レッド・ホット・チリ・ペッパーズ来日目前! 今回はなんと、ジョン・フルシアンテがライブの前に欠かさず取り組んでいる8つのルーティンを本人自らが紹介してくれた! ウォーミング・アップとして行なっているエクササイズ・メニューから、練習方法のアドバイスなど、実践的な内容だ。ぜひライブ前にジョンと同じワークアウトをこなしてみては?
This article is translated or reproduced from Guitar Player #728 and is copyright of or licensed by Future Publishing Limited, a Future plc group company, UK 2022. All rights reserved.
翻訳=トミー・モリー Photo by Photo by Kieran Frost/Getty Images
とにかく、エンジョイしながら弾くことが重要なんだ。
俺はギターを愛していて、もちろん練習も大好きだ。でも、速く弾けるようになりたいとか、スマートなギタリストになりたいからやっているわけじゃないんだ。
それと感覚的なイメージも大事にしている。毎朝、目が覚めるとすぐに思い浮かぶ景色やフレーズがあるんだ。そして、起きてから徐々に指と体がチューニングされてきて、イメージと体がリンクしてくる。こういった感覚を意識することも、物理的なエクササイズと同じくらい大切なものなんだよ。
ただこれらは、時間がある時は楽しみの一環としてやっていられるけど、ツアーに出たり、忙しい時に無理をしてやると、仕事のように感じてしまう時もある。
だから、俺は毎日最大限の時間を見つけて、効率的に練習できるようにしているんだ。今回はそんな俺のとっておきのワークアウトを紹介するので、ぜひトライしてみてほしい。
❶HIT THE SCALES!〜左手の運指エクササイズ〜
いつも最初にやるのはスケールを使った運指のエクササイズで、4本の指(人差指、中指、薬指、小指)を使って、色んな組み合わせでプレイするんだ。これから紹介する運指は、1=人差指、2=中指、3=薬指、4=小指を意味している。
俺の場合はまず、
- 1→2→3→4
- 1→2→4→3
- 1→3→2→4
- 1→4→2→3
- 1→4→3→2
の順番でプレイする。これらはすべて人差指から始める練習だね。それが終わったら、次は中指からスタートさせる。
- 2→1→3→4
- 2→1→4→3
- 2→3→1→4
- 2→3→4→1
- 2→4→1→3
- 2→4→3→1
……といった具合にね。
そうしたら次は薬指、小指と続けていくんだ。そうすると、自分なりのバリエーションでエクササイズができるようになるよ。それに慣れてきたら、次はうしろの2音だけを別の弦にしてみる。
1→2→3→4
みたいな感じだ。
ここまできたら順番は自由だね。もっと高度なやり方だと、ランダムにコードを選んで、コードの構成音を色んな運指を使ってアルペジオとしてプレイすることだってできる。これは本当に面白いエクササイズだよ。
大事なポイントとしては、まったくアクセントをつけずに弾くことだ。これはビル・ブルーフォード(d)から学んだ練習でね。彼も練習ではアクセントをつけずに叩き始めて、徐々に抑揚をつけていくんだ。それってかなりグッドなアプローチだと俺は思うんだよね。
❷DIVIDE AND CONQUER〜スケールの構成音を覚えて表情を見つけ出す〜
次はスケールの音をランダムな順番でプレイしてみよう。まずは好きなスケールの中から5音選ぶ。それらをランダムな順番で、1本の弦上で指板を横断するように弾くんだ。慣れてきたら6個、7個と音を増やしていく。
そして今度はアクセントをつけていこう。5音だったら3音ずつアクセントをつけて、6音では4音ずつ、7音では5個ずつ……といった感じだ。頭の中では、スケールのどこにアクセントが移っていくのかを追いかけていこう。
そうすると、同じスケールを弾いていても色んな表情が生まれて、面白いパターンが作り出せるんだ。クリエイティヴな部分が鍛えられるね。この練習は楽しくて、俺は何時間もプレイしていられるよ。
❸À LA MODES〜脳トレにもなるモーダル・インターチェンジのトレーニング〜
