Page not found https://guitarmagazine.jp 月刊誌『ギター・マガジン』が展開するWEBメディア。通称ギタマガWEB。アーティスト・インタビュー、ギター、アンプ、エフェクターといった機材情報、奏法解説やフレーズ分析などなど、すべてのギタリストに向けた情報をお届けします。For All Guitar Players. Fri, 29 Mar 2024 08:42:04 +0000 ja hourly 1 富樫ユイが語る、downtの新作『Underlight & Aftertime』で“ギターの立体感”を生んだ、こだわりのマイキングとアンプ選び https://guitarmagazine.jp/interview/2024-0329-downt-togashi/ Fri, 29 Mar 2024 11:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=378244

オルタナティブなサウンドで、エモやインディー・ロックを内包した独自の音像を作り上げる3ピース・バンド、downt。今回は彼らが2024年3月にリリースした新作『Underlight & Aftertime』のサウンド・メイクについて、ギター・ボーカルの富樫ユイに話を聞いた。こだわり抜いた機材選びと、立体感のあるサウンドを生んだマイキングの妙とは?

取材/文=伊藤雅景 機材写真=本人提供

“面白そう”っていう感覚を大切にした

downt。写真左から、河合崇晶(b)、富樫ユイ(vo,g)、テネール・ケンロバート(d)。
downt。写真左から、河合崇晶(b)、富樫ユイ(vo,g)、テネール・ケンロバート(d)。

今作『Underlight & Aftertime』のサウンド・メイクのこだわりについて聞かせて下さい。冒頭の「underdrive」では、過激なディストーションのリフが印象的でした。

 この曲は、脳死で攻撃的になれるような感じの音にしたかったんです。BOSSのディストーション・ペダル(DF-2)が、良い意味でかっこいい音ではない、間抜けでおもちゃみたいな質感だったんですよ。DF-2を鳴らすと、初めて歪みペダルを買って、アンプで音を鳴らした時の気持ちを思い出しますね。ちなみに、DF-2を使ったのは「underdrive」だけです。

「煉獄ex」もディストーション寄りなサウンドだったので、DF-2を使ったのかと思いました。

 「煉獄ex」はFINE OD(オーバードライブ)を使いましたが、この曲はペダルの音というよりも、アンプの力が凄かったですね。

どんなアンプを使ったんですか?

 「煉獄ex」では、レコーディング・スタジオで借りた、70年代のセルマーのヘッド(Treble N Bass 50 SV)とマーシャルのキャビネットのセットと、ディアルモンド(DeArmond)のコンボ・アンプ(R5)の2台を鳴らしました。

レコーディング・スタジオで借りたアンプ

今作は、ギターの立体感が凄く感じやすいです。

 マイキングを凄くこだわったんですよ。「煉獄ex」で言うと、合計で4本のマイクの音がミックスされていて。セルマーに2本、ディアルモンドに1本、離れた場所にルーム・マイクを置いていました。イメージで言うと、右はブライト、左はダークめな感じにして、ルーム・マイクで奥行きを出す感じ。これはエンジニアの君島(君島 結/ツバメスタジオ)さんが教えてくれたやり方ですね。

左右でダブルで鳴らしているのかと思いました。

 3ピース・バンドのギターの音が、左右で違うフレーズで鳴っているのが好きじゃなかったんですよ。どっちを聴いたらいいのかわからないし……。ギター・ソロの時はバッキング・ギターが鳴っていてもいいと思うんですけど、私はできるだけ1本のギターでやりたかったんです。

 ダブリングすると音圧は上がりますが、今回の作品で目指したいサウンドはそこではなくて。なので、違う方法で立体感が出るように試行錯誤しました。とりあえず、“なんか面白そう”っていう感覚を大切にして録りましたね。

特に「Whale」のイントロのギターは、マイキングの具合で立体感が演出されているのかなと思いました。

 奥行き感がいやらしくないですよね。好きです。

では、歪み感を作るうえで活躍した機材を聞かせて下さい。個人的にはアンプのクランチ・サウンドが多いのかなと思いました。

 そうですね。ほとんどアンプです。特に、エメリー・サウンド(Emery Sound)のSuperbabyが凄く良かったですね。「紆余」とかで使ったんですが、このヘッドの、ボリュームを上げた時の歪み感が凄く良くて。セルマーのヘッドとマーシャルのキャビネットの途中にSuperbabyをつなげて録っていました。

写真上がエメリー・サウンド(Emery Sound)のSuperbaby。
写真上がエメリー・サウンド(Emery Sound)のSuperbaby。

シルバートーンやフェンダーはどの楽曲で登場しましたか?

 全部は覚えていないんですけど、「AM4:50」とかはシルバートーンで録りました。「111511」はフェンダーだったかな。ディアルモンドは「煉獄ex」と「13月」ですね。一番多かったのはセルマーだったと思います。

「13月」のソロではファズも登場しますが、ここの音色は?

 ツバメスタジオで借りたElectro HarmonixのGraphic Fuzzの音ですね。ソロ以外はペダルを使ってないです。この曲のクリーンは、ディアルモンドを歪ませた状態で、優しいタッチで鳴らしています。「紆余」のクリーン・サウンドも、そういう作り方でした。

「111511」などのクリーン・サウンドにも言えますが、キラッとしつつもベースの帯域に近いローも出ていて、低域の絡み方が絶妙だと感じました。

 確かに、低音はベースと補いあっている部分があるかもしれないですね。ベースが中心にあって、ギターとドラムをつなげてくれる存在になってると思います。

そこは意識していたわけではなかったんですね。

 私が出したいギターの音色を作ったらそうなったかなと。あと、今作はギターのレコーディングが終わったあとにベースを録っているので、そこも関係しているかもしれません。

ちなみに、今作はフィードバックを鳴らしている曲も多いと感じました。“カッコ良いフィードバックを鳴らすコツ”などがあったら教えて下さい。

 コツとかはないです。感じる。でも、距離は研究しましたね。自分がアンプの前で聴いて“めっちゃ良いじゃん!”ってなっても、マイクを通した音を聴くと“おや?”と感じることも多かったので。なので、ずっとその塩梅を見極めながら録っていて。まあ、そこまで時間は掛けてないですけど、適当なフィードバックではないです。

ライブではフェンダーのツイン・リバーブ(GB Twin Reverb)を使っていますが、ライブのサウンド・メイクで重視しているポイントを教えて下さい。

 EQのベースを下げ過ぎると物足りなくなってしまうので、そこは気をつけています。ベーシストと、お互いに“今日はこのくらい出したいのかな?”という感覚を感じ合って、譲り合って作っていますね。

 逆に、トレブルは歌と被ってきちゃうので、あまり上げすぎないようにします。なので、歌が聴こえづらい時はトレブルを下げますね。そんな感じで、ツマミの位置は決まっていないんです。会場によっても変わってくるので、難しいですね。リハーサルで良い感じに作っても、お客さんが入ると、音が吸われて感じ方が変わることもあるので。

使用チャンネルは?

 VIBRATOの1ですね。リバーブは1か1.5くらいまで上げるのがポイントです。やっぱり、ゼロにしちゃうとアンプの良さがなくなるというか、バンドに馴染まなくなっちゃう。メンバーは、空間系を無闇に掛けることを良しとしていないので、誰にも言ってないんですけど……。メンバーがこの記事を見たら、怒られるかもしれないです。

作品データ

『Underlight & Aftertime』
downt

『Underlight & Aftertime』
downt

P-VINE/PCD-25384/2024年3月6日リリース

―Track List―

  1. underdrive
  2. Whale
  3. AM4:50
  4. prank
  5. Yda027
  6. 煉獄ex
  7. mizu ni naru
  8. 8/31(Yda011)
  9. 紆余
  10. 111511
  11. 13月

―Guitarist―

富樫ユイ

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リズム・ボックスの使い方 | ギター上達100の裏ワザ:056 https://guitarmagazine.jp/for_beginners/2024-0329-urawaza-056-how-to-use-rhythm-box/ Fri, 29 Mar 2024 08:00:43 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=345464

「こんな練習方法や考え方があったのか!」……読むだけで上達する魔法のギター講座

文:いちむらまさき イラスト:花くまゆうさく
*この記事は書籍『ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集』(リットーミュージック刊)の内容を転載したものです。

テンポに乗って弾くには ➡ リズム・ボックスの音数を減らしていく

同じフレーズで鳴らす音数を減らしていく
同じフレーズで鳴らす音数を減らしていく

 リズム・ボックスは、通常のメトロノーム機能に加えて、様々なコントロールができます。ある一定のフレーズを練習するとして、リズム・ボックスの音の出し方のパターンを切り替えて練習できる──これがメトロノームにはない、リズム・ボックスの利点です。

 リズム・ボックスを手に入れたら、まずは小さなリズムの連続音を出して、1つのフレーズを乗せていく練習をしましょう。そこから、だんだんリズムを大きくしていきます。また、最初に何小節かミュート・ピッキングの16分音符を弾き、リズムに乗ったらフレーズを弾き始めるのも効果的です。

『ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集』

著者いちむらまさき
品種電子書籍
発売日2006.05.17
ISBN9784845613168

いちむらまさき プロフィール

岐阜出身のギタリスト&ウクレリスト&ライター。音楽制作、ソロ・ギター・スタイル、インストラクターなどで活動。

様々な雑誌に記事を書きつつ、『ギター・コードを覚える方法とほんの少しの理論』、『楽譜を見えるのがうれしくなる方法とプレイに直結させるコツ』、『音楽理論がおもしろくなる方法と音勘を増やすコツ』、『コード進行を覚える方法と耳コピ&作曲のコツ』、『ピアノでコードを覚える方法とほんの少しの理論』、『ギターを弾いているだけで音感がアップする方法』、『ブルース・ギターをはじめる方法とプレイ幅を広げるコツ』、『ギター・スケールを覚えないでアドリブをはじめる方法』、『ウクレレのお手入れ&お手軽カスタマイズを楽しむ本』、『ジャズコで聴き比べる歪みエフェクター97』、『100個のフレーズを弾くだけで飛躍的にギターが上達する本』、『100個のフレーズを弾くだけで飛躍的にギターが上達する本 リズム強化編』、『ギター上達100の裏ワザ』、『ギター作曲100の裏ワザ』、『目で見て確認DVDエレクトリック・ギター』、『アコギ上達100の裏ワザ』、『耳コピ上達100の裏ワザ』、『ライブ上達100の裏ワザ』、『ウクレレ上達100の裏ワザ』、『目で見て確認DVDウクレレ』、『気づいた人から上手くなる! ギタリストのハテナに答えます!』、『ギターで作曲する方法とほんの少しのコード理論』(すべてリットーミュージック刊)などを執筆。

東京でギター/ウクレレ楽器教室も。

◎公式サイト→https://blog.goo.ne.jp/ichimuramasaki

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ギブソンが“セオドア・スタンダード”を発売 テッド・マッカーティ考案のギターをレギュラー・ラインで製品化 https://guitarmagazine.jp/news/2024-0329-gibson-theodore-standard/ Fri, 29 Mar 2024 03:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=380088  ギブソンより新製品“セオドア・スタンダード”(Theodore Standard)が発売された。

セオドア・スタンダード
セオドア・スタンダード。中央の3本が完成品で、両側は塗装前のもの。

 本モデルは、ギブソンの伝説的な元社長であるテッド・マッカーティが1957年にスケッチしたデザインを、現代の技術によって製品化したギターだ。

 そのコンセプトは、2022年3月に限定モデルとして発売され、完売したギブソン・カスタムショップの“セオドア”と同様だが、今回の“セオドア・スタンダード”はギブソンUSA製で、なおかつレギュラー・ラインでの製品となる。

1957年にテッド・マッカーティが描いたスケッチ
1957年にテッド・マッカーティが描いたスケッチ。2022年のギブソン・カスタムショップ製セオドアで初めて製品化された。

 ちなみにスケッチが描かれた1957年の翌年には、ギブソンからフライングV、エクスプローラー、ES-335などの有名なモデルが発売されている。

 では、セオドア・スタンダードのおもな特徴を紹介しよう。

カラー

 カラーはビンテージ・チェリー(Vintage Cherry)、アンティーク・ナチュラル(Antique Natural)、エボニー(Ebony)の3種類。いずれもボディのトップ、サイド、バックに加え、ネックとヘッドの裏側も同じカラーで統一されている。

ビンテージ・チェリー

ビンテージ・チェリー(前面)
ビンテージ・チェリー(側面)
ビンテージ・チェリー(背面)

アンティーク・ナチュラル

アンティーク・ナチュラル(前面)

アンティーク・ナチュラル(側面)
アンティーク・ナチュラル(背面)

エボニー

エボニー(前面)

エボニー(側面)
エボニー(背面)

ボディ

 ボディ材はマホガニー。

 ユニークなダブル・フローレンタイン・カッタウェイの形状により、最高フレット(22フレット)へのアクセスも容易になっている。

ジョイント部

ネック

 ネックもマホガニーで、形状はスリム・テーパー。

ネック

指板

 指板材はローズウッド。

 インレイの形状はトラペゾイド(台形)。

指板

ヘッドストック

 ヘッドストックの形状はシミタール(三日月刀)。

ヘッドストック

ピックアップ

 ピックアップは、ネック側が’57 Classicで、ブリッジ側が’57 Classic Plus。

 これらのパワフルなハムバッカーが、豊かなサステインと多様なトーンを生み出す。

ピックアップ

コントロール

 コントロールはマスター・トーン、マスター・ボリューム、ピックアップ切り替えスイッチ。

コントロール

ハードウェア

ハードウェアは、ABR-1チューン・オー・マティック・ブリッジ、ストップ・バー・テイルピース、グローバー・ミニ・ロトマティック・チューナーを搭載している。

ブリッジとテイルピース
チューナー

 そしてギター全体がバランスと演奏性に優れた構造になっていることも、本モデルの大きな特徴だ。

Gibson
Theodore Standard

【スペック】
Body
Shape: Theodore
Material: Mahogany
Top: N/A
Weight Relief: N/A
Binding: N/A

Neck
Neck: Mahogany
Profile: SlimTaper
Nut width: 43.053mm
Fingerboard: Indian Rosewood
Scale length: 628.65mm
Number of frets: 22
Nut: Graph Tech
Inlay: Acrylic Trapezoid

Hardware
Bridge: ABR-1 Tune-O-Matic
Tailpiece: Aluminum Stop Bar
Tuners: Grover Mini Rotomatic
Plating: Nickel

Electronics
Neck pickup: 57 Classic
Bridge pickup: 57 Classic Plus
Controls: Master Volume, Master Tone; Hand-wired with Orange Drop Capacitors

Case & SKUs
Case: Hardshell Case

【参考価格】
 275,000円(税込)

【問い合わせ】
ギブソン・ジャパン https://gibson.jp

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白井眞輝([Alexandros])の“好き”を凝縮したペダルボード|月刊『足下調査隊!』第6回 https://guitarmagazine.jp/gear/2024-0329-masaki-shirai-pedalboard/ Thu, 28 Mar 2024 22:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=378268

毎月1人のギタリストの足下を調査する連載企画、『月刊 足下調査隊!』。第6回は[Alexandros]のギタリスト、白井眞輝の巨大ペダルボードをご紹介。2枚のボードからあふれんばかりの大量のエフェクターは、どのようなこだわりでチョイスされたものなのか?

