コード・トーンを制する者は指板を制す! | 1日1分8小節! ギター上達 コード・トーン練習ドリル:002 コード・トーンを制する者は指板を制す! | 1日1分8小節! ギター上達 コード・トーン練習ドリル:002

コード・トーンを制する者は指板を制す! | 1日1分8小節! ギター上達 コード・トーン練習ドリル:002

この連載セミナーは月〜金の16時に毎日更新される練習ドリルです。

スケールではなく、あえてコード・トーン(コードを構成する音)に限定したフレーズを繰り返し弾いていくことで、コード進行の流れに沿ったポジションを感覚的に身につけることができるようになります。

毎日8小節のドリルを公開していくので、1日1分だけトライしてみましょう! きっと上達すると思います。

文:日下義昭
*この記事は書籍『色分けタブ譜で理解度UP!コード・トーン反復ギター・トレーニング!』(リットーミュージック刊)の内容を転載したものです。

コード・トーンを制する者は指板を制す!

キーについて

 “音楽”というと、とにかく“自由なもの”と思われがちですが、規則正しく繰り返されるドラム・ビートが心地よく感じられるように、実際にはさまざまな“約束事”にのっとって作られています。

 楽曲の“メロディ”と“ハーモニー”(コード)は、“キー”、すなわち基準となる音=「ド」を土台として成り立っています。

 ある音から1オクターブ上の同じ音までの間には12個の音が存在します(図1①)。そのすべての音はキーとして設定できます。つまり12通りのキーが可能になるわけです。

 しかし、例えばCとDの間にある音は“C♯”であり“D♭”でもあるため、表記上は異なるキーのようですが音程としてはまったく同じ音になります(図1②)。

 また、ピアノの場合は白鍵だけで弾けるC、ギターの場合は開放弦を有効に使えるEやA、サックスの場合はFやB♭など、それぞれの楽器で演奏しやすいキーがあり、それぞれの使用頻度は高くなるため、ポピュラー音楽によく使われるキーはそれほど多くありません

 自由に動いているように思えるメロディですが、キーという“家”を出発点として、最後にはまた戻ってくる……その“約束事”によって音楽に心地よい終止感をもたらすことができているというわけです。

メジャー/マイナー・スケールについて

 私たちが普段から耳にしている音楽の多くは“メジャー・スケール”、いわゆる“ドレミファソラシ”の音階をもとにして作られています。

 その特徴は明るく、元気な響きを持ち、構造的には3、4番目、そして7、8番目のみ、ふたつの音の間に音を挟まない“半音”(1フレット分)の音程関係で、他の音はすべて“全音”(2フレット分)の間隔になります。

 そのメジャー・スケールを“ラ”から弾き始めると、まったく同じ音のパーツ群にも関わらず、暗く、切ない響きを持つ“マイナー・スケール”へと変化します。

 それは各メジャー・スケールには対となるマイナー・スケールが必ず含まれていることを意味します。その構造をわかりやすく「C」のキーに置きかえてメジャー・スケールと見比べてみると、3、6、7番目の音が半音下、すなわち“フラット(♭)”していることがわかります。

 メジャー/マイナー・スケール、それぞれの構造を把握しておけば、キーの変更(移調)にもしっかりと対応することができるようになります(図2)。

※スケールについてもっと詳しく知りたい方は『これだけ覚えればOK!どんなソロでも弾ける5つのスケール指板図 』(リットーミュージック)も、ぜひ併せてお読みください。

ダイアトニック・コードについて

 メジャー・スケールを構成する「ド」から「シ」までの7つの音を規則正しく積み重ねていくと、それぞれの音を基音(=ルート)とする7つのコードを作ることができます。

 それが“ダイアトニック・コード”と呼ばれるコードで、そのキーで基本的に使うことのできる7つのコードということになります。メジャー・スケールに含まれる音のみを材料としていますから、当然、メジャー・スケールから作られたメロディには問題なく合わせることができます。

 そしてメジャー・スケール以外の音を含むコードは“ノンダイアトニック・コード”と呼ばれ、ハーモニー的に強い違和感をもたらすものですが、これを効果的に利用することで楽曲により印象的な部分を作り出すことができるのです。

 その代表的な例がマイナー・キーにおける5番目のダイアトニック・コードです。本来は“Em”であるべきところですが、これをマイナー7thからドミナント7thに置き換えることで、楽曲のクライマックス部とも言える“聴きどころ”を作り出すことができるのです(詳しくは“ドミナント・コード”の章で解説します)。

 他にもスムーズな転調(他のキーに変わること)や、曲が“終わりそうで終わらない”エンドレスな感覚を生み出すなど、ノンダイアトニック・コードにはさまざまな使い方がありますが、それらが可能になるのもダイアトニック・コードという“基本”がしっかりと確立されているためなのです(図3)。

※コードについて詳しく知りたい方は『これだけ覚えればOK!どんな曲でも弾ける15のコード・フォーム 』(リットーミュージック)を、ぜひ併せてお読みください。

コード・トーンとは?

