2018年にイギリス・ウィガンで結成された4人組ロック・バンドのザ・ラサムズが、2025年10月14日(火)に代官山SPACE ODDで初の来日公演を行なった。本公演でスコット・コンセプション(g)が使用した2本のギターを、本人の解説と共にご紹介しよう。
取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モーリー 人物・機材撮影=小原啓樹

Scott Concepcion’s Guitars
2021 Fender
American Ultra Luxe Stratocaster
シグネチャー・プレイはストラトのハード・アーミング
スコットのメイン・ギターは、2021年製のフェンダーAmerican Ultra Luxeシリーズのストラトキャスター。22フレット、2点支持ブリッジ、ボリューム・ノブのS-1スイッチなど、モダンなスペックを備える1本だ。改造点はなし。
スコットは2021年〜2022年頃に本器を購入。最初はビンテージのストラトキャスターの購入を検討していたが、本器を試奏した際、アームとブリッジのフィーリングを気に入ったという。タッチへのレスポンスの良さ、チューニングの安定性も気に入っているとのこと。
ライブ中、スコットは本器のアームを頻繁に操作しており、ストラト独特のハードな音程変化で楽曲に強烈な印象を与えている。
ピックアップはUltra Noiseless Vintage Stratを3基搭載。スコットはほとんどの楽曲でフロントをメインにし、ドライブ感が欲しい楽曲ではリアに切り替えるという。
弦はErnie BallのRegular Slinky #2221(.010〜.046)で、チューニングはレギュラー。
使用楽曲(2025年10月14日@代官山SPACE ODD)
- 「Stellar Cast」
- 「No Direction」
- 「Say My Name」
- 「Knotted Bed Of Roses」
- 「How Beautiful Life Can Be」
- 「Struggle」
- 「Heartbreaker」
- 「I See Your Ghosts」
- 「Artificial Screens」
- 「Long Shadows」
- 「Fight On」
2018 Rickenbacker
330 Midnight Blue
ジョニー・マーへの憧れから手にした330
21歳の誕生日に両親から買ってもらったというリッケンバッカー330。購入してからブリッジ・カバーを付けたまま使用していたため、ブリッジに手を付けながら弾くことに慣れてしまい、ストラトキャスターを手に入れてからは右手の置きどころや乗せ具合を学び直したとのこと。
スコット曰く、“ピックアップはフロントだとウォームすぎ、リアだとブライトすぎで、ミックス・ポジションがパーフェクトなサウンド”と語っている。フロント・ピックアップの音量を調整する5thコントロール・ノブは常に全開にしているそうだ。

ヘッドに付けられているアクセサリーにはスコットの祖父の遺灰が入っている。祖父はギターにハマるきっかけを作ってくれた人だという。
この日のライブでは、ザ・スミスから強く影響を受けたという「The Great Escape」と「Sad Face Baby」の2曲で使用された。
使用楽曲(2025年10月14日@代官山SPACE ODD)
- 「The Great Escape」
- 「Sad Face Baby」
Interview

