1962年に世界初のファズ・ペダル“FUZZ-TONE FZ-1”を生み出したマエストロのエフェクターは、ザ・ローリング・ストーンズ、ピート・タウンゼント、ジョージ・ハリスン、エリック・クラプトンらに愛され、ストーンズの「(I Can’t Get No) Satisfaction」(1965年発表)のリフを始めとしたロック史を彩る数々の名曲のサウンドを創造してきた。
そのFZ-1の登場から60年を経た今年、ギブソンがこの伝説のブランドを復活させ、最新のエフェクト・ペダルのシリーズである“マエストロ・オリジナル・コレクション“を発表した。
シリーズのラインナップは、FUZZ-TONE FZ-M(ファズ・トーン FZ-M)、INVADER DISTORTION(インべーダー・ディストーション)、RANGER OVERDRIVE(レンジャー・オーバードライブ)、COMET CHORUS(コメット・コーラス)、DISCOVERER DELAY(ディスカバラー・ディレイ)の5機種で、発売は2022年1月末の予定。
いずれのモデルも、オリジナル機のサウンドとスタイルに忠実でありつつ、先進的でモダンな機能と多様性、優れたサウンド・メイキングの能力を兼ね備えた製品となっている。
まず全モデルに共通する特徴としては、2つの異なるボイシングを切り替えることができるトグル・スイッチ、直観的で素早い操作ができるよう配置された3つのコントロール・ノブ、トゥルー・バイパス・スイッチング、エフェクターのアクティブ状態をいつでも確認できるLEDライト、人間工学に基づき上部を斜面にした楔状の筐体などが挙げられる。
そしてモデルごとの特徴は次のとおりだ。
FUZZ-TONE FZ–M
- ザ・ローリング・ストーンズの名曲「(I Can’t Get No)Satisfaction」で伝説となったオリジナルのFZ-1をベースにしつつ、より厚みのあるモダンなファズ・トーンと多彩なサウンドメイキングを可能にしたファズ。
- Attackでファズのレベルを調整する。
- Toneではブライトで荒々しいトーンからブーミ―なトーンまで好みの音色に調整することができる。
- Levelは出力ボリュームの調整に使用する。必要に応じてユニティ・ゲイン(信号が入力と同レベルで出力される)をはるかに超えることも可能。
INVADER DISTORTION
- ハイゲイン、オール・アナログのディストーション。
- アグレッシブで迫力のあるサウンドと豊かなハーモニクスが特徴で、多彩なディストーション・サウンドを生み出す。
- Gain(ディストーションの量)、Tone、Level(出力レベル)の3つのノブで直感的な操作が可能。すぐに十分な音量でユニティ・ゲインを超えることができる。
- トップ・パネルのトグル・スイッチで本体に内蔵されたノイズゲートのオン/オフの切り替えが可能。内部の回路基板に取り付けられたトリム・ポットによりノイズゲートの掛かり具合を調整することもできる。
RANGER OVERDRIVE
- 世界中で人気のビンテージ真空管アンプのオーバードライブ・サウンドにインスパイアされ誕生したオール・アナログのオーバードライブ。
- トグル・スイッチにより、真空管アンプを使っているようなウォームで多彩なオーバードライブ・トーンと、よりクリーンでセンシティブなトーンを切り替えることができる。
- 2つ目のトーンにはクリーンな信号がミックスされているため、ピッキングとギター本体のボリュームでトーンをコントロールする“常時オン状態”のエフェクターとして最適。
- Gain(オーバードライブのレベル調整)、Tone、Level(出力レベル)の3つのノブで直観的な調整が可能。またすぐに十分な音量でユニティ・ゲインを超えることができる。
- ブースターとして使用することも可能。真空管アンプへの入力を増幅し、輪郭のあるダートなサウンドを簡単に強調することができる。
COMET CHORUS
- アナログ・ディレイ素子(バケット・ブリゲード・ディバイス:BBD)技術を使用したコーラス。温かみのあるクラシックなコーラス・トーンを生み出す。