俺が特にグッドなエクササイズだと思うのは、Eエオリアン [E – F♯ – G – A – B – C – D]をプレイしていると想定しながら、Aドリアン[A – B – C – D – E – F♯ – G]を弾く練習だ。
AではなくEを音の中心と考えるんだね。そして、そのままEフリジアン[E – F – G – A – B – C – D]、そしてEミクソリディアン [E – F♯ – G♯ – A – B – C♯ – D]とプレイしていくんだ。
こうすることで、そのモードに対する理解が深まっていく。これって脳にも良いエクササイズだと思うんだよね。これはニコラス・スロムニスキーの『Thesaurus of Scales and Melodic Patterns』という本で学んだ練習法だ。
俺はこの本で覚えた色んなエクササイズを、自分流にアレンジしているんだ。ツアーにもこの本を持って行っているよ。
Thesaurus of Scales and Melodic Patterns
Nicolas Slonimsky/著
作曲家のニコラス・スロニムスキーが、メロディーのアイディアや音階、旋律パターンを集め解説した洋書。1947年に初版が発行され、様々なミュージシャンに影響を与えた1冊だ。
❹PLAY WELL WITH OTHERS〜お気に入りの曲と一緒にプレイしてみよう〜
俺はギグの直前に、自分が完コピしている曲をプレイしている。最近はライブが始まる4時間前くらいから始めているかな。
完璧に覚えていて、ミスをしない自信がある曲を弾いているよ。曲の最初から最後までを完璧にプレイして、チャレンジングではない(アドリブを混ぜない)フレーズを弾こう。
そして、だんだんグッドなフィーリングが得られるようになってきたら、ちょっと速いリックを混ぜながらプレイしたりするのもオススメだ。例えば、オジー・オズボーンの「Over the Mountain」みたいな感じでね。
この練習で重要視しているのは、ベンドやビブラートのかけ方だ。それらがリズムをしっかりと刻めているかをしっかりと確認しよう。俺はフランク・ザッパのインストゥルメンタルを弾くことが多いかな。
彼の曲は簡単なフレーズから次第に難しくなっていく曲が多いんだけど、めちゃくちゃ難易度が高いわけでもない。でも運指が独特で、ウォーミングアップとしてとても優れているんだ。これらは俺がティーンエイジャーの時にいつもトライしていたんだけど、最近になってまた始めることにしたんだ。
また、モット・ザ・フープルの「Sucker」、ジェスロ・タルの「Aqualung」もプレイしているね。
あとはクリームの「Sitting on Top of the World」や「Born Under a Bad Sign」といったカバー・ソングは、“音の間”がたくさんあるから練習の手始めには良いかもしれないね。あ、もちろんジミ・ヘンドリックスやジェフ・ベックのお決まりの曲もプレイしているよ。
❺PUNK IT UP〜パンクから学ぶリズム・ギターの心得〜
俺はリード・ギターをプレイしていながらも、時折パンクっぽいギターを弾いている。例えばジャームズやラモーンズの曲は、リズム・プレイのスキルを伸ばすうえで、かなりグッドなギター・ワークがたくさん詰め込まれているんだ。
まず、ラモーンズの曲はどれもダウン・ストロークを駆使しているよね。俺は「Beat on the Brat」みたいな少しスローな曲から始めて、次第にテンポが速い曲に変えていく。どうしても速く弾かざるを得ない初期の楽曲を中心にね(笑)。
これらの速いダウン・ストロークが必要な曲は、肩や腕じゃなく手首から弾けていることを常に意識している。可能な限りリラックスするように努めるんだ。でも、もし手が痛くなったり、力が入り過ぎてしまうようになったら、それ以上はプレイしないようにしよう。
逆にジャームズはアップ・ストロークをたくさんプレイしているけど、テンポが速いからこれもなかなかグッドだね。あと、その日の気分次第ではバウ・ワウ・ワウを弾くこともあるかな。マシュー・アッシュマンのリズム・ギターのプレイは最高だからね。
❻HAVE A SOAK〜ライブ前は手をお湯で温める〜
