清 竜人の新作『FEMALE』での、菰口雄矢の特徴的なギター・プレイを譜例を交えて解説しよう。複雑なコードの上で自由に奏でるフレーズ・センスを感じてほしい。
人物写真=西槇太一 譜例作成・解説=PURETONE MUSIC
テンション・ノートを駆使したオシャレなバッキング
譜面は「コンサートホール」のサビ(1:53〜2:12)で聴ける、右チャンネルのエレキ・ギターをイメージしたもの。楽器のアンサンブルが厚めになっているが、ユニークで独創的なバッキングでギターの存在感を出している。シャッフルのリズムなので8分音符が跳ねていることに注意しよう。
1小節目の出だしはBmコードに対する9th音(2弦14フレット)、2小節目の頭もEコードの9th音(2弦7フレット)を使用している。8小節目はテンションを加えたブロークン・コードを使用。3弦から1弦にかけてスウィープ・ピッキングで演奏するとスムーズだ。9小節目の半音チョーキングは1弦を小指で固定しておき、2弦のみを薬指でチョーキングしよう。
全体的にダイアトニック以外のコードが多く使わているが、コード・トーン+テンションを多用しつつ、ポップなニュアンスを出した名演。
起承転結のついたスリリングなソロ
「If I stay out of life…?」の1:39〜1:54をイメージした、ディストーション+ワウを使ったロックなソロ。7/8拍子という馴染みのないリズムが、楽曲としての緊張感を出している。また、随所にジャジィなフレーズが散りばめられており、流れるようなラインが心地良い。
アタマは3弦のみをチョーキングさせるハーモナイズド・チョーキング。2小節目のA♯音から半音チョーキングさせ、Gコードの長3度に持っていくアプローチも斬新だ。3小節目のチョーキングではピッキング・ハーモニクスでロック色を出しつつ、Cのブルーノート・スケールでブルージィなニュアンスに。6小節目からはピッキング・トリルで上昇→ハンマリングを駆使した速弾きで締めるというスリリングな展開に圧倒される。
速弾きを効果的に使ったジャジィなソロ
「nothing…」の楽曲中盤(1:35〜1:49)をイメージしたギター・ソロ。6/8拍子だが、16ビートを強調させたリズム・ワークによりスリリングなノリを出している。コード進行はダイアトニック・コード以外を多用しており、ジャジィなニュアンスが強いが、ソロはメロディアスで印象に残るフレーズのオンパレード。
2小節目頭はC♯mコードに対して9th音となるD♯(1弦11フレット)から入っていることに注目しよう。4小節目からはプリング&スライドを駆使した速弾きフレーズ。タイミングの良さもさることながら、さり気なく半音アプローチを加えてジャジィなニュアンスも出している。7小節目はG△7(9)コードをキーDのサブドミナントと見立てて、Dペンタを使ったスケールが使われている。
LIVE INFORMATION
『清 竜人 弾き語りコンサート 2023 春』
■会場:自由学園明日館講堂
■日時:2023/3/18(土)
一部 開場/開演:13:15/14:00
二部 開場/開演:16:15/17:00
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作品データ
『FEMALE』
清 竜人
ソニー/ESCL-5740~4/2022年11月30日リリース
―Track List―
01.フェアウェル・キス
02.コンサートホール
03.If I stay out of life…?(feat. Leo Uchida from Kroi)
04.Love is over…(feat. さらさ)
05.愛が目の前に現れても僕はきっと気付かず通り過ぎてしまう
06.Knockdown
07.nothing…
08.離れられない
09.Someday
10.いない
―Guitarist―
菰口雄矢