2025年3月からスタートし、10月26日(日)に7年ぶりとなる日本武道館公演でファイナルを迎えるACIDMANの最新ベスト・ライブ・ツアー、“This is ACIDMAN 2025”。“This is ACIDMAN”とは、シングル曲やMVが存在する楽曲を中心に構成され、“これぞACIDMAN”と呼ぶべきセットリストのワンマン・ライブである。5度目となる本ツアーで大木伸夫(vo,g)が使用するギターを、本人に解説してもらった。
取材・文=小林弘昂 機材撮影=星野俊 協力=小谷“Kotty”高志
Oki’s Guitars
1996 Rickenbacker
360 Fireglo
約30年間使い続けるリッケンバッカー
大木の不動のメイン・ギターは、高校卒業後にアルバイトでお金を貯めて新品で購入した1996年製の360。それまではIbanezのギターやフライングVなどを手にし、速弾きやタッピングなどテクニカルなプレイを好んでいた大木だったが、本器のルックスや雑味のあるサウンドに惹かれて購入したという。
360は330の上位モデルで、前面に丸みのあるラウンド・ボディ、ネックとボディ・バック側のバインディング、指板のトライアングル・インレイなどが特徴。さらに出力がステレオ仕様のため、ジャックは“RICK-O-SOUND”と“STANDARD”の2つが搭載されているが、通常はモノラル出力のSTANDARD側を選択する。ライブ中に間違えないように、本器のRICK-O-SOUND側の配線はSTANDARD側と同じくモノラルに改造済み。
もともとリッケンバッカーはリア・ピックアップに比べてフロント・ピックアップの出力が弱く設計されているため、フロント・ピックアップの音量を調節するための“Fifthコントロール”が搭載されているが、こちらの配線もカットされている。
大木はどのギターもピックアップはフレーズによってミックスとリアを使い分けており、イントロなどのアルペジオはミックスで、サビでは必ずリアにするとのこと。フロント単体では使わないそうだ。
ギター・テックの小谷“Kotty”高志氏曰く、弦は色々と試した結果、SITのS1046 LIGHT(.010〜.046)に落ち着いたという。ハリや艶があり、適度な柔らかさもあるのだが、錆びてしまうと良さがまったく出ないため、ライブのたびに張り替えているそうだ。チューニングはすべてのギターを440Hzのレギュラーにセッティングしている。
使用楽曲(2025年6月13日@KT Zepp Yokohama)
- 「ミレニアム」
- 「ファンタジア」
- 「水写」
- 「sonet」
- 「輝けるもの」
- 「ある証明」
- 「飛光」
- 「Your Song」
Rickenbacker
360 Fireglo
オリジナルの状態を維持したサブ・ギター
こちらは2014年に入手したサブの360。6日13日(金)のKT Zepp Yokohamaでのライブでは「カタストロフ」で使用された。本器を導入するまでサブ・ギターは330しか所有しておらず、リッケンバッカーの代理店の山野楽器に相談したところ、本器を薦められたのだという。大木は“メインよりも音に伸びがある”とコメント。
本器のFifthコントロールはバイパスせず、オリジナルの状態。Kotty氏曰く“そのままの音も良いんですけど、バイパスしたメインの360のほうが余計な回路を通らないから音にパンチがある”とのこと。また、RICK-O-SOUNDジャックの配線もオリジナルのままになっている。
使用楽曲(2025年6月13日@KT Zepp Yokohama)
- 「カタストロフ」
Fender Custom Shop
Custom Deluxe Telecaster
モダンなスペックを備える信頼のテレ
『ALMA』(2010年)のレコーディング前に購入した、2009〜2010年製と思われるカスタム・デラックス・テレキャスター。22フレット・ネック、サイドに縁のないブリッジ・プレート、6連のブロック・サドルなど、モダンなスペックを持つシリーズだ。ナットやフレットなどの消耗パーツ以外の交換箇所はなし。
本器を入手するまで大木は、ギター・テックのKotty氏が所有するカスタムショップ製のテレキャスター(後述)を借りてライブやレコーディングで使用していたという。自分のテレキャスターを購入しようと楽器店を探すも、なかなかピンとくる個体にめぐり合わず、最終的にフェンダーのショールームでカスタム・デラックス・テレキャスターを数本用意してもらい、その中で最もサウンドと弾き心地が良かった本器を選んだとのこと。
リッケンバッカーでレコーディングした楽曲でも、ライブでは音の伸びやパンチなどを求めてテレキャスターを使う楽曲も多いという。
使用楽曲(2025年6月13日@KT Zepp Yokohama)
- 「Stay in my hand」
- 「夜のために」
- 「FREE STAR」
- 「スロウレイン」
- 「白と黒」
- 「2145年」
- 「風追い人(前編)」
- 「water room」
1995 Fender Custom Shop
Telecaster
キャリア初期を支えたギター・テック所有器
KT Zepp Yokohama公演では使用されなかったが、ギター・テックのKotty氏が所有するカスタムショップ製テレキャスターも用意されていた。シリアル・ナンバーは“CN506850”で、1995年頃の個体だと思われる。2000年頃にKotty氏がTHE MODSのギター・テックを担当していた時、福岡の楽器店で購入したもので、お正月のセールで12万円ほどだったそうだ。Kotty氏は“フィエスタ・レッドのボディとバーズアイのネックに惹かれた”と語る。
大木がまだ自身のカスタム・デラックス・テレキャスターを所有していない時はライブやレコーディングで本器を使用しており、「water room」などでよく手に取っていたという。
22フレット・ネック、サイドに縁のないブリッジ・プレート、6連のブロック・サドルなど、大木が所有するカスタム・デラックス・テレキャスターと同じようなスペックが特徴。
Picks