取材/文=伊藤雅景 写真=星野俊

出せない音色はない!?
所狭しとペダルを詰め込んだ超巨大ペダルボード

白井眞輝([Alexandros])のペダルボード。
白井眞輝([Alexandros])のペダルボード。

こちらのボード写真は、2023年12月9日に開催された[Alexandros]のワンマン・ツアー“NEW MEANING TOUR 2023”の東京公演最終日のリハーサル前に撮影されたもの。

エフェクター、スイッチャー、パワーサプライをすべて合わせると、計42台ものギアが詰め込まれた巨大なシステムになっている。

以下、それぞれのボードの接続順を解説していこう。

右/メイン・ボード

右/メイン・ボード
右/メイン・ボード

【Pedal List】
①FREE THE TONE/JB-21(ジャンクション・ボックス)
②BOSS/BP-1W(ブースター/プリアンプ)
③TONEFLAKE/Super Pre Amp Equalizer MODEL-G(プリアンプ/EQ)
④FREE THE TONE/LB-2(ループ・ボックス)
⑤Jim Dunlop/SW95 Slash Cry Baby Wah(ワウ)
⑥BOSS/FZ-1W(ファズ)
⑦Wren and Cuff Creations/ Your Face Smooth Silicon 70’s Fuzz(ファズ)
⑧Wren and Cuff Creations/The White Elk(ファズ)
⑨DigiTech/Whammy5(ワーミー・ペダル)
⑩FREE THE TONE/ARC-3(プログラマブル・スイッチャー)
⑪BOSS/OD-1(オーバードライブ)
⑫BOSS/SD-1W(オーバードライブ)
⑬BOSS/OD-1X(オーバードライブ)
⑭Subdecay/Harmonic Antagonizer(ファズ/オシレーター)
⑮BOSS/BD-2W(オーバードライブ)
⑯BOSS/DS-1W(ディストーション)
⑰BOSS/BP-1W(ブースター/プリアンプ)
⑱FREE THE TONE/ARC-53M(プログラマブル・スイッチャー)
⑲Mad Professor/Silver Spring Reverb(リバーブ)
⑳BOSS/DM-2W(ディレイ)
㉑BOSS/DD-6(ディレイ)
㉒BOSS RE-2(ディレイ)
㉓Electro-Harmonix/Pulsar(トレモロ)
㉔BOSS/CE-2W(コーラス)
㉕BOSS/DC-2W(ディメンション・コーラス)
㉖FREE THE TONE/JB-21(ジャンクション・ボックス)

㉟Ernie Ball/Mono Volume Pedal(ボリューム・ペダル)
㊱BOSS/MT-2W(ディストーション)
㊲BOSS/TB-2W(ファズ)
㊳Eventide/PitchFactor(マルチ・ハーモナイザー)
㊴FREE THE TONE製アウトプット・セレクター
㊵BOSS/TU-3S(チューナー)
㊶FREE THE TONE/PT-1D(パワー・サプライ)
㊷FREE THE TONE/PT-3D(パワー・サプライ)

合計28台のペダルで構成された白井のメイン・ボード。ブースター(②)、プリアンプ(③)以外のすべてのペダルをプログラマブル・スイッチャー(⑩)でコントロールするシステムだ。なお、メインのボードに入りきらないフィルターや空間系ペダル(㉗〜㉞)はサブ・ボードに配置されている。

シグナルの大まかな通過順は、①→②→③→④→⑩→㊴だ。


ギターの信号はジャンクション・ボックス(①)に入力され、2台のブースター(②)、プリアンプ(③)を通過し、ループ・ボックス(④)へ向かう。

ループ・ボックス(④)は2系統のループが搭載されており、下記の内訳でペダルが接続されている。

LOOP 1ワウ(⑤)+ワーミー(⑨)
LOOP 2ファズ(⑥+⑦+⑧)
④FREE THE TONE/LB-2(ループ・ボックス)に接続されたペダル。

④は、ARC-3(⑩)からラッチ信号を受け取ることで、使うループを切り替えることができる。プリセットによって、使用するペダルは適宜セレクト。ギターのシグナルは、ここのループのいずれかを通過したのち、プログラマブル・スイッチャー(⑩)のインプットへ向かう。

プログラマブル・スイッチャー(⑩)では⑪〜㊵のペダルを管理。こちらはおもに歪みが接続されている。各ループの内訳は以下。

L1歪みペダル/メイン(⑪、⑫、⑬、⑭)
L2歪みペダル/クランチ用(⑮)
L3ブースター(⑯)
L4ブースター(⑰)
L5スイッチャー(⑱)※⑲〜㉞はこちらに接続
L6ボリューム・ペダル(㉟)
L7ディズトーション/ファズ(㊱、㊲)
L8マルチ・ハーモナイザー(㊳)
⑩FREE THE TONE/ARC-3(プログラマブル・スイッチャー)に接続されるエフェクターの一覧。

プリセットの内容やペダルの組み合わせは楽曲によって切り替えており、複数のペダルが接続されているループは、直接踏み換えを行なっている。

続いては、空間系ペダルがまとめられたスイッチャー(⑱)の内訳だ。

L1リバーブ(⑲)
L2ディレイ(⑳、㉑、㉒)
L3トレモロ(㉓)
L4コーラス(㉔、㉕)
L5サブ・ボード(㉗〜㉞)
⑱FREE THE TONE/ARC-53M(プログラマブル・スイッチャー)に接続されたペダル。

空間系エフェクトは、マルチ・エフェクターを使用せず、それぞれタイプ別のコンパクト・エフェクターを用意しているのがポイント。

ボードに入りきらなかったペダルを配置したサブ・ボードは、ARC-53M(⑱)のL5に接続されている。L5のSENDから、ジャンクション・ボックス(㉖)を経由してサブ・ボードの先頭に向かっている(詳細は後述)。

左/サブ・ボード

左/サブ・ボード

【Pedal List】
㉗FREE THE TONE/JB-21(ジャンクション・ボックス)
㉘Line 6/M5(マルチ・エフェクター)
㉙Moogerfooger/MF-101(ローパス・フィルター)
㉚Moogerfooger/MF-103S(フェイザー)
㉛Moogerfooger/MF-105(フィルター)
㉜Moogerfooger/MF-102(リング・モジュレーター)
㉝strymon/CLOUDBURST(リバーブ)
㉞BOSS/RV-200(リバーブ)

メイン・ボードのプログラマブル・スイッチャー(⑱)のL5ループ内に接続されたサブ・ボード。

信号はジャンクション・ボックス(㉗)へ入力され、㉘〜㉞まで番号順に通過し、再度ジャンクション・ボックス(㉗、㉖)を経由後、プログラマブル・スイッチャー(⑱)のL5 RETURNに戻る。

ボード内で唯一のマルチ・エフェクター(㉘)は、Seekerモードのみを使用。白井曰く、“Seekerモードの元になっているZ.VexのSeek Wahも試したんですけど、そっちはいつまでたってもタイム感が合わなくて。だから、これだけはマルチを使っています”とのこと。

本人インタビュー&徹底解説

ボードのテーマは「好きなものを凝縮」

BP-1W(②)の使い方から聞かせて下さい。以前はこの位置にSOLODALLASのTHE SCHAFFER REPLICA(ブースター)を入れていましたよね?

 BP-1Wはハムバッカーのギターからシングルコイルに持ち替えた時に、出力差を補正するために使っています。THE SCHAFFER REPLICAはトレブル・ブースターなので、意図しない高音が出てしまって。

 なので、ちょっと前まではMXRのMicro Amp(ブースター)に変えていたんですよ。でも、たまたまYouTubeで聴いたBP-1Wの音が凄く良さそうだったので、導入に至りました。

BOSSの技 WAZA CRAFTシリーズでは初のブースター・ペダルですよね。

 こういうのが欲しかったんですよ! もちろんMicro Ampも良かったんですけど、もうちょっとだけ音を調整する余地があったら良いなあと思っていたんです。

 なんとなくブースターと言われるペダルって、トレブルが出やすいイメージがあるんですよね。その反面、BP-1WはEQの感じも変わらないし、歪み具合もコントロールできるので、理想のブースターですね。あと、モードも変えられるじゃないですか。それも凄く良くて。

BP-1Wのモード(RE/NAT/CE)はどのタイプを使っていますか?

 右上のBP-1W(②)はNATで、ブースターとして使うBP-1W(⑰)はCEモードですね。特にCEモードは、BOSSのCE-1をモチーフにしているだけあって、ビンテージ・ライクで、元気すぎないサウンドですね。たぶん、BOSSはこのモードを使ってほしいんじゃないかなと思ってます(笑)。

また、TONEFLAKEのプリアンプ(③)のツマミの位置が、以前の取材時(2022年8月)から大きく変わっていたのが気になりました。

 これはアンプをマーシャルのJTM45 Offset reissueに変えた影響ですね。音色は変わっていません。

③TONEFLAKE/Super Pre Amp Equalizer MODEL-G(プリアンプ/EQ)
③TONEFLAKE/Super Pre Amp Equalizer MODEL-G(プリアンプ/EQ)

昔からボードに入っていますよね。やはり、なくてはならないペダルですか?

 どうなんでしょう。これはずっとつなぎっぱなしで、オフにすることもできないんで、もはやどれくらい変わっているのかわからないんですよ(笑)。もしかして、はずすとけっこう違うのかな……。

導入時の印象はどうでしたか?

 サウンドに色気が出ましたね。今は味つけ程度の設定ですが、強めに掛けると、ニーヴの独特な歪み感がほんのりと出てきます。

では、歪みペダルの使い方を教えて下さい。メインのエフェクターは?

 メインのオーバードライブはOD-1(⑪)とSD-1W(⑫)で、SD-1Wがシングルコイルのギター用です。OD-1X(⑬)は、さらにキツく歪ませたい時で、クランチはBD-2W(⑮)ですね。Harmonic Antagonizer(⑭)は、「Mosquito Bite」(2018年)とかで使うファズです。曲によっては掛けっぱなしの場合もありますね。ゲートがしっかり掛かるし、ビット・クラッシャー的な歪み感も気に入っていて。ちなみにこの5台は、どれも単体で使っているペダルです。

OD-1(⑪)の位置にあるペダルは頻繁に入れ替わってますよね。

 ここは気分で替えてるんですけど、OD-1を久しぶりに使ったらやっぱり凄く良い音で。ただ、出力が小さいので、レベルはマックス付近まで上げないと使えないです。現行のBOSSのエフェクターと比べると音量は小さいですね。

⑪BOSS/OD-1(オーバードライブ)
⑪BOSS/OD-1(オーバードライブ)

ブースターはどのペダルを使っていますか?

 DS-1W(⑯)とBP-1W(⑰)です。以前、⑯の位置はUNION Tube & TransistorのBumble Buzz(ファズ)だったんですけど、音量が調整できないのと小さすぎて、単体で使うのが厳しかったんです。あれは「クラッシュ」専用のペダルだったというのもあり、DS-1Wを入れました。

 ジョン・フルシアンテが使ってるDS-2(ディストーション)も持っているんですけど、技シリーズが出たと知って入手したんです。一旦導入したっていう段階なので、まだそんなに使えていないんですけど、“ここぞ”という時に踏みたいですね。

技シリーズで言うと、発売後即完売してしまったレアなファズ(㊲)が……。

 実はあんまり使ってないんですよ。ぶっちゃけ、自慢するために置いてます。“これ持ってるんだぜ”って(笑)。どっちかというと、その隣のFZ-1W(⑥)を多用してますね。これ、めちゃくちゃ好きです。

どういったサウンドで使っていますか?

 ファズの音色でギター・ソロを弾きたい時に使います。でも、コード・プレイをしても輪郭がまったく崩れないんですよ。

どんどんBOSS製のペダルが増えていきますね。

 BOSSのペダルが凄い好きなんですよ。特に技シリーズは“これがこうだったら良いのにな”っていう部分が改善されていて、痒いところに手が届くというか。あと、BOSSのペダルに共通して言えることは、ギターとアンプの個性を邪魔しない。

 自分が使っているマーシャルはめちゃめちゃ良い音で鳴ってくれるんで、個性が強いペダルを入れると、その持ち味が消されてしまう気がするんです。でもBOSSのペダルは、エフェクター自体の個性や音の主張が、良い意味で弱いんですよ。

 Harmonic Antagonizer(⑭)みたいに、音の個性が強いペダルも一つの音色として大事なんですけど、やっぱり自分が優先したいのはアンプとギター自体のサウンドなんです。だから、機材を選ぶ順番で言うとエフェクターは3番目なんですよ。ギターが一番大事で、その次がアンプ、最後にエフェクターっていう。なので、その“3番目”に選ぶ機材として一番安心なのがBOSSのペダルなんです。

BOSSのペダル群。

スイッチャー(⑱)内の空間系ペダルについて聞かせて下さい。Mad Professorのリバーブ(⑲)はわりと濃いめに掛けていますね。

 そうですね。これはライブごとに、気分で踏むって感じです。

なるほど。3台のディレイ(⑳〜㉒)はどのように使い分けていますか?

 DM-2W(⑳)は味つけ用で、DD-6(㉑)は「LAST MINUTE」などで、テンポを決めてディレイを掛けたい時に使います。 RE-2(㉒)は入れたばっかりで、今は「todayyyyy」専用です。リバーブを足せるので、単体のディレイ・ペダルより幅広いセッティングができそうだなと思っています。

コーラス(㉔)とディメンション・コーラス(㉕)の使い分けは楽曲ごと?

 いまだにディメンションの役割がよくわかってないんですけど、この曲はコーラスじゃないなって思った時に使います(笑)。

次はスイッチャー(⑱)から分岐した左側のサブ・ボードについて教えて下さい。

左/サブ・ボード
左/サブ・ボード

 このボードは「VANILLA SKY (feat. WurtS)」を出した頃(2023年7月)ぐらいから使い始めました。メインのボードに入らないけど置いておきたいペダルをこっちのボードに入れてる感じですね。

 [Alexandros]は曲間の演出をこだわるので、変わった音色が突発的に欲しくなるタイミングが多くて。なので、それに対応できるように置いてるんです。

Moogerfoogerが4台も並んでいると迫力ありますよね(笑)。

 『But wait. Cats?』(2022年)の制作時に狂ったようにエフェクターを集めていて。ここのMoogerfoogerたちは、その時期に買い揃えたものです(笑)。レコーディングで使ってる人はたまにいますが、ライブのステージに置いてる人は少ないですね。

替えを探すのが難しいですからね。

 僕らはフェスや屋外のステージも多いんですが、そこにあえて持っていくっていうチャレンジ性みたいな。

どのように使っていますか?

 使い場所を決めるってよりも、アドリブで使うエフェクターとして考えてますね。これだけ用意しても、結局一回しか使わないってこともあります(笑)。特にMoogerfoogerのペダルは、踏んでからツマミをいじったほうが面白い音が出るので、設定はどんどん変えていきます。

なるほど。

 空間系エフェクターって、つなげばつなぐほど楽しいなって思いますね。何個もつないで1つの音色を作るみたいな。

どんな音が出るのか想像できないですよね。

 だからこそ楽しいんです。

白井さんのボードは、アナログ・エフェクターが大多数を占めているところに、こだわりとロマンを感じました。

 確かに、デジタル・エフェクターは少ないですね。特にこだわってるわけじゃないのですが……。あんまり好きじゃないかもしれないですね(笑)。

白井眞輝のペダルボード

(笑)。

 そこまでデジタルに反対してるわけじゃないんですけど、正直テンションが上がらない感じはありますね。

無意識にアナログ・エフェクターを選んでいたんですね。

 そうですね。好きなものを集めていったらこうなったっていう。次はMXRのdistortion IIを試したいなと思って探している最中です。そんな感じで、エフェクター欲は尽きないですね。見た目がキャッチーなので、コレクション欲も高まるし、あったらあっただけ楽しめる。夢がありますよね。

 でも、ぶっちゃけ空間系のエフェクトは最近のデジタル・エフェクターが強いなって感じます。ディレイとかは音がどこまでも伸びるし、リバーブも物凄い種類があったり。それこそstrymonとかは、今までのペダルじゃ太刀打ちできないかもって思ったりも。まあ、そこは持ちつ持たれつ(笑)。

最後に、このボードのテーマを教えて下さい!

 好きなものを凝縮したボードですね。まあ、ギタリストの足下って、みんなそういうものかなと思います。

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島袋優(BEGIN)に聞く、初のソロ・アルバム『55rpm』のアレンジと“スライドの流儀” https://guitarmagazine.jp/interview/2024-0328-masaru-shimabukuro/ Thu, 28 Mar 2024 11:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=378308

BEGINのギタリスト、島袋優が初のソロ・アルバム『55rpm』をリリースした。親交のあるミュージシャたちに“島袋優という人間を使って、音楽で遊んでほしい”とオファーをして完成した本作のギターには、彼のルーツであるブルースや沖縄音楽はもちろん、ハワイアンやレゲエ、ラテンまで、様々なアプローチが詰め込まれている。そんな新作のアレンジの話に加え、彼の代表的なプレイ・スタイルの1つである“スライド”についても深く話を聞いた。

インタビュー=福崎敬太

“島袋優っていう人間を使って、音楽でたくさん遊んでほしい”

初のソロ・アルバムである『55rpm』は歌モノの作品ですが、ギターはどのような立ち位置で考えていましたか?

 ギターありきではありましたね。ただ、僕はブルースがめっちゃ好きで、自分が作る曲はそういう曲を中心にやろうと思っていたんです。とにかくそういうギターが弾きたくて、最初はどブルースみたいな曲を作っていたんですよ。

 そしたら、全然歌えなくて。コブシとかそういうニュアンスが全然出せていなくて、ダサくなっちゃうんです。

ブルース愛が強くて、自分の声に納得できなかった?

