TAP the Fingerboard! Vol.5 ichika直伝、最新タッピング・スタイル TAP the Fingerboard! Vol.5 ichika直伝、最新タッピング・スタイル

TAP the Fingerboard! Vol.5
ichika直伝、最新タッピング・スタイル

英ギター誌『Total Guitar』の読者投票ランキング企画にて、“現代最高のギタリスト”部門で8位を獲得した世界的アーティスト=ichika。その卓越した技術を直伝解説してくれる本コーナーも今回で最終回! 全5回で合計15種類のリックが登場したが、あなたはどれくらいコピーできただろう? 最終回は彼の最大の魅力である、叙情的なメロディがたっぷりと味わえる3フレーズを紹介しよう。

演奏=ichika 動画制作/録音=Takumi Osera 採譜/譜面解説=石沢功治

Ex-1:“拍を分ける”意識が大切

ichika これはタッピングを使ったリズム・キープの良いトレーニングになると思います。動画を観ている分には普通にやっているように見えるかもしれませんが、実際にメトロノームに合わせて弾いてみるとリズム・キープの難しさが体感できると思いますね。というのも、スライドの部分でどうしてもリズムが偏っちゃうので、そこもきちんと拍を分ける意識が大切になってきます。あと、僕の場合は頭の中で倍拍でリズムをとっているのですが、拍を細かく意識することで、リズムがより正確になると思いますよ。意外と自分では弾けたと思っても、録音してみるとリズムがヨレていたりするので、客観的に自分の演奏を聴いてみるのも大事ですね。

▲キー=Dメジャーで、IIm7(Em7)からI△7(D△7)へ解決するツー・コードのため、さまざまな楽曲で幅広く使えるリックだ。スケール的にはEドリアン・スケールとDメジャー・スケールが軸となっており、Em7時にはEドリアンの特徴音である6th(=13th)のC♯音(1弦21f)や、4th(=11th)のA音(1弦17f)などが万華鏡のようなきらびやかさを演出する。また、ラストにD△7のメジャー7thであるC♯音(3弦18f)を延ばしていることで、より洗練された印象を打ち出している。

Ex-2:タッピングでリズムに緩急をつける

ichika フィルイン的な速いパッセージでよくタッピングを用いるんですが、その簡単な一例がこれですね。タッピングの部分でスピードを上げて、リズムに緩急をつけているんです。また、和音部分は曲調や音色を考えて、爪でのダウン・ストロークで“チャキ”っという響きを入れいています。2小節目の2拍目ではタップした指で弾いてハーモニクスを出しますが、この速さに慣れるためにはテンポを落として練習するのが良いですね。僕も手グセが頻発するようなフレーズは最初から本番のテンポで弾けますが、自分の中でも取り入れたことのない斬新な音使いや奏法の時は、メトロノームを使って遅いBPMから少しずつ上げていきます。

▲出だしのC△7の分散和音に始まり、続く2拍目では水平的なパッセージ・ライン、そして2小節目では前半2拍をモチーフにして後半2拍がそれに答えた発展型と、短い中でもきちんとストーリーが展開されていて素晴らしい。このリックも最後は終止感がなく、まだ続くかと思わせる手法がとられている点も、また儚さを感じさせる一因になっている。ふたつ目のコードはBm7としたが、B7でとらえるのもあり。

Ex-3:最後は“けっこう簡単なフレーズ”です!

ichika 最後はけっこう簡単なフレーズですね。今までの14個のフレーズをやり遂げたあなたならすぐにでも弾けると思います(笑)。これは「I Miss You」っていう曲に出てくるフレーズなんですけど、いろんな人がカバーしてくれているんですよ。どの曲もそうなんですが、メロディは自分の中にある心象風景がインスピレーションの源になっているんです。自分が人生の中で悲しかったり泣きそうな時だったり、そういう体験を形として再現しているというか。音楽理論などはそんなに詳しくないので感覚的な部分がほとんどなんですが、今まで聴いてきたさまざまなジャンルの音楽がまとめられて、自分の音が形成されているのかなと思います。

▲Eマイナーのリック。前半のAm7とG△7のツー・コードのくり返し部分は、キーがGメジャーなどで使えるのでストックしておくといいだろう。1小節目の音型をモチーフに、2小節目では3拍目裏の音のみ変えたバリエーション技、3小節目で再びモチーフを弾いて、ラスト4小節目で躍動させて終わる構成が見事。また、ラストEmの最後をE音(1弦12f)を延ばして終わると終止感100%なのだが、そことあえてマイナー7thのD音(3弦19f)にすることによって、漂うようなエンディングにしているのも特徴的だ。

 

ichika

いちか◎1994年生まれ。Instagramに投稿した演奏動画から人気に火がつき、世界中から注目される新世代のギタリスト。叙情的なメロディを独創的なタッピング・テクニックで描き出す唯一無二の世界観が高い評価を集めている。川谷絵音とのichikoroや“Nito”名義でのコラボレーション作品など、ソロ以外でも精力的に活動中。

公式HP>
YouTube>
Instagram>
Twitter>