2025年8月に開催されたTUBEの横浜スタジアム公演で、春畑道哉が使用したペダルボードを本人が解説! 2025年8月に開催されたTUBEの横浜スタジアム公演で、春畑道哉が使用したペダルボードを本人が解説!

2025年8月に開催されたTUBEの横浜スタジアム公演で、春畑道哉が使用したペダルボードを本人が解説!

2025年8月23日(土)に横浜スタジアムで開催された“TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2025 TUBE × 40SUMMERS”。本公演でギタリストの春畑道哉が使用したペダルボードを、本人の解説と共にご紹介しよう。フェンダーのTone Master Proを中心とした新システムは必見!

取材・文=小林弘昂 機材撮影=星野俊

Haruhata’s Pedalboard

ペダルボード

新導入のTone Master Proを軸にしたシステム

【Pedal List】
①FREE THE TONE / JB-41S(ジャンクション・ボックス)
②Fender / Tone Master Pro(サウンド・プロセッサー)
③VEMURAM / SPIRITONE(オーバードライブ/ブースター)
④FREE THE TONE / OVERDRIVELAND(オーバードライブ)
⑤Fender / Mission Engineering / SP1-TMP(エクスプレッション・ペダル)
⑥Fender / Tread-Light Volume/Expression(ボリューム/エクスプレッション・ペダル)

実機のアンプとコンパクト・エフェクターを中心としたシステムに代わり、現在の春畑のサウンドメイクは②Tone Master Proをメインにしている。そのためステージ上からアンプはなくなり、②Tone Master Proの音をラインで外音に出力。

普段のライブではステージでのモニター用にTone Master FR-12を使用しているが、“TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2025 TUBE × 40SUMMERS”では雨の影響を考慮して使用されなかった。

ギターからの接続順は、まずワイヤレス・システムを通り、①JB-41Sを経由して②Tone Master Proにインプット。OUTPUT 1のXLRステレオ・アウトでPAに信号が送られている。

②Tone Master ProのLoop 1には③SPIRITONEを、Loop 2には④OVERDRIVELANDを接続。⑤SP1-TMPと⑥Tread-Light Volume/Expressionも②Tone Master Proに接続されており、⑤SP1-TMPはワウ・ペダルとして、⑥Tread-Light Volume/Expressionはボリューム・ペダルとして使用している。

②Tone Master Proでは楽曲ごとにバンクを作成。様々なアンプ・タイプやエフェクトを使用しているが、クリーンのサウンドはTwin Reverbのアンプ・タイプ、歪みのサウンドはおもにSoldano系のアンプ・タイプがプリセットされていた。どのプリセットも後段にEQ(EQ-5 Graphic)が配置されており、春畑は音量の微調整をEQのGAINコントロールで行なっている。

VEMURAM / SPIRITONE

Loop 1に接続されている③SPIRITONEは歪み量を控えめにセッティングし、ブースター的に使用。歪みを足したい時や、クリーンでのソロでオンにしているとのこと。ちなみに本機はCharから譲ってもらったものなのだとか。

FREE THE TONE / OVERDRIVELAND

Loop 2の④OVERDRIVELANDも③SPIRITONEと同じような使い方だが、本機はよりクリーンなサウンドの際に使用するという。NORMAL chにセッティングし、“ROCK”スイッチ、TONE回路がバイパスされる“GLASS”を選択。

Interview

会場でどう響くのかを試したら
“いけるかもね!”となったんです。

まず、Tone Master Pro(②)を導入したキッカケから教えて下さい。

フェンダーに遊びに行った時、まだできたばかりだったTone Master Proが置いてあったんです。“何それ、フェンダーでそういうギター・プロセッサーあるの!?”と思って、さっそく試させてもらったんですよ。そしたらTwin Reverbはもちろん、フェンダーのアンプがこんなにたくさん試せる……しかも指先1つで。それで“面白い!”と思ったんですね。

2023年くらいのお話ですね。

その時はそんな印象だったんですけど、個人でフェンダーのイベントに出演することがあって、“この間のTone Master Proでやってみたいな”と思ってプリセットを始めたら、凄く使いやすかったんです。僕、機械音痴なんですけど、イメージした音がすぐ作れました。でも、“シミュレーターでしょ?”っていうのがまだあって、ライブで導入することはなかったんです。

慎重に検証していったんですね。

アンプを積んでマイクを立ててということを40年もやってきたから、どうしても“これでいいのか?”という思い込みがあって(笑)。で、その後TUBEのファンクラブ・イベントで数曲だけ演奏する機会があったんですね。会場はホールで、ライブPAもいる状態だったので、どう響くのかを試したら“いけるかもね!”となったんです。

それでも疑い深いから、今度はエンジニアとレコーディング・スタジオに入って、自分がいつも弾いているようなリードのトーンをTone Master Proで作って録音して、そのあとにいつものアンプで録音して、わざわざブラインド・テストもしたんですよ。

そんなことも(笑)!

