英国リーズ出身のフュージョン・ギタリスト、トム ・クァイル(Tom Quayle)の新シグネチャー・モデル“TQMS1-CTB”がアイバニーズより発売された。
トムの以前のシグネチャー・モデルであるTQM1-NTはアイバニーズのAZシリーズを元にしたものだったが、今回のTQMS1-CTBはAZSシリーズを元に作られている。またモデル名の中の“CTB”はボディ・カラーのCeleste Blueを意味している。
本モデルのおもな特徴は、トム ・クァイル自身が次の動画(日本語字幕付き)で解説しているので、まずはこちらをご覧いただきたい。
また次のデモ演奏動画では、TQMS1のサウンドとともに、トム ・クァイルの素晴らしいギター・プレイを楽しむことができる。
では本モデルの特徴を、パーツごとにさらに詳しく説明していこう。
ボディ材
ボディ材はトップがレスポンスに優れたメイプル(4mm厚)。バックにはバランスのとれた明るいトーン特性と豊かなサステインを特徴とするアルダーが選ばれている。
ボディ形状
ボディの形状は、抱え心地の良さとコンテンポラリーなデザインを目指したアイバニーズ・オリジナルの“AZS”。ボディのくびれが深く、トップ側の肘が当たる部分と、バック側の胴体が触れる部分にはコンター加工が施されている。人間工学に基づいたこの形状により、座位であれ立位であれギターを抱えた瞬間にフィット感を得ることができる。
ネック材/ネック形状
ネックには窒素加熱処理技術である”エステック(S-TECH)処理”が施されたメイプル材を採用。エステック処理された木材は、形状の安定性、反りに対する耐久性、耐水性、温度変化に強いといった特徴を持つ。なおこの技術は日本国内で特許を取得している。
ネックの形状はOval Cで、幅はナットの位置が42mm、最終フレットが56.4mmに設定されている。この形状により、ロー・ポジションでは握り込みやすく、ハイ・ポジションでは親指をネックの裏に置くクラシカル・スタイルでの演奏がしやすくなっている。
指板材/指板の形状
指板材は、バランスの良いサウンド・キャラクターと暖かみのあるトーンが特徴のローズウッド。
形状は、ナット部分が228mmRでエンド部分が305mmRのコンパウンド・ラジアスを採用。高いフレットに向かって徐々に平たくなるこの設計により、ロー・コードを押さえる時の握り込みやすさと、ハイ・ポジションでの演奏性の高さを両立させている。
指板のエッジを丸めたコンフォート・グリップも特徴の1つだ。
以上のネックと指板の仕様は、幅広いジャンルに対応するトムのプレイ・スタイルにマッチしたチョイスと言える。
フレット/サイド・ポジション・インレイ
フレットはステンレス製のジャンボ・サイズ。
指板サイドのドット・ポジション・インレイには蓄光性を持つ素材であるルミンレイ(Luminlay)が使われているため、暗いステージでもポジションが確認しやすい。
ネック・ジョイント
ボディとネックの接合部には“Super All Access(スーパー・オール・アクセス)”ネック・ジョイントが採用されている。これはボディの裏面から8mmの高低差で段彫りし、さらにネックとの接合部を球面に仕上げることで、ハイ・ポジションでの高い演奏性を実現したものだ。
また低音弦側のカッタウェイは浅めに設計されており、これによってボディとネックの設地面積を最大化し、高い演奏性を保持しながらも、サステインとレゾナンスの良さをも両立させている。
ナット
ナットにはオイルを染み込ませた牛骨を採用。弦の滑りを良くすることで、チューニングの安定性とレゾナンスの向上を実現している。
マシンヘッド
マシンヘッドにはチューニングの安定性に定評のあるGotoh製マグナムロックを採用。H.A.P(Height Adjustable Post)機構によりポストの高さを調節することが可能で、各弦ごとに適切なテンションが得ることができる。
またヘッドストックの裏には“Tom Quayle”のサインが入れられている。
ピックアップ
2基のピックアップはどちらもSeymour Duncan製で、ネック側には“Magic Touch-Mini”ハムバッキング・ピックアップを搭載。このピックアップは、ピッキング・ニュアンスへの追従性、ファットなトーンと切れ味の良さを両立し、音作りのしやすさを重視してヘッドルームを大きく持たせたものだ。
一方のブリッジ側には、Seymour Duncan社とアイバニーズが共同開発した“Alnico II Pro Custom”を搭載。こちらはミッド・レンジにピークを持たせ、ウォームでトゥワンギーなトーンとナチュラルなサステインを生み出すシングルコイル・ピックアップだ。なお、こちらのピックアップのマウントには、クリアでファット、そしてトゥワンギーなトーンに欠かせないプレート・マウント方式が採用されている。
