マック・デマルコが語る、新作『Guitar』とサポート・メンバー、ギタリストとしてのルーツ、そしてハードオフ愛 マック・デマルコが語る、新作『Guitar』とサポート・メンバー、ギタリストとしてのルーツ、そしてハードオフ愛

マック・デマルコが語る、新作『Guitar』とサポート・メンバー、ギタリストとしてのルーツ、そしてハードオフ愛

2026年2月、マック・デマルコが6年ぶりの新作『Guitar』を引っ提げた全国5都市の来日ツアーを行なった。東京公演に際して、ギター・マガジンWEBではマックに初のインタビューと機材撮影を敢行。『Guitar』の制作、素晴らしいサポート・メンバーとの出会い、自身のギタリストとしてのルーツはもちろん、ハードオフへの愛までも語ってもらった。使用機材は後日、ギタマガWEB有料会員限定記事にて公開!

取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モリー 人物撮影=Yuki Kikuchi

マック・デマルコ

前よりも今のほうが
ギターのことをリスペクトしている気がするんだよ。

まずは昨年リリースされた新作『Guitar』について質問させてください。ギター・マガジン的にはアルバム・タイトルに惹かれましたが、このタイトルにした理由は?

曲を書いていた時点ではタイトルを決めてなかったんだ。アルバムの中にシンセサイザーが入っている曲が1曲あったんだけど、シンセを消しちゃえばギターだけになると思ったんだよね。ドラムはカウントしないってことで。

ギターとボーカル、ドラムの音のみにしたんですね。

それがちょっと面白い感じがしたし、アルバムの名前としてもグッドなんじゃないかと思ったんだ。エレキ・ギターがたくさん入っているアルバムだと思われそうな気がするけど、実際はほとんどアコースティック・ギターなんだよね。

あと、ここ数年はギターとの関係を見直していてさ。僕はずっとギターを弾いてきたけど、新しいサウンドを探す時は“シンセを試してみよう”とか“ピアノにしてみよう”という風になりがちだった。でも今は再びギターをリスペクトし始めている気がする。ある程度成長すると、そこを離れて“もう戻らないぞ!”みたいに思うことってあるよね? でも年を取ると、“自分が育った場所ってけっこう良かったんだな”と思うようになる。僕にとってギターはそんな感じなんだ。カウボーイ・コード(※開放弦を多く含むロー・ポジションでのメジャー・コードの総称)は素晴らしくて、それだけでグッドな曲が書ける。そんなに複雑じゃなくてもいいんだ。前よりも今のほうがギターのことをリスペクトしている気がするんだよ。

アルバムの作曲はアコースティック・ギターで行なったんですか?

うん。だいたいそうだね。

レコーディングで使用したギターは?

アコースティック・ギターは全部エピフォンのTexanだと思う。何年も前にLAで手に入れたものだね。ビートルズみたいというか、古くなった弦のヴァイブがあるんだ。すごく気に入っていて、長いことツアーでも使ってきたよ。ここ数年の作品でもけっこう弾いてるギターなんだ。

エレキ・ギターは、アルバムのアートワークに写っている緑のストラトキャスターを使った。でも、レコーディングの途中でデヴィッド・ギルモアのシグネチャーEMGが載ったピックガード・セットに載せ替えたんだよね。だから途中からサウンドが違って聴こえるかもしれないけど、交換した前とあとで音がどう違ったのかは、あんまりよく覚えてないな。

Texanはビンテージでしょうか?

たぶん70年代初めくらいに作られたものだと思う。グレイトなギターだよ。

緑のストラトはいつ頃のもの?

たしか87年とか、その辺だったと思う。アメリカ製のグッドなストラトキャスターでクールだよ。面白い話がある。そのストラトを買った時は80年代後半っぽいタイプのペグやブリッジが付いていて、ストラップ・ピンも通常とは違った見た目でね。だから最初は少し変な感じがして、ルックス的に60年代のハードウェアに換えようと思っていたんだけど、それの少し未来的な感じもクールだなと気づいたんだよ。なんか嫌いになれないんだよね。

「Rock And Roll」のフリーキーなソロが大好きです。どのように考えたフレーズですか?

