おとぎ話の新作『US』から、ネオソウル風のフレーズが光る「DEAR」を牛尾健太が実演! メロディアスで流れるようなプレイを身に着けよう。
取材・文=小林弘昂 写真=星野俊 譜例作成・解説=堀沢俊樹
Ushio’s Comment
常に16のリズムに乗って弾けると良いですね。
「DEAR」の演奏の雰囲気は、実はデヴィッド・T.ウォーカーを意識しているんですよ。マーヴィン・ゲイの『Let’s Get It On』(1973年)とか、彼のソロ作とか、ああいう感じですね。でも、そんなに詳しくないので雰囲気だけを狙いました(笑)。あとはジョン・フルシアンテもこういうフレーズが多いし、上手いんですよ。レコーディングではストラトを使いましたし。なので、デヴィッド・T.ウォーカーとジョン・フルシアンテが一緒になったようなギター・フレーズです。
常に16のリズムに乗って弾けると良いですね。Aメロのプリング&ハンマリングを使ったフレーズ自体はそんなに難しくないし、1人で弾いてる分には大丈夫なんですけど、あれをバンドで合わせるのが難しいんですよ。発音良く弾いて、バンドのリズムに上手く乗せるのが大事だと思います。ソロは全部アドリブなんですけど、気持ち良く弾いて下さい!
イントロ〜Aメロ
イントロはギターとドラムのみのアンサンブル。?はスライドやハンマリング&プリングの装飾音をふんだんに盛り込んだバッキング・パターンだ。?2小節目は7フレットに人差指を置いた、Dメジャー・ペンタトニック中心のフレーズ。4小節目のオクターブ奏法では4拍目を除き、5弦をフラット・ピック、3弦を中指でピッキングしている。
Bメロ
?全体を貫くDメジャー・ペンタトニックのシーケンス・パターン。1拍目と3拍目の空ピックで、人差指を4弦4フレットから6弦5フレットへ移動させている。
Cメロ
2拍目と4拍目に挿入された4音コードのダウン・ピッキング。1小節目のコードEmはオーソドックスなマイナー・トライアドのフォーム、A7はオープン・コードD7のカポ7フレットに相当するフォームだ。2小節目はトップ・ノートを1弦9フレットに固定した4~1弦のフォーム。Bm7(9)は4弦から、中指、人差指、小指、薬指の順に押さえよう。1弦が各拍の頭に合うように、やや手前のタイミングでピッキングをスタート。
ギター・ソロ
エンディングへ向かうクランチ・トーンのソロ。導入部の3連符には、16+8+16分音符のニュアンスも感じられるが、3拍を3連符で統一した。?2小節目からは、Dメジャー・ペンタトニックのフレージング。6小節目の3連符にも導入部と同様のニュアンスが含まれている。8小節目は3弦と2弦を同時に全音チョーキング。後半のオクターブ奏法はAメロと同様、4弦をフラット・ピック、2弦を中指でピッキングしている。12小節目はオクターブを分散したスライド移動。
Gear
エフェクター4台を常時オン!
①Xotic / EP Booster(ブースター)※常時オン
②Ernie Ball / 6180 VP JR F-Sugar 25K Mod.(ボリューム・ペダル)※Cメロで使用
③BOSS / SD-1(オーバードライブ)※未使用
④J. Rockett Audio Designs / Archer Ikon(オーバードライブ)※常時オン
⑤Empress Effects / Vintage Modified Superdelay(ディレイ)※常時オン
⑥strymon / blueSky(リバーブ)※常時オン
⑦BOSS / TU-3(チューナー)
⑧VITAL AUDIO / POWER CARRIER VA-08 Mk-Ⅱ(パワーサプライ)
今回の動画では、ギターはレコーディングと同じく61年製ストラトキャスターを使用(レコーディングではギター・ソロのみSG)。ツマミはすべてフルで、ピックアップはフロントを選択した。弦はElixirの.010〜.046。
アンプは’68 Custom Deluxe Reverb(シルバー・フェイス期のリイシュー・モデル)で、ツマミはVOLUMEを4、TREBLEを5.5、BASSを5、REVERBを2.5にセッティング。レコーディングでは’65 Deluxe Reverb(ブラック・フェイス期のリイシュー・モデル)を使用した。
用意したペダル類は、ツマミをゼロで常時かけっぱなしの①Xotic製EP Booster。
②Ernie Ball 6180 VP JRは、F-Sugarによるモディファイが施されている。もとは250Kのハイ・インピーダンス仕様だったが、MXR Dyna Compのうしろにつないだ際にしっくりこず、25Kのロー・インピーダンス仕様に変更してもらったそうだ。さらにポット、配線材、ジャックが交換されており、つなぐだけで煌びやかなサウンドに変化。動画内ではCメロのコード・ストロークの際に本機で音量を絞っており、ギター・ソロでMAXまで戻していた。
③BOSS SD-1は動画内/レコーディングどちらも未使用だが、ライブではギター・ソロの際にゲイン・ブースターとしてオンにするという。
④J. Rockett Audio Designs Archer Ikonは、メインの歪みとして常時オンで使用。動画撮影時はGAINツマミが10時、TREBLEツマミが11時過ぎに設定されていた。
⑤Empress Effects Vintage Modified Superdelayは、プリセットしているtapeモードの薄いショート・ディレイをかけっぱなしにしてコーラスのような浮遊感を演出している。
⑥strymon blueSkyはレコーディングでは未使用だが、動画内ではspringタイプ/normalモードに設定して常時オンにし、’68 Custom Deluxe Reverbのリバーブと2台がけ。LOW DAMPツマミとHIGH DAMPツマミはどちらも12時で、PRE-DELAYツマミはゼロ。DECAYツマミが2時で、MIXツマミが10時過ぎというセッティングだ。
作品データ
『US』
おとぎ話
felicity / P-VINE RECORDS/PCD-27063/2022年6月22日リリース
―Track List―
01.FALLING
02.BITTERSWEET
03.DEAR
04.ROLLING
05.RINNE
06.VOICE
07.VIOLET
08.SCENE
09.VISION
10.ESPERS
―Guitarists―
有馬和樹、牛尾健太