ウォーム・アップ前に、肉を調理するのに使っていた低温調理器で湯を沸かし、そこに手を浸している。46度前後かな。アラン・ホールズワースが、ウォーム・アップをせずに、沸かしたお湯の中に手を浸していただけって聞いたことがあったからね。
これはレコーディングの時にもよくやるよ。手にこわばったような感覚がある時は、手首と前腕部をその時に応じて必要な時間だけ浸している。ステージに上がる前も時折やっているね。
❼TAP ’N’ TRILL〜5分でOK! タップとトリルのウォーム・アップ〜
ここまで基礎的なことを話してきておきながらも、俺はライブで弾かないようなプレイも頻繁にやっている。シンプルに楽しいからね。例えば、両手タッピングなんかは左手の練習にグッドなものだけど、右手のウォーミングアップにもピッタリなんだ。
ただ、これも速くやり過ぎるとすぐに手が緊張してこわばってしまう。そうなったら手を止めて、お湯に浸して休ませてから再開しよう。トリルも同じで、指板上で思いつく限りの色んなポジションでプレイしている。5分やるだけで、かなり大きな違いが生まれるよ。
❽TAKE YOUR TIME〜最後は“焦らない”ことだね〜
理想的には、ステージに上がる10時間以上前から弾きまくっていたいと思っている。でも大抵の場合そんな時間はないよね。本番前はメシを食ったり着替えたりしなきゃいけないし、移動やなんやかんやでトータル2時間くらいしか時間が取れないこともある。
でも、俺はそれでもハッピーだと思うようにしているよ。短い時間しかとれなかったのなら、すべてを詰め込む必要もないんだ。逆に、全部を毎回完璧にこなそうなんて考えたら、仕事のようにつまらなく感じてしまうからね。とにかく、レジャーの一環として、エンジョイしながら弾くことが重要なんだ。
ギター・マガジン2020年3月号
『ジョン・フルシアンテ、帰還!!!』
ジョン・フルシアンテのRHCP帰還を記念して、全アルバム・インタビュー&使用機材を一挙掲載! ソロでの活動や奏法も深掘りし、音楽家としての全貌に迫る!
ギター・マガジン2022年6月号
『ジョン・フルシアンテ完全復活!!!!』
ジョン・フルシアンテ復帰後のRHCPがリリースした最新アルバム『Unlimited Love』を徹底深堀り!! 作品についてジョンが語った最新インタビューも、国内独占掲載!!
作品データ
『Return of the Dream Canteen』
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
ワーナー/WPCR-18552/2022年10月14日リリース
―Track List―
- Tippa My Tongue
- Peace And Love
- Reach Out
- Eddie
- Fake As Fu@k
- Bella
- Roulette
- My Cigarette
- Afterlife
- Shoot Me A Smile
- Handful
- The Drummer
- Bag Of Grins
- La La La La La La La La
- Copperbelly
- Carry Me Home
- In The Snow
- The Shape I’m Takin(※国内盤ボーナス・トラック)
『UNLIMITED LOVE』
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
ワーナー/WPCR-18552/2022年10月14日リリース
―Track List―
- Black Summer
- Here Ever After
- Aquatic Mouth Dance
- Not the One
- Poster Child
- The Great Apes
- It’s Only Natural
- She’s a Lover
- These Are the Ways
- Whatchu Thinkin’
- Bastards of Light
- White Braids & Pillow Chair
- One Way Traffic
- Veronica
- Let ‘Em Cry
- The Heavy Wing
- Tangelo
―Guitarist―
ジョン・フルシアンテ