あれはたしか、レコーディングでの1stテイクだったと思う。ひょっとしたら違うかもしれないけど。

とりあえず弾いてみたテイクという。

うん。なんとなくプレイしただけだよ。僕のスタイルとしてはすごくクラシックなソロで、ちょっとグチャっとした感じだけどね(笑)。このアルバムのエレキ・ギターの役割は、小さなポケットのような場所を見つけるみたいに、アコースティック・ギターの上に何か加えられるものを見つけるような感じだったんだ。忙しくさせすぎないようにするっていうかさ。でもソロを入れるスペースは残しておいたよ。

左から、ペドロ・マルチンス(g)、アレック・ミーン(key)、マック・デマルコ、ダリル・ジョンズ(b)、フィリップ・メランソン(d)
左から、ペドロ・マルチンス(g)、アレック・ミーン(key)、マック・デマルコ、ダリル・ジョンズ(b)、フィリップ・メランソン(d)

とにかく僕は
ジョージ・ハリスンの大ファンなんだ。

現在のライブであなたはギターをあまり手に取らず、サポート・ギタリストのペドロ・マルチンスがほとんどのギターを弾いていますよね。

ライブでは面白い状態を保ちたい時もあれば、自分のボーカルに集中したい時もあるんだよね。今バンドで一緒に演奏している連中は全員かなりクレイジーなミュージシャンだから、曲のだいたいの骨組みが残っていれば、あとは彼らがある程度自由に何かをやれるように任せている。完全なフュージョン・ジャズの応酬みたいになってほしいわけじゃないけど、多少は遊んでもいいと思っているよ。ハーモニーをいじったりしてもいい。ペドロだけじゃなく、ダリル(ジョンズ/b)もアレック(ミーン/key)も、それぞれの楽器でかなり個性的な声を持っているからね。だから彼らの裁量に任せているんだ。

ペドロはモダンなプレイとサウンドで魅了する、ものすごいギタリストです。どのように知り合ったんですか?

けっこうな間、JD・ベック(d)というキッズが僕のバンドで演奏していたんだ。JDが、“ダリルに会ったほうがいい。一緒にプレイしてもらいなよ”と言ってきて、僕は“じゃあそうするか”とダリルに会い、彼はしばらく一緒に演奏してくれていた。あの辺の連中はみんなクレイジーなジャズ・ミュージシャンで、たぶんそういうコミュニティの中でお互い知り合っているんだと思う。

それからインストゥルメンタルのアルバム『Five Easy Hot Dogs』(2023年)のツアーをやる時、ダリルがベースではなく“ドラムをやる!”と言い出してね。そこでペドロがベースをプレイすることになったんだよ。彼は今ギターを弾いてくれているけど、どの楽器をやらせてもすごいプレイヤーでね。でもやっぱりギターがメインの仕事なんだろう。すごくクールなんだ。

ペドロのコーラスやリバーブがかかった温かいサウンドが本当に素晴らしいと思いました。あなたはペドロにどのようなサウンドのリクエストしているんですか?

KemperとAlesisのユニットを通した彼のサウンドは、実は僕が組んだものなんだ。だから基本的には僕が作ったサウンドを彼に提示している感じだね。Alesisのサウンドは、ほとんど僕のギター・サウンドそのものだから。でもペドロはそこから少し変えたり、自分のやりたいように調整したりもしている。それと彼が以前どんなギターを使っていたのかはわからないけど、今はストラトキャスターを弾いてくれているよ。ストラトは僕のサウンドでもあるからね。

バンドのみんなが曲を覚えてコードを把握したら、リハーサルは“じゃあどこへ行くか見てみよう”という感じなんだ。ちゃんと曲として聴こえていて、魂みたいなものが残っていれば、それでいいんだよ。

そもそも、あなたのギタリストとしてのルーツは? 影響を受けたギタリストやアルバムなどが知りたいです。

13歳か14歳くらいの時かな? 地元のエドモントンでドン・アロットという人にギターを習っていたんだ。たぶん1年くらいは続けたけど、僕はすごくダメな生徒になってしまった(笑)。その後、成長していく中でギターに集中していた時でも、同時に“曲そのもの”にすごく意識が向いていたと思う。