 それもあるかもしれない。(比嘉)栄昇が歌っているイメージで自分でも歌ってみるんだけど、ああいうふうには全然表現できていなくて。“うわ、どうしよう”っていうところから、自分が作る曲に関しては始まったんです。

歌が大きな鍵になっていったんですね。

 そもそもBEGINをやっていて、自分がボーカルをやるっていうのを全然考えたことがなかったんですよ。「海の声」(2015年)がauのコマーシャルで使われて、栄昇から“優、この曲はお前が歌え”って言われて歌ったのが、自分がメインで歌う初めての曲ぐらいで。まぁ、アルバムで1〜2曲歌うっていうことはありましたけど。

 とにかく、ボーカルのとらえ方がや考え方が、アルバムの制作に入ってから180度変わったんです。それで、今自分の歌が一番表現できるメロディで作っていって、それと平行してどブルースみたいなギターがちょっとずつ減っていくわけですよ。アレンジによって入れたりはしましたけどね。

そのアレンジはどのように進めていったのですか?

 まず自分がアレンジしたものに関しては、どうやったら自分のボーカルが活きるのか、どういう表現をしたら聴いてくれる人に届くような歌い方ができるのかを考えて。ギターも含めて、何回もやり直しをしながら作っていきましたね。

 例えばスキマスイッチの(大橋)卓弥が書いてくれた「貝がらの唄」は、もとはバラードだったんです。で、まずデモテープが届くんですけど、もうスキマスイッチなんですよ(笑)。

デモでは大橋さんが仮歌を入れているんですか?

 そうなんです。だから“うわ〜、やばい! 俺、ここまでのクオリティ出せるかな……”みたいなプレッシャーがあって(笑)。でも、自分なりのアプローチでアレンジをすれば、きっと面白くなるはずだって思って、ちょっとハワイアン・レゲエっぽい感じにしたんです。

アレンジをほかの方にお願いした曲については?

 それは本当に完全にお任せでやっていました。みんなには“島袋優っていう人間を使って、音楽でたくさん遊んでほしい”っていうオーダーしかしていないんですよ。

 キヨサク(MONGOL800)がアレンジしてくれた「シージャー GO GO!」は、初期の頃のモンパチっぽい感じになっているのが面白いなって思ったり。

 あと、NAOTO(ORANGE RANGE/g)がアレンジしてくれた「タピオカとパンケーキ」は、彼が作ったベーシックから展開していったりもしましたね。

 オケに仮のボーカルを入れに行った時に、“アタマにプロローグみたいなパートをつけたいな”って話をしていたんですよ。“スパニッシュ・ギターみたいなものを入れて、HIROKI(ORANGE RANGE/vo)にインチキ・スペイン語でやってもらおうか?”みたいな話になって。そこで“いや、アルベルト(城間/DIAMANTES)がいるじゃん!”ってことで、すぐにお願いして冒頭のスペイン語を入れてもらったり(笑)。

“こういうメロディがきてほしい”ってイメージして、コード進行をつけたりしています

「ラブソングを歌ってみるよ」のソロは儚く歌い上げるメロディですが、どのように考えていきましたか?

 実はギター・ソロを組み立てる時、最初は全部アドリブから入るんですよ。とにかくスタジオに入って、その時に感じたものを一度バーっと弾いて、それでどんどん決め込んでいく。

 ただ、アドリブで出てきたフレーズを組み合わせているから、すぐ忘れちゃうんです(笑)。ライブをやる時にまた思い出さないといけない。

 このソロは、トレモロをかけないと、歌詞の内容とギターがリンクしない感じがあって。ローズのトレモロとぶつからないか心配だったんですが、やってみたら案外いけましたね。

アドリブを弾く時に、コード進行やスケールについてはどの程度意識していますか?

 うーん……でも、伴奏のコード進行は自分で決めているじゃないですか。その時に、“こういうメロディがきてほしい”っていうものを目指して、コード進行をつけたりしています。ハーフ・ディミニッシュからマイナーにいくようなところも、フレーズはまだ頭の中でも聴こえていないけど、“ここで泣きのギターが入れられるな”っていうイメージで進行を作っている。

 例えば、「今日は明日のイエスタデイ」はサビだけEからGに転調するんですけど、間奏で徐々にGまで転調させようっていうイメージの組み方で。マーヴィン・ゲイの「What’s Going On」の世界観をもう少し細かくとって、少しずつEからGに転調していくようなことを考えていたり。で、それを考えてからフレーズを考えていく。

なるほど〜、ソロの流れをイメージしたコード進行を組むことから始まるんですね。

 そうですね。ただ、BEGINの場合はヘッド・アレンジが多いので、ピアノもギターも一緒にやるから、もっとざっくりしていると思う。“ギター・ソロはこういうコード進行で”って言うこともありますけど。

 今回は“ギターでどうやって届けられるようなメロディになるかな”っていうことを考えて、普段よりもそういう意識があったかもしれないですね。もちろん、あえて歌のコード進行をそのまま使っていることもありますし。

「シージャー GO GO!」や「青のまま」、「歓びのブルース」は、ブルースやブルース・ロックを基調にしたアプローチです。ブルージィな音使いでプレイする時に考えていることはありますか?

 僕は音楽やギターを習ったことがなくて、いまだに譜面があまり読めないんですよ。一度ジャズを勉強しようと思って教則本を買ってきたんですけど、もう全然……(笑)。そういうくらいなので、感覚でしかないんですよね。

 例えばキーがGの曲で、Am7からD7に戻る時に、Aマイナーのアルペジオでメロディを弾いて、GマイナーにいったりEマイナー(Gメジャー)にいったり。そういう普通のブルースやジャズの奏法があるじゃないですか。その感じを沖縄の感じとごちゃまぜにできないかなって思っていた時はありました。メジャー・セブンスとセブンスを面白く混ぜたくて、めっちゃ考えていましたね。「島人ぬ宝」(2002年)ではうまいことやれたかなって思っているんですけど。

 ただね、自分が今まで聴いてきた音楽の感覚、“ここにいったら泣ける”とか、そういう感覚でしか弾いていない気がします。

本当にスライドが好きでめっちゃ聴いてきたんです

ソロや上モノのアプローチだと、スライドも島袋さんの定番アプローチだと思います。「ドミナント色のレコード」だとブルージィだけどキャッチーな、内田勘太郎さんのような雰囲気があったり。

 勘太郎さんのスライドにはめちゃくちゃ影響を受けましたよ。一度2人で(ギター・デュオ“Two Tones”として)ツアーを回ったこともあって。僕の中でアイドルのような存在だったので、凄く影響を受けたし、色んな刺激を受けましたね。

「converse」だとメイン・メロはキャッチーで、シモブクレコードの「Come back Jerry!!」(2009年/『Looking South West』収録)だとデュアン・オールマンっぽい感じもあります。

 よく知ってますね(笑)。

スライドで影響を受けたのは勘太郎さん以外にどういうギタリストがいますか?

 それこそデュアン・オールマンはめっちゃ好きだし、ジョニー・ウィンターみたいな激しいのも好きです。で、一番影響を受けたのはライ・クーダーかな。

 本当にスライドが好きでめっちゃ聴いてきたんです。スライド・ギターだけを集めたマニアックなレコードがあって、それを聴いたり。

どのように今のスライド・スタイルは作られていったのでしょうか?

 もちろん黒人ブルースマンのオープンGやオープンEのスライドも好きなんですが、いまだに研究中なのはペダル・スティール。自分なりに一生懸命やったんだけど、やっぱりあのニュアンスはあれでしか出せなくて、行き着いたのが普通のラップ・スティールだったんですよ。チューニングも色んなものを見ながら勉強してやって。

 たぶん、そういったものの集大成として、今のスタイルに行き着いたんですよね。ブルージィだし、ハワイアンっぽさもあるような。

スライド・バーは小指につけてピックで弾いていますが、バーをはめる指やピッキング、チューニングなどのセットアップは曲によって変わりますか?

 普通のコードも弾きやすいように小指につけていたんですけど、レコーディングでスライドしか弾かない時も小指につけてしか弾けなくなっちゃいましたね。

 で、右手だけはたまに指じゃないと雰囲気が出ない時があって。ピックだとコンって鳴ってしまう時とか、2弦を弾きたいのに1弦と3弦も共鳴しちゃったりする時とかは指で弾いたりします。だから、スライドは右手が難しいと思います。

 チューニングはオープンGにしたり、1弦だけDに落としたりしますけど、基本はレギュラーですね。オープンDとかは自分の音楽に取り入れたことはないんですよ。

ずばり、スライドの秘訣を聞かせて下さい!

 スライドって何より、自分が一番気持ち良いところでパンと止められるかどうかだと思うんですよ。あとはビブラートだと思う。押弦で言ったらハンマリング・オンみたいなプレイと、ビブラート。自分が一番気にしているのはそういうところですね。

 ニュアンスが凄く大事で、それによって大きく音楽性が変わるのがスライドの面白いところなんですよ。同じフレーズでも、緩やかに弾いたらハワイアンっぽくなったり、激しくやったらブルースっぽくなったりしますから。

ありがとうございます。では最後に、今作のギターについて一言お願いします。

 アルバムを買ってくれた人に“カッコ良いな”って思ってほしくてギターを弾いていますけど、逆に“何かカッコ悪いな”って思ってほしいところもあるんです。俺がブルースマンのギターを聴いてそうだったんけど、変なところでチョーキングが止まったり“何でここで止まるの? ちょっと低くない?”みたいなブルースっぽいニュアンスを、あえて残したりしているんですよ。そういう、へたっぴで面白くて泣いているギターを届けられたら良いなって思います。

作品データ

『55rpm』
島袋優

テイチク/TECI-1817/2024年2月21日リリース

―Track List―

  1. 今日は明日のイエスタデイ
  2. タピオカとパンケーキ
  3. ラブソングを歌ってみるよ
  4. ドミナント色のレコード
  5. シージャー GO GO!
  6. 太平洋音頭
  7. converse
  8. スターリリー
  9. 海の声 (Mighty Crown Reggae Remix ver.)
  10. 貝がらの唄
  11. 青のまま
  12. 歓びのブルース
  13. からっぽカタツムリ

―Guitarists―

島袋優、下地イサム、川満祐揮、Kuboty

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どうせ練習するならメトロノームと | ギター上達100の裏ワザ:055 https://guitarmagazine.jp/for_beginners/2024-0328-urawaza-055-lets-practice-with-metronome/ Thu, 28 Mar 2024 08:00:45 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=345465

「こんな練習方法や考え方があったのか!」……読むだけで上達する魔法のギター講座

文:いちむらまさき イラスト:花くまゆうさく
*この記事は書籍『ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集』(リットーミュージック刊)の内容を転載したものです。

テンポ・キープを心がけたいなら ➡ 練習時間のほとんどをメトロノームと一緒に

 裏ワザ020でも述べたように、週に1日だけ7時間練習するよりも、毎日1時間練習する方が上達します。そして、どうせ練習するなら、なるべくメトロノームを使って練習しましょう。上記の計算で言えば、1年間に365時間練習できることになります。その365時間、メトロノームを使用した人と、まったく使用しなかった人では、差が出ることは理解できますね。

 もちろん、練習の中には、本番同様にメトロノームなしでする練習もありますので、現実には“すべての時間で”というのは無理ですが、普通の練習をしていく際には、なるべくメトロノームを使用しましょう。そのためには、常に自分が普段ギターを弾く場所から手の届く位置にメトロノームを置き、いつでもスイッチが押せる状態にしておくことです。

 もちろん“メトロノームで練習する”の次の段階として、“メトロノームで練習して録音して聴いてみる”を行なえば、さらに向上します。

イラスト

『ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集』

著者いちむらまさき
品種電子書籍
発売日2006.05.17
ISBN9784845613168

いちむらまさき プロフィール

岐阜出身のギタリスト&ウクレリスト&ライター。音楽制作、ソロ・ギター・スタイル、インストラクターなどで活動。

様々な雑誌に記事を書きつつ、『ギター・コードを覚える方法とほんの少しの理論』、『楽譜を見えるのがうれしくなる方法とプレイに直結させるコツ』、『音楽理論がおもしろくなる方法と音勘を増やすコツ』、『コード進行を覚える方法と耳コピ&作曲のコツ』、『ピアノでコードを覚える方法とほんの少しの理論』、『ギターを弾いているだけで音感がアップする方法』、『ブルース・ギターをはじめる方法とプレイ幅を広げるコツ』、『ギター・スケールを覚えないでアドリブをはじめる方法』、『ウクレレのお手入れ&お手軽カスタマイズを楽しむ本』、『ジャズコで聴き比べる歪みエフェクター97』、『100個のフレーズを弾くだけで飛躍的にギターが上達する本』、『100個のフレーズを弾くだけで飛躍的にギターが上達する本 リズム強化編』、『ギター上達100の裏ワザ』、『ギター作曲100の裏ワザ』、『目で見て確認DVDエレクトリック・ギター』、『アコギ上達100の裏ワザ』、『耳コピ上達100の裏ワザ』、『ライブ上達100の裏ワザ』、『ウクレレ上達100の裏ワザ』、『目で見て確認DVDウクレレ』、『気づいた人から上手くなる! ギタリストのハテナに答えます!』、『ギターで作曲する方法とほんの少しのコード理論』(すべてリットーミュージック刊)などを執筆。

東京でギター/ウクレレ楽器教室も。

◎公式サイト→https://blog.goo.ne.jp/ichimuramasaki

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プロビデンスのギター用ケーブル“F201 Fatman”がリニューアル エレキ・ギターに大切なナチュラルでファットなサウンドを提供 https://guitarmagazine.jp/news/2024-0328-providence-f201-model/ Thu, 28 Mar 2024 03:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=379323  2023年に続々とリニューアルされたプロビデンス(Providence)のシールド・ケーブル。その中からギター用ケーブルの“F201 Fatman”を紹介しよう。

Providence/F201 Fatman

 F201 Fatmanは、コンダクターに独自の芯線構成を持つNCW1 OFCを使用することなどにより、いわゆる“高級ケーブル”にありがちな余計な音の成分を排除。なおかつ原音を損なうことなく、よりナチュラルで、ギター・サウンドにとって一番大切な中低域をしっかりとカバーしたファットなサウンドを提供する。

 また、ケーブルを長く引き回した際にありがちだった高音域の低下や音痩せに対しても、強力な効果を発揮する。

 さらに超過密編組シールドとカーボン含有の導伝ビニルを使用することにより、電磁ノイズをシャットアウト。使用時につきものの床たたきノイズ、テレビやラジオなどの高周波ノイズ、モーター等から発生するノイズからサウンドを守るように作られている。

 プラグは、F201ケーブルの求めているサウンドに一番マッチしたオール24金メッキのProvidence NP-14GおよびNP-14GLを使用。

 長さは1m、2m、3m、5m、7mの5種類。プラグはS/S、S/L、L/Lの3通りが用意されている。

 そして昨年のリニューアルにより、さらに抜けが良くクリアなサウンドになったのが特徴だ。

Providence
F201 “Fatman” PLATINUM LINK GUITAR CABLE

【スペック】
●Providence with NCW1 OFC
●Conductor-Size: 0.75mm²
●Construction: 150/0.08OFC(No./mm)
●Diameter: 1.14mm
●Insulation-Thickness : 1.43mm(±0.05mm)
●Diameter: 4.00mm
●Innerr Jacket-Thickness: 0.25mm
●Diameter: 4.50mm
●Shield-Diameter: 5.00mm
●Jacket-Thickness: 0.90mm(±0.10mm)
●Diameter: 6.80mm
●Maximum conductor resistance(20°C): 23.60 (Ω/km)
●Capacitance(1kHz): Approx.100(pF/m)

【標準価格】
1.0m S/S:6,380円(税込) S/L:6,600円(税込) L/L:6,820円(税込)
2.0m S/S:6,820円(税込) S/L:7,040円(税込) L/L:7,260円(税込)
3.0m S/S:7,260円(税込) S/L:7,480円(税込) L/L:7,700円(税込)
5.0m S/S:8,140円(税込) S/L:8,360円(税込) L/L:8,580円(税込)
7.0m S/S:9,020円(税込) S/L:9,240円(税込) L/L:9,460円(税込)

【問い合わせ】
パシフィクス TEL:045-510-4060 http://www.providence.jp

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注目のキャビネット・シミュレーター搭載ペダル7選 いつでもどこでもベスト・サウンドを! https://guitarmagazine.jp/gear/2024-0328-7-featured-cabinet-simulators/ Wed, 27 Mar 2024 22:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=377355

