GMヒット曲研究所とは、古今東西のヒット曲のツボをコード進行の面からググ~っと掘り下げてみよう!……というシリーズ企画。その初回に選んだのは、今をときめくLiSAの「炎」(今更ですが、GMにも『鬼滅の刃』の波がやってきました~:笑)。一番の聴きどころは、ワザありの転調を駆使したドラマティックな曲展開。ここに耳をフォーカスして下さい!
採譜/文=安東滋 浄書=Seventh イラスト/デザイン=山本蛸
註:譜例に記入したフォーム図は、原曲のコード感をギター1本で体感できるようにモデリングしたものです。
イントロ/Aメロ/Bメロ
ドラマティックな流れをプッシュする、ワザありの部分転調
曲前半での一番の注目ポイントは、Bメロの後半に配置された“部分転調”。譜例中に枠で囲ったその4小節間は、key=Fあるいはkey=Dmに一時転調したコード展開、またはkey=Bmの平行調であるkey=Dの“モーダル・インターチェンジ”系の和音展開、などいろいろな解釈ができる場面です。
筆者としては、後者の目線での[Gm7→C7](key= Dのサブドミナント・マイナーである[Ⅳm7→♭Ⅶ7])の和音展開を柱に、その2コードの間を順に埋めながら上昇していく“ウォーク・アップ”型の和音展開を積み上げていく(譜例参照)……という発想ではないかと推測しています。
いずれにしても、この変化球的なナイスなコード進行の挿入によって、リスナーの耳をグィと惹きつけるドラマティックな流れが一気にプッシュされていきますね。
*1:key=Bmのブロックは以下のダイアトニック・コードで構成されています。
[Bm=Ⅰm、A=♭Ⅶ、G=♭Ⅵ、D=♭Ⅲ、F♯7=Ⅴ7]
サビ
大技&小技の転調で織りなす、変幻自在のストラクチャー
前ブロックでのウォーク・アップ進行の階段を登りきった先のサビ部には、前段のkey=Bmから全音上のkey=C♯m(*2)にシフトアップする大技の転調が組み込まれています。それによって壮大な曲調がより強調され、一気に燃え盛るドラマティックな世界観が演出されていきます。その後、つなぎの間奏部(Inter部)で再び転調してAメロ先頭のkey=Bmに戻っていく……というのがワン・コーラス単位の基本的な流れ。
そして、譜例後の2コーラス目ではサビのバリエーション進行がkey=Emに転調され、さらにそこに部分転調も絡み、その後再度key=C♯mに戻る!……というワザありの転調が幾重にも積み重ねられた、めちゃ凝った曲構成になっています。いや~、まさに変幻自在の、プロフェッショナルなkeyチェンジの妙技ですね!
*2:key=C♯mのブロックは以下のダイアトニック・コードで構成されています。
[C♯m=Ⅰm、A△7(A)=♭Ⅵ△7、B=♭Ⅶ、E=♭Ⅲ、G♯7=Ⅴ7]
作品データ
「炎」 LiSA
SACRA MUSIC/VVCL-1752/2020年10月14日リリース