楽曲の構成など、制作方面に関心があったんですね。

だからビートルズが大好きなんだ。ジョージ・ハリスンのギター・プレイが本当に大好きなんだよ。純粋にギターという観点では、若い頃はジェフ・ベックがすごく好きだったし、今でも彼は本当にグレイトだと思う。ほかには誰が好きだったかな……? J.J.ケイルも好きだし、コナン・モカシンは僕にとって大きなインスピレーションになっているね。コナンとは同世代で、友達でもあるんだ。

それからレッド・ツェッペリンの曲をひたすら覚えていた時期もあった。しばらくはAC/DCにもハマっていて、アンガス・ヤングの速いビブラートを真似しようとしていたよ。AC/DCのリフはまさに“教科書”みたいな感じだよね。僕はドラムも叩くんだけど、AC/DCの曲にはフィルがほとんどないんだ。ただ完璧に曲を機能させるだけというか、マシンみたいに刻み続ける。それがクールなんだよね。

あとはピート・タウンゼントも大きい。あの人のスタイルには、ある種の“勢い”があるんだ。ヴァン・ヘイレンみたいに弾けるほど上手くはならなかったけど、そういう音楽も好きだったよ。エリック・クラプトンがブルースブレイカーズとやっていた頃もすごく好きだった。こうやっていろんな音楽から多くのことを学んだと思う。今こうして振り返ると面白いよね。

かなりクラシックな人たちで驚きました。

とにかく僕はジョージ・ハリスンの大ファンなんだ。ジョン・レノンのギターも、ポール・マッカートニーのアコースティック・ギターも大好きだね。キンクスもザ・フーも好きだし、ブリティッシュ・インヴェイジョンのああいう歪んだゴツいギター・コードの音楽は最高だよ。ローリング・ストーンズもはずせなくて、キース・リチャーズは本当にアメイジングだ。そういうクラシックな人たちは全部好きっていうことだね(笑)。

ハードオフに行くたびに
9歳とか10歳の頃を思い出す。

今回の来日はライブ続きなので忙しかったと思いますが、機材散策には行きましたか?

実はツアーが始まる前に1週間ほど楽しむ時間を作って、いくつかのハードオフと渋谷の楽器店に行ったんだ。マイクを何本か買ったけど、これから中国に行くから日本製の高価なものを持ち込むのが厳しいんだよね。でも、見てまわるだけでも楽しいよ。

やはりハードオフに行きましたか。

ハードオフに入ると“Goodwill(※1902年にボストンで設立されたリサイクル・ショップ)”みたいなジャンク・ショップの雰囲気を感じるんだけど、並んでいるアンプにほぼ未使用のデッドストックの真空管が入っていたりして、“なんだこれは!?”って思うよ(笑)。本当にクレイジーでアメイジングだ。

“ハードオフ・ドリーム”と呼ばれていますけど、激安のストラトを買って、帰宅後に中身を確認したらプリCBSのピックアップが入っていたみたいな話もあります(笑)。

ワォ、まさにそれだね。古いビデオ・ゲームとかもそうだよ。いわゆるビンテージ・ゲームが100円で置いてあったりして、本当に狂ってる。ハードオフに行くたびに9歳とか10歳の頃を思い出すんだ。

今回はどこのハードオフに行ったんですか?

吉祥寺と高円寺、それから秋葉原の両方の店舗(1号店と2号店)に行ったよ。特に吉祥寺はヤバいね。まるでデパートみたいなんだ。楽器コーナーはもう“Guitar Center”みたいだったよ(笑)。でも、街の中心から少しはずれた、ジャンクなものが多そうな店舗に行くのも好きだな。僕はそっちのほうが興奮するんだよね。

八王子店もなかなかの品揃えとサイズ感なので、いつか行ってみてほしいです。

明日はオフだから、もしかしたら行けるかも。あと友達に聞いたんだけど、東京の外にはオフハウスっていう店があって、いろんなものが揃っているらしいね? 商品が全部ビニールで包まれていて、アメリカの普通の楽器店よりも状態がいいんだって。そして品揃えもすごいんだからクレイジーだよ。

作品データ

『Guitar』
マック・デマルコ

VMG
UICB-1036
2025年8月22日リリース

―Track List―

01. Shining
02. Sweeter
03. Phantom
04. Nightmare
05. Terror
06. Rock And Roll
07. Home 
08. Nothing At All
09. Punishment
10. Knockin
11. Holy
12. Rooster

―Guitarist―

マック・デマルコ