技術の発展と共に進化を続けてきたキャビネット・シミュレーター。近年ではレコーディングだけでなくライブでも取り入れるギタリストが増え、ステージ上に実機のアンプやキャビネットを置かない現場も多く見かけるようになった。

自宅で作り込んだ音をそのまま出力できるキャビネット・シミュレーターは、スタジオやステージ、配信といった様々な場所やシチュエーションで演奏する現代のプレイヤーにとって欠かせないアイテムになっている。

ここではキャビネット・シミュレーター機能を備えた注目のペダル7機種を、ギタリスト青木征洋にレビューしてもらった。

撮影:八島崇
*本記事は、ギター・マガジン2024年4月号の「いつでもどこでもベスト・サウンドを! キャビネット・シミュレーターの世界」を抜粋・再編集したものです。

青木征洋 プロフィール

青木征洋

あおき・まさひろ●作編曲家/ギタリスト/エンジニア。代表作に『ストリートファイターV』、『ベヨネッタ3』、『戦国BASARA3』などがある。自身が主催し、アーティストとしても参加するG5 Project、G.O.D.では世界中から若手の超凄腕ギタリストを集め、『G5 2013』はオリコンアルバム・デイリーチャート8位にランクイン。またMARVEL初のオンライン・オーケストラコンサートではミキシングを務める。

strymon
IRIDIUM

strymon/IRIDIUM

OVERVIEW

定評あるリバーブ・アルゴリズムとステレオIRが豊かな響きを生む

 独自のモデリング技術、Matrix Modelingによる3種類のアンプ・モデルを搭載し、アンプごとに3つのキャビネットIRを切り替えて使うことができるペダル。

 IRはステレオで、24ビット/96kHz(500ms)の高解像度ファイルを採用している。IRローダーのstrymon Impulse Manager(Mac/Windows)を使うことで、外部IRの読み込みも可能だ。

 DRIVE、LEVEL、BASS、MIDDLE、TREBLEといったパラメーターのほか、ルーム・アンビエンスを付加することができるROOMを装備。アーリー・リフレクションのIRと、残響テールを生むstrymonのリバーブ・アルゴリズムを組み合わせることで自然な響きを再現している。

リア・パネル
リア・パネル。左からIN、OUT L、OUT R、EXP/MIDIの入出力が並ぶ。インプットもステレオ(TRSフォーン)に対応しており、入力信号に合わせてMONO/STEREO/SUMを切り替えることが可能だ。フロント側にはヘッドフォン・アウトが備わっている。

AOKI’s IMPRESSION

こだわって収録されたIRによって音作りに迷うことがない。

 どのIRも“ここだ”とこだわったマイク・セッティングで録られているのを感じました。マイク位置などは調整できませんが、パラメーターが絞られていることで迷わずに音作りができるので、まさにキャビシミュ初心者にオススメできるモデルです。

 なによりstrymonのリバーブ・アルゴリズムが内包されているのが魅力だと思います。

 少しこだわりが出てきたら、外部IRを使ってみるのも良いかもしれませんね。

strymon
IRIDIUM

【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:9(アンプ・モデルごとに3種類、外部IR対応)
●コントロール:DRIVE、AMP(round/chime/punch)、CAB(A/B/C)LEVEL、BASS、MIDDLE、TREBLE、ROOM、FAVスイッチ、ON/OFFスイッチ、STEREO入力設定(MONO/SUM)
●入力端子:インプット(フォーン)EXP/MIDI(TRSフォーン)
●出力端子:アウトL(フォーン)、アウトR(フォーン)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)
●電源:9VACアダプター(別売り)
●外形寸法:102(W)×67(H)×117(D)mm(突起部含む)
●重量:450g

【価格】
オープン・プライス(市場予想価格56,000円前後)

【問い合わせ】
オールアクセス https://allaccess.co.jp

BOSS
IR-200

BOSS/IR-200

OVERVIEW

150以上のキャビネット・モデルから2基同時使用が可能なIRペダル

 2基のカスタムDSPを備えたアンプ&キャビネット・シミュレーター。プリアンプには往年の機種から同社のMDP技術を採用したものまで、多彩なモデルを用意している。

 キャビネットには、144のBOSSオリジナルと10のCelestionによるステレオIRデータを収録(外部IRも読み込み可能)。キャビネットAとBで異なるIRを同時使用できるのもポイントだ。

 そのほか、ノイズ・サプレッサーやEQ、アンビエンスといったエフェクトを内蔵しており、センド&リターンで外部エフェクターを使用することもできる。

 2系統あるアウトへのルーティングも柔軟で、PAとステージへ違ったサウンドを送出することも可能だ。

リア・パネル
リア・パネルにはインプット、センド、リターン、アウトプットA&B、MIDIイン&アウトがスタンバイ。
サイド・パネル
左のサイド・パネルにはAUXインとヘッドフォン・アウト、フット・スイッチやエクスプレッション・ペダルを接続するCTL1,2/EXP端子、USB端子(マイクロB)が並ぶ。

AOKI’s IMPRESSION

マイクごとの多彩なIRによってサウンドの違いを学べる1台。

 BOSSオリジナルだけでなく、スピーカー・ブランドであるCelestionのIRが入っているのがポイントで、個人的には後者のサウンドが好みでした。

 マイクの種類ごとにバリエーションがあって、この1台でマイクによる音の違いを学ぶことができると思います。

 アンビエンスではルームとホール・リバーブ、アンビエンス・マイクのシミュレートを選んで響きを調節できるのも便利。拡張性あるI/Oも好印象です。

BOSS
IR-200

【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:154(+ユーザー最大128)
●コントロール:MEMORY、AMP、CABNET、AMBIENCE、MENU、EXIT、GAIN、LEVEL、BASS、MIDDLE、TREBLE、フット・スイッチ×2
●入力端子:インプット(フォーン)、リターン(TRSフォーン)、AUXイン(ステレオ・ミニ)、CTL 1, 2/EXP(TRSフォーン)、MINIイン(ステレオ・ミニ)
●出力端子:アウトプット(A/MONO、B/共にフォーン)、センド(フォーン)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、MIDIアウト(ステレオ・ミニ)
●電源:ACアダプター
●外形寸法:101(W)×65(H)×138(D)mm
●重量:660g

【価格】
オープン・プライス(市場予想価格44,000円前後)

【問い合わせ】
ローランド https://roland.cm/contact

ZOOM
G2 FOUR

ZOOM/G2 FOUR

OVERVIEW

3種類のIRを動的にブレンドするマルチレイヤーIR機能を搭載

 22種類のアンプ&キャビネットと79種類のエフェクトを内蔵したマルチ・エフェクター。同シリーズのG1 FOUR/G1X FOURから大きく進化したのが、新たにマルチレイヤーIR機能を搭載したキャビネット・シミュレーター部だ。

 実際のキャビネットは、再生されるギター音の音量に合わせてコーンの鳴り方が変わるが、1つのIRファイルのみではその挙動まで再現することは難しい。G2 FOURではギターの音量ごとに収録した3種類のIRを搭載。入力音に合わせて自動でブレンドされるようになっており、リアルなキャビネットのトーンを得ることができるようになっている。

 ペダルが備わったG2X FOURも発売中だ。

リア・パネル
リア・パネルの端子群。左からインプット、AUXイン、アウトプット×2(RIGHT、LEFT/MONO)、エクスプレッション・ペダル用のコントロール・イン。本体左側面にはヘッドフォン・アウトとUSB-C端子が備わっている。

AOKI’s IMPRESSION

ギタリストのプレイにも影響する有機的な響きを再現できている。

 入力音量でIRが切り替わるので、強く弾いた時はひしゃげたように、弱いタッチではキラッとした部分が残り、演奏に追従して音の輪郭に変化が出てくれる印象です。単一のIRのみとは違った、リッチなリアクションが得られるシミュレーターですね。

 本来キャビネットは凄く表情豊かに音を出す機材で、その音の反応がギタリストの演奏にも影響します。そんな有機的な響きに近づいたペダルだと感じました。

ZOOM
G2 FOUR

【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:22
●コントロール:カーソル・キー×4(▲、▼、▲、▲)、パラメーター・ノブ×4、フット・スイッチ×3
●入力端子:メイン(フォーン)、AUXイン(ステレオ・ミニ)
●出力端子:メイン(フォーンL/R)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)
●電源:ACアダプター、USBバス・パワー
●外形寸法:184(W)×71(H)×145(D)mm
●重量:707g

【価格】
オープン・プライス(市場予想価格24,000円前後)

【問い合わせ】
ズーム カスタマーサポートセンター TEL:0570-078206 https://www.zoom.co.jp/ja

Two notes
Opus

Two notes/Opus

OVERVIEW

マイクの距離や角度まで追い込める膨大なIRを内包したシミュレーター

 長年ロード・ボックスやアンプ&キャビネット・シミュレーターを手掛けてきたTwo notes。同社の新製品として発表されたのがOpusだ。

 シンプルな2ノブの筐体にアンプ&キャビネット・シミュレーターの機能が詰め込まれており、アンプはプリアンプ部とパワー・アンプ部をそれぞれ設定可能。

 キャビネットはIRだが膨大なファイルを収録しており、マイクの種類(8種類の中から2本を選択可能)やキャビネットからの距離の設定、ルーム・エミュレートも行なえる。

 エレキ・ギター/ベースだけでなく、エレアコ用IRが多く搭載されているのも特徴だ。

 各設定は専用ソフトやアプリから視覚的にエディットができる。

左サイド・パネル
左側面にはMIDIイン、ヘッドフォン・アウト、AUXイン、グラウンド・リフト・スイッチ、DIアウト、ライン・アウトが並ぶ。
右サイド・パネル
右側面にアンプ/インスト/ライン・イン、スピーカー・アウト、レベル・セレクト(AMP/LINE/INST)、USB-C端子、電源端子が備わっている。

AOKI’s IMPRESSION

即戦力のサウンドが内蔵エンハンサーでさらに磨かれる。

 アンプ部がプリとパワーで別々にコントロールできるというのが良いですね。

 自前のアンプ・ヘッドを使いたい場合、センドから出すとパワー・アンプ回路を通りませんが、Opusにつないでプリアンプをオフに、パワー・アンプをオンするという使い方ができます。

 IRももちっとした質感の即戦力になるサウンドで、内蔵エフェクトのエンハンサーとの組み合わせで、より良いレスポンスを表現してくれました。

Two notes
Opus

【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:32(追加購入や外部IR対応、マイク切り替え可能)
●コントロール:PRESET/PARAM、VOLUME/VALUE、インプット・レベル切り替え(AMP/LINE/INST)、グラウンド・リフト・スイッチ
●入力端子:AMP/INSTRUMENT/LINE(フォーン)、MIDIイン(ステレオ・ミニ)、AUXイン(ステレオ・ミニ)
●出力端子:TO SPEAKER(フォーン)、DIアウト(XLR)、ライン・アウト(フォーン)
●電源:12VACアダプター
●外形寸法:100(W)×60(H)×121(D)mm(突起物含む)
●重量:450g

【価格】
オープン・プライス(市場予想価格58,080円前後)

【問い合わせ】
日本エレクトロ・ハーモニックス https://www.electroharmonix.co.jp

Universal Audio
UAFX OX Stomp Dynamic Speaker Emulator

Universal Audio/UAFX OX Stomp Dynamic Speaker Emulator

OVERVIEW

老舗レコーディング機器ブランドがキャビネットの名機をモデリング

 IRではなく、Dynamic Speaker Modelingと呼ばれるメーカー独自のモデリングによってキャビネット・サウンドを再現するペダル。

 本体上ではシンプルな操作のみできるが、UAFX Controlアプリ(iOS/Android)で詳細な設定が可能だ。

 往年の名機を中心とした22のキャビネット・モデルを内蔵しており、キャビネットへのマイクは6種類(+DI)から2本、ルーム・マイクは6種類から選ぶことができる。キャビネットのブレイク・アップ具合を調整するSPEAKER DRIVEも搭載している。

 また、1176を再現するコンプやEQ、ステレオ・ディレイ、モジュレーション、プレート・リバーブも使用可能だ。

リア・パネル
リア・パネルの端子。ステレオに対応するインプットとアウトプット、電源端子、USB-C端子が並ぶ。

AOKI’s IMPRESSION

圧倒的な自信を感じさせるナチュラルな響きのモデリング。

 ビンテージ機器のモデリングに定評あるブランドらしく、リアリティ重視のサウンドです。アンプ・シミュレートはないですが、その分“キャビネット部分はOX Stompに任せろ”という圧倒的自信が感じられます。

 キャビネットのマイクだけでなくルーム・マイクもとても自然な響きで、良いスタジオで鳴らしているようなサウンドです。

 やはりビンテージ・サウンドにこだわりを持つ方にオススメしたいですね。

Universal Audio
UAFX OX Stomp Dynamic Speaker Emulator

【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:22(それぞれでマイクの設定が可能)
●コントロール:ROOM、SPEAKER DRIVE、OUTPUT、マイク切り替えスイッチ×2(DYNAMIC/CONDENSER/RIBBON)、MIC 1、RIG(1~6)、MIC 2、フット・スイッチ×2(A、B)
●入力端子:インプット1/MONO(フォーン)、インプット2/STEREO(フォーン)
●出力端子:アウトプット1/MONO(フォーン)、アウトプット2/STEREO(フォーン)
●電源:9VACアダプター(別売り、400mA)
●外形寸法:92(W)×65(H)×141(D)mm
●重量:588g

【価格】
61,600円(税込)

【問い合わせ】
フックアップ TEL:03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp

IK Multimedia
TONEX Pedal

IK Multimedia/TONEX Pedal

OVERVIEW

AI Machine Modeling機能で自分だけのトーンをキャプチャーできる

 実機のアンプ&キャビネット(+エフェクター)で作り込んだサウンドを精密にキャプチャーできるAI Machine Modelingを搭載するペダル。

 実機のパラメーターの動きをモデリングするわけではなく、作ったトーンをリアルに再現する技術で、IRやモデリングとはまた違った性能を発揮する。

 キャプチャーしたサウンドは“トーン・モデル”と呼ばれ、自身の機材でも生成できるほか、世界中のユーザーがトーン・モデルをシェアしており、それらをインポートすることも可能だ。

 トーン・モデル以外にも、膨大なIRを使ってマイクやルームのシミュレートが行なえるVIR機能、外部IRローダーも使用することができる。

リア・パネル
リア・パネル。インプット、ステレオ対応のアウトプット、ヘッドフォン・アウト、MIDIイン&アウト、エクスプレッション・ペダルやフット・スイッチ用端子、USB端子が備わっている。

AOKI’s IMPRESSION

使いたい音が明確に決まっているギタリストにピッタリ

 静的な表現になってしまいがちなIRとは違って、AIによるモデリングでダイナミクスや周波数特性の変化といった動的な部分をシミュレートされているように感じます。

 “この機材の組み合わせを、このパラメーターで使いたい”と、サウンドのビジョンが定まっているギタリストにはピッタリです。

 自分でトーン・モデルを作る際も、付属ソフトにガイドに従って進めるだけなので、迷わず行なえると思います。

IK Multimedia
TONEX Pedal

【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:1,100種類のTone Modelを使用可能(+ユーザーTone Model)
●コントロール:MODEL、PRESET、PARAMETER、GAIN、BASS、MID、TREBLE、VOLUME、フット・スイッチ×3(A、B、C)
●入力端子:インプット(フォーン)、MIDIイン、EXT.CONTROL(TRSフォーン)
●出力端子:アウトプットL/MONO(フォーン)、アウトプットR(フォーン)、ヘッドフォン・アウト(TRSフォーン)、MIDIアウト
●電源:9VACアダプター
●外形寸法:176(W)×55(H)×142(D)mm
●重量:906g

【価格】
69,300円(税込)

【問い合わせ】
フックアップ TEL:03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp

Fender
Tone Master Pro

Fender/Tone Master Pro

OVERVIEW

フェンダーのデジタル技術が結集した初のサウンド・プロセッサー

 フェンダー初のデジタル・サウンド・プロセッサー。7インチのタッチ・ディスプレイと、回すことでパラメーター調整もできるフット・スイッチで快適な操作性を実現している。