 コード・トーンとはコードを構成している3~5個からなる音群のことです。

 キーからはメジャー/マイナー・スケールが、そしてスケールからはダイアトニック・コードが導き出されますが、逆にコードから導き直したものコード・トーンと言えます。

 スケールからメロディ(ソロ)を作る場合、すべてのコード・トーンを使いきることは難しく、メロディだけを抜き取って聴いてもなかなかコード進行を判別することはできません。しかし、コード・トーンのすべてを使ったフレーズであれば、メロディがそのままコード進行を表すことになるのです(図4①)。

 また、コード進行上でメジャー・スケール以外の音を含んだノンダイアトニック・コードが使われている場合、その部分だけスケール内の音をコード・トーンに合わせて変化させる必要があります。

 そして楽曲のハーモニーに印象的な部分を作り出しているノンダイアトニック・コードこそ、その効果を十分に発揮できるようにコード・トーンを強調したフレーズを当てる必要があるのです(図4②)。

コード・トーンの仕組みを理解しよう!

 コード・トーンはそのコードの響きを特徴づけるための役割をそれぞれが持っています。主役はコード表記の大文字で示される“ルート”(日本語で“根っこ”を意味する)であり、そこからの音程関係によって、それぞれの構成音の名称と役割が決定されます。

【ルート(根音)】

コードの土台となる基音。音名がアルファベットの大文字で表記される。

【3rd(3度)】

メジャー/マイナーを区別する重要な音。ルートから半音ずつ数えて5番目(1フレットと5フレットの音程関係)がメジャー3rd(長3度)、4番目(1フレットと4フレットの音程関係)がマイナー3rd(短3度)となる。

【5th(5度)】

ルートとよく調和する音で、おもに補強的な意味で使われる(ルート+5thのパワー・コードなど)音程。また、省略される場合もある

【7th(7度)】

ルート+3rd+5thもう1音加えて豊かなハーモニーを作り出す際に用いられる音程。♭7th(短7度)は“マイナー”と“ドミナント”の2つの呼び名が場合によって使い分けられる。ルートから数えて12番目(1フレットと12の音程関係)がメジャー7th、11番目(1フレットと11フレットの音程関係)がマイナー7th、もしくはドミナント7th。

【テンション】

ルート+3rd+5th+7thの四和音を基本に、さらに豊かなハーモニーを作り出すために加える音程。ルートを「ド」とした場合、「ド」~「シ」に順番に番号を付けていき、1オクターブ目以降の「レ」=9th、「ファ」=11th、「ラ」=13thがその対象となる(音としては9th=2nd、11th=4th、13th=6th)。また、♯9th、♭13thなど、スケール以外の音を含む場合は“オルタード(変化した)・テンション”となる。

色分けタブ譜で理解度UP!コード・トーン反復ギター・トレーニング!

コード進行の中で“使える音”を8~16 小節ループで体感マスターしよう!

仕様電子版
発売日2016.04.25
ISBN9784845628063

日下義昭【くさか・よしあき】 プロフィール

ギタリストとして宇多田ヒカルなどのレコーディングに参加しているほか、作曲家として綾瀬はるか・玉木宏主演映画『雨鱒の川』、上川隆也主演舞台『隠蔽捜査』、西川きよし芸能生活50周年記念公演『コメディ水戸黄門』など、数多くの映画、舞台、テレビ作品で音楽を担当。

また、月刊誌『ギター・マガジン』(リットーミュージック)にてギター演奏に関するノウハウ記事や機材解説、新譜CD紹介などを担当しているほか、『これだけ覚えればOK!どんなソロでも弾ける5つのスケール指板図 』『Aのブルースからはじめるジャジィな深煎りギター』『何度でもやり直せる大人のギター教室』『どんな曲でも弾ける15のコード・フォーム 』『ギター表現力の引き出しが増える本』(すべてリットーミュージック)など、ギター関連の著書も多数手がけている。

2015年には初ソロ・アルバム『3-Dimensional Sounds for Electric Guitar』をキングレコードよりリリース。