スティーヴィー・レイ・ヴォーンとジャズの関係 スティーヴィー・レイ・ヴォーンとジャズの関係

スティーヴィー・レイ・ヴォーンとジャズの関係

様々なブルース・レジェンドたちからの影響を受け、独自のスタイルを築き上げたスティーヴィー・レイ・ヴォーン。そんな彼の楽曲には、「Stang’s Swang」や「Riviera Paradise」など、ジャジィな要素を垣間見ることができるものがいくつかある。そこで今回は、彼が自身のオリジナリティを形成する中で影響を受けた“ジャズ”について考えてみたい。

記事末尾には“スティーヴィー・レイ・ヴォーンに影響を与えたジャズ名演”を集めたプレイリストもあるので、ぜひ音を聴きながら読んでみてほしい。

文/選曲=細川真平 Photo by Frédéric REGLAIN/Gamma-Rapho via Getty Images

SRVの名演から感じるジャズ・エッセンス

1983年にデビューし、世界中をブルースで染め上げたスティーヴィー・レイ・ヴォーン。1990年にヘリコプター事故で亡くなったが、ギター・ヒーローとして、またブルースマンとして、今でも絶大な人気を誇っている。

彼が影響を受けたのは、“3大キング”と呼ばれるB.B.キング、アルバート・キング、フレディ・キングのほか、T-ボーン・ウォーカー、マディ・ウォーターズ、バディ・ガイ、ジョニー・ウィンターなどのブルース・ギタリスト、そしてブルース・ロック系ではロニー・マック、エリック・クラプトン、ピーター・グリーン、ジェフ・ベックなど、そして何と言ってもジミ・ヘンドリックスだ。

そんな彼の音楽性はもちろんブルース/ブルース・ロックがメインだが、ジャズ系のナンバーでも必聴の名演をいくつか遺している。こういうところが、スティーヴィーを“単なるブルース・ギタリスト”と思ってはいけない点だ。

彼が遺したジャズ・ナンバーは、まずはスティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブルの2ndアルバム『Couldn’t Stand the Weather』(1984年)のラスト(当時)に収録された「Stang’s Swang」。

発売時、彼のことを愚直過ぎるほどのブルース・ガイだと思っていたリスナーに、新鮮な驚きを与えてくれた1曲だった。ここではフルアコであるギブソン“Johnny Smith”を使用しており、トーンも非常にジャジィだ。

3rdアルバム『Soul to Soul』(1985年)に収録された「Gone Home」は、ジャズ・サックス・プレイヤーであるエディ・ハリスのカバー(ただし、エディのオリジナル・タイトルは「Goin’ Home」)。

1991年に追悼盤としてリリースされた『The Sky Is Crying』には、ケニー・バレルの「Chitlins con Carne」のカバーが収録された。これは『Soul to Soul』制作時にレコーディングされ、お蔵入りしていたものだ。

これらはいわゆる“ジャズ・ナンバー”だが、例えば1stアルバム『Texas Flood』(1983年)に収録された、当時の妻の名を冠したインスト・ナンバー「Lenny」、ラスト・スタジオ・アルバム『In Step』(1989年)に収録された「Riviera Paradise」を聴けば、そこに芳醇なジャズ・テイストを感じ取ることができるだろう。

また、ジミ・ヘンドリックスの「Little Wing」のインスト・カバー(『The Sky Is Crying』に収録/『Couldn’t Stand the Weather』制作時のレコーディング)でも、ウェス・モンゴメリーを思わせるオクターブ奏法をはじめとしたジャズ的なアプローチが取り入れられている。

こうしたジャズ的な側面について、スティーヴィーはこう語っている。

俺がジャズを演奏できるとは思ってないんだ。俺にできるのは“ジャズっぽいもの”だな。

この発言には謙遜も入っているだろうが、たしかに彼のプレイは正統なジャズとは少し違うかもしれない。例えば音使いを取っても、彼はペンタトニック・スケールを中心に据えたプレイを得意とするが、それはジャズ的なナンバーであっても変わらない。つまり、あくまでもブルースの手法を使ってジャズを表現しているのだ。

しかし、彼の生み出すジャズ・フィーリングは、ジャズ・プレイヤーのそれにいっさい引けを取ってはいない。そういう意味では、本人は“ジャズっぽい”だけだと言っているが、その“ぽさ”が持つ味も含めて、彼ならではのジャズ表現に成功していると言っていいだろう。

スティーヴィー・レイ・ヴォーン

影響を受けたジャズ・ギタリストは?

影響を受けたおもなジャズ・ギタリストとして彼は、ケニー・バレル、グラント・グリーン、ウェス・モンゴメリー、ジャンゴ・ラインハルト、マイナーなところではカントリー・シンガー・ソングライター、ウィリー・ネルソンのバックを務めたジャッキー・キングらの名前を挙げている。

特にグラント・グリーンのプレイは、“良いフレーズの宝庫”だと言う。1970年代になってグラントはファンキーな音楽性へと転換したが、そうなってからのライブ・アルバム『Live at the Lighthouse』も、スティーヴィーにとってフェイバリットな作品だったようだ。

ケニー・バレルについては、ライブを観て“完全にヤられた(He just killed me)”と語っている。

また、ジプシー・ジャズ・ギタリストの最高峰であるジャンゴ・ラインハルトについては、ジミ・ヘンドリックスを引き合いに出して、こう語っている。

ジャンゴとジミ・ヘンドリックスは多くの面で同じことをやってたと俺は思う。

ジミがエレクトリック・ギターでフィードバックやなんかを使った代わりに、ジャンゴは狂ったように弦をかき鳴らしたんだ。

ジャンゴには参考にする教科書なんかなかった。自分でそれを作ったんだ。ジミも同じさ。

ところで、ジャズ・ギターを語るうえでは、その始祖と言ってもいいチャーリー・クリスチャンははずせないが、実はスティーヴィーがチャーリーについて語った資料は見つけられなかった。だが、聴いていないわけはないだろうし、影響を受けていないわけもないと思っていいだろう。

ちなみに、彼はチャーリーが愛用したのと同じギブソン“ES-150”を所有していて、『The Sky Is Crying』1曲目の「Boot Hill」(録音時期不明)ではこれを使ったと言われている。

ここで聴けるのはジャズからは程遠いヘヴィなブルース・サウンドだが、チャーリーに憧れてこのギターを入手したのは間違いない。

こうしたジャズからの様々な影響は、ブルース・ギタリストとしての彼の側面にも大いに活かされ、彼を卓抜した存在に押し上げる要因の1つともなった。

スティーヴィー・レイ・ヴォーンに影響を与えたジャズ名演

スティーヴィー・レイ・ヴォーンのフレージングやギター観に影響を与えたであろうジャズ名演をピックアップしてみた。SRVの「Stang’s Swang」や「Riviera Paradise」など、彼のジャズ的な一面が出た演奏とともに聴き、これらの楽曲がSRVに及ぼした影響を探してみてほしい。

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Stevie Ray Vaughan