ピックはJim DunlopのTortex Standard .73mm。
Interview
複雑で、暴れているというか、雑味がある。
そこに惹かれました。
大木さんのメインのリッケンバッカー360は、高校を卒業したあとにアルバイトでお金を貯めて購入したものなんですよね。あらためて、その時のお話を聞かせていただけますか?
当時はリッケンバッカーっていう楽器自体知らなくて。僕は高校生の時、IbanezのギターやギブソンのフライングVを使っていて、もともとヘヴィメタルというか速弾きをやっていたんですね。でも速弾きから卒業して、もっと違うギターが欲しいなと思って楽器店に行った時にリッケンバッカーを見つけて、“なんだこれ、かっこいいな!”と思って買ったんです。

まずは見た目で選んだと。
そうなんです。しかも値段も安くて。当時、リッケンバッカーは新品定価で20万円くらいしたんですけど、これには10万円くらいの値札が付いてたんですよ。
安すぎないですか!?
“半額だ!”と思って、当時バイトして貯めた10万円くらいを封筒に入れて、それを握りしめて楽器店に行ったんですね。で、お会計をしている時に店長さんが走ってきて、“すみません、値札が間違っていました!”と。
えっ!?
“実はこれ20万円なんです”って。でも僕はそこでめちゃくちゃゴネて(笑)。“ちょっと待って下さい! 買う気満々で来て、しかもお金はこれしか持ってないんです。もうダメですよ!”って言ったら、“こちらのミスなので仕方ないです”と折れてくれて、手に入れたという。
そんなエピソードが(笑)。
その店長さんの粋な計らいがなければ、今僕はこのギターを弾いていない(笑)。
フライングVなどからリッケンバッカーに持ち替えた時の印象は?
もうギターの概念がすべて違ったというか。固定されていないブリッジとか信じられなかったし、チューニングもしづらいし、そもそも弾きにくい。だけど、そのアナログ感が非常に気に入ったんですね。それまで使っていたギターとは真逆だったので、逆に惚れました。
30年近く弾いてきて、音の変化は感じられますか?
最初に抱いていた暴れっぷりみたいなものは、ここ10年くらいはほとんど感じない。僕自身が馴染んだのか、ギターの木が乾燥しきって安定したからなのかはわからないですけど、“ちょっと変だね”みたいなものは全然感じないです。
弦高のセッティングでこだわりは?
僕、本当は低めが好きなんですけど、これは低くしすぎるとビビったり、色んなところへの影響が出てくるので、普段は少し高めになっていますね。
先日のライブを観ていて、リッケンバッカーを歪ませた時のサウンドがとてもパワフルだったので、弦高の高さも影響しているのかなと思いました。
なるほど。今ではリッケンバッカーを“ガーン!”と弾く人はけっこういますけど、昔はリッケンバッカーをディストーションで歪ませている人なんて全然いなかったので、凄くイレギュラーなことだったんです。これを買った時に店員さんから“ビートルズが少し歪ませて使っていたギターだよ”っていう説明を受けて、“そうだったんだ!”と知るくらいだったので(笑)。
このギターの最も気に入っているところは?
やっぱり見た目です。木の質感、サンバーストのデザイン、ボディのフォルム。そしてブリッジですかね。ブリッジのアナログな感じが好きです。これを買う時に試奏させてもらったんですけど、凄く生々しい音でアナログ感があったんですよ。それまで使っていたギターは、直線的でわかりやすい音。でもこれは複雑で、暴れているというか、雑味がある。そこに惹かれました。
サブの360はいつ頃手に入れたものなんですか?
これは10年以上前、GiGSさん(シンコーミュージック)のリッケンバッカー企画の取材の時に、山野楽器さんに“サブの360を探している”という話をしたところ、ご提供いただいたものです。

