ウェス・モンゴメリー@イギリス・ロニー・スコット・ジャズ・クラブCD『Body And Soul』 ウェス・モンゴメリー@イギリス・ロニー・スコット・ジャズ・クラブCD『Body And Soul』

ウェス・モンゴメリー@イギリス・ロニー・スコット・ジャズ・クラブ
CD『Body And Soul』

イギリスの名門ジャズ・クラブでの数日にわたるセッションから厳選して編まれた作品が、この『Body And Soul』。今回紹介している作品の中では、唯一クラブで演奏されたもので、現場の空気感という点ではピカイチの1枚だ。ライブならではの緊張感を味わってほしい。

文/採譜=久保木靖

ここが演奏された場所!
“Ronnie Scott’s Jazz Club”, London, England

ライブの生々しさはヨーロッパ・ツアー中ダントツ!

ヨーロッパ・ツアーはロンドンを拠点としていたようで、ウェスはツアー序盤の3月25日(DVD『Jazz 625』)のほか、4月5日〜24日と5月1日〜7日をジャズ・クラブ、ロニー・スコットに出演。長期出演していたウェスをジャズ・ジャーナリストのレス・トムキンスがオープンリール10巻に収録し、そこから抜粋してCD『Body And Soul』が作られた。ちなみに、1959年にこのクラブをオープンさせたオーナーのロニー・スコットは、イギリスを代表するテナー・サックス奏者である。

バックを務めたのは、イギリスのジャズ・シーンで“ゴッド・ファーザー”と呼ばれることになるスタン・トレイシーを中心としたトリオ。本特集で取り上げた作品の中では唯一“ジャズ・クラブ”における真正ライブで、テレビ局やラジオ局が収録したほかの音源と比べて音質は劣るものの、オーディエンスとの距離の近さやメンバー間のインタープレイなど、ライブならではの生々しさはダントツである。スタンデル・アンプのビブラート機能を効果的に使った「Body And Soul」や、インディアナポリス時代を彷彿する若々しいソロが展開される「Gone With The Wind」、「I’ll Remember April」など聴きどころ満載だ。最終の5月7日、ウェスはテレビ番組『Tempo』の収録も行なっているが、それは本特集の前々回に紹介したDVD『Live In ’65』に収録されている。

最後に、本作でもいい加減な曲目が付けられているので訂正しておく。「Wes Easy Blues」は『The Incredible Jazz Guitar』収録の「D-Natural Blues」、ソロ・ギターで奏でられる「Solo Ballad In A Major」は『Bumpin’』収録の「Mi Cosa」、「Broadway」は同曲のテーマを引用しただけのジャム・セッション的なブルースというのが正解だ。

イギリスでの名フレーズ
「Solo Ballad In A Major(=Mi Cosa)」風のイントロ

ソロ・ギターで披露される「Solo Ballad In A Major(=Mi Cosa)」イントロを模してみた。A音をペダル・ポイントとして様々なコードが上に乗っかるのだが、特定のスケールから導き出されたものではないため、一般的な音楽理論での解説は困難。しかし、ウェス独特のハーモニー感覚が見られるので、ぜひ弾いて堪能してほしい。ギター1本で爪弾く雰囲気にピッタリだ。

作品データ

『Body And Soul』

Ronnie Scott’s Jazz House/1996年リリース