 アンプやキャビネット、エフェクトのモデリングは100種類以上。27モデルが選べるキャビネットのIRは数千にも及び、マイクの種類や角度、距離を設定可能だ。

 マイクはギター録音で定番のダイナミック/コンデンサー/リボン・マイクのモデルを7種類用意している。

 内部のルーティングでパラレルを選べば、2台の異なるキャビネットをステレオで鳴らすことも可能。また外部IRファイルの読み込みにも対応している。

リア・パネル
リア・パネルにはマイク/ライン・インやインスト・インのほか、ループ1~4、4系統のアウト、ヘッドフォン・アウト、コントロール用端子×4、MIDIイン&スルー/アウト、micro SDスロット、USB-C端子がスタンバイ。
Tone Master FR-10
Tone Master Proを始めとする、アンプ・シミュレーターに最適化された10インチ・パワード・スピーカーのTone Master FR-10(オープン・プライス:市場予想価格77,000円前後)。12インチのTone Master FR-12(オープン・プライス:市場予想価格92,400円前後)もラインナップしている。

AOKI’s IMPRESSION

質の高いモデリングとIRで鳴らした瞬間から納得できる音。

 やはり搭載しているフェンダー・アンプのモデリングとIRの質が高いですね。最初のプリセットを鳴らした瞬間から納得感のある響きが出てきてくれました。

 キャビネットのマイキングは自由にポジションを動かせるのではなく、4×8のグリッドから指定するようになっています。

 初心者にとってはプリセットを選ぶ感覚で使えますし、上級者も経験から“このポイントかな?”と狙った音へたどり着きやすいと思いますね。

【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:27(外部IR対応)
●コントロール:ナビゲーション・コントロール、マスター・ボリューム、タッチ・スクリーン、ロータリー・エンコーダー兼フット・スイッチ×10、グラウンド・リフト・スイッチ
●入力端子:マイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)、インスト・イン(フォーン)、ループ・リターン×4(1~4)、AUXイン(ステレオ・ミニ)、EXP×2(フォーン)、TOE SWITCH(フォーン)、AMP CTRL(TRSフォーン)、MIDIイン
●出力端子:アウトプット1 L/R(XLR L/R、フォーン L/R)、アウトプット2 L/R(フォーンL/R)、ループ・センド×4(1~4)、ヘッドフォン・アウト(TRSフォーン)、MIDIアウト/スルー
●電源:100~240V電源
●外形寸法:371(W)×96.4(H)×261.6(D)mm
●重量:4kg

※ファームウェア・アップデートv1.2.56が公開中(新機能追加や操作性の向上など)

【価格】
オープン・プライス(市場予想価格220,000円前後)

【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 https://www.fender.com

総評

最後に、青木が考えるキャビネット・シミュレーターの現在、そしてこれからについて語ってもらった。

青木征洋
青木征洋

IRをどう扱うのか、その仕組みが洗練されてきた。

様々なキャビネット・シミュレーター・ペダルを試しましたが、いかがでしたか?

 同じ環境で一度に試聴するのはなかなかないことですし、新鮮な体験になりました。キャビネットのシミュレーターが出音に影響するのはもちろん、その前段にあるアンプなどの入力部分がキャビネット・シミュレーターへ与える影響の大きさも再認識できましたね。

近年は多くのメーカーからシミュレーターが出ていて、その価格もサイズも様々です。初めて導入する人にとっては悩みのタネですね。

 もちろん価格が上がると入出力数が多くなったり、そもそものIRやモデリングの質が上がるものが多いですが、今回試した製品たちはそれぞれの強みを持っているのが印象的でした。やっぱり世の中のギタリストの数だけスタイルがあって、それらをカバーできる製品が日々生まれているのだろうなと感じます。

 とにかく試奏して判断するのは大事ですね。キャビネット・シミュレーターはヘッドフォン・アウトがあるものが多いので、楽器店で試奏する際も違いがわかりやすいのではないでしょうか。

シミュレーターの進化というのは感じましたか?

 ギタリストにとってIRファイルをどう扱えると良いのかを考えて開発され、それが洗練されてきているのを感じました。グラフィック・インターフェースで視覚的にマイキングできるのか、逆にポイントを絞って音作りの近道にするのか……様々な考え方があると思います。

 昔であれば“シミュレートするのは3種類のみ!”みたいなものが多くありましたが、世の中のギタリストがデジタルの分野に詳しくなるのに合わせて、機材も発展してきていますよね。これからも良くなっていってほしいし、ギタリストもそれに追いついていきたいところです。

IRの質の向上については?

 IRの技術そのものに関してはそこまで大きな進化というものはないと思いますが、“レコーディングの技術や知識がある人”が各製品の開発にしっかり携わっているのだろうと感じます。

 どういうマイクを、どんな位置で、どんな場所で録るのかはIRの質に大きく関わってきますし、録る人の腕の差がでやすいでしょう。優れたスタッフがこのフィールドに参入してきているのだろうなと思います。

本来のダイナミクスを復元する技術が広まるかも。

青木さんが今回試奏する中で印象に残った製品は?

 Two notes Opusですかね。プリ/パワー・アンプのシミュレートだったり、専用アプリのデザインだったり、ユーザーのことをわかっているなと。Two notesは長年キャビネット・シミュレーターを開発してきて、ロード・ボックスのノウハウもしっかり持っているメーカーですが、プリアンプとパワー・アンプのモデリングまで加えてきたことには少し不安もあって。でも実際に試してみたところ、やっぱり彼らは良いアンプの音を判断できる耳をしっかり持っていると実感し、安心できたんです。

 あとはフェンダーのTone Master Pro。アンプ・モデリングの質も素晴らしく、キャビネットのIRも実践的なポイントで録音されていて、フェンダーの技術力の高さを体感しました。

今後、キャビネット・シミュレーターの技術はどのようになっていくと思いますか?

 録られたIRから、本来キャビネットが持っているダイナミクスを復元するような方法が広まっていくのかなと思いますね。そうなるとアンプ・シミュレーターの性能もより発揮することができますし、実機にマイクを立ててレコーディングした音と、シミュレーターからのライン音の差というのはどんどんと埋まっていくような気がしますね。

ギター・マガジン2024年4月号
横山健のギター愛

本記事はギター・マガジン2024年4月号に掲載された「いつでもどこでもベスト・サウンドを! キャビネット・シミュレーターの世界」を一部抜粋/再編集したものです。本誌ではキャビネット・シミュレーターの基礎知識など、さらに役立つ情報も紹介しています。

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yonigeを支えるバッキング・サウンドの秘密に迫る! 牛丸ありさが使用するペダルボード、アンプを解説 https://guitarmagazine.jp/gear/2024-0327-yonige-ushimaru-amp-pedal/ Wed, 27 Mar 2024 11:00:09 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=371535

yonigeの牛丸ありさ(vo,g)が使用するエフェクター、アンプを紹介! 今回掲載するのは、2024年2月11日(木)に渋谷CLUB QUATTROで開催されたライブ時に撮影したものだ。彼女のコード・プレイやアルぺジオの音色を彩る、シンプルなペダルボード&ディバイデッド・バイ・サーティーンの詳細を見ていこう。

取材/文:伊藤雅景 機材写真:大谷鼓太郎

エレキ・ギター用ペダルボード

エレキ・ギター用ペダルボード

【Pedal List】
①One Control/Iguana Tail Loop MKIII(スイッチャー)
②テック作/クリーン・ブースター
③BOSS/OD-3(オーバードライブ)
④BOSS/BD-2(オーバードライブ)
⑤テック作/オーバードライブ
⑥Zoom/MS-70CDR(マルチ・エフェクター)
⑦TC Electronic/PolyTune Mini(チューナー)
⑧BOSS/DD-3(ディレイ)
⑨Vital Audio/VA-08 MkII(パワーサプライ)

歪み&空間系をバランス良くチョイス

コンパクトにまとめられた牛丸のエレキ・ギター用ペダルボード。

ギターの信号はスイッチャー(①)のインプットへ入力され、各ループで②〜⑥を経由後、⑦〜⑧を通過しアンプへ向かう。

テック作のクリーン・ブースター(②)はクランチ用、OD-3(③)は粒が粗いディストーション、BD-2(④)は音量をプッシュするオーバードライブで、ソロなどで使用。テック作のペダル(⑤)が最も歪むペダルで、“ファズ一歩手前”なサウンドが特徴。ライブでは「スクールカースト」のオクターブ・ソロなどで踏んでいる。

空間系ペダルは⑥と⑧の2台。マルチ・エフェクター(⑥)ではホール・リバーブの“HD Hall”というモードを使用していた。

最後段のDD-3(⑧)は発振サウンド用で、曲間のつなぎなどで活躍している。

アコースティック・ギター用ペダルボード

アコースティック・ギター用ペダル・ボード

ステージ袖に用意されたアコギ用のボード。ギターからTC Electronic/Polytune 3(チューナー:左)に入力され、L.R.Baggs/Para Acoustic D.I.(DI/右)からPAへと信号が送られている。

Amplifier

Divided by 13/CCC9/15 Head & Cabinet

Divided by 13/CCC9/15 Head & Cabinet

12インチ1発のスピード感が魅力

yonigeのメジャー・デビュー記念にレーベルからプレゼントされたという牛丸のメイン・アンプ、ディバイデッド・バイ・サーティーンのCCC9/15。チューブ管をEL84と6V6GTの2種類から選べるモデルで、撮影時はEL84をセレクトしていた。

キャビネットにはセレッション製G12Mが1基搭載されている。本人曰く“とにかくレスポンスが早く、解像度が高いアンプ”だそう。

なお、使用するギターによってローディーがツマミの位置を変えており、コントロールにはそのセッティングを記すシールが貼られている。使用ギターとアンプのセッティングの組み合わせは以下のとおり。

Setting

Divided by 13/CCC9/15のセッティング。
Divided by 13/CCC9/15のセッティング。

セッティング:Fender/American Professional II Jazzmaster

  • トグル・スイッチ:EL84
  • MV(マスター・ボリューム):4時前
  • BASS:9時前
  • TREBLE:2時
  • VOLUME:10時前

セッティング:Gibson Custom/’57 Reissue Les Paul Standard

  • トグル・スイッチ:EL84
  • MV(マスター・ボリューム):10時過ぎ
  • BASS:11時過ぎ
  • TREBLE:4時
  • VOLUME:11時過ぎ

セッティング:Gibson/Dave Mustaine Flying V EXP Rust In Peace

  • トグル・スイッチ:EL84
  • MV(マスター・ボリューム):12時
  • BASS:1時過ぎ
  • TREBLE:4時前
  • VOLUME:11時過ぎ

セッティング:Gibson Memphis/1963 ES-335TDC VOS Bigsby

  • トグル・スイッチ:EL84
  • MV(マスター・ボリューム):10時前
  • BASS:9時過ぎ
  • TREBLE:2時
  • VOLUME:1時

作品データ

『Empire』
yonige

配信&オフィシャルサイトでの通販限定/YONG-0001/2024年1月10日リリース

―Track List―

  1. Super Express
  2. 愛しあって
  3. walk walk
  4. DRIVE
  5. Club Night
  6. 神様と僕
  7. スクールカースト
  8. Exorcist
  9. seed(re-recordingver.)
  10. デウス・エクス・マキナ
  11. True Romance
  12. a familiar empire

―Guitarists―

牛丸ありさ、土器大洋

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表紙は“真空管”!? ギター・マガジン2024年5月号が4月12日(金)発売! https://guitarmagazine.jp/news/2024-0327-gm2405/ Wed, 27 Mar 2024 09:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=380102

“真空管”の魅力をお届けする50ページの大特集

 2024年4月12日(金)発売のギター・マガジン2024年5月号は、“真空管”が表紙! ギタリストに愛され続ける真空管について、その魅力を徹底的に深堀りします。


 20世紀初頭に発明された増幅素子、真空管。1950年代からトランジスタが普及するに従い多くの分野では小型素子に置き換えられていったが、オーディオとギター・アンプの世界ではいまだ第一線で使用されている。真空管の何がギタリストの心を捉え続けるのか。真空管の基礎知識をギタリスト向けにわかりやすく解説し、その魅力を改めて考える50ページの大特集。

 そのほか、新作を発表したクルアンビンのマーク・スピアー特集やウィルコ来日時のジェフ・トゥイーディー&ネルス・クラインの機材紹介、ギター録音にお薦めのDAWガイドなど、ギタリスト向けの特濃情報をお届け。

 紙版にはギタリスト生本直毅&五十嵐勝人が監修した「青春コンプレックス -恒星- Live ver.」(結束バンド)のギター・スコアが小冊子として付属。また、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ来日記念企画として、往年の大名盤『Blood Sugar Sex Magik』より3曲の楽譜を掲載する。

 収録コンテンツは以下のとおりだ。

CONTENTS

特集:真空管の小宇宙

  • ギター・アンプに使われる3種類の真空管
  • 身近なアンプの真空管構成をおさらい
  • 真空管の歴史
  • 草薙正朗(アムトランス)が語る現在の真空管メーカー事情
  • Q&A形式でズバリ答えます! 真空管にまつわる38の素朴なギモン
  • 対談:アキマツネオ × 安孫子義一(ピーズ)
  • 現行管VSビンテージ管4番勝負! 林幸宏(フリーザトーン) × 篠原勝(SHINOS)
  • 真空管の未来を担うKORG Nutube
  • Line 6が挑んできた真空管サウンドのデジタル再現
  • Column
    戦争と真空管

特別付録小冊子(※電子版には付属しません)

  • アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」公式監修ギター・スコア「青春コンプレックス -恒星- Live ver.」/結束バンド

Featured Guitarist

  • マーク・スピアー(クルアンビン)

Special Program

  • ウィルコ来日公演での使用機材特集

The Instruments

  • ギタリストのためのDAWガイド

Axis’ Gear

  • ウェンズデイ

インタビュー

  • 柴田聡子&岡田拓郎

GM Selections(※電子版には掲載されません)

  • 「Under The Bridge」/レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
  • 「Naked In The Rain」/レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
  • 「They’re Red Hot」/レッド・ホット・チリ・ペッパーズ

and more…

ギター・マガジン2024年5月号
『巻頭特集 真空管の小宇宙』
2024年4月12日(金)発売

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ズレるのは4拍裏が原因 | ギター上達100の裏ワザ:054 https://guitarmagazine.jp/for_beginners/2024-0327-urawaza-054-lets-take-care-of-back-of-4th-beat/ Wed, 27 Mar 2024 08:00:49 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=345466

「こんな練習方法や考え方があったのか!」……読むだけで上達する魔法のギター講座

文:いちむらまさき イラスト:花くまゆうさく
*この記事は書籍『ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集』(リットーミュージック刊)の内容を転載したものです。

テンポのズレを避けるには ➡ 4拍裏を大切にしよう

 ここで言う4拍裏とは、どちらかと言えば“裏”という点ではなく、“4”から“1”の時間のことです。裏ワザ053でも述べたように、テンポ・キープの練習をしている際に、演奏がメトロノームよりも走ってしまう人は、“4”から“1”を数え忘れがちなのです。そして、それを“走った”と教えてくれるのがメトロノームなわけです。まず、これを認識して下さい。そして、裏ワザ051に書いた、小さなテンポと大きなテンポの同時意識が重要になります。

走ってしまう人のパターン
走ってしまう人のパターン

 これを攻略するには、とにかくメトロノームで練習することです。その際、“メトロノームで大きなテンポを出して、小さな音符を弾く”、“メトロノームで小さなテンポを出して、大きな音符を弾く”など、色々なパターンで練習してみましょう。これは“遅れてしまう”という欠点の克服でもあります。

『ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集』

著者いちむらまさき
品種電子書籍
発売日2006.05.17
ISBN9784845613168

いちむらまさき プロフィール

岐阜出身のギタリスト&ウクレリスト&ライター。音楽制作、ソロ・ギター・スタイル、インストラクターなどで活動。

様々な雑誌に記事を書きつつ、『ギター・コードを覚える方法とほんの少しの理論』、『楽譜を見えるのがうれしくなる方法とプレイに直結させるコツ』、『音楽理論がおもしろくなる方法と音勘を増やすコツ』、『コード進行を覚える方法と耳コピ&作曲のコツ』、『ピアノでコードを覚える方法とほんの少しの理論』、『ギターを弾いているだけで音感がアップする方法』、『ブルース・ギターをはじめる方法とプレイ幅を広げるコツ』、『ギター・スケールを覚えないでアドリブをはじめる方法』、『ウクレレのお手入れ&お手軽カスタマイズを楽しむ本』、『ジャズコで聴き比べる歪みエフェクター97』、『100個のフレーズを弾くだけで飛躍的にギターが上達する本』、『100個のフレーズを弾くだけで飛躍的にギターが上達する本 リズム強化編』、『ギター上達100の裏ワザ』、『ギター作曲100の裏ワザ』、『目で見て確認DVDエレクトリック・ギター』、『アコギ上達100の裏ワザ』、『耳コピ上達100の裏ワザ』、『ライブ上達100の裏ワザ』、『ウクレレ上達100の裏ワザ』、『目で見て確認DVDウクレレ』、『気づいた人から上手くなる! ギタリストのハテナに答えます!』、『ギターで作曲する方法とほんの少しのコード理論』(すべてリットーミュージック刊)などを執筆。

