『Live In ’65』は、今回特集している1965年のヨーロッパ・ツアーで行なった3つの公演から構成されている。ということで、足早にオランダ〜ベルギー〜イギリスと回っていこう! 名曲「Twisted Blues」を参考にした譜例も掲載しているので、ぜひ音源を聴いて、コピーにチャレンジしてほしい。
文/採譜=久保木靖
ここが演奏された場所!
Universal Studio VRT, Brussel, Belgium
ウェスの人柄を垣間見ることができる貴重な映像!
オランダ、ベルギー、イギリスの3ヵ国でのテレビ出演映像をコンパイルしたのがDVD『Live In ’65』だ。イギリスのものは先に紹介した『Jazz 625』とは違う番組なので、重複はしない。パッケージでウェスが抱えているのは、ギブソンがウェスのために作った3本のL-5のうちの1本、通称”ダイアのL-5”だ(実際に演奏で使っているのは“ハートのL-5”)。
【Track 01〜04】
4月2日、ウェスはオランダのヒルフェルスムにあるテレビ局(VPRO Studio)で収録を行なった。レギュラー・メンバーは一旦解散し、地元のピム・ヤコブス(p)のトリオがバックを務めている。このセッションの最大の見どころは、「The End Of A Love Affair」を知らなかったピムに対し、ウェスがギターで音を示しながらコードをひとつひとつ教えていく場面。一流同士のやり取りといい、ちっとも面倒がらないウェスの表情といい、ファンとしてこれほど胸が高鳴るシーンはない。
【Track 05〜09】
翌々日の4月4日には、ウェスは隣国ベルギーのブリュッセルにて、テレビ番組『Jazz Prisma』に出演。ここではハロルド・メイバーン(p)らレギュラー・メンバーに再招集をかけ、成熟した演奏を披露。テーマがクレイジーにフェイクされる「Twisted Blues」や、ソロのほとんどが荒れ狂うコード奏法で構成される「Jingles」は痛快この上ない。
【Track 10〜14】
ヨーロッパ・ツアー最終盤の5月1日〜5月7日、ウェスはイギリス・ロンドンのジャズ・クラブ、ロニー・スコットに出演しているが、その最終日の昼(?)にテレビ番組『Tempo』の収録を行なっている。地元のスタン・トレイシー(p)のトリオがバックアップ。当時イギリスはビートルズを筆頭としたビート・グループが席巻しており、このスタジオ・セットやカメラ・アングルにはその影響も見える。背後上からの指板をとらえたアングルは、ウェスの視線が疑似体験できて興味深い。
ベルギーでの名フレーズ
「Twisted Blues」風のオクターブ奏法によるテーマ
ベルギーでのセッションから、「Twisted Blues」でのプレイをサンプリング。オクターブ奏法を使ったドライブ感溢れるテーマだが、その後半8小節では譜例に示したような大胆なフェイクが見られ、これが痛快この上ない! すべてを親指のダウン・ピッキングで弾いており、それが太くて丸いトーンを生み出す源泉になっている点にも注目したい。
作品データ
『Live In ’65』
Jazz Icons/2007年リリース