どのビンテージ・ストラトキャスターよりも
好きかもしれない。
ウィガン出身とのことですが、マンチェスターとは近いのでしょうか?
リヴァプールへもマンチェスターへも、車でだいたい40分くらいのところだよ。
オアシスの再結成ライブには行きましたか?
行けてないんだ。行った人たちが羨ましいよ。いつか行きたいとは思っているんだけど、僕らはライブをやりすぎてしまって、正直、自分が観る側になるのがあまり好きじゃなくなってきてしまったんだ(笑)。
オアシスを初めて意識したのは何歳くらいの時ですか?
たぶん14歳くらいの時かな。15歳の誕生日にノエル・ギャラガーが使っていたユニオン・ジャックのシェラトンをもらったんだよね。でもバンドを始めた時、“これだとノエルの真似をしているだけだ”と思って手放したんだ(笑)。かっこいいギターだったけどね。
リアムが来年もオアシスの活動があるようにほのめかしていましたので、今後ライブを観に行くチャンスがあるかもしれませんね。
でも今回、僕らには何の声もかからなかったから、まだ彼らに認められていないのかもしれないな(笑)。
では機材の話を聞かせて下さい。メインのストラトキャスターはいつ手に入れたんですか?
2021年か2022年だったと思う。本当はビンテージのストラトキャスターが欲しかったんだけど、新品を買ったんだ。でもめちゃくちゃ気に入っているし、これまで弾いたどのビンテージ・ストラトキャスターよりも好きかもしれない。ちょっと弾いただけで、このアームとブリッジからファンタスティックなものを感じたよ。たしかAmerican Ultra Luxeっていう新しいモデルで、すごく良いんだ。
ビンテージのストラトを試したことがあるんですね。
うん。リヴァプールのスタジオで何本か弾いたことがあるよ。80年代のTokaiが何本か置いてあったんだ。実は80年代のフェンダー・ストラトを1本買ってみたんだよね。そっちもグッドだけど、やっぱり今回持ってきたストラトのブリッジとアームの感じがかなり良い。タッチに対するレスポンスが良いうえに、全然チューニングが狂わないんだ。
リハーサルを観ていましたが、アームを多用していましたよね。
ほぼ使っているよ。ずっと握っているね(笑)。
まるでケヴィン・シールズのスタイルのようでした。
そう。ソロの時にかなりアグレッシヴに揺らすのが好きなんだ。グニャグニャにベンドしてカオスな音にさせるんだよ。
ジャズマスターやジャガーではなく、ストラトキャスターのトレモロ・ユニットだからこそのピッチ・ベンドを活かしているという。
うん。ユニゾン・ベンドとかの時、強烈に揺らするんだ。新しいアルバム(『Matter Does Not Define』)でもけっこうやっていて、例えば「Long Shadow」や「No Direction」とかだね。普通にソロを弾くよりも、そういう感じでやると新しい奏法みたいに聴こえるんだ。
そういった奏法も含めて、あなたに影響を与えたギタリストは?
そんなにいないんだよね。多くの人はエリック・クラプトンやジョージ・ハリスンの名前を挙げるけど、僕がおもに影響を受けたのはジョニー・マーやマーク・ノップラーみたいな人たち。でも、彼らは僕みたいなアーミングはやらないよね(笑)。このアーム・プレイに関してはなんとなく自分でやり始めたんだけど、一緒に作業していたプロデューサーが、“今のは何だ? もう1回やってみろ!”と言ってきたことがあるよ。
このストラトキャスターの改造点はありますか?
まったく何もしてないんだ。完全に箱から出したままで、1つも手を加えてないよ。黒いピックガードのストラトってあんまり見かけないよね? デヴィッド・ギルモアのストラトキャスターを連想するから気に入っているんだ。このストラトはサンバーストだから厳密には違うけど、もしボディもブラックだったら完全にそっくりになるよね。
ピックアップはフロントをメインにしていましたが、ほかのポジションも使いますか?
基本的にはフロントかリアだけで、センターはほとんど使わないね。ほとんどの曲ではフロントだけど、2曲くらいはリアにしてドライブ感の強いサウンドにしている。そのほうが抜けてくるしブライトになるからね。
弦のゲージは?
Ernie BallのRegular Slinkyを使っているよ。……でもひょっとしたら、今はD’Addarioが張ってあるかもしれない(笑)。昔はゲージを.009〜にしていたけど、ベンドすると力が入りすぎてピッチがオーバーしてしまったから、もう少し太い.010〜にしたんだ。こっちのほうが弾きごたえがあって好きだね。

車を買ってもらう予定だったんだけど、
リッケンバッカーを選んだんだ。
青いリッケンバッカー330の詳細も教えて下さい。
あれはザ・スミスから強く影響を受けたような曲で使っているよ。もともとそういう理由でリッケンバッカーを手に入れたんだ。僕はストラトキャスターがあれば何でもできると思っていて、リッケンバッカーだと用途が限られる気がするんだよね。ストラトキャスターはヘヴィなシュレッド系とか、どんな曲にも対応できるけど、リッケンバッカーではできない。そういうフレーズをリッケンバッカーで弾くと、使い方を間違えているみたいな気持ちになるんだ。
いつ手に入れたんですか?
実は21歳の誕生日に両親から車を買ってもらう予定だったんだけど、リッケンバッカーを選んだんだ。“現金よりもギターがいい!”と言ってね(笑)。これは僕がバンドに持ち込んだ数少ない機材の1つなんだよ。ほかの機材は基本的にバンドで揃えてもらったけど、これだけは完全に個人の所有物なんだよね。
アレックス(・ムーア)はバー・コードを弾いて空間を埋めるようなプレイが多いですが、あなたのプレイはダブル・ストップやスモール・コードを使って隙間を縫っていくような印象があります。楽曲制作の段階から2人の役割は明確に分かれているのでしょうか?
そんな感じだね。アレックスが曲を書く場合はコードと歌詞も用意されているから、まずはそれを聴いて、自分なりに何を必要なのかを思い浮かべるようにしている。いきなり適当に弾き始めるんじゃなくてね。“目立とう”とか“エゴを出そう”という感じではなく、曲に合ったものを考えるんだ。曲はすべて違っていて、聴いた瞬間に“これだ!”というパートが浮かぶこともあるけど、時間がかかる場合も当然あるよ。
楽曲はほとんどアレックスが作っているんですか?
そうだね。基本的にはアレックスが原型を持ってきて、僕はそれに合うナイスなパートを考えるだけだ。でも僕が作ったコード進行にアレックスが歌詞を付けた曲もあるよ。「The Great Escape」はまさしくそうで、こういう場合は一緒に作った感覚があるね。
コード進行と歌を聴けば、自分が何をプレイするべきか自然にイメージできる?
それは間違いないね。僕はとにかくボーカルをサポートすることを意識している。リスナーはまず歌を聴くわけだし、歌がメインだから、邪魔しないようにするのが大事だ。支えるプレイができればそれが一番だと思っているよ。
2025年10月14日(火)代官山SPACE ODD
【Setlist】
01. Stellar Cast
02. No Direction
03. Say My Name
04. The Great Escape
05. Knotted Bed Of Roses
06. How Beautiful Life Can Be
07. All My Life
08. Struggle
09. Heartbreaker
10. I See Your Ghosts
11. Artificial Screens
12. Long Shadows
13. Fight On
14. Sad Face Baby