東京でギター/ウクレレ楽器教室も。

◎公式サイト→https://blog.goo.ne.jp/ichimuramasaki

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『TOKYOハンドクラフトギターフェス2024』 5月25日・26日にすみだ産業会館にて開催 https://guitarmagazine.jp/news/2024-0327-tokyo-handcraft-guitar-fes-2024/ Wed, 27 Mar 2024 03:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=379488  アコースティック・ギターやウクレレのファンのためのイベント『TOKYOハンドクラフトギターフェス2024』が、2024年5月25日(土)と26日(日)の2日間、東京都墨田区の「すみだ産業会館サンライズホール」にて開催される。


 2005年に始まった『TOKYOハンドクラフトギターフェス』は、コロナ禍による2回の中止を挟み、今年で第18回目を迎える。

 当日の会場には75社以上の出展者が集結し、ギターやウクレレを中心とした手工弦楽器やパーツなどの展示会を実施。

 10数組のアーティストが観客の目の前でライブを展開する「SUPER ACOUSTIC LIVE2024」も開催される。

 さらに楽器の実技や理論が学べるワークショップとセミナーに加え、参加者同士が演奏を披露し合うギター大会も予定。

 初夏の週末をアコースティック・ギターやウクレレに囲まれて過ごしたい人は、ぜひこの会場に足を運んでみよう。

TOKYOハンドクラフトギターフェス2024/SUPER ACOUSTIC LIVE 2024 概要

  • 日程:2024年5月25日(土)〜26日(日)
  • 会場:すみだ産業会館8階サンライズホールおよび9階会議室(東京都墨田区JR錦糸町駅前)
  • 入場料:1,800円(税込/入場当日1日のみ有効/同伴の中学生以下無料)
  • 主催:TOKYOハンドクラフトギターフェス実行委員会

SUPER ACOUSTIC LIVE 2024 出演予定者(五十音順)

  • アポンタイム/APONTIME
  • anzu
  • 岡崎倫典
  • Karen Tokita
  • キヨシ小林&ウクレレオーケストラジャパン
  • GRAND ROYAL TOKYO
  • 椎谷求&瀬知ヨーコ
  • T.T.Cafe
  • 名渡山遼
  • 松井祐貴
  • まるやまたつや&伊藤光希
  • 矢後憲太
  • 吉川忠英
  • Luciano Ghosn

*以下の写真は『TOKYOハンドクラフトギターフェス2023』で撮影されたものです。

ワークショップ&セミナー

  • ギター・ワークショップ「ソロギター・スキルアップ講座」 by 松井祐貴
  • 詳しすぎない音楽講座「ギターとウクレレのおもしろい仕組み」 by いちむらまさき
  • ウクレレ・ワークショップ「アンサンブルを楽しもう」 by T.T.Cafe 課題曲『東京ブギウギ』
  • ウクレレ実践セミナー by 名渡山遼 課題曲 中島みゆき『糸』

スペシャル・コンテンツ

  • 来場者ライブ「素人だらけの300秒ギター大会」 by 楽器挫折者救済合宿
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イエスタデイズ・ニュー・クインテット 『アングルズ・ウィズアウト・エッジズ』/マーク・スピアーの此処ではない何処かへ|第34回 https://guitarmagazine.jp/article/2024-0327-mark-speer-34/ Tue, 26 Mar 2024 22:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=368467

現代の音楽シーンにおける最重要ギタリストの1人、クルアンビンのマーク・スピアーが、世界中の“此処ではない何処か”を表現した快楽音楽を毎回1枚ずつ紹介していく連載。

今回の1枚は、マッドリブ(MADLIB)のプロジェクト、イエスタデイズ・ニュー・クインテットのインスト作、 『アングルズ・ウィズアウト・エッジズ』。マーク曰く“ファンキーかつヒップホップな感覚”という1枚。ちなみに、ギターはほとんど入っていない。

文=マーク・スピアー、ギター・マガジン編集部(アルバム解説) 翻訳=トミー・モリー デザイン=MdN
*この記事はギター・マガジン2024年2月号より転載したものです。

イエスタデイズ・ニュー・クインテット 『アングルズ・ウィズアウト・エッジズ』
/2001年

アシッド・ジャズとヒップホップを
融合させた小洒落インスト作

アメリカのアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンを代表するプロデューサー、マッドリブ(MADLIB)が“イエスタデイズ・ニュー・クインテット”名義でリリースしたインストゥルメンタル・アルバム。アシッド・ジャズとヒップホップを融合させたような小洒落た作風で、ラウンジのBGMのように聴けるとっつきやすさが魅力。

ファンキーでミステリアスなヴァイブ。僕もこういうバンドをやっていたよ。

 これは確かプロデューサーのマッドリブがやっているプロジェクトだよね。彼がほとんど1人ですべてのパートをプレイしているんだ。ちなみにギターはほとんど入っていない。もうあまり気にしないでおくれ。

 このアルバムにはブラジルのリズムによる影響があり、それと同時にアシッド・ジャズのカルテットのような印象も受ける。夜のラウンジでかかっていそうだよね。

 僕は地元のヒューストンで昔、友人のミュージシャンたちとこういったサウンドのバンドをやっていて、まさしくラウンジでプレイしていたことがあったんだ。サウンドもこのアルバムに近かった。だから親近感があるというか、単純に好みなんだ。

 このアルバムはファンキーかつヒップホップな感覚があって、ドラムなんてディアンジェロみたいで最高だね。キーボードはシンプルで無駄がないし、クールなベース・ラインもある。そして、リズム的にはかなりうしろノリだよね。タイム感をしっかり刻んだドラムに対して、ほかの楽器は大体うしろ気味になっている。程度の違いこそあれどね。その少々のズレが良いムードにつながっていると感じるよ。

 それから、このアルバムはかなりオープンな作風だよね。まるで自宅で録音したような感じだから、それがまた1つの魅力となってミステリアスなヴァイブをもたらしている。全体的にモヤがかったような雰囲気がとてもクールなんだ。そこがこのアルバムの好きなところでもあるよ。

マーク・スピアー(Mark Speer) プロフィール

マーク・スピアー(Mark Speer) 

テキサス州ヒューストン出身のトリオ、クルアンビンのギタリスト。タイ音楽を始めとする数多のワールド・ミュージックとアメリカ的なソウル/ファンクの要素に現代のヒップホップ的解釈を混ぜ、ドラム、ベース、ギターの最小単位で独自のサウンドを作り上げる。得意技はペンタトニックを中心にしたエスニックなリード・ギターやルーズなカッティングなど。愛器はフェンダー・ストラトキャスター。好きな邦楽は寺内タケシ。

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エリック・クラプトンにとって、フェンダー・ストラトキャスターとはどんな存在なのか https://guitarmagazine.jp/gear/2023-0326-why-eric-clapton-play-stratocaster/ Tue, 26 Mar 2024 11:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=377492

キャリアの初期には様々なギブソン・ギターを愛用したエリック・クラプトンだが、ソロ転向後の彼のそばには常にストラトキャスターがあった。今回はエリックがストラトキャスターを相棒として選んだ理由や、その切っても切り離せない関係性について深く考えてみたい。

文=細川真平 Photo by Ian Gavan/Getty Images

なぜ初期にストラトキャスターを選ばなかったのか

エリック・クラプトンは、ブルース・ブレイカーズ時代(1965〜66年)にギブソン・レス・ポール・スタンダードを使用し、ロック・ギター・サウンドの基礎を作り上げた。そして、その後のクリーム(1966〜68年)では、レス・ポール・スタンダード/カスタム以外にも、SGやES-335やファイアーバードなどのギブソン製ギターを使い、ギブソン・サウンドこそがブリティッシュ・ブルース・ロック・サウンドであると、広く認知させていくことになった。

しかし、ブラインド・フェイス(1969年)が解散したあと、エリックはストラトキャスターを使い始め、1970年以降はストラトキャスターこそが彼の最も信頼のおける相棒になっていく。

つまり、キャリアを大きくいくつかに分けた場合の、第1期全盛期とも言うべき期間には、彼はストラトを使用していないのだ。

ヤードバーズ時代(1963〜65年)にはテレキャスターを使っていたエリックだったが、どうやらストラトキャスターに対しては、ややネガティブな先入観を持っていたようだ。このことについて、本人はこう語っている。

ストラトキャスターのネックが、僕にはいつも非常に狭く見えて、チョーキングをするだけのスペースがないのではないかと思っていたんだ。実際には僕の間違いだったけどね。

それと、それまで見たことのあるストラトはどれもローズウッド指板のものでね。その前にローズウッド指板のギターを使ったこともあったけれど…理由は聞かないでほしいんだが、僕はローズウッド指板に嫌悪感を持っていたんだ。

だから、メイプル・(ワンピース)ネック指板のストラトを手にした時には、その弾きやすさに驚いたよ。

エリック・クラプトン

ここで語られているメイプル・ワンピース・ネック指板のストラトというのが、のちに“ブラウニー”と呼ばれることになる、56年製のサンバースト・フィニッシュのストラトだと思われる。彼はこれを、1967年5月に購入している。1970年にリリースされた、記念すべきソロ第1作『Eric Clapton』(邦題:エリック・クラプトン・ソロ)のジャケットに写っているのがこのギターだ。

そして、デレク・アンド・ザ・ドミノス名義で同年(ソロ・アルバムのあと)にリリースした『Layla and Other Assorted Love Songs』(邦題:いとしのレイラ)の裏ジャケットにも、ドミノに埋もれるようにして写っている。

エリック・クラプトンがストラトキャスターを選んだ理由

この時期に彼がストラトを使い始めた理由は何だったのだろうか?

もちろん前述のとおり、メイプル・ワンピース・ネック指板の弾きやすさに気づいたという点はある。しかし、“ブラウニー”の購入は1967年5月なので、実際にメインとして使い始めるまでには2年以上が経過している(その間、ブラインド・フェイス期には、テレキャスターに“ブラウニー”のネックを移植して使用していたこともある)。

そう考えると、もう1つの理由はサウンドの面だろう。

“ギブソン・サウンドこそがブリティッシュ・ブルース・ロック・サウンドであると、広く認知させた”と先ほど書いたが、1969年の夏以降エリックは、デラニー&ボニーの影響で米南部のスワンプ・ロックに、まさに沼(スワンプ)にはまるように傾倒していく。そこには、ブリティッシュ・ブルース・ロックの分厚くハードなサウンドは必要なかったし、彼自身そういうサウンドには飽き飽きしていた。

そんな彼に、ストラトの軽快にして枯れたサウンドはぴったりだったのだろう。

さらにもう1つの理由として、操作性の面もあるかもしれない。

ソロ・アルバム『Eric Clapton』の当初のタイトル案が『Eric Clapton Sings』だったことからもわかるように、本作から彼は本格的に歌い始めた。歌いながら弾くとなると、ギブソン系よりもコントロール部分がシンプルなストラトのほうが、手元でのボリューム調整やそれに伴う歪み量のコントロールがしやすいのは間違いなく、これもストラトにスイッチした大きな理由だったのではないだろうか。

そして、これはストラトを使うことでの副次的な要素だったのかもしれないが、彼はストラトのハーフ・トーン(リア・ピックアップとセンターPU、センターPUとフロントPUの間にセレクター・ノブを止めて出すことのできる独特のサウンド)にも強く惹かれている。

ちなみに、ハーフ・トーンがエリックの発明(発見?)のように言われることがあるが、それは間違いで、古くはバディ・ガイ(彼が最古の使用者ではないだろうか?)が、その後はジミ・ヘンドリックスも使っており、エリックはその影響下で、“せっかくストラトを使うならハーフ・トーンも使おう”というところから使い始めたのではないかと思われる。

『Eric Clapton』でもハーフ・トーンらしき音は聴けるが、エリック自身は『Layla and Other Assorted Love Songs』での「Bell Bottom Blues」を代表例に挙げ、“このセンターとリアのハーフ・トーンが大好きだ”と語っている。

このようないくつかの要因が重なって、エリックはストラトをメインに使うようになっていったのだと思う。

また、ブラインド・フェイスでの盟友、スティーヴ・ウィンウッドがストラトを使っていたことの影響があったことも、本人が認めている。

それ以外にも、これは本人の発言などでの確証は得られていないが、バディ・ガイからの影響も考えられる。クリームの結成は、1965年にバディがトリオ形態でロンドンで行なったギグをエリックが観て感銘を受けたところから始まった。その時もバディはストラトを使っていただろうから、“バディのようにストラトを弾きたい”という思いはそれ以降エリックの中に必ずあったはずだ。また、バディがメイプル・ワンピース・ネックのストラトを愛用していたことも、エリックがその仕様のストラトを手に取った理由ではないだろうか?

そして、ジミ・ヘンドリックスとの関係性についても語ることはできるだろう。ジミが生きている間は、エリックは気後れしてストラトを使えなかったという話もあったりはするのだが、実際にはエリックは1969年中にはストラトを使用し始めているので(『Eric Clapton』のレコーディングは1969年11月から始まっている)、その噂には根も葉もない。ただ、エリックがジミを意識しなかったことなど一度もないはずなので、ジミを通してストラトへの思いが徐々に募っていったということは十分にあり得る。

名器ブラッキーと、シグネチャー・ストラトの誕生

“ブラウニー”の次にエリックのメインのストラトになったのが“ブラッキー”だ。いくつかの中古ストラトのパーツを寄せ集めて自ら組んだギターで、ボディ・フィニッシュがブラックだったことからこう呼ばれる。

もとになったストラト数本を彼は1970年に購入しているが、“ブラッキー”が公に初お目見えしたのは1973年1月13日、ロンドンのレインボー・シアターで行なわれた“レインボー・コンサート”の1stショーでのことだ。

その後、ライブでもレコーディングでもメインで使用され、アルバム『Slowhand』(1977年)、『Backless』(1978年)、ライブ・アルバム『Just One Night』(邦題:ジャスト・ワン・ナイト〜エリック・クラプトン・ライヴ・アット武道館〜)ではジャケットにも登場している。

“ブラッキー”時代は12年に及ぶが、1985年にフェンダーがエリックのシグネチャー・ストラトのプロトタイプ開発に着手。レース・センサー・ゴールド・ピックアップと、ミッド・ブースト回路、高域を強調するTBXコントロールを搭載していることが特徴だった。

エリックはこれを、レコーディング中だったアルバム『August』(1986年)で使用、また同年6月20日、ウェンブリー・アリーナでの“プリンス・トラスト・コンサート”では、トリノ・レッド・フィニッシュの個体が公に初登場した。

そして、いくつかの仕様の見直しを経て、1988年に“エリック・クラプトン・ストラトキャスター”として発売されることに。

“エリック・クラプトン・ストラトキャスター”は今に至るまでに、ピックアップを含めて仕様変更はいくつかあったものの、ミッド・ブースト回路の搭載は変わらない。これこそがこのモデルの最大の肝と言っていいだろう。

“ブラウニー”と“ブラッキー”は、細かい違いはあれど、基本的には50年代仕様のオーソドックスなストラトだった。1970年代のエリックは、スワンプ・ロックから、よりゆったりとしたレイド・バックと呼ばれる音楽性へと進んでいったが、そうした音楽性において“ブラウニー”と“ブラッキー”のクリーンなサウンドは最適解だった。

しかし、1985年の『Behind the Sun』から一気にモダンな音楽性へと変貌すると同時に、サウンドももっと歪み量の多い、ダイナミックでパワフルなものが必要になってきた。そうした中で、ミッド・ブーストはエリックにとって福音となったのだろう。

もちろん、足下やラックのエフェクターで解決することもできたわけだが、そうではなく、手元で完結させたいという気持ちが彼にはあった(今でもある)のだと思う。また当然、他のギターに持ち替えるという選択肢もあるわけだが、そうしないのはやはり、歌いながら弾くことを前提としてのストラトの操作性の部分が大きいだろう。

だがそれ以上に、彼がストラトキャスターを使い続けるのは、ストラトというギターを愛しているからだと思うし、結局はこの部分が一番重要かもしれない。そしてそれは、いつまでも変わらないもののように見える。

