TAP the Fingerboard! Vol.1 ichika直伝、最新タッピング・スタイル TAP the Fingerboard! Vol.1 ichika直伝、最新タッピング・スタイル

TAP the Fingerboard! Vol.1
ichika直伝、最新タッピング・スタイル

英ギター誌『Total Guitar』の読者投票ランキング企画にて、“現代最高のギタリスト”部門で8位を獲得した世界的アーティスト=ichika。叙情的なメロディと独創性溢れるタッピング・プレイで世界を虜にする彼が、その卓越した技術を直伝解説してくれた。全5回にわたり世界最先端のタッピング・スタイルを紹介していくので、かなり難易度は高いがあきらめずチャレンジしてほしい。初回は1本指タッピングを基軸にしたプレイに挑戦!

演奏=ichika 動画制作/録音=Takumi Osera 採譜/譜面解説=石沢功治

Ex-1:右手のスライドで“波”をつける

ichika タッピングをした右手をスライドさせて上下させることによって、細かな“波”を付けていくフレーズです。上昇しきったところで切り返しを入れて、下りの途中にも切り返しが入る。右手のタッピングでフレーズに緩急をつけるようなイメージですね。ピッキングは最初の各弦をスウィープのように弾く動作と最後のダブル・ストップ部分だけで、あとはタッピングと左手のレガートです。ポイントはタッピングの最初にしっかりと音を出して、スライドする時に音が消えてしまわないよう、力を均一にスライドすること。そして一番最後のダブル・ストップの部分は、ビブラートでフレーズに色をつけて終わらせるっていうイメージで弾いていただけると雰囲気が出ると思います。

▲A△7(♯11th)ということで、最初に弾いたルートの5弦開放A音を鳴らしながら、以降はすべてがAメジャー・スケールの4度=D音を半音上のD♯音にしたAリディアン・スケールの音使いによるリックだ。そのD♯音がフックになっていて、近未来的(?)かつクールなニュアンスを醸し出している点が見逃せない。なお、2小節目後半にリタルダンドを記したが、実際はテンポがばらけてフリーになる感じである。

Ex-2:ルートを鳴らすソロ・ギター・スタイル

ichika これは左手でルートを押さえながら移動していく、僕が得意としているソロ・ギター・スタイルのプレイですね。メロディ部分をタッピングが担っているんですが、ループ的なあり方で、なおかつ音数も多く速い、という面倒なフレーズです(笑)。6弦のルートは、人差指で最後にタッピングをし終わったあとにフリーな親指で弾いて、シームレスに音をつなげるのがポイントですね。これは右手のくり返しが一緒ですし、左手の基本的な動きもシンプルなので、パターンさえ頭に叩き込んでしまえばそんなに苦労はしないと思います。だから、最初は左手のポジションを固定して右手のタップのパターンだけまずは練習して、右手に感覚を覚えさせる。それができたあとに左手を動かしていくのが良いかと。

▲キーはDメジャー。下側をコードのルートではなく5度のB音にしたIIm7(Em7)からV7(A7)へ向かい、次にトニック・コードのI△7(D△7)へいくかと思いきや、IV△7(G△7)へいってIIIm7(F♯m7)、という4つのコードをくり返している。つまりトニック・コードが出てこないのが特徴だ。ちなみに、IIIm7(F♯m7)はトニックI△7(D△7)の代理コードという機能を持っている。

Ex-3:駆け上がりをくり返す“ザ・タッピング”

ichika 短い駆け上がりを2回くり返す、“ザ・タッピング”的な内容ですね。左手のレガートから右手のタッピングまでの3音を3連のリズムでとって弾くと良いと思います。ただ、そうすると最後に弦をまたぐことになるので、少しリズムが取りづらくなる。また、左手の人差指と中指のタップはリズムがなかなか均等になりづらいんですよ。なので、初めはゆっくりしたテンポから始めて、正確なリズムを叩き込む練習が必要だと思います。あと、最後はコードが入ってきますが、そこもシームレスにつなぎたいんです。だから、右手で20フレットをタップしたまま、その音を離さずに親指で5弦の開放からコードを弾く。リバーブなしでもリバーブがあるかのように聴こえさせるのがポイントです。

▲Vm7(Em7)からトニック・マイナーのIm7(Am7)へ流れる、マイナー・ドミナント進行上のリック。Em7はEナチュラル・マイナー・スケール(自然的短音階)に沿っての音使いで、マイナーを決める短3度のG音(6弦15f、4弦17f)に加え、ナチュラル・マイナーの特徴音である短6度のC音(5弦15f、3弦17f、1弦20f)が挟まれることによって、速いパッセージでありながらもオリエンタルな雰囲気を醸し出している。

 

ichika

いちか◎1994年生まれ。Instagramに投稿した演奏動画から人気に火がつき、世界中から注目される新世代のギタリスト。叙情的なメロディを独創的なタッピング・テクニックで描き出す唯一無二の世界観が高い評価を集めている。川谷絵音とのichikoroや“Nito”名義でのコラボレーション作品など、ソロ以外でも精力的に活動中。

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