レッド・ツェッペリン「隠れ名リフ」5選 レッド・ツェッペリン「隠れ名リフ」5選

レッド・ツェッペリン「隠れ名リフ」5選

ロックの礎を築いたレッド・ツェッペリンの名リフの数々は、口ずさめるほどにキャッチーで楽曲のイメージに直結しているものばかり。しかし、「移民の歌」や「ロックン・ロール」、「ブラック・ドッグ」など、ZEPを知らない人でも聴いたことがある世界遺産級リフの存在に埋もれ、ファン以外に届いていないものもあるのでは? ということで、そんな“隠れ名リフ”を5つ、参考音源とともに紹介していこう。

譜例作成/文=安東滋 浄書=Seventh Photo by Robert Knight Archive/Redferns/GettyImages

ZEPの“埋もれた名リフ”を発掘する!

 “レッド・ツェッペリンの魅力と真髄はリフにあり!”……往年のロック・ファンなら、これに大きく頷いていただけるでしょう。

本記事は、ロック史上に刻み込まれたそれらの名リフ群の中から“隠れ名リフ”を見つけて紹介しよう、という企画。

さてその選出についてですが、実はこれがなかなか頭を悩ませる作業となりました。というのも、レッド・ツェッペリン(以下ZEP)の残したリフ群は、まさにロックの歴史を形成した不滅の逸品ぞろいだからです。特にキャリア初期から中期にかけての作品は問答無用のロック・アイコンともなっています。 

というわけで、今回はそれらの黄金期のリフはすべてスルーし、おもに後期のアルバムの中から 、あるいは解散後に発表された発掘盤などの中から一般的な知名度の低い(低そうな?)ものを、“埋もれた名リフ”を探すという視点であげてみました。

 ZEPを良く知るベテラン世代はもとより、ZEPを通してロックのルーツを探訪するフレッシュな読者層も含めて、“おう、こんなリフもあったね”とか“おっ、この曲は知らなかったな~”、“うん、この音めちゃクール☆”と、ZEPが残した名リフ群を改めて深堀りし反芻するトピックともなれば幸いです。では、お楽しみ下さい!

No1 「Walter’s Walk」風
アグレッシヴに爆走する豪快なリフ・ワーク

 最終アルバム『CODA(最終楽章)』(1982年)に収録された、1973年作『聖なる館』のレコーディング時の未収録曲とされる作品。そのイントロからAメロにかけてのリフ・ワークを基本形としてモデリングした参考譜例がこれです。複音をアグレッシブにかき鳴らす譜例前半、G音を軸にした単音フレーズを軸に展開する譜例後半、ともにシンコペーションを多用したスピード感満点のアクティブな音像で迫ってきますね。一般的な知名度は低いですが、ZEPファンにははずせない“隠れ名リフ”のひとつと言えるでしょう。そのガラガラと響くような音色には、ジミー・ペイジ印の音作りのツボでもある、愛器レス・ポールのセンター・ポジション(フロント&リアPUのミックス)で発音されている気配が濃厚に漂います。

参考楽曲

No2:「Darlene」風
スマートな7thフィール

 これも『CODA』(1976年)に収録された、1979年作『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』レコーディング時の未発表曲。ZEP最終期の楽曲ですが、キーボード類の音が目立つ『イン・スルー〜』収録曲と聴き比べると、ギター主導のシンプル&ストレートな音作りが施されてます。そのイントロ部の決めセクションと続くAメロ部のメイン・リフを参考譜例としてシミュレートしてみました。後者の単音リフの中にはシンプルな音使いの中にも、ぐっと7thフィールが強調されたスマートなブルース・フィールが浮かび上がってきます。これも、もし正規盤に収録されていれば、後期ZEPの名リフになるはずだった“隠れリフ”の代表的なプレイのひとつでしょう。譜例にあげた場面ではリアPUが選択されている模様です。

参考楽曲

No3:「Fool In The Rain」風
ラテン・タッチの軽快なコード・パターン

 『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』(1979年)収録の本曲は、キャリア後期の作品群の中でもZEPがラテン(サンバ)のリズムを取り入れた楽曲として有名ですが、その分、ギター・パートだけにフォーカスして語られることが少ない作品とも言えるでしょう(ギター・ファンの触手がなかなか伸びにくい曲?/笑)。そこで本曲をコード・リフ系の隠れた銘品として取り上げてみました。Ex-1にモデリングしたのは、曲の前半を貫通するギター・パートの動きです。スモール・コードと複音を組み合わせて、明るく軽快なグルーヴを作り出していきます。そのギター・リフに重なるピアノ・パートをイメージした低音域の動きも参考譜例としてギター用にアレンジしてみましたので、併せて弾いてみて下さい。

参考楽曲

No4:「The Girl I Love She Got Long Black Wavy Hair」風
豪快に決めるブルース・ロック

 『BBCライヴ』(1997年)に収録されているラジオ放送用の音源の中から選んだ、スリーピー・ジョン・エスティスの楽曲を下敷きにZEP流のアレンジを施した演奏。これは、本アルバムだけで聴くことができる(正規のスタジオ録音盤には収録されていない)レアな音源です。内容的には初期ZEPの音楽性を象徴するかのような、豪快なブルース・ロックとなっています。そのトニックとサブドミナント(A7とD7)の両コード部の単音リフの骨子を基本パターンとして抜き出してみました。譜例後は12小節のブルース進行を基本に展開されていきます。その途中でコードを鳴らすところは、E/D/Cの各コードを順に並べていけばできあがりです! 原曲を聴きながら、つなげて弾いてみて下さい。 

参考楽曲

No5:「Boogie Chillun」風
驀進するブギー・リフ

 ライブでは「胸いっぱいの愛を」を起点にしたメドレー形式の長尺パフォーマンスをくり広げるのもZEPの常でした。その中に定番メニューとして挿入されていたのが、ジョン・リー・フッカーの「ブギー・チレン」を元にしたブギ・ナンバー。本曲もスタジオ録音盤には未収録の、ライブ盤だけで聴くことができる作品です(曲名の表記は収録ライブ盤によってまちまちですが曲自体はどれも同じです。以下の参考譜例に「Boogie Chillun」として模倣した『伝説のライヴ ─HOW THE WEST WAS WON─』(1973年)の収録バージョンだとCD time=5’56”~あたりを聴いてみて下さい)。これも一般リスナーには認知度が低いリフですが、ZEPファンにとってはおなじみの逸品ですよね。その導入シーンをイメージしたのが以下の参考譜例。ブルース・マナーの簡潔な音使いでスピード感満点に迫ってきます。

参考楽曲

【番外篇】:結成以前のセッション音源にみるZEPリフの雛形

 初期ZEPの大看板はブルース・ロックを土台にした豪快なロック・サウンドにあり! そのリフ作りの原点を垣間見ることができるハード・ロック色の強いセッション作品が、ロック・シンガー=ロード・サッチと組んだ企画盤『LORD SUTCH and Heavy Friends』(1970年)。ジミー・ペイジを筆頭に当時の英国ロック・シーンを代表する錚々たるメンバーが集結したこのセッション盤は(正確な録音年は不明ですが)、ヤードバーズの終焉からZEP始動までのわずかなブランクの間に録音された可能性が大……というわけで、まさにZEP前夜の貴重な記録と言えるでしょう。その中から「Thumping Beat」風のリフを基本形にモデリングした参考譜例がこれ。図1に書き出した7thコードの構成音を順に並べるブルージィな響きを軸に、すでに初期ZEPに通じる豪快なブルース・ロックが鳴り響いています!

参考楽曲