エリック・クラプトン・ストラトキャスター

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クラシックの指揮者に学ぶ | ギター上達100の裏ワザ:053 https://guitarmagazine.jp/for_beginners/2024-0326-urawaza-053-learn-from-classical-conductors/ Tue, 26 Mar 2024 08:00:52 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=345467

「こんな練習方法や考え方があったのか!」……読むだけで上達する魔法のギター講座

文:いちむらまさき イラスト:花くまゆうさく
*この記事は書籍『ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集』(リットーミュージック刊)の内容を転載したものです。

走ってしまうのを修正するには ➡ 指揮者のコンダクトをイメージしよう

 クラシック音楽にはなぜ、指揮者が必要なのでしょう? それは、クラシック音楽に、一定のテンポが定まっていないからです。大勢の楽団員は、指揮者の振る指揮棒で、場面ごとのテンポに乗っています。その際、最も重要なのが、“4拍目から1拍目に向かう時間”です。これをバンドに置き換えます。

4拍子の重要な部分はココ
4拍子の重要な部分はココ

 カウントでドラマーが“1〜2〜3〜4〜”と声を出しますが、この“4”のあとに、メンバー全員が、曲のスタートである“1”で音を出すわけですね。ここでズレたらカッコ悪くなります。そして、このテンポのくり返しの中で“走ってしまう人”は、“4”の裏の時間を数えるのが苦手、という面があります。そういう人は、4拍裏を数えるというよりも、4拍〜1拍に向かう時間をキープする、と考えましょう。

 クラシック音楽は、指揮者次第という面がありますが、それはテンポをリードするということが指揮者の役目だからです。指揮者としては、4拍子を大きく振ったり小さく振ったりして演奏者をリードし、楽曲に躍動感や静けさを演出します。また、4拍〜1拍に向かう時間を長く表現すれば、テンポを超えた“タメ”に近い時間を演出することができます。

指揮者の4拍子パターン
指揮者の4拍子パターン

 裏ワザ051で示した“歩く数え方”にしても、まずは“1”を踏む前に、スタートからの時間が存在することを意識して下さい。前にも小節があると考えた“1〜2〜3〜4〜”の“4”がスタートであって、そこから“〜1〜2〜3〜4〜”と数えるわけです。このように、“4”から“1”の時間を意識することがリズム上達の秘訣です。そして、それがくり返されることで、テンポ・キープされるわけです。

歩き始めは“4”からスタート
歩き始めは“4”からスタート

『ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集』

著者いちむらまさき
品種電子書籍
発売日2006.05.17
ISBN9784845613168

いちむらまさき プロフィール

岐阜出身のギタリスト&ウクレリスト&ライター。音楽制作、ソロ・ギター・スタイル、インストラクターなどで活動。

様々な雑誌に記事を書きつつ、『ギター・コードを覚える方法とほんの少しの理論』、『楽譜を見えるのがうれしくなる方法とプレイに直結させるコツ』、『音楽理論がおもしろくなる方法と音勘を増やすコツ』、『コード進行を覚える方法と耳コピ&作曲のコツ』、『ピアノでコードを覚える方法とほんの少しの理論』、『ギターを弾いているだけで音感がアップする方法』、『ブルース・ギターをはじめる方法とプレイ幅を広げるコツ』、『ギター・スケールを覚えないでアドリブをはじめる方法』、『ウクレレのお手入れ&お手軽カスタマイズを楽しむ本』、『ジャズコで聴き比べる歪みエフェクター97』、『100個のフレーズを弾くだけで飛躍的にギターが上達する本』、『100個のフレーズを弾くだけで飛躍的にギターが上達する本 リズム強化編』、『ギター上達100の裏ワザ』、『ギター作曲100の裏ワザ』、『目で見て確認DVDエレクトリック・ギター』、『アコギ上達100の裏ワザ』、『耳コピ上達100の裏ワザ』、『ライブ上達100の裏ワザ』、『ウクレレ上達100の裏ワザ』、『目で見て確認DVDウクレレ』、『気づいた人から上手くなる! ギタリストのハテナに答えます!』、『ギターで作曲する方法とほんの少しのコード理論』(すべてリットーミュージック刊)などを執筆。

東京でギター/ウクレレ楽器教室も。

◎公式サイト→https://blog.goo.ne.jp/ichimuramasaki

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ジャクソンのAmerican Seriesより、2ハムバッカーのSoloistが2機種登場 https://guitarmagazine.jp/news/2024-0326-jackson-american-series-soloist/ Tue, 26 Mar 2024 03:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=378973  2022年に発表され、ジャクソンのフラッグシップ製品ラインとして大きな反響を呼んだAmerican Seriesより、新たに2つのSoloistモデルが登場した。日本国内での販売は2024年3月21日(木)より開始されている。

Jackson American Series Soloist SL2MG

 Jackson American Series Soloist SL2MGは、2基のハムバッカーとダブルロッキング・トレモロを搭載したモデルで、ボディ・カラーはSatin Lambo Orange、Matte Army Drab、Satin Blackの3色。

Satin Lambo Orange(前面)
Satin Lambo Orange
Satin Lambo Orange(背面)
Satin Lambo Orange
Matte Army Drab(前面)
Matte Army Drab

Matte Army Drab(背面)
Matte Army Drab
Satin Black(前面)
Satin Black

Satin Black(背面)
Satin Black

Jackson American Series Soloist SL2MG HT

 Jackson American Series Soloist SL2MG HTは、2基のハムバッカーとハードテイル・ブリッジを搭載したモデルで、ボディ・カラーはMatte Army DrabとSatin Blackの2色。

Matte Army Drab(前面)
Matte Army Drab

Matte Army Drab(背面)
Matte Army Drab

Satin Black(前面)
Satin Black

Satin Black(背面)
Satin Black

 この2つのモデルに共通する特徴を紹介しよう。

ボディ/ネック

 ボディ材はアルダーでシェイプはSoloist。

 スルーネック構造の3ピース・メイプル・ネックには、グラファイトの補強ロッドが埋め込まれている。

指板

 エボニー指板には、12インチ~16インチのコンパウンド・ラジアスを採用。エッジには丁寧なロールオフ処理が施されている。

 フレットは24本のジャンボ・ステンレス・フレットで、マザー・オブ・パールのインレイの形状は、逆向きのシャークフィン。

指板

 また、Luminlayのサイド・ドットにより、暗いステージでもフレット・ポジションの視認性が確保される。

 さらにヒールマウントのトラスロッド調整ホイールにより、ネック調整も容易だ。

ピックアップ

 2基のピックアップはEMG 81(ブリッジ)とEMG 85(ネック)。これらのハムバッカーは、パンチがありながらも、モダン・メタルには必要不可欠なクリアさと分離感を持ったサウンドを提供する。

ピックアップ

コントロール

 コントロールは1ボリューム、1トーン、3ウェイ・ブレード・スイッチで構成。シンプルながらも、多彩なジャンルに対応するパワフルなサウンドを提供する。

コントロール

ハードウェア

 チューナーはGotoh MG-Tロッキング・チューナー。

チューナー

 Dunlopのデュアルロッキング・ストラップ・ボタンもプレミアムなスペックだ。

 これらのハードウェアのカラーは、すべてブラックで統一されている。

ブリッジ/ナット

 ブリッジとナットは、SL2MGとSL2MG HTとで異なっている。

 SL2MGに採用されているのは、Floyd Rose 1500シリーズのダブルロッキング・トレモロとロッキング・ナット。

Floyd Rose 1500シリーズ・ダブルロッキング・トレモロ
Floyd Rose 1500シリーズ・ダブルロッキング・トレモロ

 一方のSL2MG HTには、Hipshotの6 String Fixed .175ブリッジと、Graph TechのTUSQ XLナットが採用されている。

Hipshot 6 String Fixed .175ブリッジ
Graph Tech TUSQ XLナット

American Seriesとしての特徴

 テクニカルなプレイに必要不可欠な要素を備えたギターであることや、カリフォルニア州のコロナ工場で製作されるモデルであることは、American Series全般に共通する特徴だ。

 なお、American Seriesの初のモデルとして2022年に登場したAmerican Series Soloist SL3や、2023年に発表されたAmerican Series Virtuosoについては、以前の記事を参照してほしい。

Jackson
American Series Soloist SL2MG

【スペック】
●Body Material: Alder
●Body Finish: Matte, Satin
●Neck: Maple, Speed Neck
●Neck Finish: Satin Color Matched
●Fingerboard: Ebony, 12” to 16” Compound Radius (304.8 mm to 406.4 mm)
●Frets: 24, Jumbo Stainless Steel
●Position Inlays: Inverted Mother of Pearl Sharkfin (Ebony)
●Nut (Material/Width): Floyd Rose® 1500 Series Locking, 1.6875”
●Tuning Machines: Gotoh® MG-T Locking
●Scale Length: 25.5” (64.77 cm)
●Bridge: Floyd Rose® 1500 Series Double-Locking Tremolo
●Pickups: EMG® 81 (Bridge), EMG® 85 (Neck)
●Pickup Switching: 3-Position Blade: Position 1. Full Bridge Pickup, Position 2. Bridge and Neck, Position 3. Neck Pickup
●Controls: Volume, Tone
●Control Knobs: Dome-Style
●Hardware Finish: Black
●Strings: Nickel Plated Steel (.009-.042 Gauges)
●Case/Gig Bag: Included Jackson® Foam Core Case (p/n: 2994742100)

【希望小売価格】
484,000円(税込)

【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 https://www.jacksonguitars.jp

Jackson
American Series Soloist SL2MG HT

●Body Material: Alder
●Body Finish: Matte, Satin
●Neck: Maple, Speed Neck
●Neck Finish: Satin Color Matched
●Fingerboard: Ebony, 12” to 16” Compound Radius (304.8 mm to 406.4 mm)
●Frets: 24, Jumbo Stainless Steel
●Position Inlays: Inverted Mother of Pearl Sharkfin (Ebony)
●Nut (Material/Width): Graph Tech TUSQ XL, 1.6875”
●Tuning Machines: Gotoh® MG-T Locking
●Scale Length: 25.5” (64.77 cm)
●Bridge: Hipshot® 6 – Fixed .175
●Pickups: EMG® 81 (Bridge), (Middle), EMG® 85 (Neck)
●Pickup Switching: 3-Position Blade: Position 1. Full Bridge Pickup, Position 2. Bridge and Neck, Position 3. Neck Pickup
●Controls: Volume, Tone
●Control Knobs: Dome-Style
●Hardware Finish: Black
●Strings: Nickel Plated Steel (.009-.042 Gauges)
●Case/Gig Bag: Included Jackson® Foam Core Case (p/n: 2994742100)

【希望小売価格】
473,000円(税込)

【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 https://www.jacksonguitars.jp

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ディスク・レビュー『スピーク・トゥ・ミー』 ジュリアン・ラージ https://guitarmagazine.jp/article/2024-0326-disc-julian-lage/ Mon, 25 Mar 2024 22:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=374025 『スピーク・トゥ・ミー』
ジュリアン・ラージ
『スピーク・トゥ・ミー』ジュリアン・ラージ
ユニバーサル 2024/3/15 全13曲

現代のヴァーチュオーゾが新境地を見せる最新作

 ジョン・ヘンリーをプロデューサーに起用した今作は、新境地に踏み込むフレッシュな仕上がり。

 これまでエレキとアコギはアルバム中に同居しない傾向だったが、今回はアコギ率が高めながらエレキ曲も少々というバランスで、管楽器や鍵盤類の入った曲もあり、いつものトリオ編成に華やかな色彩感を加えた音像が印象的だ。

 アパラチアン・フォークやポップなテイスト、砂漠っぽいロッキンなリフもの、デレク・ベイリー~オーネット・コールマン~チャールズ・ロイドを横断するフリーなソロやアンサンブルまで、リズムとハーモニーを自在に操りつつ、底なしの深みをたたえて心の最深部まで刺激してくる。

 自然な弦の響きが微細に聴き取れる録音も素晴らしく、完全ソロ・ギターの「マイセルフ・アラウンド・ユー」ではかすかに聴こえる息遣いの中から、気ままに旅するように音楽に向かうジュリアンのスピリットが伝わってくるようだ。

 またしても開かれる音楽の新たな可能性。傑作!

(青山陽一)

【曲目】
①ヒムナル
②ノーザン・シャッフル
③オミッション
④セレナーデ
⑤マイセルフ・アラウンド・ユー
⑥サウス・マウンテン
⑦スピーク・トゥ・ミー
⑧トゥー・アンド・ワン
⑨ヴァニシング・ポインツ
⑩ティブロン
⑪アズ・イット・ワー
⑫76
⑬ナッシング・ハプンズ・ヒア

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夜の本気ダンスの新作『dip』でのギター・アレンジを、西田一紀&米田貴紀が語る https://guitarmagazine.jp/interview/2024-0325-yoru-no-honki-dance-dip/ Mon, 25 Mar 2024 11:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=376145

夜の本気ダンスがメジャー4thアルバム『dip』をリリース。様々な種類のサウンドが入り乱れ、多様なジャンルの要素を内包しながらも、米田貴紀のジャキジャキのテレ・サウンドと西田一紀によるアグレッシブなリフやオブリが、それぞれの楽曲を“夜ダン”たらしめている。そんな新作のギター・アレンジやサウンド・メイクについて、西田と米田の2人に話を聞いた。

インタビュー=福崎敬太 写真=shoko ishizaki

“曲を作りたい”気持ちが自分の中で大きかったんです──米田貴紀

ギタマガ初登場ということで、まずはギターを始めた経緯から聞かせて下さい。

西田 僕は小中高とずっと野球をやっていたんですけど、高校2年生の時にヒジを痛めてボールを投げられなくなって、部活を辞めたんですよ。それで急にやることがなくなってしまい、“何かやりたいけど、どないしよう……”って思って。家に祖父の家から持ってきたギターがあったから始めたんです。当時ギターを弾いていた友達に弦を張ってもらって、そいつらに教えてもらったりしながら。

バンドをやるようになった流れは?

西田 大学生になった時に、トリオでバンドをやっていた小学校の同級生から、“ギター弾かへん?”って言われたので、“やる!”って言って始めた感じですね。

米田さんはどうですか?

米田 僕がギターを始めたのは中3の頃で、高校に入学するまでの間に何か新しいことをやりたい気持ちがあったんです。それまでは音楽を聴くこと自体にも興味を持っていなかったんですけど、ASIAN KUNG-FU GENERATIONを聴いて、バンド・サウンドやギターのカッコ良さに触れて。

 それと同じくらいの時期に漫画の『BECK』(著:ハロルド作石/連載は1999〜2008年)を読み始めて、その影響もあって“自分でもバンドを組みたい、ギターを弾いてみたい”という衝動が生まれて、ギターを買いましたね。

そのきっかけとなったアジカンのアルバムは何だったんですか?

米田 『崩壊アンプリファー』(2003年)でした。CDショップでイチオシとしてプッシュされていて、“今の最先端のロックはこれなのかな”って思ってとりあえず買ってみたんです。

  それまで流行りのポップスくらいしか聴いていなかったで、正直、最初は“うるさいな”っていう感想だったんです(笑)。でも、それがどんどん馴染んでいって、カッコ良いなって思うようになったんですよね。

最初からギター・ボーカルでしたか?

米田 最初に組んだバンドではリード・ギターでした。ただ、作曲はしていて。“曲を作りたい”気持ちが自分の中で大きかったんです。

それぞれ影響を受けたギタリストを教えて下さい。

西田 ネットで調べたら“レッド・ツェッペリンっていう凄いバンドがあるらしい”っていうのを知って、一番最初はレッド・ツェッペリンを聴き始めたんです。始めは“退屈やな”って思っていたんですけど、ずっと聴いていたらある時“これ、めちゃめちゃカッコ良いやん”っていう瞬間がきて。

 そこからレッド・ツェッペリン、AC/DC、ジミ・ヘンドリックスみたいな、“ザ・ギター”っていう感じのロックを聴いていく中で、ブルースに入っていくんです。

 で、大学生の頃に色々と聴いて、最終的に“スティーヴィー・レイ・ヴォーンが一番カッコ良い!”ってなりましたね。“ブルースでこんな弾き方、ありなんや!”って。

米田 僕は“ギタリストでこの人”というのは、なかなかいないんです。ただ、岡村靖幸さんのギターの使い方、リズムをバリバリ際立たせる感じは、凄く“良い使い方やな”って思って、尊敬しています。

米田貴紀
米田貴紀(vo,g)

『dip』はギターに重きを置いて作った1枚──西田一紀

最新作『dip』のギターは、どのようなものに仕上がったと感じていますか?

