去る1月17日(土)、最強プレイヤーを決める誌上ギター・コンテスト、“Guitar Magazine Championship vol.10”が東京・御茶ノ水のESP GROOVE LOUNGE TOKYOにて開催された。200名以上の応募の中から1次審査と2次審査を勝ち抜いた18名のファイナリストたちのライブ・パフォーマンス形式による最終審査だ。ここでは、当日のパフォーマンス動画に加え、各部門のグランプリに選ばれたギタリストたち、さらに当日の審査員を務めたReiと宮脇俊郎のコメントをお届けしよう。
撮影=鈴木千佳
Guitar Magazine Championship Vol.10
最終審査 グランプリ決定!(ギター・マガジン・コンテスト)
緊張と熱気が交錯する一発勝負


コンテスト当日の天気は快晴。2次審査を勝ち抜いた18人のファイナリストたちが続々と楽屋入りしていく。本番前の楽屋ではそれぞれ自身のギターをケースから出し、本番で弾くフレーズを念入りに確認していた。
開始時刻を迎え、会場に参加者が揃うと、審査員を務める本誌編集長、宮脇俊郎、そしてReiが順に参加者たちへエールを送り、熱戦の火蓋が切られた。
最初に行なわれたのは完コピ部門の審査だ。
9人のファイナリストたちが演奏を披露し、3人の審査員が時折りユーモアを交えながら、演奏を聴いた感想と的確なアドバイスを伝えていく。
演者たちは皆緊張の色が見えたものの、Reiによる課題曲「Delicious Days」を細やかなニュアンスまで繊細に弾き切ってみせた。
完コピ部門の審査を終え、宮脇は“皆さんの普段弾かれているプレイ・スタイルが垣間見えて、同じフレーズでも全然違う印象になったのでとても楽しめたし勉強になりました。カッティングとソロが交錯する難しい課題曲でしたが、皆さんの右手に力みがなく、リズムが素晴らしかったです”と拍手を送る。
Reiは“とっても楽しくて嬉しい気持ちです。完コピ部門ではありますが、単なる再現ではなく、皆さんの音楽的なルーツがプレイからにじみ出ていて、それぞれの個性が光る素敵なカバーばかりでした”と感謝の言葉を送った。
小休憩を挟み、続いてクリエイティブ部門の審査が行なわれた。
先ほどまでの完コピ部門とは打って変わって、各々が独自の解釈で「Delicious Days」を再構築し、センス、スキル、パフォーマンスを存分に発揮した見事なアレンジで魅せていく。
序盤から畳みかけるように弾き倒すスタイルや、ペダルを駆使して豊かな表現を得意とするギタリスト、さらにオーディエンスを意識したライブ・パフォーマンスで魅せる者など、それぞれの個性が全面に押し出されたステージが続く。
Reiは“新しいメロディを乗せたフレーズで作ってくる方が多いのかなと思っていたんですけど、意外とアドリブ的なフレーズで弾かれていて、私にはとても新鮮に感じました”と驚きを見せ、宮脇は“今回はギター・コンテストなので、この2分ちょっとの課題曲の中で楽曲の持つストーリーだけじゃなく、自身のギターの魅力も出さないといけないんですよね。そのバランスのせめぎ合いがとても興味深かったです”と続いた。
すべての審査が終わり、表彰式が行なわれた。
完コピ部門の準グランプリは、ムスタングで巧みなプレイを見せた北村悠介。グランプリは、現役の女子高生でありグレッチ使いのHannaが受賞した。
“もちろんグランプリを取るつもりで頑張ってたんですけど、皆さんの演奏がすごくて……取れると思わなかったので本当に嬉しいです”と笑みを溢した。
続いてクリエイティブ部門の準グランプリは、スティーヴ・ヴァイのシグネチャー・モデルで圧巻の演奏を披露した宇都達人。そしてグランプリは、21歳という若さですでにサポート活動も精力的に行なっているGenTiが射止めた。
“まさかグランプリになれるとは思っていなかったので、こうして賞をいただけて、非常に心満ち足りています”と嬉しさを噛み締めていた。
表彰式の最後にReiは、“今日の皆さんの演奏にすごく心を打たれました。「音楽が大好きだ」という情熱が一番なんです。今回のコンテストで悔しい気持ちになっている方もいると思うんですけど、全員が優劣なく素晴らしかった! それを心から伝えたいです”と感謝を綴り、コンテストは盛大な拍手と共に幕を閉じた。
9年ぶりに開催された第10回誌上ギター・コンテスト。プロに引けを取らない音楽への情熱を持ったギタリストたちの存在を再確認できる、極めて有意義な時間となった。

受賞者/審査員コメント
ここからは、グランプリ受賞者のHannaとGenTi、さらにコンテストの審査員を務めた宮脇俊郎とReiのコメントをお届け。
Hanna (完コピ部門グランプリ&Rei特別賞)
より一層モチベーションが上がってます!