- モード切り替え用のトグル・スイッチにより多彩なサウンドメイクが可能。
- Earthモードはバランスの取れた煌めくようなコーラス・エフェクトが特徴。
- Orbitモードではコーラス・サウンドにAM変調が加わり、ロータリー・スピーカーのような複合的なサウンドになる。内部のトリム・ポットで“Orbit効果”のレベルを好みに合わせて調整することも可能。
- Depthでコーラスの深さ(ピッチの変化量)、Speedでコーラスの速度(変調周期)、Mixでドライ信号とブレンドされるピッチ変調信号の量を調整することができる。
DISCOVERER DELAY
- アナログ・ディレイ素子技術を使用したディレイ。クラシックでウォームなディレイ・サウンドを生み出す。
- Delayでディレイ・タイムの長さ(20msから600msの範囲)、Sustainでサステインの量(ディレイ音のリピート回数)、Mixでディレイのレベルを調整できる。
- トグル・スイッチによって内蔵のモジュレーションが起動する。若干のサチュレーション状態にあるカセット・テープのようなワウ・フラッター効果から、大幅にピッチシフトされた変調効果まで、さまざまな効果をディレイ信号に付加することが可能。
- 内部の2つのトリム・ポットにより、モジュレーションのRate(速度)とWidth(スイープ範囲)を調整できる。
以上でマエストロ・オリジナル・コレクションの現ラインナップを紹介したが、2022年の後半にはこの第2弾として、さらに5種類のペダルがリリースされる予定となっている。加えてギブソンでは、オリジナル機のスペックに忠実に作られた限定生産のペダル、“マエストロ・カスタムショップ・コレクション”も開発中とのことだ。最古かつ最新のエフェクター・ブランドとなったマエストロの今後に注目したい。
最後に、今回のマエストロ・ブランドの復活に挑戦したギブソン・ブランズの内部の人たちからのコメントを紹介しよう。
マエストロは、商業的に成功した最初のペダルブランドであり、その後のペダルとエフェクトの世界全体を動かすきっかけとなりました。私たちは、多くに愛されてきたマエストロのレガシーを大切にすると共に、現代のギタリストが求めるものも意識しながら製品開発をしてきました。マエストロのサウンドは、ビギナーからプロまで全てのレベルのプレイヤーへ向けた製品です。ギブソンは、エフェクター・ペダルの歴史にとって不可欠な、このマエストロを復活させる事ができたことを嬉しく思います。
──マット・ケーラー(製品開発シニア・ディレクター)
伝説的なブランドの製品を再び世に送り出すことは、スリリングな体験です。マエストロは、過去に素晴らしいレガシーがありますが、それ以上に重要なのは、そこに新しいレガシーをさらに構築することです。新しいマエストロとして、かつての勢いを保ちながら、現代のファンが自分のサウンドを形作るための新しいツールを提供することです。マエストロは、今後世界中のプレイヤーと共に、新しいサウンド・レガシーを作り上げるのです。
──スターリング・ドーク(マーケティング・ディレクター)
ブランドとして、マエストロをその全盛期の姿に戻したいと考えました。今でもオリジナル・ペダルへの関心が非常に高い中、初めて体験した人たちや、マエストロ製品をまだ使ったことのないギタリストのために、このブランドを復活させたいと思ったのです。新しいマエストロペダルでは、オリジナルのサウンドの精神を受け継ぐだけでなく、ルックスやフィーリング、雰囲気も大切にしています。
マエストロができることに上限はないと思います。これまでのマエストロの歴史とレガシーを考えると、マエストロの製品がエフェクトの世界で様々な形で力を発揮できることは確かです。2022年のマエストロに関しては、あなたの想像力を思う存分働かせればいいのです。それがマエストロの向かう場所であり、マエストロがいる場所なのです。
──クレイグ・ハッケンベリー(マエストロのリード・デザイナー/技術ディレクター)