米田 バンドの4人の音じゃない、シンセなどの音が入ってきたことで、ギターだけで上モノとかを引っ張らなくて良くなったんです。リズムに関しても、ギターが無理に引っ張らなくちゃいけないっていうのがなくなった分、より自由にギターを配置できるようになったのかな、とは思いましたね。

西田 『Fetish』(2019年)まではスタジオで曲を作っていて、曲を作る米田がギタリストなので、サウンド的にもギター主導で曲を作っていくことが多くて。

 で、『PHYSICAL』(2021年)や『armadillo』(2022年)あたりからパソコン(DTM)でも曲を作るようになって、リズム・セクションをもっと強固にしたい、グルーヴを追求したいってなっていったんです。そこではギターが主役にならんでもいいというか、アレンジをする時にもベースとドラムのアレンジにフォーカスしていて。

 その2枚を経て、今作『dip』を作る時、“もう一度ギターで色々やりたいな”ってことになったんですよね。それに、ケンモチヒデフミさんやビッケブランカさんたちの音を入れた、バンドっぽくないベーシックの中で、どうやって自分たちらしさを出せば良いかを考えた時に、やっぱりバンドには絶対に必要なギターっていう楽器で色々やっていった感じで。

 なので『dip』はギターに重きを置いて作った1枚という感じはあります。

それこそ「ピラミッドダンス feat. ケンモチヒデフミ」のギターは、リフの存在感もあって、自由に動き回るオブリも耳を引く印象があります。アレンジはどのように進めていったのですか?

西田 まずケンモチさんがエレキ・ギター以外が仕上がった状態のデモを送って下さって。それだけで聴けるくらいの完成度だったんですが、それだけだとバンドっぽさはない状態。

 でもよく聴いていったら、“ここに何か放り込んでこいよ”みたいな間がある気がして。会話で“こうしてくれ”というのはあまりなかったんですけど、隠された要求を察知してやっていきました(笑)。

 無機質で良いところはそこに沿わせて、オブリなどで人間が演奏している有機的な感じを。その押し引きをうまいこと曲の中でできたら良いなっていうイメージで作っていきましたね。

「GOOD LUCK」だと低音弦のリフとコード・リフが入りますが、これらのパート分けやフレーズ・メイクは同時に進んでいくんですか?

米田 「GOOD LUCK」はたしか同時でしたね。元ネタがイギリスのマキシモ・パークっていうバンドで、ギターとシンセサイザーが上で鳴っているんです。だから「GOOD LUCK」の上のパートはちょっとシンセっぽいイメージもありつつ、それをギターで弾いた感じですね。

西田一紀
西田一紀(g)

遅いBPMでも疾走感は生み出すことができる──米田貴紀

2人でギター・パートについて話し合う時は、どういう会話があるんですか?

米田 僕からニシカズ(西田)に言うことで一番多いのは、“音はこれくらいで切って”、“もうちょっとキレ良く”とか、リズムのニュアンスについて。

 言葉でも表現しづらいくらいの微妙な音符の長さが、自分の中ではけっこう大事やったりするんですよ。そういうことはレコーディングの前に話したりしていますね。

ギターのリズムやグルーヴについて、何か意識しているポイントなどはありますか?

西田 一度ちょっと体を動かしてみて、そこからギターのフレーズを考える、というのは今回やっていましたね。

 というのも僕は、家のスピーカーで大きい音で音楽を流しながら、1人でフラフラ踊っていたり、友達と酒を飲んで踊ったりしていて。そういう変な踊りをしていたら、“このリズムはこういう体の動きとフィットするな”って感じる時があるんです。

 そういう感覚で、ベーシックを作る時にもその音を流しながら変な動きをして。“あ、この動きが引っかかるから、こういうギターのアプローチにしようかな”みたいな。

自然体から生まれるグルーヴという感じですね。米田さんはどうですか?

米田 やはり緩急が一番大事ですね。演奏する時もそうですし、フレーズを考える時にも言えるんですが、遅いところは遅く、速いところはより速く聴こえるように意識することで、その波がつながっていくと思うんです。

 BPMが速いからといって疾走感が生まれるというわけではなく、遅いBPMでも疾走感は生み出すことができる。そういうところは緩急で生み出すものかなと。

「ABRAKADABRA」はアヴァンギャルドな感じのソロですが、どんなイメージでアプローチを考えていきましたか?

西田 今作にはシンセとか色んなサウンド感がある中で、これはバンド・サウンドだけで最後まで押し切る曲だったので、ギター・ソロは椅子に座って頭で考えて弾くやつじゃないな、と。それで、家でバーっと酒を飲んで何テイクも弾いて、“よし、この感じでいこう”って。そうやって絞り出したソロですね。

ギター・ソロを作る時、どういう流れで作ることが多いですか?

西田 曲に沿わせたい時は、コード感や曲が絡んでいるリズムだったりそういうものに対して考えながら塗っていく感じで考えますし、この「ABRAKADABRA」であったり、曲のバランスを壊したほうが良い時は、ちょっと酔っ払ってから考えたり(笑)。

 シラフやとどうしても、“そこはちょっと音がはずれてるんじゃない?”みたいに細かなことを考えてしまう真面目な自分が出てくる。なので、もっとおおざっぱに考えたい時はそういう感じで作ります。

米田さんがギターのメロやリフを作る時はどういう流れが多いですか?

米田 僕はひたすら数を量産していって、というのが多いです。でも、無意識に何も考えずにフレーズを考えていって、“良いのができたな”って感じた時は、自然と歌のメロディを拾っていたりしますね。

 それは歌でも言えることなんですけど、自然と歌とギターがリンクする時は、けっこう良いフレーズだったりするのかな、って思います。でもそれを意識してやると変になっちゃったり。そこはちょっと難しいですよね。

米田貴紀

「ABRAKADABRA」のギターも弾いてみてほしいな──西田一紀

今作はthe telephonesの石毛輝さんが編曲に加わっている楽曲もあります。石毛さんとギターのフレーズやサウンドについて話したことで何か印象に残っていることはありますか?

米田 「パセティックガール」の時にリズムについて言ってもらったことですね。自分の中では“今のでOKかな”っていうテイクが録れた時に、石毛さんが優しく“もうひと頑張りいこう”って言ってくれたり。

 “もうちょっと勢いを”みたいに言われるところは、“たしかになぁ〜”って(笑)。そう思えるからこそやれる。そういう場面はちょいちょいあって、凄く助かりました。

西田さんはどうですか?

西田 パソコン上で良いギターの音ができてしまうと、レコーディングの時にそれを再現するのに凄く困るんです。例えば「GOLD」はデモの段階で“絶対にこれ!”っていう音があって、“どうしたら再現できますか?”って相談したら、石毛さんが持っている機材を使えば再現できると教えてくれて。

 プラグインでTONEXを使っていたんですけど、それを実機で鳴らせるやつ(TONEX Pedal)を持っていて、“あぁ〜21世紀ですね〜”と(笑)。

 しかも、デモでは“これ!”って思っていたけど、そこにパンチ力も加えて下さって。あれは凄くありがたいなって思いました。

さて、2人それぞれ、お互いをどのようなギタリストだと感じているか聞かせてもらえますか?

西田 “スーパー・ダウン・ピッキング・マシーン”。

米田 ははは(笑)。

西田 僕だったらオルタネイトで弾くやろなっていう「Crazy Dancer」みたいな速い曲でも、全部バババババってダウン・ピッキングで弾いていたりするので、男らしいなって(笑)。でも、テレキャスターで弾くその音が、このバンドのサウンドの要になっている。

米田 たしかにダウンが好きですね。クラッシュのジョー・ストラマーとかのダウン・ピッキングの感じが昔好きだったんですよ。

 それにダウンのほうがラクで、オルタネイトのほうが苦手(笑)。

“スーパー・ダウン・ピッキング・マシーン”ですね……(笑)。米田さんから見た西田さんは?

米田 しっかりトラディショナルなものを吸収している人が弾く音、っていうのは思いますね。決してトラディショナルなフレーズを弾いたからそう、っていうわけではなくて、今っぽいフレーズを弾いていても、ちゃんとバックボーンが見える。説得力のある音を出しているギタリストだと思います。

西田 ありがとうございます。

米田 (笑)。

では最後に、ギタリストたちに聴いてほしい本作のポイントをそれぞれ聞かせて下さい。

米田 ニシカズが弾く「DYWD?」のテーマ・フレーズは一度コピーしてみてほしいですね。めちゃめちゃしんどいフレーズで、かなりスパルタな体育会系のフレーズなんですよ。

西田 それで言ったら、「ABRAKADABRA」のギターも弾いてみてほしいな。あれも基本的にずっと同じリフがループしているんですけど、ほぼ16分で刻み続けている。米田が持ってきたんですけど、その米田もデモの時点でそんなに弾けていないっていう(笑)。

米田 (笑)。

西田 こっちのほうがストイックで、最初は腕がちぎれるかと思いました(笑)。これは何回もやっていたら、オルタネイトが綺麗になってくるんじゃないかな(笑)。だからチョネ君もこの曲を練習したらオルタネイトが弾ける。

米田 ははは(笑)。たしかにダウンじゃ弾けないな。オルタネイトの良い教材になる。

西田一紀

夜の本気ダンス “blue spring 18 dip” TOUR

日程/会場

  • 2024年5月6日(月・祝)/栃木・HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
    17:30開場/18:00開演
  • 2024年5月7日(火)/神奈川・F.A.D YOKOHAMA
    18:30開場/19:00開演
  • 2024年5月10日(金)/岡山・CRAZY MAMA 2nd Room
    18:30開場/19:00開演
  • 2024年5月11日(土)/愛媛・松⼭サロンキティ
    17:30開場/18:00開演
  • 2024年5月21日(火)/兵庫・Music Zoo KOBE 太陽と⻁
    18:30開場/19:00開演
  • 2024年5月29日(水)/北海道・札幌 Sound lab mole
    18:30開場/19:00開演
  • 2024年5月31日(金)/新潟・CLUB RIVERST
    18:30開場/19:00開演
  • 2024年6月16日(日)/福岡・LIVE HOUSE CB
    17:30開場/18:00開演
  • 2024年6月21日(金)/大阪・梅⽥CLUB QUATTRO
    18:00開場/19:00開演
  • 2024年6月26日(水)/愛知・名古屋CLUB QUATTRO
    18:00開場/19:00開演
  • 2024年7月2日(火)/東京・渋⾕CLUB QUATTRO
    18:00開場/19:00開演

チケット

  • ⼀般前売:5,000円(税込/ドリンク代別途必要)
  • 学割前売:3,900円(税込/ドリンク代別途必要)

※情報は記事公開時のものです。最新のチケット情報や公演詳細は夜の本気ダンス公式HPをチェック!

夜の本気ダンス公式HP
https://fan.pia.jp/honkidance/

作品データ

夜の本気ダンス『dip』ジャケ写

『dip』 夜の本気ダンス

ビクター/VICL-65916/2024年1月24日リリース

―Track List―

  1. ピラミッドダンス feat. ケンモチヒデフミ
  2. DYWD?
  3. Vivid Beat
  4. GOOD LUCK
  5. Gold
  6. ABRAKADABRA
  7. パセティックガール
  8. Crush me

―Guitarists―

西田一紀、米田貴紀

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ジミー桜井が4月7日(日)に原宿クロコダイルでライブ 1973年のZEPヨーロッパ・ツアーをトリビュート https://guitarmagazine.jp/news/2024-0325-jimmy-sakurai-live/ Mon, 25 Mar 2024 10:00:00 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=376425 アメリカを拠点に活動するギタリスト、ジミー桜井が2024年4月7日(日)に東京・原宿クロコダイルでライブを行なう。本公演ではレッド・ツェッペリンが1973年に行なったヨーロッパ・ツアーをトリビュートする予定だ。

“ジミー・ペイジのスピリットを受け継ぐギタリスト”であるジミー桜井のプレイを、日本で体感できる絶好のチャンスだ。ぜひライブ会場に足を運んでみてはいかかだろうか。

現在アナウンスされている公演の詳細は以下のとおり。

公演概要

日程/場所

  • 2024年4月7日(日)/東京・原宿クロコダイル
    14:30開場/15:30開演

チケット

  • 7,900円(税込)

※全席指定、オーダー別途必要。

※情報は記事公開時のものです。最新のチケット情報や詳細は公式HPをチェック!

https://www.mrjimmyledzeppelinrevival.com/japan

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時間を円でイメージ | ギター上達100の裏ワザ:052 https://guitarmagazine.jp/for_beginners/2024-0325-urawaza-052-imagine-time-as-circle/ Mon, 25 Mar 2024 08:00:56 +0000 https://guitarmagazine.jp/?p=345468

「こんな練習方法や考え方があったのか!」……読むだけで上達する魔法のギター講座

文:いちむらまさき イラスト:花くまゆうさく
*この記事は書籍『ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集』(リットーミュージック刊)の内容を転載したものです。

テンポ・キープを認識するには ➡ 円を描くイメージを持つ

小さな円、大きな円
小さな円、大きな円

 音楽で最も大切なことはテンポとリズム、つまり時間です。時間は、譜面や図版で表わすには横に表示しますが、演奏時には、頭で“円”をイメージしましょう。小さなリズムの円をくり返すと共に、大きなリズムの円を回転させます。これが連動して、同時に回転しているわけです。ここにヒントがあります。

 例を出すと“16ビートをプレイする際には1小節ごとの大きな円を意識する”、“4拍子をプレイするには16分音符の小さな円を意識する”ということです。簡単に言えば、小さな円と大きな円を同時に感じる、もしくは、プレイに対比する円を意識すればよいのです。

 円を意識した上で、“1分という時間を数えなさい”ゲームをしましょう。60秒という長い時間を、勘でズバリと言い当てることは不可能に近いです。が、1秒の間隔(感覚)を60回数えれば、当てる可能性は上がってくるわけです。そして、その1秒を、表拍と裏拍で数える(8分音符)、あるいは“タカツク”(16分音符)で数えていけば、可能性はさらに上がります。これがリズムの基礎です。

イラスト

 逆の考え方もしておきましょう。メトロノームの数値というのは、1分という時間の分割で数字が定められています。つまりテンポ60は、1秒ということです。しかし、実際の1秒は意外に長く数えにくい時間です。よって、テンポ120で8分音符を120回数える──これが1分です。これらを円でイメージして数える──それがリズムのとらえ方のイメージです。

リズム・ボックスのテンポ60(左)と120(右)
リズム・ボックスのテンポ60(左)と120(右)

『ギター上達100の裏ワザ 知ってトクする効果的な練習法&ヒント集』

著者いちむらまさき
品種電子書籍
発売日2006.05.17
ISBN9784845613168

いちむらまさき プロフィール

岐阜出身のギタリスト&ウクレリスト&ライター。音楽制作、ソロ・ギター・スタイル、インストラクターなどで活動。

様々な雑誌に記事を書きつつ、『ギター・コードを覚える方法とほんの少しの理論』、『楽譜を見えるのがうれしくなる方法とプレイに直結させるコツ』、『音楽理論がおもしろくなる方法と音勘を増やすコツ』、『コード進行を覚える方法と耳コピ&作曲のコツ』、『ピアノでコードを覚える方法とほんの少しの理論』、『ギターを弾いているだけで音感がアップする方法』、『ブルース・ギターをはじめる方法とプレイ幅を広げるコツ』、『ギター・スケールを覚えないでアドリブをはじめる方法』、『ウクレレのお手入れ&お手軽カスタマイズを楽しむ本』、『ジャズコで聴き比べる歪みエフェクター97』、『100個のフレーズを弾くだけで飛躍的にギターが上達する本』、『100個のフレーズを弾くだけで飛躍的にギターが上達する本 リズム強化編』、『ギター上達100の裏ワザ』、『ギター作曲100の裏ワザ』、『目で見て確認DVDエレクトリック・ギター』、『アコギ上達100の裏ワザ』、『耳コピ上達100の裏ワザ』、『ライブ上達100の裏ワザ』、『ウクレレ上達100の裏ワザ』、『目で見て確認DVDウクレレ』、『気づいた人から上手くなる! ギタリストのハテナに答えます!』、『ギターで作曲する方法とほんの少しのコード理論』(すべてリットーミュージック刊)などを執筆。

東京でギター/ウクレレ楽器教室も。

◎公式サイト→https://blog.goo.ne.jp/ichimuramasaki

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