グランプリおめでとうございます!今の気持ちを教えてください。
嬉しいのと驚きと、これまでの練習量に見合わないんじゃないかって思ってしまうほどの豪華な賞品に少し戸惑いもあるんですけど……将来に投資していただいたという気持ちで、これからさらに火力を上げて練習していこう、皆の期待に応えようっていう気持ちです。
このコンテストに参加したことで、ほかの参加者さんの演奏にも刺激を受けたので、より一層モチベーションが上がってます!
本番前はどんな気持ちでいましたか?
すごく緊張しちゃってたんですけど、周りの皆さんと話したら“楽しんでやれば大丈夫だよ”って言ってくれて、自分らしく楽しもうって思えました。本番もとても楽しかったです。
今回Reiさんが作曲した課題曲をコピーしてみてどうでしたか?
スライドとかチョーキングとかビブラートとか、繊細な表現がどこまでも突き詰められるような楽曲だと思ったので、細かいニュアンスまでこだわって練習するようにしました。
獲得したGibsonのES Supremeは今後どのように使っていきますか?
ギブソンならではの温かい音色が好きなんです。今はおもにジャズをやっているので、このギターでジャズを弾いていきたいですね。あとReiさんの楽曲ももっとコピーしていきたいです。
さらにRei特別賞のデジマート公式クーポンも手に入れましたね。
使いどころに悩んじゃいますけど……(笑)、せっかくなのでプリアンプとかエフェクター類を手に入れて使いこなしたいと思います!
GenTi (クリエイティブ部門グランプリ)
作曲者の意図を汲み取ることを大事にして考えました。

クリエイティブ部門のグランプリ受賞、おめでとうございます!今の気持ちを教えてください。
まず一番に嬉しいです! 地元ではほかに楽器をやっている友達もあんまりいなくて、1人で黙々と練習していたあの頃の孤独が報われた気がしています。
これまでレッスンなどを受けたことはなかったのでしょうか?
2021年にアメリカンギターアカデミーのコンテストで優勝したことがあって、その特典で1年間レッスンに通ったことはありますね。あとは父に教わることもありました。それ以外はほぼ独学です。
本番前はどんな気持ちでいましたか?
もう“やってやるぞ”っていう気持ちでいました。小刻みにジャンプとかシャドーとかして(笑)、けっこう意気込んでましたね。あと、本番前には必ず反復横跳びをするんですよ。そうすることで体をほぐして、本番は楽しく弾けました。
クリエイティブ部門ということで、オリジナルのフレーズを構築したわけですが、手応えとしてはどうでしたか?
難しかったですね……。後悔のないようにしっかり準備して本番に臨みたいと思ったので、アレンジはけっこう詰めました。原曲を聴き込んで、作曲者であるReiさんの意図を汲み取ることを大事にして考えました。
賞品としてPLAYTECHのAX 45C Eliteを手に入れましたが、今後どのように使っていきたいと考えていますか?
これまで実践で使えるようなアコギを持ってなかったんです。なので、これを機にライブやレコーディングで良い音を鳴らせるように、練習兼実践用として使っていきたいです!
宮脇俊郎 (審査員)
予想を超えるレベルの参加者がたくさんいました。