どんなサウンドがしますか?
音の伸びがキレイです。メインのほうが少しパワフルというか。
先日のKT Zepp Yokohama公演では「カタストロフ」1曲でこの360を弾いていましたが、何か理由があるのでしょうか?
なんでだったかな……普通ならメインを使いますよね? (当日のセットリストを見ながら)「カタストロフ」の前の「water room」はテレキャスターを使っていたんですけど、「カタストロフ」の次の「輝けるもの」はフレット数の関係でリッケンバッカーじゃないと弾けないんですよ。なので「カタストロフ」からサブの360に持ち替えて、本編最後の「飛光」まで流れでやろうということになっていたんですけど、実際はそうならなかったという。おそらく、それだけの理由だったと思います(笑)。
セットリスト上の都合だったんですね(笑)。このギターの気に入っているところは?
上品なところですね。色味で言うとメインのほうはポップだけど、こっちは大人っぽい。サブとしてのバランスもちょうど良いかなと思っています。
この360を手に入れるまでは、サブは330だったんですよね?
そうです。330は音が固いというか、ちょっとチープな音だったので、サブも360で揃えようとなりました。
“このギターだ!”と思って、
そこからテレキャスが好きになりました。
大木さんはカスタムショップ製のサンバーストのテレキャスターを、メインの360と同じくらいの割合で使用しています。
僕はメインの2トップをリッケンバッカーとテレキャスターの2本にしているんですけど、それはKottyのテレキャスを弾いてからなんですよね。Kottyのテレキャスを借りて弾いた時に、カッティングのキレがリッケンバッカーとは全然違ったんですよ。ストラトとも比べたんですけど、僕はテレキャスの、特にミックス・ポジションにした時の“ジャキジャキ”っていう音が気持ちよく感じたんです。それでKottyのテレキャスを超えるようなギターを探して、このサンバーストを手に入れました。

『ALMA』(2010年)のレコーディングから導入したんですよね。
15年くらい前ですよね。本当にありがたいことに、フェンダーさんのショールームでカスタムショップの同じシリーズのテレキャスを数本並べて試奏させていただいて、その中の1本を選びました。
その中でこれがダントツで良かったんですか?
いや、全部良かったですよ。その中で一番しっくりくるものを買わせていただきました。今でもたまにKottyのテレキャスを借るんですけど、そのたびに“自分のテレキャスのほうが良い!”と思いながら弾いています(笑)。
このテレキャスター、トラスロッド調整口がヘッド側に付いていたり、22フレットや6連のブロック・サドルが採用されていたりと、モダンなスペックですよね。
そうなんですか! Kottyのも同じですよね?
Kottyさんのテレキャスも珍しい仕様なんですよ。
珍しいものとは知らずに、“Kottyのギター、良いから同じの探してよ!”とお願いして、Kottyを通じてフェンダーさんに用意してもらったんです。ちょうどそのタイミングで同じ仕様のテレキャスが出たので、“試奏しませんか?”と声をかけてくれたんだと思いますね。

KottyさんのテレキャスはACIDMANの初期から使っていますよね?
出会ってすぐ、もう25年くらい前から借りています。
もともと大木さんの中でテレキャスへの憧れはあったのでしょうか?
ギターをやっているくせに、特定のミュージシャンへの憧れっていうものがまったくないんです。誰が何を弾いているとかもわからないですし。なので最初は“これがテレキャスターか!”くらいでした。かっこいいとは思っていましたけどね。
それとジャズマスターも持っています。それも見た目で買いましたね。ジャズマスターをレコーディングで弾いていたんですけど、イマイチ僕の中でハマってこなかったんです。だけどテレキャスを借りた時に“このギターだ!”と思って、そこからテレキャスが好きになりました。
This is ACIDMAN 2025
2025年6月13日(金)KT Zepp Yokohama
【Setlist】
01. Stay in my hand
02. 夜のために
03. FREE STAR
04. ミレニアム
05. スロウレイン
06. 白と黒
07. ファンタジア
08. 2145年
09. 水写
10. sonet
11. 風追い人(前編)
12. water room
13. カタストロフ【投票曲】
14. 輝けるもの
15. ある証明
16. 飛光
-Encore-
17. Your Song
Live Information
ACIDMAN LIVE TOUR
This is ACIDMAN 2025
<日時>
2025年10月26日(日)
日本武道館
Open 16:30 / Start 17:30
<チケット>・SS指定席……15,000円(SOLD OUT)・S指定席……10,000円(SOLD OUT)
・A指定席……8,500円
・【学割】A指定席……5,000円
※未就学児童無料/お席が必要な場合は【学割・A指定】をご購入下さい。
※【学割】は高校生以下対象となります。
※【学割】をご購入のお客様は必ず学生証または年齢のわかるものをご持参下さい。
※【学割】は【A指定】とセット販売のみとなります。必ず【A指定】を1枚以上ご購入下さい。(【学割】のみの購入不可)
※高校生以下のお客様は必ず大人の方との来場をお願いします。
・イープラス https://eplus.jp/acidman-1026/
<お問い合わせ>
公演HP https://acidman.jp/special/thisisacidmantour2025/