トレモロ・ブリッジ
トレモロ・ブリッジは、アイバニーズとGOTOHのコラボレーションで生まれたGotoh T1802を搭載。
ブリッジのサドルには、音の立ち上がりの良さとソリッドかつファットなサウンドを両立させる硬質な切削チタンを採用。
切削スティールのイナーシャ・ブロックによる伸びのある高音域も特徴だ。
弦間ピッチは10.5mmのナロー・スペーシング設計になっている。これは、スキッピングやハイブリッド・ピッキングを多用するプレイヤーが要求する、弦をまたいだピッキングのしやすさを追求したものだ。
またこのトレモロ・ブリッジにはIbanez Edgeトレモロのアームや、ウルトラ・ライト・トレモロ・アーム(カーボン/UTA20/別売)も流用できるアーム・ソケットが採用されており、従来のアームのように回し入れることなく、スナップ・インでアームを装着することが可能。さらにアーム・トルク・アジャスト機構とスタッド・ロック機構も標準装備されている。
加えて、ノンリセス型(=凹みがない)ブリッジ・キャビティを採用しているのも本モデルの特徴だ。これによりブリッジ・プレートとギターのボディがダイレクトに接するので、ピッキングのニュアンスの再現性やレゾナンスが向上する。
さらにトレモロのスプリングは、弦振動を効果的にボディへと伝達するため、5本掛けとなっている。またスプリングの共振/共鳴を抑えるためのゴム製のスプリング・ミュートも装備されている。
コントロール
コントロールは1ボリューム、1トーン、3ウェイのピックアップ・セレクターに加え、アルター・スイッチ(Alter Switch)が装備されている。
このアルター・スイッチは、ネック側のピックアップをハムバッカー・モードからシングルコイル・モードへ切り替える役割を持つ。そしてピックアップ・セレクターとの組み合わせにより、次の図と表で示す計5通りのサウンド・バリエーションを作ることができる。この機能は“dyna-MIX5”スイッチング・システムと名付けられている。
“dyna-MIX5”スイッチング・システム
NECK | MIDDLE | BRIDGE | |
ALTER SW. Mode① | ネック側ミニ・ハムバッカー・ピックアップを出力する。 | ミニ・ハムバッカー・ピックアップのタップと、シングルコイル・ピックアップをパラレル接続し、トラディショナルなS-Sレイアウトのギターのミドル・ポジションにあるような、シングルコイル・ピックアップ同士をミックスしたサウンドを出力する。 | ブリッジ側シングルコイル・ピックアップを出力する。 |
ALTER SW. Mode② | 同上 | ミニ・ハムバッカー・ピックアップとシングルコイル・ピックアップをパラレル接続したサウンドを出力する。 | ミニ・ハムバッカー・ピックアップのタップと、シングルコイル・ピックアップをシリーズ接続し、H-Hレイアウトのギターのブリッジ側ハムバッカーをシミュレートした疑似ハムバッカー・サウンドを出力する。 |
以上がトム ・クァイルの新シグネチャー・モデルの特徴だ。
そして本モデルには専用のハードシェルケースが付属する。
Ibanez
TQMS1-CTB
【スペック】
Neck type: AZ Oval C S-TECH WOOD Roasted Maple neck
Body: Maple (4mm) top/Alder body
Fretboard: Rosewood fretboard w/Mother of Pearl dot inlay & Luminlay side dots
Fret: Jumbo Stainless Steel frets w/Prestige fret edge treatment
Bridge: Gotoh® T1802 tremolo bridge
Neck pickup: Seymour Duncan® Magic Touch mini ™(H) neck pickup
Bridge pickup: Seymour Duncan® Alnico II Pro™ Custom (S) bridge pickup
Hardware color: Chrome
Case/bag: Hardshell case included
String gauge: .010/.013/.017/.026/.036/.046
【価格】
385,000円(税込)
【問い合わせ】
星野楽器販売 TEL:0561-89-6900 http://www.ibanez.co.jp