二次審査から参加者の演奏を審査してもらいましたが、どういったところに審査の基準を置いていましたか?
参加者は上手い人ばかりだろうというのは予想がついていたので、当日のパフォーマンスや、参加者たちの表現したいものがちゃんと課題曲の中で表現できているかに重きを置いていましたね。
単なるテクニック・レベル品評会ではないので、楽曲の中でどう印象的なストーリーを作っていけるか。驚異的なテクニックやトリッキーなフレーズ、トーン・コントロール、そういったものを支離滅裂じゃなく、単なる羅列でもなく、1つのまとまりとなって成立しているかどうかを重視して審査しました。
コンテストのすべての行程が終わった今の感想を聞かせてください。
2025年10月号で西尾知矢氏と共にプロ・ギタリストとしての模範プレイが掲載されてますが、初めて課題曲を聴いた時は正直“これできんのか?”って思いました(笑)。そこから自分なりに色々考えてアプローチしたつもりだったんですけど、自分の予想を遥かに超えるレベルのアプローチやハーモニーを奏でる参加者がたくさんいましたね。
中でも気になったフレージングやアイディア、驚かされたアプローチなどはありましたか?
特にAメロのセブンス・コード主体のブルージィなセクションで、皆さん独自性を出したコード音のアプローチをしていたのが印象的でしたね。審査と同時に勉強にもなってました(笑)。
読者へ向けて、ギター上達のためのアドバイスをお願いします。
どんなプレイ・スタイルにしろ、リズムやチョーキングした時のピッチの安定感などの基礎的なところがイマイチだと、聴いている側に演者の意図がきちんと伝わらないことになりがちなので、基礎はやはり大事なポイントです。
それと、多くのレジェンド・ギタリストたちも、たとえアドリブで弾くにせよその前に“どんなアプローチで弾こうかな”って試行錯誤をしていることが実は多かったりするので、入念な下準備というのは必要ですね。
そのうえで自身の手から生まれたものが大事だと思います。既存のスタイルを踏襲するだけじゃなくて、自分なりの新しい音楽を表現するためのアプローチをすることによって、聴衆の感動が得られるんじゃないかなと。
最後に、今回のコンテスト企画に参加してくれたすべてのギタリストたちへ、メッセージをお願いします!
時代は変わって、今はSNSに演奏動画を投稿するのが主流になりましたが、これは物凄く幸せな時代だなってとても思うんです。自分だけで完結するのも手ですけど、他人のプレイをいろいろと聴きまくったうえで、“自分ならこうする”というアプローチは、自身の幅を広げる意味でもとても有意義なことです。
今回のコンテストのように課題曲というテーマが1つ提示されたものであれば、より一層比較や研究がしやすいと思うので、次回があればまた挑戦してほしいですね!
Rei (審査員 & 課題曲制作)
演奏してくださった方とまた出会いたいなと思います。

今回、皆さんの演奏を審査員という立場で見てもらいましたが、率直にどう感じましたか?
とっても楽しかったです。自分が書いた曲を他人が演奏しているのを目の当たりにする機会ってなかなかないですし、皆さん楽しそうに演奏されていて、私も嬉しい気持ちになりました。
今回のコンテストには、総勢200名以上の方たちが参加してくれました。コンテストが終わった今の気持ちを聞かせてください。
まず参加者の多さにびっくりしました。課題曲はけっこう難易度の高いものだったと思うので、たくさん参加してくれて嬉しいですし、演奏してくださった方とはまたどこかで出会いたいなと思います。
審査中に気になったフレージングやアイディア、驚かされたアプローチなどはありましたか?
楽曲としてはミニマル・ファンクだったりブルーズ・ロックの系譜が強いものだったんですが、それぞれ皆さんの音楽的な故郷がうかがえるのが印象的でした。ハードロックやメタル、フュージョン、カントリー、ジャズなど、皆さんの音楽的なバックグラウンドが感じられたことで、1つの楽曲が持つ可能性を教えていただいた気がします。
基準としては、何を軸にして審査していましたか?
こういった生演奏だと、エンターテイナーとしての視覚的な要素……例えば私であれば、小柄な女性がわりとゴリッとしたパンチのあるロックやブルーズをやっているという、そういった視覚からの要素が入ってはくるんですけど、なるべくフラットな視点で、皆さんのパフォーマンスや演奏を評価するように心がけていたのがまず1つですね。
もう1つは、心が動くかどうかです。演奏が上手な方はたくさんいると思うんですけど、涙を流したり、元気が出たりという心に作用するプレイができる演奏者というのは本当に選ばれた人しかいないと思うんです。なので、そういう可能性を秘めたギタリストかどうかというのを、いちアーティストとして一番に重きを置いて聴かせていただきました。
読者へ向けて、ギター上達のためのアドバイスをお願いします。
ギターと触れている時間を1分でも増やすことですね。指板をくまなく知るということにもつながりますし、楽器との適切な距離感を知れる。そういったいわゆる中級レベルに達するまでは、とにかく1分1秒でも楽器を持つ時間を増やすべきだと思います。
それ以上のレベルになってくると、感情とかメッセージ性とかの技術的なこと以外の要素が必要になってくるので、先ほど言った技術力の基礎が身についた先は各々が自分自身と対峙して形作っていくものなんだと思います。
最後に、今回のコンテスト企画に参加してくれたすべてのギタリストたちへ、メッセージをお願いします!
私の楽曲を演奏してくださって本当にありがとうございます。皆さんに楽しんで演奏していただく姿を想像しながら作ったので、たくさんの人に興味を持っていただけたことがとっても嬉しいです。
最近は課題曲の「Delicious Days」を気に入りすぎてライブでもよく演奏しているので、ぜひライブに来て私のプレイにも触れていただけたら嬉しいです!