TAP the Fingerboard! Vol.4 ichika直伝、最新タッピング・スタイル TAP the Fingerboard! Vol.4 ichika直伝、最新タッピング・スタイル

TAP the Fingerboard! Vol.4
ichika直伝、最新タッピング・スタイル

英ギター誌『Total Guitar』の読者投票ランキング企画にて、“現代最高のギタリスト”部門で8位を獲得した世界的アーティスト=ichika。その圧倒的な技術を本人自ら直伝解説してくれた。第四弾ではソロ・ギターでも活躍すること間違いなしの、タッピングでアルペジオを彩る術を伝授してもらおう。

演奏=ichika 動画制作/録音=Takumi Osera 採譜/譜面解説=石沢功治

Ex-1:あらゆるコードで応用可能!

ichika これはいろいろと応用が効くフレーズで、覚えておいて損はないと思いますよ。左手でコードを押さえて、その高音側3音のオクターブ上をタッピングしていて。つまり、オクターブ違いで行き来するような感じですね。あと、単純にタッピングするだけじゃなくて、タップ、プル・オフ、タップ、プル・オフとくり返す。どんなコードに対しても同じ考え方で応用ができて、バッキングとかでもアクセントになる。ただ、指でアルペジオを弾いたあと、すぐにタッピングに移るというのが、最初はやりづらいと思います。基本的に、ピッキングする位置とタップする位置が近ければ近いほど弾きやすいので、動画のように指板の上でピッキングするのがポイントですね。

▲キーがC♯マイナーで短調感が強く感じられるリックだ。そんな中でも、出だし上声部のG♯音(1弦4f)がF♯m7の9thだったり、続く3拍目のA音(1弦5f)がG♯7の♭9th音だったりと、テンション使いの妙が見て取れる。また、ラストはトニック・マイナーC♯mのルートをメジャー7thにあたるB♯音にして終止感をやわらげ、憂いを纏わせている。

Ex-2:隣接弦の連続タッピングを乗り切る

ichika コードに対してタッピングを当てていくフレーズですが、ひとつだけ難所というかキー・ポイントがありますね。6小節目に2音連続タッピングがあって、中指で1弦14フレットを弾いたあとに、それを離さず人差指で2弦15フレットをタッピングしてスライドさせる。で、弦間ピッチはそこまで広くないので、2本の指でタップしようとすると指同士がぶつかって意外と難しいんですよ。そのコツとして、中指のうしろに人差指を半分くらい重ねるんです。中指でタップする時点でその意識で叩くと、ぶつかりながらも指が弦から離れず次の音も鳴らせる。このフレーズだけでなく、隣接する弦を連続でタッピングする時にはこういうイメージでやっています。

▲キーBマイナーのリックで、前半4小節のパターンを後半4小節でもくり返す中、6小節目と8小節目で展開をつける。1小節目C♯m7(♭5)での♭5thにあたるG音(5弦10f)を含んだ上昇ラインや、2小節目でのBmに対する9th音(C♯音/1弦9fと5弦16f)を含んだ典型的な分散などからは琴のようなタッチも感じられる。さらに、3小節目G△7上で鳴らされる♯11th音(C♯音/3弦4f)もそのニュアンスを増長している。

Ex-3:メロウな流れをタッピングで“つなぐ”

ichika ハイ・フレットのコード・ワークに対して、タッピングでコードとコードの間をつないでいます。というのも、これはハイ・フレットでメロウに聴かせるフレーズなので、コード・チェンジの隙間をなるべく生みたくないんですよ。コードからコードへと移動しようとするとどうしても空白というか“間”が生まれるから、それを避けるためにタップで音をつないでいるんです。なので、右手で弾いたタップの音は、次の音が鳴るまではなさないというのが鍵ですね。あと、3〜4小節目ではタッピングした指でプル・オフするんですけど、これは初めてだとやっかいだと思うので、この部分だけ重点的にくり返して練習するのがオススメですね。

▲キーはEマイナー。2小節目の最後にBのメジャー7thにあたるA♯音(4弦20f)が弾かれるものの、コードがB△7に聴こえないのは同音がクロマチック・アプローチ・ノートだからである。本来ならば3小節目の最初にB音が弾かれるのが常套だが、聴覚上、頭の中で鳴っているような気がするのが音楽のおもしろいところ。最後はトニック・マイナー・コードのEmで解決したくなるところをグッとこらえてドミナント・コードB7のままで終わる。ここに儚さを感じるのは私だけだろうか(笑)。

 

ichika

いちか◎1994年生まれ。Instagramに投稿した演奏動画から人気に火がつき、世界中から注目される新世代のギタリスト。叙情的なメロディを独創的なタッピング・テクニックで描き出す唯一無二の世界観が高い評価を集めている。川谷絵音とのichikoroや“Nito”名義でのコラボレーション作品など、ソロ以外でも精力的に活動中。

公式HP>
YouTube>
Instagram>
Twitter>