく素直に、曲が届いている感じがしましたね。

小川幸慈(クリープハイプ)

そのライブで使用したギターは?

今回はシンプルに行こうかなと思って、もうほとんどをフェンダーのジャズマスター2本で演奏しましたね。メインにしている緑色のカスタムショップ(初代マスタービルダー、フレッド・スチュアートが製作)と白色の1962製のビンテージです。それと、「天の声」ではカスタムショップ製のテレキャスター・シンラインも使いましたね。

ありがとうございます。15周年を迎えたクリープハイプですが、今後思い描いていることを教えて下さい。

僕はやっぱりクリープハイプのギタリストとして面白いことができてれば、それがとても楽しいんです。最近はアレンジをしていく際に、ギター・フレーズ以外にも尾崎が僕に委ねてくれる部分があったりして。今までは彼の作曲者としての部分を尊重していたので、あまりそういったことがなかったんです。でも今作では「喉仏」のイントロだったり、「あと5秒」のギター・ソロだったり、そういった部分のコード進行も自分から提案しています。そうした音楽的な部分もこれから広げて深みを出して、バンドにより貢献していけたらなと思いますね。

Setlist
2024年11月16日(土)
現メンバー15周年記念公演@横浜Kアリーナ

①HE IS MINE
②火まつり
③NE-TAXI
④生レバ
⑤イト
⑥栞
⑦陽
⑧一生のお願い
⑨左耳
⑩リバーシブルー
⑪オレンジ
⑫月の逆襲
⑬憂、燦々
⑭四季
⑮目覚まし時計
⑯しらす
⑰ナイトオンザプラネット
⑱キケンナアソビ
⑲週刊誌
⑳蜂蜜と風呂場
㉑天の声
㉒愛の標識
㉓明日はどっちだ
㉔風に吹かれて

アンコール:
㉕おやすみ泣き声、さよなら歌姫

作品データ

『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』
クリープハイプ

『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』
クリープハイプ

ユニバーサル
UMCK-1786
2024年12月4日リリース

―Track List―

  1. ままごと
  2. 人と人と人と人
  3. 青梅
  4. 生レバ
  5. I
  6. インタビュー
  7. べつに有名人でもないのに
  8. 星にでも願ってろ
  9. dmrks
  10. 喉仏
  11. 本屋の
  12. センチメンタルママ
  13. もうおしまいだよさようなら
  14. あと5秒
  15. 天の声

―Guitarists―

尾崎世界観、小川幸慈