そしたら、“あれ、こっちがアンプだっけ?”“逆でした!”みたいに、エンジニアもどっちがどっちかわからなくなって、ようやく“ライブでも導入しよう!”と(笑)。

ある時、ギタリストだらけのイベントがあったんですけど、みんなは当然アンプを持ってきていたんですね。でも僕はTone Master Proを気に入ってるから、そこでも試したくなっちゃって(笑)。アンプだらけのセッションとなると、音の被りだのなんだので、自分のベストの音を出力するのが本当に難しいんですよ。Tone Master Proはキーボードのように何にも影響されず、自分が作ってきた音を出力できるのは強いですよね。マイクの距離とかも自由に変えられますし。

例えばハマスタでライブをやる時なんかは、直射日光や水を避けるためにビニール・テントの中にアンプを置いていたんですけど、それだけでも音が変になっちゃうんですよ。

演奏中でも数小節の間にパッと直せる。
これが凄いなと。

どんな音色を使っているんですか?

実際に今からプリセットを直してもいいですか? 今、とある楽曲の中で使うコンプが強いなと思っていたので、それを弱めてみます。それと、ちょっと尖っていたのでTONEを下げて……。セーブはフット・スイッチを長押しして終わり。

Compressor

それと今プリセットしているクランチが惜しいので、ほかの曲で使う好きなクランチを持ってきちゃおう。“355”というバンクにプリセットしているクランチを“319”にコピーしますね。

コピペもめちゃくちゃ簡単ですね!

そうなんですよ。僕は全部のプリセットの後段にEQのエフェクト(EQ-5 Graphic)を入れているんですけど、音量がデカいな、もしくは小さいなと思ったら、EQのGAINで音量の調整ができるんです。こうすれば演奏中でも数小節の間にパッと直せる。これが凄いなと。今まではリハが終わってから“あの曲はこうしようか、ああしようか”って何回もやっていたことを、たった3秒で変更してセーブできますからね。

EQ-5 Graphic

プリセットをいくつか見させていただきましたが、クリーンはTwin Reverb系、歪みはおもにSoldano系のアンプ・タイプを使っているんですね。

そうですね。もうちょっと音を出してみましょうか。今回の聖飢魔Ⅱとのコラボ(「No Shark No Surf – 夏地獄 -」)ではロータリー(Rotary Speaker 122)を使うんです。フェンダー系のトレモロ(Tube Bias Tremolo)も良いんだよなぁ。あと、ずっとワウはかかりっぱなしになっていて、エクスプレッション・ペダル(⑤)を踏むとオンになります。……これはマーシャル系のアンプですね。“British 800”って書いてある(笑)。

Rotary Speaker 122
Tube Bias Tremol

かなり800らしい歪み感ですね!

うん。たいしたもんですよね。

British 800

Loop 1につながれているSPIRITONE(③)はどのような使い方を?

SPIRITONEをTone Master Proと一緒に使うようになってから本当に良くなったんですよ。あんまり歪ませてなくて、GAINは10時くらい。歪みとかクリーンのソロとかで追加しています。Tone Master Pro側のアンプでベースを作って、これで音をより太くしているみたいな感じですね。これはCharさんからいただいたんです。“いいなー!”って言ってたら“わかったよ、あげるよ”って(笑)。

VEMURAM / SPIRITONE

Loop 2につながれているOVERDRIVELAND(④)との使い分けは?

OVERDRIVELANDは、クランチとかジャリーンとさせたい時とか、クリア系の音色を補強している感じですね。

FREE THE TONE / OVERDRIVELAND

Tone Master Proを導入してから特に不自由なことはありませんか?

今、リクエストしている機能があるんですよ。ライブでは自分の立ち位置を離れることが多いんですけど、そういう時にも音を切り替えなきゃいけないので、以前までの機材システムを使っていた時はスタッフがリモートで切り替えてくれていたんですね。でもTone Master Proはほかの機械とのリンクに対応していないので、今はMIDIのシーケンスでプリセットの切り替え情報を送っているんです。なので、その開発をアメリカのフェンダーにお願いしています(笑)。